就労移行支援制度を利用する際に、多くの方が悩まれるのが障害者手帳の取得タイミングと申請順序です。「手帳を先に取得してから就労移行支援を申し込むべきか」「同時進行で進められるのか」といった疑問を抱える方は少なくありません。実際のところ、就労移行支援の利用には障害者手帳は必須ではなく、医師の診断書や意見書があれば利用を開始することが可能です。しかし、将来的に障害者雇用での就職を目指される場合は、障害者手帳の取得が必要不可欠となります。2024年4月からは民間企業の法定雇用率が2.5%に引き上げられ、障害者雇用の機会が拡大している今、適切なタイミングと順序で手続きを進めることが、スムーズな就職活動につながる重要なポイントとなっています。本記事では、最適な申請順序から具体的な手続き方法、さらには2024年の最新制度変更まで、就労移行支援と障害者手帳取得に関する全ての情報を詳しく解説いたします。

就労移行支援とは何か
就労移行支援は、障害者総合支援法における自立支援給付の一つとして位置づけられている重要な福祉サービスです。このサービスは、障害や難病を抱えている方で、かつ一般企業への就職を希望する方のサポートを行うための制度として設計されています。
利用対象者は、就労を希望する65歳未満の方で、身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方が対象となります。就労に必要な知識や技術の習得、就労先の紹介などの支援により、一般的な事業所に雇用されることが可能と見込まれる人が利用できる制度です。
就労移行支援サービスを受けることができる期間は、原則最大2年間と定められています。厚生労働省のデータによると、就職者の平均利用月数は15.9ヶ月となっており、多くの方が1年半程度で就職を実現していることが分かります。
この制度の特徴として、単なる職業訓練だけでなく、ビジネスマナー、コミュニケーション能力、パソコンスキルなど、実際の職場で必要とされる総合的なスキルを身につけることができる点が挙げられます。また、個別の支援計画に基づいて一人ひとりのニーズに合わせた訓練プログラムが提供されるため、効果的なスキルアップが期待できます。
障害者手帳の種類と特徴
日本の障害者手帳は3種類存在し、それぞれ異なる特徴と交付条件を持っています。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は身体機能や内部機能に障害がある人が所持する手帳で、1級から7級までに分類されており、1級が最も重い障害を示します。6級以上の障害に対して交付され、7級単独では交付対象とならず、7級に該当する障害が2つ以上ある場合などに交付対象となります。
手帳の外観は紺色や茶色のカバーが多く、手帳表面に「身体障害者手帳」と記載されています。この手帳の大きな特徴は、基本的に一度交付されると更新が不要という点です。ただし、障害の程度に変化が予想される場合は再認定制度が適用されることがあります。
療育手帳
療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは異なり、法令上の統一的な規定がないのが特徴です。
等級は重度Aと重度以外の中軽度Bの2種類の区分で分けられます。地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」「愛護手帳」などと名称が異なる場合があります。3種類の障害者手帳の中では、交付数は最も少ない手帳となっています。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するもので、1級から3級まで区分されています。
各等級の基準は以下のように定められています。1級は精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度、2級は精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの、3級は精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものとなっています。
重要な申請条件として、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要です。また、基本的には2年ごとに更新が必要となります。2023年度では約144万人が精神障害者手帳を所持しており、2022年度から10万人ほど増加している状況です。
推奨される申請順序とタイミング
最も効率的で実用的な申請順序について詳しく解説します。
第一段階:就労移行支援の利用開始
最初のステップとして、医師の診断書や意見書で受給者証を申請し、就労移行支援の利用を開始することをお勧めします。就労移行支援の利用に障害者手帳は必須ではないため、まずサービスの利用を開始することを優先しましょう。
