障害者雇用における給料の実態について、多くの方が疑問を抱いているのではないでしょうか。日本では障害者雇用促進法により企業に一定割合の障害者雇用が義務付けられていますが、実際の給料水準や待遇面では様々な課題が存在しているのが現実です。2025年現在、民間企業に雇用されている障害者数は67万7,461.5人と21年連続で過去最高を更新している一方で、給料面での格差や地域差など、解決すべき課題も多く残されています。障害者雇用の現状を正しく理解し、より良い雇用環境の実現に向けて、給料の実態について詳しく見ていきましょう。

障害者雇用の平均給料はどのくらい?一般雇用との差はある?
令和5年度の障害者雇用実態調査によると、障害者の平均給与は約14.6万円となっており、これは一般雇用の平均賃金と比較して大幅に低い水準となっています。しかし、この数字だけでは実態を正確に把握することはできません。
障害種別による給与の違いも顕著で、身体障害者の平均月収は21万5千円(超過勤務手当含む)、所定内給与額では20万4千円となっています。これに対して、知的障害者や精神障害者の給与はさらに低い傾向にあります。
労働時間別で詳しく見ると、週所定労働時間が30時間以上のフルタイム勤務では24万8千円、20時間以上30時間未満の場合は8万6千円、20時間未満の短時間勤務では6万7千円となっており、労働時間が給与に大きく影響していることがわかります。
企業規模による差も存在し、従業員1000人以上の大企業では障害者の平均年収が300万円を超える企業も増加しており、業界によっては400万円以上の高水準の給与を提供する企業もあります。一方で、中小企業では環境整備や専門知識の不足により、適切な給与設定が困難な場合があります。
地域格差も深刻で、東京都の障害者平均給与は月額16.8万円、神奈川県は15.2万円である一方、沖縄県では月額11.2万円、青森県では11.8万円となっており、都市部との格差は約5万円から6万円となっています。この格差は年収ベースでは60万円から70万円の差となり、障害者の生活水準に大きな影響を与えています。
障害者雇用でも最低賃金は適用される?減額特例制度とは?
障害者雇用においても、原則として最低賃金制度が適用されます。2025年度の最低賃金は全国加重平均で1,118円となっており、過去最高の63円の引き上げが実施されました。これは障害者雇用においても同様に適用される基準となります。
ただし、障害者雇用には特別な制度として「減額特例許可制度」が存在します。この制度は、障害が業務の遂行にとって明らかに支障がある場合に、最低賃金の減額を認める制度です。重要なのは、単に障害があるだけでは適用されず、具体的な業務遂行能力との関係で判断されることです。
減額率は個別の状況により異なりますが、一般的に10%から50%程度の減額が認められることが多くなっています。この制度については賛否両論があり、障害者の就労機会確保の観点から必要とする意見がある一方で、差別的な制度であるとの批判もあります。
近年の傾向として、減額特例の適用を受ける事業所は減少しており、より平等な賃金体系を目指す企業が増加しています。これは企業の社会的責任への意識向上と、障害者の能力や貢献度に対する評価の変化を反映していると考えられます。
地域別最低賃金では、東京都が1,113円と最も高く、次いで神奈川県の1,112円、大阪府の1,064円と続きます。最も低いのは沖縄県の896円となっており、地域格差は217円となっています。この地域差は障害者雇用にも直接影響を与えており、都市部では最低賃金が高い分、障害者の給与水準も相対的に高くなる傾向がありますが、生活費も高いため実質的な生活水準の向上には必ずしもつながっていません。
なぜ障害者雇用の給料は低いの?その理由と背景を知りたい
障害者雇用における給料が一般雇用と比較して低い理由として、複数の構造的な要因が存在します。
まず、短時間勤務の割合が高いことが大きな要因です。特に知的障害者、精神障害者、発達障害者においては、勤務時間への配慮として短時間勤務が選択されることが多く、これが月収の低さに直結しています。短時間勤務自体は障害特性に応じた合理的配慮として重要ですが、結果として収入面での課題を生んでいます。
次に、業務内容や責任の範囲が限定されることがあります。障害特性に配慮した業務配分は必要ですが、これが昇進や昇格の機会を制限し、長期的な賃金上昇を阻害する要因となっている場合があります。企業側の理解不足や偏見により、障害者の能力を十分に活用できていないケースも見受けられます。
また、正社員以外の雇用形態での採用が多いことも影響しています。パートタイム労働者や契約社員として雇用される場合、正社員と比較して基本給や各種手当、賞与などに差が生じることがあります。障害者のパートタイム労働者の割合は全体の約50%を占めており、これが全体の給与水準を押し下げる要因となっています。
