扶養照会とは、生活保護の申請があった際に、福祉事務所が申請者の親族に対して経済的な援助や生活上のサポートが可能かどうかを確認する手続きのことです。兄弟姉妹も民法上の扶養義務者に含まれるため、兄弟が生活保護を申請した場合には自分のところへ通知が届くことがありますが、結論として援助の可否を回答するだけであり、断ることに法的な強制力はありません。経済的に余裕がない、関係が疎遠であるなど正当な理由を記載して返送すれば、援助を断ることが認められています。本記事では、扶養照会の仕組みや兄弟への扶養義務の性質、具体的な断り方の文例、扶養照会が免除される条件、生活保護申請への影響、自治体ごとの実施状況の違いまで、厚生労働省の通知や民法の規定をふまえて詳しく解説します。家族に知られたくないという理由で生活保護の申請をためらっている方や、兄弟から突然の通知を受け取って戸惑っている方に向けて、正しい知識と冷静な対応の指針を示します。

扶養照会とは何か
扶養照会とは、生活保護の申請者の親族に対して、福祉事務所が「経済的な援助ができるかどうか」を文書で確認する手続きを指します。生活保護はあくまでも最後のセーフティネットとして位置づけられているため、他の手段で生活が成り立つ場合にはそちらが優先されるという考え方に基づいています。
法的な根拠となっているのは、生活保護法第4条第2項の規定です。同項では、民法に定める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶助は、すべて生活保護法による保護に優先して行われるものとすると明記されています。この条文があるからこそ、福祉事務所は親族からの援助の可能性を確認したうえで支給の判断を進めるという運用を行っています。
ただし注意したいのは、扶養照会はあくまでも「援助できるかどうかの確認」であって、親族に援助を強制する仕組みではないという点です。扶養照会が実施されたからといって、生活保護の申請が自動的に却下されるわけでもありません。誤解されがちな部分ですが、援助できないと回答してもペナルティが課されることはなく、申請者の保護決定にも直接的な不利益は生じない仕組みになっています。
扶養照会の通知は通常、書面(封書)で郵送されます。封書には申請者の氏名や住所、援助の可否を問う項目、返信用の書類などが同封されているのが一般的で、返信期限が設定されているケースもあります。
扶養義務者の範囲と兄弟姉妹の位置づけ
扶養照会の対象となる「扶養義務者」の範囲は、民法によって定められています。具体的には、父母や祖父母、子、孫といった直系血族と、兄弟姉妹が原則的な扶養義務者にあたります。さらに、家庭裁判所が特別な事情があると認めた場合には、おじ・おば・甥・姪などの3親等内の親族にも扶養義務が及ぶ可能性があります。
ここで重要なのは、兄弟姉妹も法律上の扶養義務者に含まれるという事実です。たとえば親が生活保護を申請した場合、子どもだけでなく申請者の兄弟姉妹にも扶養照会の通知が届く可能性があります。突然届いた書面に驚く方も少なくありませんが、これは法律と運用に基づいた手続きの一環であり、不審なものではありません。
兄弟姉妹の扶養義務は、親子間の扶養義務とは性質が大きく異なります。両者の違いを整理すると次の表のとおりです。
| 義務の種類 | 対象となる関係 | 内容 |
|---|---|---|
| 生活保持義務 | 夫婦間、未成年の子に対する親 | 自分と同水準の生活を相手にも保障する強い義務 |
| 生活扶助義務 | 成人した子に対する親、兄弟姉妹間 | 自分の生活を維持したうえで、余裕がある範囲で援助すれば足りる義務 |
このように、兄弟への扶養義務は「生活扶助義務」と呼ばれ、自分の生活を犠牲にしてまで援助しなければならないものではありません。親子間に比べて義務の度合いが弱く、自分や自分の家族の生計を優先することが法律上も許容されています。この違いを正しく理解しておくことが、扶養照会への対応を考えるうえでの出発点となります。
扶養照会は断れるか?強制力の有無
結論から言えば、扶養照会に対して「援助できない」と回答することは可能であり、法的な強制力はありません。これは生活保護に関する制度設計の根本に関わる重要なポイントです。
扶養照会はあくまでも「援助の可否を確認する」手続きであり、親族に金銭的負担を強制する性質のものではありません。経済的に余裕がない、関係が悪いといった理由で断ることは正当な行為として認められています。さらに、扶養照会の回答書を返送しなかった場合でも、罰金や差し押さえなどのペナルティが課されることはありません。返答がなければ「扶養の意思なし」として福祉事務所が判断を進めることになりますが、それによって親族が法的責任を問われることはないとされています。