この段階で必要となる書類は、ICDコードが記載された医師の診断書または意見書、もしくは自立支援医療受給者証のいずれか1つです。これらの書類があれば、障害者手帳の取得を待つことなく就労移行支援サービスの利用を開始できます。
第二段階:並行して各種手続きを進行
就労移行支援を利用しながら、並行して障害者手帳の申請、自立支援医療制度の申請、必要に応じて障害年金の申請を行います。この並行処理により、時間を有効活用できるメリットがあります。
障害者手帳の取得には半年以上かかることが多いため、就労移行支援の訓練期間中に手帳申請手続きを進めることで、無駄な待機時間を削減できます。
第三段階:就職活動の開始
障害者雇用を希望する場合は手帳取得後に就職活動を開始します。一般雇用を希望する場合は、手帳の有無に関わらず活動を開始することが可能です。
この順序が推奨される理由として、就労移行支援事業所の数が平成30年をピークに減少傾向にあることが挙げられます。減少の主な理由として、障害者雇用の知識や経験を持った専門的な人材確保が困難なこと、人口の少ない地域では利用者が少ないといった事情があります。そのため、早めに事業所を見つけて利用を開始することが重要です。
就労移行支援の受給者証申請について
就労移行支援を利用するためには、各市区町村から交付される障害福祉サービス受給者証が必要です。これは障害者手帳とは目的が異なるため、すでに障害者手帳を取得している方も、就労移行支援サービスを利用するには事前に申請が必要となります。
受給者証とは
受給者証とは、正式には「障害福祉サービス受給者証」という名称で、自治体から発行される障害福祉サービスや医療サービスの給付証明書のことです。この証明書により、利用者は就労移行支援サービスを適切な自己負担額で利用することができます。
申請手続きの詳細な流れ
ステップ1:事業所探しと見学
まず、自分に合いそうな就労移行支援事業所を探し、問い合わせを行います。気になる事業所が見つかったら、見学や体験利用を通じて、実際の訓練内容や施設の雰囲気を確認することが重要です。
事業所選びの際は、提供される訓練プログラムの内容、スタッフの専門性、就職実績、アクセスの良さなど、複数の要素を総合的に検討しましょう。
ステップ2:市区町村の福祉窓口での相談・申請
お住まいの地域の自治体の障害福祉課にある担当窓口へ行き、休職中であり就労移行支援の利用を検討していることと、どこの就労移行支援を利用したいので受給者証が必要ということを窓口へ伝えます。
窓口では、利用者の現在の状況や希望する支援内容について詳しく聞き取りが行われます。この際、正直に現在の状況や困りごとについて説明することが、適切な支援につながります。
ステップ3:必要書類の提出
受給者証の申請には、介護給付費等支給申請書、障害福祉サービス利用者負担額減額・免除等申請書、同意書などが必要になります。これらの書類は自治体の窓口で入手できます。
書類記入の際は、不明な点があれば遠慮なく窓口職員に確認することをお勧めします。正確な記載により、スムーズな審査につながります。
ステップ4:認定調査・聞き取り
自治体の職員により、ご自宅への訪問調査や役所での聞き取りなどが行われます。本人の希望や、現在の生活環境、必要な支援などを聞き取り、自治体による審査にて就労移行支援のサービスが適切であるかどうかなどを判断されます。
この調査は利用者のニーズを正確に把握し、適切な支援計画を立てるための重要なプロセスです。日常生活での困りごとや就労に向けた希望について、具体的に説明することが大切です。
ステップ5:サービス等利用計画案の作成
相談支援事業所が作成する「サービス等利用計画案」という書類も、受給者証の発行には必要となります。相談支援事業所の相談支援専門員へ作成を依頼しましょう。
この計画案には、利用者の生活状況、就労に向けた目標、必要な支援内容などが記載され、個別性の高い支援を提供するための重要な文書となります。
ステップ6:暫定支給期間
自治体によっては、受給者証の暫定支給が行われる場合もあります。暫定支給期間は、開始月から最長で2カ月間となっています。この期間を活用することで、正式な受給者証の交付を待つ間も、就労移行支援サービスの利用を開始することができます。
ステップ7:受給者証の交付
個別支援計画が受理され、就労移行支援サービスの内容が利用者に通知されると、受給者証が交付されます。申請から約2週間から2カ月後となることが多く、自治体により処理期間が異なります。
申請期間と受け取り方法
障害福祉サービス受給者証は、申請からお手元に届くまで、大体1から3ヶ月程度かかります。受け取りに関しては郵送で送付されますので、基本的にあらためて窓口やその他の場所に足を運ぶ必要はありません。
申請時の重要なポイント
代理申請の活用
受給者証の申請方法には自分で申請する方法と就労移行支援事業所に代理申請してもらう方法の2つがあります。事業所による代理申請を活用することで、手続きの負担を軽減できます。
申請期間中の体験利用