さらに、企業側の障害者雇用に対する理解や取り組み姿勢の違いも大きく影響しています。障害者雇用を法的義務として最低限の対応にとどめる企業と、積極的にダイバーシティ経営の一環として取り組む企業では、給与水準に大きな差が生じています。
合理的配慮の提供コストや生産性への影響を理由に、給与を低く設定する企業も存在します。これは合理的配慮の本来の趣旨に反するものですが、現実的な課題として存在しています。適切な合理的配慮の提供により、障害者の能力を最大限に活用し、それに見合った給与を支払うことが、真の意味での障害者雇用の促進につながります。
障害種別や雇用形態で給料に差はある?実態を詳しく教えて
障害種別による給与格差は、雇用実態の重要な側面となっています。身体障害者の場合、正社員として雇用されるケースが多く、平均年収は300万円から400万円程度となっています。これは一般雇用と比較して低い水準ではありますが、安定した雇用が確保されているという特徴があります。
知的障害者の給与水準は平均年収200万円から300万円程度となっており、主に軽作業や組み立て作業での雇用が中心となっています。しかし、近年では知的障害者の特性を活かした新たな職種での雇用も拡大しており、給与水準の向上が期待されています。
精神障害者・発達障害者の給与は最も幅が広く、年収150万円から400万円以上まで大きなばらつきがあります。これは、個人の能力や障害の程度、従事する業務内容によって大きく異なるためです。特にIT関連業務に従事する発達障害者の中には、一般雇用を上回る高収入を得ているケースもあります。
雇用形態別では、正社員として雇用される障害者の割合は全体の約35%となっており、これらの労働者の平均年収は250万円から350万円程度です。正社員の場合、昇進や昇格の機会があり、長期的な給与上昇が期待できます。また、賞与や各種手当も支給されるため、年収ベースでは他の雇用形態と比較して高くなります。
契約社員・嘱託社員として雇用される障害者の平均年収は200万円から300万円程度で、正社員と比較してやや低い水準となっています。ただし、専門性を活かした業務に従事する場合は、正社員と同等以上の給与を得るケースもあります。
パートタイム労働者として雇用される障害者が最も多く、全体の約50%を占めています。時給は最低賃金から1500円程度までの幅がありますが、平均的には900円から1200円程度となっています。短時間勤務であるため年収は100万円から200万円程度となることが多いですが、障害特性に配慮した働き方として重要な選択肢となっています。
2025年の最新動向は?障害者雇用の給料改善の見通しは?
2025年は障害者雇用において重要な転換点となる年です。民間企業に雇用されている障害者数は、前年より3万5,283.5人多い67万7,461.5人となり、21年連続で過去最高を更新しました。実雇用率は前年比0.08ポイント上昇の2.41%で、こちらも過去最高となっています。
この増加傾向は給与水準にも影響を与えており、需要と供給のバランスから、企業間での優秀な障害者人材の獲得競争が激化し、結果として給与水準の向上につながっています。特に、IT関連企業や大手製造業では、障害者の専門性を評価した高水準の給与設定を行う企業が増加しています。
2025年4月からの重要な変更として、企業が障害者を雇用する際に適用される「除外率」が10ポイント引き下げられました。この変更により、多くの企業で障害者雇用の義務が拡大され、雇用機会の増加とともに給与水準の改善も期待されています。
2026年7月からは法定雇用率が2.7%にさらに引き上げられることが決定しているため、企業は段階的な対応が求められています。この需要増加により、障害者の給与水準も徐々に向上していくと考えられています。
デジタル化の進展により、これまで就労が困難だった重度障害者や在宅での就労を希望する障害者の雇用機会が拡大しており、新たな給与体系の構築が進んでいます。テレワークや在宅勤務の普及により、通勤負担を軽減した短時間雇用の機会が拡大し、地理的制約を超えた雇用が可能になっています。
企業の社会的責任(ESG経営)への関心の高まりも、障害者雇用の質的向上を促進する重要な要因となっています。投資家や消費者から、単純な雇用数ではなく、障害者の処遇や給与水準についても注目されるようになっており、企業にとって障害者雇用の質的向上が経営上の重要な課題となっています。
成功企業事例では、ユニクロの障害者雇用率3.06%、リクルートグループの2.8%超など、法定雇用率を大幅に上回る企業が増加しており、これらの企業では能力と貢献度に応じた給与設定や一般従業員と同等の昇進機会を提供しています。









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