ただし、扶養照会への回答は生活保護の審査スピードに影響することがあります。回答が遅れると審査が長引く可能性があるため、断る場合であっても速やかに返送するのが望ましい対応です。申請者である親族の生活再建をスムーズに進めるためにも、可能であれば早めに意思表示を行うことが推奨されます。
兄弟から扶養照会が来た場合の対処法
兄弟が生活保護を申請し、自分のところに扶養照会の通知が届いた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。まず押さえておきたいのは、前述のとおり兄弟間の扶養義務は「生活扶助義務」であり、自分の生活を犠牲にしてまで援助する必要はないという点です。自分の家庭の生計が苦しい場合や、住宅ローン・教育費などで余裕がない場合は、その状況を正直に記載して断ることができます。
兄弟との関係が良好でない場合も同様です。長年にわたって連絡を取っていない、過去に金銭トラブルがあった、暴力やハラスメントを受けていたなどの事情がある場合は、それを理由として援助を拒否することが認められています。重要なのは、回答内容が事実に基づいたものであるということです。虚偽の理由で断ることは避け、自分の置かれた状況をありのままに伝える姿勢が求められます。
具体的な対応の選択肢としては、通知に同封されている回答書に「援助できない理由」を明記して返送する方法が基本となります。経済的に厳しい場合は家計の状況を、関係が疎遠な場合は連絡を取っていない期間を、それぞれ簡潔に記載すれば十分です。また、援助の意思はあるが金額的に難しいというケースでは、可能な範囲を申し出るという選択肢もあります。回答書を無視・放置することも法律上は可能ですが、申請者である兄弟の審査が遅れることになるため、できる限り何らかの返答を行う方が望ましいといえます。
兄弟への扶養照会を断る際の文例
回答書に記載する文章の参考として、状況別の文例を紹介します。実際の記載にあたっては、自身の置かれた状況に合わせて書き換えることが大切です。
経済的余裕がない場合の文例としては、「現在、住宅ローンの返済や子どもの教育費などで経済的な余裕がなく、援助は難しい状況です。大変申し訳ありませんが、援助することができません」といった書き方が考えられます。関係が疎遠・不良の場合は、「申請者とは数年以上連絡を取っておらず、現在も音信不通の状態です。関係が疎遠であるため、援助することは難しい状況です」と記載することができます。金銭トラブルがある場合は、「以前、申請者から金銭の貸借があり、返済されないままになっています。このような事情があるため、援助することは困難です」と事実を記載する形が一例となります。
いずれの文例についても、虚偽の内容を記載することは避ける必要があります。記載に不安がある場合は、弁護士や生活保護支援団体に相談することで、自分の状況に合った表現を一緒に検討してもらうこともできます。
扶養照会が行われない(免除される)条件
すべての扶養義務者に対して機械的に扶養照会が送られるわけではありません。厚生労働省の通知によると、一定の条件にあてはまる場合には「扶養義務履行が期待できない者」と判断され、扶養照会が実施されないケースがあります。
具体的に対象となるのは、すでに生活保護を受けている被保護者、社会福祉施設に入所している人、長期入院患者、高齢や心身障害などのために稼働能力がない非稼働者、未成年者、70歳以上の高齢者、DVや虐待の被害を受けていたケース、長年にわたって音信不通であるなど著しい関係不良が認められる場合などです。とくに重要なのは、DVや虐待の被害者、長年音信不通といったケースが明確に位置づけられている点で、過去に家庭内で虐待を受けていた申請者や、親族と10年以上連絡を取っていない申請者などは、扶養照会の対象から外れる可能性があります。
2021年(令和3年)2月26日には、厚生労働省から「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」という事務連絡が出されました。この通知では扶養照会を実施する際の運用基準が見直され、申請者の自立支援を妨げると判断される場合には照会を控えるよう、より柔軟な判断が求められるようになりました。これにより、形式的に全員に対して照会するのではなく、個別事情を踏まえた運用へと変化してきています。
申請者側が扶養照会を回避する方法
生活保護を申請したいけれども親族に知られたくない、というケースは少なくありません。申請者側から扶養照会を回避するためには、申請の段階で福祉事務所の担当者に「扶養照会をしないでほしい」という意思を明確に伝えることが第一歩となります。
ただし、単に希望を伝えるだけでは必ずしも照会が省略されるわけではなく、扶養照会が不要と判断される根拠を具体的に説明することが重要です。たとえば親族から過去に虐待やDVを受けていた、親族との連絡が10年以上途絶えている、親族との間に金銭トラブルがある、親族も生活が苦しく援助を期待できない状況にあるといった事情がある場合は、扶養照会が行われない可能性が高まります。