就労移行支援事業所に代理申請してもらいつつ、申請期間中にその就労移行支援事業所を体験利用することも可能です。この方法により、就労移行支援サービスを実質的に早く受けることができます。
障害者手帳なしでも申請可能
実は、障害福祉サービス受給者証は障害者手帳がなくても取得することができます。例えば、医師の診断書や意見書があれば、申請を行うことが可能です。これは多くの方が誤解している点であり、手帳の取得を待つ必要がないという重要なポイントです。
費用について
受給者証の申請や発行にかかる手数料は基本的にありません。ただし、障害の状態を証明するために医師に診断書や意見書を作成してもらう場合、その費用は自己負担となります。診断書の作成費用は医療機関により異なりますが、一般的には数千円程度です。
受給者証の更新について
受給者証は有効期限が記載されており、その期限を超えて就労移行支援などを利用したい場合は更新手続きが必要となります。受給者証の更新手続きは基本的に有効期限の3ヶ月前から行うことができ、更新可能時期になると自治体から更新のための通知が郵送されてくることが多いようです。
更新手続きを怠ると、サービスの利用が一時的に停止される可能性があるため、期限には十分注意を払い、早めの手続きを心がけることが重要です。
障害者手帳申請の詳細
障害者手帳の申請から交付までの期間と手続きについて詳しく解説します。
申請から交付までの期間
身体障害者手帳と療育手帳は申請から約1ヶ月程度、精神障害者保健福祉手帳は約2ヶ月程度となっています。
より詳細には、申請してから交付までの標準処理期間は36日となっています。申請から結果を受け取るまでに紙形式は2か月程度、カード形式は2か月半程度かかります。手帳の交付には、審査等のため、申請から1か月から2か月程度の時間が必要となります。
必要書類
どの種類の手帳でも共通して必要となるものは、交付申請書、写真、身分証明書、印鑑の4点です。
追加で必要なものとして、身体障害者診断書・意見書、本人のマイナンバーが分かる書類、精神障害に係る初診日から6か月以上経過した時点の診断書などがあります。診断書については、都道府県が指定した指定医に記入してもらう必要があるため、事前に指定医の確認を行うことが重要です。
申請の流れ
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の場合
市区町村の窓口に相談し、交付申請書と診断書の用紙を取得します。次に指定医を受診し、診断書を書いてもらいます。最後に市区町村の窓口に交付申請書と診断書を提出します。
指定医の選択については、主治医が指定医資格を持っている場合が多いため、まずは現在通院している医療機関に確認することをお勧めします。
療育手帳の場合
各自治体の障害福祉窓口などへ相談し、申請書類や必要な手続きを確認します。児童相談所や知的障害者更生相談所で判定を受ける指定医から診断書を取得し、申請書類や写真、身分証明書、診断書を窓口へ提出します。
療育手帳の場合、専門的な判定が必要となるため、他の手帳よりも手続きが複雑になることがあります。
更新について
身体障害者手帳は基本的に更新なしですが、再認定制度がある場合があります。障害の程度に変化が予想される場合や、18歳未満で交付された場合などに再認定が必要となることがあります。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間となっているため、2年ごとに更新が必要です。更新の申請は、手帳の有効期限の3か月前から行うことができます。更新手続きを忘れると手帳が失効してしまうため、期限管理は重要です。
注意点
診断書は都道府県が指定した指定医に記入してもらう必要があります。審査の際に医療機関等への確認が必要な場合は、さらに時間がかかることがあります。自治体によって手続きの詳細が異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口での確認が強く推奨されます。
特に精神障害者保健福祉手帳の場合、初診日から6か月以上経過していることが申請の前提条件となるため、この期間を満たしていることを事前に確認しておく必要があります。
就労移行支援のメリット・デメリット
就労移行支援制度を利用することで得られるメリットとデメリットを詳しく解説します。
就労移行支援のメリット
総合的なスキル向上が可能という点が最大のメリットです。仕事のスキル面だけでなく、生活面やメンタル面のサポートやアドバイスが適宜受けられます。一般企業へ就職するために必要なスキルやコミュニケーション能力を磨くことができ、就職に向けて一人ひとりにあった計画を作成するといった細かなサポートを受けることができます。
具体的には、パソコンの操作、職場で必要なコミュニケーション方法、ビジネスマナー等を学ぶことができます。これらのスキルは一般的な職業訓練では得られない、障害特性を考慮した専門的な指導内容となっています。
