2Eギフテッドとは、特定の分野で並外れた才能を持ちながら、同時にASD(自閉スペクトラム症)やADHD、学習障害(LD)といった発達障害の特性によって学習や生活面の困難を抱える人を指す言葉です。「2E」は「Twice Exceptional」の略で、二重に特別なという意味になります。TBS「報道特集」で紹介された宮崎県在住の詩歩子さんの事例のように、高いIQを持ちながら学校でいじめや孤立を経験してきた人は少なくありません。この記事では、2Eギフテッドの意味と具体的な特徴、当事者2人の歩み、そして相談できる窓口までを整理します。才能と困難がひとりの人間の中に同居しているという前提を理解することが、本人や家族を支える最初の一歩になります。

2Eギフテッドの意味は突出した才能と発達障害の特性がひとりに同居すること
「ギフテッド」とは、全米ギフテッド協会(NAGC)が「特定の領域において、並外れたレベルの能力を示す人々」と定義する言葉です。知能指数の高さだけでなく、言語理解や数理的思考、芸術、音楽など、特定の分野で突出した才能を発揮する人たちを広く指しています。こうした才能を持つ人の中には、ASDやADHD、LDといった発達障害の特性を併せ持つ人がいます。並外れた才能と発達に関する特性という、一見相反する二つの側面を同時に抱えていることから、二重に特別なという意味で「2E」という言葉が使われるようになりました。優れた才能だけが注目されがちですが、その裏側には、本人にしかわからない生きづらさが存在している場合があります。
NAGCの定義とWISCで見える能力の凸凹
2Eギフテッドの診断や特性の把握には、WISC(ウィスク)という知能検査が使われることが多いです。言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度という複数の指標を細かく測定できるのが特徴で、特定の指標だけが極端に高い、あるいは低いという能力の凸凹が見えやすくなります。この凸凹の大きさが、2Eギフテッドの子どもたちが学校生活でつまずきやすい一因になっているとされています。「うちの子はギフテッドかもしれない」と感じたとしても、自己判断で決めつけず、専門機関に相談しながら見極めていくことが大切です。
2Eギフテッドの特徴は氷山の水面下に生きづらさが隠れている点
福岡県で2Eギフテッドの子どもや親を支援する「TEAM GIFTED」代表の足立瑛児さんは、2Eギフテッドの特徴を氷山モデルで説明しています。「才能とか高い知性は、彼らの氷山のほんの一角でしかない。水面下では、困難とか生きづらさが複雑な形で隠されている」という言葉のとおり、水面から出ている先端部分だけを見れば、優れた才能を持つ人というポジティブな側面しか見えません。しかし水面下には、周囲との違いによる孤立感や感覚過敏、対人関係の困難、二次的に生じる精神的な不調など、本人が長年抱え続けてきた困難が隠れています。見えている部分と見えていない部分のギャップの大きさこそが、2Eギフテッドの特徴だといえます。
学校生活でつまずきやすい傾向
具体的には、言語や数理、空間認知など特定の分野で年齢や学年の水準を大きく超えた能力を示す一方、対人関係やコミュニケーション、感覚面に強いつまずきを抱えるケースが目立ちます。周囲のペースや反応に合わせることが難しく、学校生活で孤立しやすいうえ、才能の高さゆえに変わっている、生意気だと誤解され、いじめの対象になりやすい側面もあります。発達障害の診断が才能そのものへの評価と結びつかず、周囲から偏見の目で見られることもあれば、二次的にPTSDやパニック障害、自傷行為、希死念慮を抱えるケースも報告されています。乳幼児のころから並外れた注意力や記憶力を示す、覚えの早さが際立っている、感情の反応が人一倍深く過敏である、興味のある分野に強くのめり込む、好奇心が旺盛で大人が困るほど質問を重ねる、集中力が高い一方で文字の読み書きなど特定の作業だけが著しく苦手といった傾向も、よく見られやすい特徴として挙げられます。ただしこれらはあくまで一般的な傾向であり、すべての2Eギフテッドに当てはまるとは限りません。
詩歩子さんの事例、高いIQと複雑性PTSDを抱えながら見つけた居場所
宮崎県で母親と二人で暮らす詩歩子さんは、言語理解の分野で特に高いIQを持つ2Eギフテッドの女性です。短歌や小説を書くことが趣味で、専門誌への掲載や文学賞の受賞歴もあります。「生きることそれは私を許すこと風の中にも光る星がある」という作品を自費出版し、フリーマーケットで販売することが一番の楽しみだそうです。現在は、一般企業で働くことが難しい人向けの福祉サービスであるB型事業所で、WEB記事の執筆を担当しています。