このとき、弁護士や生活困窮者支援を行うNPOなどの支援団体に相談することで、扶養照会の回避や対応について具体的なアドバイスを受けることができます。日本弁護士連合会は、扶養照会について申請者本人が家族への照会を希望する場合にのみ実施するよう、制度の改正を求める声明を出しています。専門家の視点から状況を整理してもらうことで、福祉事務所への説明もより的確に行えるようになります。
扶養照会に関する法律と制度の最新動向
扶養照会を巡っては、近年、社会的な議論が活発になっています。中心となっているのは、扶養照会が生活保護申請の心理的障壁となり、本当に支援が必要な人を制度から遠ざけているのではないかという問題意識です。
2021年(令和3年)2月、厚生労働省は前述の事務連絡を発出し、扶養照会の実施にあたって「申請者の自立支援の妨げになる場合」や「親族との関係が著しく不良の場合」には照会を控えるよう、従来より明確な基準を示しました。これにより、扶養照会の運用は以前よりも柔軟になっています。さらに、2024年(令和6年)4月施行の生活保護実施要領、2025年(令和7年)4月施行の生活保護実施要領でも、扶養義務の運用について継続的な見直しが行われました。
日本弁護士連合会は、生活保護申請者が扶養照会によって申請をためらうケースがあることを問題視し、制度の改善を求める決議を採択しました。実際、「親族に知られたくない」という理由で生活保護の申請を断念する人がいることは社会問題として認識されており、支援者の間では「扶養照会が生活保護の申請を妨げている」という批判的な意見も根強くあります。
一方で、行政側は「援助できる親族がいる場合は公的支援に頼る前に家族で支え合うべき」という考え方も維持しており、扶養照会を完全に廃止することには慎重な姿勢を見せています。両者の考え方のあいだで、扶養照会制度は今後も運用基準の見直しが続いていく可能性が高いといえます。
自治体によって異なる扶養照会の実施率
扶養照会の実施状況は、全国の自治体によって大きく異なることが調査から明らかになっています。同じ制度であっても、申請する場所によって対応が変わってしまうという現実があり、これが制度への不信感の一因にもなっています。
東京都内28の市区を対象とした調査では、2021年度に扶養照会を実施した割合が1割未満から9割超までという大きなばらつきが見られました。たとえば新宿区、中野区、足立区などは実施率が3割未満に抑えられている一方、港区、杉並区、豊島区、文京区では7割以上の世帯に扶養照会が実施されていたとされています。全国ベースで見ても、扶養照会の実施率は東京都中野区の5.5%から佐賀市の78%まで開きがあるという報告があります。
| 自治体(例) | 扶養照会実施率の傾向 |
|---|---|
| 東京都中野区 | 約5.5%と全国的に低い水準 |
| 新宿区・足立区など | 3割未満に抑えられている |
| 港区・杉並区・豊島区・文京区 | 7割以上の世帯に実施 |
| 佐賀市 | 約78%と高い水準 |
この格差は、厚生労働省が2021年に扶養照会の運用基準を見直した後も解消されておらず、「原則として実施する」という姿勢が変わっていない自治体が存在することが主な原因とされています。こうした格差を問題視する声は大きく、「実施率がこれだけばらつくなら、制度そのものを廃止すべき」という意見も弁護士会や支援団体から上がっています。
千葉県弁護士会は「生活保護申請時の扶養照会の廃止を求める声明」を発表し、扶養照会が生活保護申請の妨げになっている実態を指摘しました。つくろい東京ファンドなど生活困窮者支援に取り組む団体も、「ストップ・ザ・扶養照会」と呼びかけ、扶養照会を止めるための情報提供や申請同行支援を行っています。
民法第877条と扶養義務の種類の違い
扶養義務の法的根拠は民法第877条にあります。同条第1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定しており、第2項では「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」としています。
この民法上の扶養義務には、大きく分けて2種類の性質があります。一つ目は「生活保持義務」であり、自分と同程度の生活水準を相手にも保障するという強い義務です。夫婦間の扶養義務や未成年の子に対する親の扶養義務がこれにあたります。自分の生活を犠牲にしてでも相手を扶養しなければならない義務とされており、家族関係のなかでも最も強い結びつきとされています。
二つ目は「生活扶助義務」です。これは、自分の生活を維持したうえで余裕がある場合に限って、相手の最低限の生活を支援するという、より弱い義務とされています。成人した子に対する親の扶養義務、そして兄弟姉妹間の扶養義務はこちらに分類されます。