個別支援計画に基づいた訓練が受けられることも大きなメリットです。利用者一人ひとりの障害特性、職歴、希望する職種などを総合的に考慮し、最適な訓練プログラムが提供されます。
就職活動支援も充実しており、履歴書の書き方から面接練習、企業見学、職場実習まで幅広いサポートが受けられます。また、就職後の定着支援も提供されるため、長期的な就労継続につながりやすいという特徴があります。
就労移行支援のデメリット
収入面での制約が主なデメリットです。就労移行支援事業所に通所している期間は、原則としてアルバイトが認められない点が1つ目のデメリットです。通所中は無収入になるため、生活費の確保が課題となります。
利用期間の制限も重要なデメリットです。就労移行支援事業所の利用期間が最長2年間にわたる点がもう一つのデメリットです。この期間内に就職を実現する必要があるため、計画的な訓練と就職活動が求められます。
事業所選びの重要性も課題の一つです。事業所により提供される訓練内容や就職支援の質に差があるため、自分に合った事業所を見つけることが成功の鍵となります。選択を誤ると、貴重な利用期間を無駄にしてしまう可能性があります。
障害者雇用のメリット・デメリット
障害者雇用枠での就職について、そのメリットとデメリットを詳しく分析します。
障害者雇用のメリット
合理的配慮を受けられる点が最も重要なメリットです。これには、業務内容の調整、通院の考慮、勤務時間の配慮、そして勤務場所の施設に関する配慮が含まれています。2024年4月に改正された障害者差別解消法により、民間企業でも障害者への合理的配慮の提供が義務化されました。
採用されやすい環境という点も大きなメリットです。障害者雇用枠は一般雇用枠と比較して競争率が低く、採用の可能性が高くなります。また、最初から障害をオープンにしているため心理的負担が少ない点も重要な要素です。
専門的な支援制度の活用が可能です。障害者枠でのトライアル雇用や職場実習を紹介できます。これらの制度により、実際の職場環境を体験しながら就職を目指すことができます。
就職後の定着支援サービスも受けられます。就労定着支援事業所によるフォローアップにより、長期的な就労継続がサポートされます。
障害者雇用のデメリット
職種・求人数の限界が主なデメリットです。障害者雇用枠での職種や求人数が限られているため、仕事の選択肢が狭まる点があります。特に専門性の高い職種や管理職などのポジションは少ない傾向があります。
賃金水準の課題も重要なデメリットです。一般雇用と比較して賃金水準が低い傾向があります。ただし、これは企業や職種により大きく異なるため、個別の検討が必要です。
キャリアアップの制限という問題もあります。障害者雇用枠での採用の場合、昇進や昇格の機会が限定的である企業も存在します。長期的なキャリア形成を考える場合、この点を考慮する必要があります。
障害者手帳なしで就労移行支援を利用する場合の注意点
就労移行支援の利用には障害者手帳は必須ではありませんが、障害者雇用で働く際には必須となる点には注意が必要です。障害者雇用での就職を考えている場合、障害者手帳の所持が必須になります。
利用開始に必要な条件
障害者手帳は就労移行支援の利用には必須ではありませんが、以下の3つのうちいずれか1つがあれば就労移行支援の利用を開始できます。
- 障害者手帳
- ICDコードが記載された医師の診断書または意見書
- 自立支援医療受給者証
このうち、最も取得しやすいのは医師の診断書または意見書です。主治医に相談することで、比較的短期間で取得することが可能です。
将来的な就職活動への影響
手帳なしで就労移行支援を利用した場合、一般雇用での就職活動は問題なく行えます。しかし、障害者雇用を希望する場合は、就職活動を開始する前に障害者手帳を取得する必要があります。
このタイミングのずれを避けるため、就労移行支援の利用開始と並行して障害者手帳の申請手続きを進めることが推奨されます。
就労移行支援利用中のアルバイト禁止について
アルバイト禁止とされる理由
就労移行支援利用者は、厚生労働省により就労を希望しているが自力では就労が困難で、就労に必要な知識や技能の取得やその他の支援が必要な者と定義されています。この定義には常勤雇用だけでなく、臨時雇用やアルバイトも含まれています。
就労移行支援は公的資金で運営されており、ほとんどの利用者が無料で利用できます。一部の人がアルバイトを認められると、制度の公平性が損なわれることになります。また、アルバイトと訓練の両立により、本来の就労移行支援の効果が薄れる可能性も懸念されています。
アルバイトが許可される例外的なケース
アルバイトが一般的に禁止されている一方で、稀に例外があります。
過去にアルバイトが承認されたケースには、プログラム中に経済的支援をしていた親が解雇された場合、週20時間以内での労働、就職内定を得てから最初の給与を受け取るまでの生活費を稼ぐ必要があった場合などがあります。
アルバイトをするには、就労移行支援施設と自治体の両方からの許可が必要です。最近では大阪で自治体が許可を出すケースが増えていますが、主に訓練の一環であることを条件としています。