母親の睦子さんは、幼いころの詩歩子さんについて大人しくて育てやすかったとしながらも、他の子とはどこか違うと感じてきたと振り返っています。感覚的に過敏で、同じ洋服しか着ないといった様子に違和感を覚え、保健所に相談したこともありましたが、シングルマザーだから愛情が足りないからでしょうと取り合ってもらえなかったといいます。
詩歩子さんの人生が大きく変わったのは小学校時代でした。成績はトップクラスでしたが、周囲に話を合わせたり友達の反応を理解したりすることが難しく、次第に仲間はずれにされ、激しいいじめを受けるようになりました。4年生のときにいじめから逃れるため山村留学を決意し、そこで初めて専門医の診断を受けています。母・睦子さんは、検査を受けたら発達障害とわかった、アスペルガー症候群で相当な高IQの子ですと、励ましなのか呪いなのかわからない説明を受けたと当時を振り返ります。詩歩子さん自身は、当初発達障害という言葉の意味を理解できず、そのくらいのIQを持っているんだ、逆にすごいじゃないかと感じたそうです。なお、以前アスペルガー症候群や広汎性発達障害と呼ばれていたものは、現在ではASD(自閉スペクトラム症)として総称されています。
診断を受けた20年以上前は、少年事件と発達障害を結びつけて報じる記事が多く見られた時代でした。今では両者の間に因果関係がないことは明確に否定されていますが、当時詩歩子さんを受け入れていた里親はこの診断に過剰な反応を示し、事件の加害者が発達障害だった、お前も人を殺すからうちの子を殺さないでくれと言われたといいます。この出来事以降、詩歩子さんは凶悪事件と発達障害について書かれた本を読みあさるようになり、自分もいつか人を殺すのではないかという不安に取りつかれ、自傷行為を繰り返すようになりました。複雑性PTSDを発症し、高校1年生のときには精神科病院に入院しています。
23歳まで入退院を繰り返した詩歩子さんの転機となったのは、鹿児島県にある出版社ラグーナ出版との出会いでした。ラグーナ出版は、精神障害のある人が働くことを通じて回復を目指す就労支援サービスを行っています。詩歩子さんを担当した精神保健福祉士の河野豊さんは、3年ほど宮崎から通ってもらいながら、とにかくここに来ることを目標にしたと、根気強い支援の様子を語っています。3年間にわたり詩や小説の創作と発表を続ける中で、パニック障害や自殺願望にも少しずつ対応できるようになっていったそうです。ラグーナ出版の川畑善博社長は、詩歩子さんの強みは書くことであり、そこを最大限生かしてほしい、働く場所と地域の中で役割がある居場所が必要だと語っています。
足立瑛児さんの事例、ディスレクシアとイギリス留学で得た読み書きの力
「TEAM GIFTED」の足立瑛児さんも、自身が2Eギフテッドの当事者です。6歳のとき、文字の読み書きに困難があるディスレクシアとアスペルガー症候群の診断を受けました。自分の名前も書けずいじめられ、死にたいとまで追い詰められた経験を持っています。
小学4年生のとき、発達障害の専門プログラムを持つイギリスの学校に留学し、あの学校を超える学校を見ていないと振り返るほどの環境で学びました。その学校には、支援が必要な子どものための感覚統合の部屋があります。感覚統合とは、脳への刺激をうまく処理できるようにするための訓練のことで、動物型のクリップで細かいものを挟んだままバランス感覚を養ったり、マグネットをつけた魚を釣り上げる遊びを通じて竿をゆっくり動かす練習をしたりするものです。こうした訓練で体の動きをコントロールできるようになると、言語機能も高まっていくといいます。
瑛児さんは留学先で、まず感覚統合の訓練を1か月ほど集中的に受けたのち、文字の読み書きを学んでいきました。母親の陽子さんは、最初の夏休みに帰国した瑛児さんが家の中で英語の本を持ち歩いていた様子を見て、読み書きをできなかった子が読み書きを手に入れたら人並みの勉強ができるようになる、この子は勉強したかったんだなと思ったと振り返っています。8年前、20歳で帰国した瑛児さんは、海外で学んだ専門知識を子どもたちのカウンセリングに活かし、母・陽子さんとともにTEAM GIFTEDの活動を続けています。瑛児さん自身、僕もKY(空気が読めない)と言われて育ってきた、僕はそれがまだ恐怖になっていると、当事者としての率直な思いを語っています。