つまり、兄弟に扶養照会が来たとしても、「自分の生活が苦しいから援助できない」という理由は法律的に正当な断り方として認められており、強制されることはないということになります。この違いを正しく理解することが、扶養照会への対応を考えるうえで非常に重要です。漠然と「兄弟だから援助しなければならない」と思い込んで無理な負担を背負ってしまう必要はありません。
親が生活保護を申請する場合の扶養照会と子どもへの影響
親が生活保護を申請した場合、子どもに扶養照会の通知が届くことがあります。この際、「年収がある自分が援助を断ってよいのか」と悩む人も少なくありません。重要なのは、扶養照会は「援助してほしい」という依頼ではなく、「援助できるかどうかの確認」であるという点です。したがって、子どもが「援助できない」と回答することは法的に問題ありません。
総務省統計局の2025年家計調査(家計収支編)によると、年収600万円から650万円の世帯の1か月の消費支出は30万402円とされています。年収600万円の場合、手取りは75〜85%程度とされており、450万〜510万円程度になります。ボーナスなしで単純に12か月で割ると、月収は37万5000円〜42万5000円となり、消費支出を差し引くと7万〜12万円程度が手元に残る計算になりますが、これはあくまでも平均的な消費支出を用いた試算です。
実際には、住宅ローンの返済、子どもの養育費・教育費、老後の備えとしての貯蓄など、各家庭によって支出は異なります。余裕があるように見えても、実際にはギリギリという家庭も多いというのが実情でしょう。「援助できない」と判断した場合は、その理由を正直に記載して返送することが大切です。親への愛情があっても、自分の家族を守るためにやむを得ず断るという判断は、法律的にも社会的にも認められています。
扶養照会が生活保護申請に与える影響
扶養照会は生活保護の審査プロセスに影響を与えますが、扶養照会の結果として親族が援助を断った場合であっても、それが生活保護の不支給理由になることはありません。これは非常に重要なポイントです。
つまり、親族全員が「援助できない」と回答したとしても、それを理由に生活保護が却下されることはありません。生活保護の支給・不支給の判断は、あくまでも申請者本人の生活状況、収入、資産などを基準に行われます。「親族に断られたら自分も生活保護を受けられない」と誤解されることがありますが、これは正しくありません。
ただし、扶養照会への回答が揃わない場合や、親族との連絡が取れない場合などは、審査に時間がかかることがあります。そのため、申請者の支援をしている立場から見ると、親族には速やかに回答を返送してもらうことが望ましいとされています。
生活保護申請件数の動向と扶養照会の社会的影響
近年、生活保護の申請件数は増加傾向にあります。2024年(1月から12月)の生活保護申請件数は25万5897件で、前年比0.32%増となり、5年連続で増加しました。長引く物価高騰による家計悪化や、高齢者・単身世帯の増加が影響していると考えられています。
厚生労働省の被保護者調査によると、生活保護を受給している世帯のうち最も多いのは高齢者世帯であり、全体の約55%を占めています。次いで障害者・傷病者世帯、母子世帯などが続いています。
このような状況の中で、扶養照会が「生活保護の申請を妨げている」という問題は深刻です。支援団体の調査では、生活保護を利用できるはずの人のうち、実際に申請している割合(捕捉率)は約2割程度にとどまるという推計もあり、「扶養照会が怖くて申請できなかった」というケースが相当数あると指摘されています。「家族に知られると恥ずかしい」「迷惑をかけたくない」という思いから、経済的に困窮していながらも申請をためらう人がいる現実は、最後のセーフティネットという制度の趣旨に反するものといえます。
扶養照会に関するよくある疑問
扶養照会に関して、よく寄せられる疑問とその回答をまとめます。
扶養照会の通知を無視するとどうなるか
法律上のペナルティはありません。ただし、役所の審査が遅れる可能性があり、「援助の意思なし」として扱われたうえで生活保護の審査が進むこともあります。無視するよりも「援助できない」旨を記載して返送する方が、申請者である親族のためになります。
扶養照会が来たことで申請者が生活保護を受けられなくなるか
なりません。親族が全員「援助できない」と答えたとしても、それを理由に生活保護が不支給になることはありません。生活保護の審査は、あくまでも申請者本人の生活状況をもとに判断されます。
扶養照会を受けたら役所に呼ばれることはあるか
通常は書面のやり取りで完結することがほとんどです。ただし、役所の判断によっては電話での確認や面談を求められる場合もあります。応じるかどうかは任意ですが、協力的に対応することで審査がスムーズに進む場合もあります。
扶養照会で申請者の個人情報が漏れることはないか