無許可でアルバイトをするリスク
一定額以上のアルバイト収入があると住民税が発生し、自治体がサービス利用時や更新時に税務情報を確認する際に発覚する可能性があります。
無許可でアルバイトが発覚した場合の結果には、アルバイトまたは施設のどちらかを辞める必要がある、サービス利用料の全額返還を求められるなどの深刻なペナルティが課される可能性があります。
生活費対策について
就労移行支援利用中の生活費対策として、いくつかの支援制度を活用することができます。
障害年金の活用
障害年金は、病気や怪我により日常生活や労働に大きな制限を受ける方が利用できる制度で、うつ病などの精神疾患も対象となります。障害基礎年金と障害厚生年金があり、加入していた年金制度により支給される内容が異なります。
障害年金の受給により、就労移行支援利用中の生活費を確保することができます。ただし、受給要件が複雑であるため、専門家への相談が推奨されます。
失業保険の特例
失業保険では、障害者が就労移行支援を利用する場合、就職困難者と見なされ、一般の期間よりも長い150から360日間給付を受けることができます。就労移行支援利用中でも失業保険を受給することが可能です。
この制度により、離職後から就労移行支援を経て再就職するまでの期間、一定の収入を確保することができます。
傷病手当金
傷病手当金は、病気や怪我で仕事を休む際に受けられる手当で、うつ病、適応障害、統合失調症などの精神疾患も対象となります。支給期間は最大1年6か月で、標準報酬日額の3分の2が支給されます。
自立支援医療制度
自立支援医療制度を通じて、精神科治療の医療費を通常の30%から10%の自己負担に軽減することができます。この制度により、医療費の負担を大幅に軽減しながら治療を継続することができます。
家族からの支援
多くの利用者は、就労移行支援利用中に両親や家族からの経済的支援を受けています。家族との話し合いにより、利用期間中の生活費について理解と協力を得ることが重要です。
その他の公的支援
その他の方法として、生活保護や生活困窮者支援制度などの公的支援プログラムがあります。これらの制度は最終的なセーフティネットとして機能しており、必要に応じて活用を検討することができます。
推奨事項
生活費について心配でアルバイトを検討している場合は、施設に正直に相談することをお勧めします。経験豊富なスタッフが、より良い解決策を見つけてくれる可能性があります。重要なのは、大きなリスクを伴う無許可アルバイトを試みるのではなく、利用可能な支援制度を探ることです。
精神障害者保健福祉手帳のメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得することで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
税制上の優遇措置
障害者控除として27万円(特別障害者の場合は40万円)が所得から控除されます。3級精神障害者手帳保持者の主な税制上の優遇措置には、所得税、住民税、相続税、贈与税の軽減または免除が含まれます。
例えば、年収300万円の3級精神障害者手帳保持者は、27万円の障害者控除を受けることで課税所得を減らすことができます。この控除により、年間数万円の税負担軽減効果が期待できます。
医療費支援
医療費助成は通常1級または1から2級を対象としていますが、一部の自治体では3級も対象としています。障害者手帳の有無に関係なく、精神障害者は自立支援医療(精神通院医療)および障害者総合支援法による障害福祉サービスを通じて医療費助成を受けることができます。
精神障害者向けの自立支援医療(精神通院医療)による医療費助成および障害者総合支援法による障害福祉サービスは、手帳の有無に関係なく精神障害者が利用できる重要な制度です。
就労支援
2024年4月に改正された障害者差別解消法により、民間企業でも障害者への合理的配慮の提供が義務化されました。障害者雇用のメリットには、一般雇用枠と比較して採用されやすい点や、最初から障害をオープンにしているため心理的負担が少ない点があります。
精神障害者手帳の取得を通じて利用できる就労関連支援には、さまざまな職業紹介支援プログラムが含まれます。ハローワークの専門窓口や就労移行支援事業所での手厚いサポートが受けられます。
公共サービス割引・優遇
利用可能なサービスには、NHK受信料の割引、公共交通機関(鉄道、バス、タクシー)の割引、携帯電話料金の割引、上下水道料金の割引、公共施設入場料の割引があります。
手帳保持者は、手帳を提示することで公共交通機関やタクシーの割引料金を受けることができますが、条件やサービス内容は自治体や事業者によって異なる点に注意が必要です。
その他のメリット
その他のメリットには、福祉資金貸付、企業の障害者雇用率へのカウント、職場適応訓練の実施などがあります。