扶養照会の書面には申請者の氏名や住所などが記載されているため、その情報は親族に伝わることになります。これが申請者にとって大きな心理的障壁となっているケースがあり、DVや虐待の被害者にとっては特に問題が大きいとされています。そうした事情がある場合は、申請段階で扶養照会を行わないよう申し出ることが重要です。
扶養照会を断ったら兄弟との関係が悪化しないか
扶養照会に「援助できない」と回答することは法的に正当な行為です。兄弟関係への影響は個々の事情によるため一概には言えませんが、もし関係悪化が心配な場合は、返送前に直接連絡を取り合うなど、コミュニケーションを取ることも選択肢の一つです。いずれにせよ、回答内容は任意であり、強制されるものではありません。
生活保護の申請をためらっている方へ
扶養照会への不安や家族への気遣いから、本当は助けが必要なのに生活保護の申請をためらっている方は少なくありません。しかし、生活保護は「国民が人間らしい生活を送るために保障された権利」であり、困ったときに利用することは決して恥ずかしいことではありません。
申請が不安な場合は、一人で窓口に行かなくても、支援団体や弁護士などに同行してもらうことが可能です。「申請同行サポート」を行っているNPO団体も多く存在し、扶養照会についての対応策も相談できます。
また、申請したい旨を窓口で伝えた際に「家族の収入が多いから無理」「扶養照会が必要」などと言われて申請を断られるようなことがあれば、それは「水際作戦」と呼ばれる違法な対応の可能性があります。申請書類を受け取ることは役所の義務であり、申請者には申請する権利があります。もし申請を拒否されたり、強く思いとどまらせるような対応を受けたりした場合は、法テラスや生活保護支援団体に相談することがすすめられます。自治体によって対応に差がある現状では、正しい知識を持ち、必要であれば専門家のサポートを借りることが、スムーズに生活保護を利用するための大切な一歩となります。
相談できる窓口と支援機関
扶養照会や生活保護に関して困った場合の主な相談先を表にまとめます。
| 相談先 | 概要 |
|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 弁護士や司法書士への法律相談を無料または低額で紹介する公的機関 |
| 生活困窮者支援のNPO・支援団体 | 生活保護の申請同行や扶養照会対応をサポートする民間団体 |
| 社会福祉協議会 | 各市区町村に設置され、生活困窮に関する相談やつなぎ資金の貸付などを行う |
| 福祉事務所(市区町村の生活保護担当窓口) | 生活保護の申請窓口。扶養照会を控えてほしい場合の申し出もここで行う |
各地域には生活保護の申請同行や扶養照会対応をサポートする団体が存在しており、インターネットで「生活保護 申請 同行」と地域名を組み合わせて検索することで見つけることができます。一人で抱え込まず、まずは相談から始めることが解決の糸口になります。
まとめ
生活保護における扶養照会は、申請者の親族に援助の可否を確認する手続きであり、法的な強制力はありません。扶養照会が届いた兄弟や子どもは、経済的に余裕がない場合や関係に問題がある場合など、正当な理由があれば援助を断ることができます。重要なポイントを整理すると次の表のとおりです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 性質 | 援助の「確認」であり「強制」ではない |
| 兄弟への義務 | 「生活扶助義務」にあたり、自分の生活を犠牲にする必要はない |
| 断る理由 | 経済的余裕がない、関係が疎遠、金銭トラブルなどが正当な理由となる |
| 未回答時 | ペナルティはないが、速やかに回答することが推奨される |
| 照会の免除 | DV・虐待の被害者や長年音信不通の場合は実施されない可能性がある |
| 申請への影響 | 親族が援助を断っても、それを理由に生活保護が不支給になることはない |
| 制度動向 | 2021年の厚生労働省通知により運用基準が見直され、柔軟な対応が求められるようになった |
生活保護は、すべての人が人間らしい生活を送るための権利を守るための制度です。扶養照会によって申請をためらうことなく、困ったときは専門家や支援団体に相談することが大切です。また、扶養照会を受けた側も、正しい知識を持ったうえで冷静に対応することが求められます。
扶養照会の対応に困った場合は、最寄りの法テラスや弁護士、生活保護支援のNPO団体などに相談することがすすめられます。扶養照会の問題は単に個人や家族の問題ではなく、生活保護制度のあり方に関わる社会的な課題でもあります。今後も制度の改善に向けた議論が続くことが予想されますが、現時点では「断ることができる」「強制力はない」という正しい知識を持ち、必要に応じて専門家に相談しながら対応することが最も大切です。生活に困っているときに声を上げることを恐れず、制度を正しく活用することが、自分自身と家族を守る第一歩となります。