就労制限のある障害や怪我を持つ方を対象とした一時金である障害手当金は、厚生年金保険に加入しており、支払い要件を満たす方が利用できる場合があります。
重要な注意点
精神障害者保健福祉手帳を持つことによるデメリットはありません。また、障害が改善した場合は、手帳を返納することや更新を辞退することも可能です。
2024年においても精神障害者保健福祉手帳は、税制、医療、就労支援、および各種公共サービスにおいて実質的なメリットを提供し続けており、具体的なメリットは等級レベルや自治体によって異なるという点を理解しておくことが重要です。
2024年の最新動向
法定雇用率の改正
2024年4月からは、これまで障害者雇用率に算定できなかった、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の働き方についても、重度知的障害者や精神障害者保健福祉手帳所持者がカウントできるようになりました。
国は、障害者雇用促進法において、企業に対して、雇用する労働者の2.3%に相当する障害者を雇用することを法定雇用率として義務付けています。2024年には民間企業の法定雇用率が2.5%、2026年には2.7%に引き上げられることが決定されました。
就労移行支援の実績向上
福祉的就労のA型では一般就労への移行率が約22%、B型では約12%に留まるのに対して、就労移行支援制度を利用すると、移行率が約53%と高くなります。この高い成功率は、就労移行支援制度の有効性を示す重要な指標です。
就労継続支援との違い
就労継続支援とは体調の問題などで、一般企業等の就労が困難な方に、就労の機会とスキルアップのための訓練を行うサービスおよび事業所です。
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、賃金が支払われます。厚生労働省の調査によると、2017年の平均賃金は74,085円になります。一方、就労移行支援は一般就労を目指すための訓練に特化しており、訓練期間中は無給となります。
就労継続支援は長期的な就労の場を提供することが目的であるのに対し、就労移行支援は一般就労への移行を目指すという点で大きく異なります。
就労移行支援の具体的な成功事例と統計
就労移行支援の就職成功率
就労移行支援の就職率は57.2%と非常に高く、他の福祉サービスを大幅に上回る実績を示しています。これは継続A型雇用支援の26.2%の2倍以上、継続B型雇用支援の10.7%の4倍以上の高い数値です。
東京都の2022年調査によると、2021年に就職した2,259人と2022年4月1日時点の利用者4,681人を基に算出された就職率となっています。
2024年の具体的な実績
WithYouは2024年に大阪と兵庫県で精神障害者111人の就職を実現しました。
AccessJobは2024年9月時点で、総就職者数500人のうち約83%が就職後6か月以上の職場定着を維持していると報告しています。
各支援事業所の成績
atGPジョブトレーニングでは、施設当たり年間平均24人の就職者を輩出しており、これは全国平均3.4人の7倍の実績です。
Cocorportは就職(復職含む)支援実績4,300人以上を達成し、就職者の職場定着率90.0%を維持しています。
成功事例の特徴
29歳のADHDとASD診断を受けた方が、研究志望から大手建設会社の特例子会社でITエンジニアとしてキャリア転換を果たした事例があります。プログラミングスキル向上とインターンシップを通じて困難を克服した成功例も報告されています。
成功のポイントとして、適切な就労移行支援施設の選択、サービス利用中の治療継続、スタッフとの就職不安や悩みについての相談が挙げられています。
専門知識と経験豊富なスタッフが、個々の利用者に適した支援方法を提供することで、一般雇用への移行者が増加傾向にあることがデータで示されています。
2024年障害者雇用の法制度変更
法定雇用率の段階的引き上げ
2024年4月から民間企業の法定雇用率が2.5%に引き上げられました。これにより従業員数40人以上の企業が少なくとも1人以上の障害者を雇用する義務を負うことになりました。
2026年7月には法定雇用率が2.7%にさらに引き上げられる予定であり、これに伴い障害者雇用義務のある企業の範囲が従業員37.5人以上に拡大されます。
企業の雇用義務と罰則
常時雇用する労働者が40人以上の企業には、法定雇用率を満たす障害者を雇用する義務があります。また、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況をハローワークへ報告することも義務づけられています。
法定雇用率を未達成の企業のうち、常用労働者100人超の企業から、障害者雇用納付金が徴収されます。不足している雇用障害者数1人につき毎月5万円の納付金を納めることになっています。
雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから行政指導を行います。未達成状態が続くとハローワークの雇用率達成指導を受けたり、企業名を公表されたりすることがあります。
支援策の充実
法定雇用率を達成している企業に対して、調整金、報奨金を支給します。この財源は未達成企業からの納付金が使われています。
障害者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に、その費用に対し助成金を支給します。
2024年4月以降、障害者雇用のための事業主支援を強化しました。障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で、雇入れやその雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助を受けることができるようになりました。
加齢により職場への適応が難しくなった方に、職務転換のための能力開発、業務の遂行に必要な者の配置や、設備・施設の設置等を行った場合に、助成が受けられるようになりました。
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者についても実雇用率の算定に含めることができるようになりました。
2024年障害者総合支援法改正の影響
最新の法制度変更として、2024年4月1日より障害者総合支援法の改正が施行されました。この改正は2022年12月10日に成立し、障害者等の地域生活や就労の支援の強化等によって、障害者等の希望する生活を実現することを目的としています。
改正の主要ポイント
障害者等の地域生活の支援体制の充実として、グループホーム利用者が希望する地域生活の継続・実現の推進が図られています。グループホーム退居後も一定期間グループホーム事業者が相談支援を継続することが業務として明確化されます。
障害者の就労支援および障害者雇用の質の向上では、就労を希望する障害者に合った働き方や就労先の選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等が進められます。
精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備として、市町村長の同意による医療保護入院の要件が拡大され、家族などが同意・不同意の意思表示を行わない場合にも入院が可能となります。
難病患者等に対する適切な医療の充実および療養生活支援の強化では、2024年4月からは369疾病が対象となります。
事業者への主要な影響
2024年4月からは10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者についても雇用率上0.5カウントとして算出できるようになります。また、障害者の法定雇用率が2.5%へと引き上げとなりました。
障害者雇用納付金制度の見直しでは、障害者の雇用が一定数を超える場合の調整金や報奨金の支給額が見直しされ、超過人数分の単価が引き下げられました。
新たなサービスの創設として、改正のたびに新たなサービスが創設されており、今回も新たなサービスが新設される見込みです。
就労選択支援については、公布後3年以内の政令で定める日とされています。一部は施行期日が異なり、段階的に実施されます。
この改正により、障害者が安心して地域生活を送るための支援体制や障害者雇用の見直しなど、障害の特性や個人のニーズに合った柔軟な対応が求められるようになりました。就労移行支援と障害者手帳の取得タイミング・順序についても、これらの法改正を踏まえたより柔軟で効果的なアプローチが可能になっています。
まとめ
就労移行支援と障害者手帳の取得において、最適なタイミングと順序は個人の状況により異なりますが、一般的には以下の順序が推奨されます。
まず医師の診断書等で就労移行支援の受給者証を申請し、サービス利用を開始します。利用開始と並行して障害者手帳の申請手続きを進めます。障害者雇用を希望する場合は、手帳取得後に就職活動を本格化します。
この方法により、時間を無駄にすることなく、必要な支援を受けながら就職準備を進めることができます。また、経済的な不安がある場合は、アルバイトではなく、障害年金や失業保険などの制度を活用することが重要です。
2024年の法制度改正により、企業の障害者雇用義務が強化され、法定雇用率が2.5%に引き上げられました。これは障害者の就職機会拡大につながる重要な変化です。就労移行支援制度の成功率57.2%という高い実績と合わせて考えると、適切な順序で手続きを進めることで、より良い就職結果につながる可能性が高まります。
個別の状況については、利用予定の就労移行支援事業所や市区町村の障害福祉担当窓口に相談することをお勧めします。近年の制度改正と支援の充実により、障害者の就労環境は着実に改善されており、就労移行支援を通じた社会参加の道筋がより明確になっています。









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