日本の支援は2022年9月26日の有識者会議提言を境に動き出した
ギフテッドの子どもたちをめぐっては、これまで特異な才能だけがクローズアップされる傾向が強くありました。しかし文部科学省の有識者会議は、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議として2022年9月26日に提言をまとめ、才能や特性ゆえに学習や学校生活の上で困難を抱えることがあるとして、こうした子どもたちへの支援の必要性を打ち出しました。基本的な考え方として、特異な才能のある子どもだけを選抜して特別なプログラムを与えるのではなく、あくまで多様性の一つとして認めたうえで、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させる取り組みの一環として支援すべきという方向性が示されています。何らかの特定の基準によって才能を定義することはしないという原則のもと、学校現場が分断されたり才能のある子どもが差別の対象になったりしないよう留意する必要があると明記されている点は重要です。
具体的な施策としては、学校・家庭・地域社会に向けた周知や研修の促進、学校における環境の充実、学校内外での特性等の把握の支援、大学や民間・NPO、教育支援センターといった学校外機関の情報集約と提供が挙げられており、才能のある子どもにどのような指導・支援が有効なのかを検証する実証研究にも取り組むべきだとされました。詩歩子さんや足立瑛児さんが子ども時代に経験したような、学校現場での孤立やいじめを防ぐには、こうした周知・研修や環境整備が今後どこまで学校現場に浸透していくかが一つの鍵になります。
学齢期を過ぎると支援の枠組みが手薄になる現実
「TEAM GIFTED」の足立陽子代表は、2Eギフテッドの子どもたちについて、ルーティンワークや毎日決まったところで決まったことをするのが定型発達の子以上に必要だと指摘したうえで、それをできる先生がいないから、そういう先生たちが日本に生まれてきてもらわないと困ると、教育現場での専門的な理解と対応の不足を訴えています。足立陽子代表は、通常の学校になじめない子どもたちを、適切な受け入れ環境のある国内外の学校に50人以上送り出してきた実績を持ち、東京、熊本、福岡、茨城など全国各地の支援校の立ち上げにも参画してきました。
発達障害のある子どもを放課後に受け入れるサービスを始めた医療法人の三野原信二副理事長は、小・中・高校に入ったら特別学級やフリースクール、放課後デイサービスを受けることができるが、18歳になるとその後がない、発達障害は一生の問題であり、学生時代だけの問題でも働いている人たちの問題でもない、ずっと続いていく問題と認識しないとしっかりした支援はできないと語っています。学齢期には学校や教育委員会を窓口とした一定の支援制度が存在する一方、成人後の就労や生活を継続的に支える枠組みはまだ十分に整っていないのが実情です。詩歩子さんが鹿児島のラグーナ出版で働きながら回復の道を歩んできたように、成人後の2Eギフテッドにとっては、福祉的な就労支援や居場所づくりが、教育の場に代わる重要な支えとなっています。
2Eギフテッドの相談窓口はTEAM GIFTEDなど民間4団体と公的機関が軸
2Eギフテッドやその可能性がある子どもについて、才能をどう伸ばせばいいのか、学校生活のつまずきにどう向き合えばいいのかと悩んだとき、相談できる窓口はいくつかあります。いずれも実際に情報発信や相談支援を行っている団体で、具体的な相談を検討する際は、各団体の公式サイトで最新の受付方法や対応地域を確認したうえで連絡することをおすすめします。
| 窓口名 | 拠点・形態 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| TEAM GIFTED | 福岡県、対面・オンライン・電話 | 2008年設立、足立陽子代表と当事者の足立瑛児さんが中心、全国の支援校立ち上げにも参画 |
| ラグーナ出版 | 鹿児島県 | 精神障害のある人の就労支援サービス、創作活動を通じた回復支援 |
| ギフテッド応援隊 | 全国、SNS中心のコミュニティ | 2017年1月設立、保護者同士の交流、講演会や勉強会の企画運営 |
| 京都教育大学 学びサポート室 | 京都府、大学主体の相談支援事業 | ギフテッドと2Eを対象に教育環境の実現を目指す、学校現場との連携が前提 |
これらの民間団体・教育機関に加えて、通っている学校のスクールカウンセラーや、居住する自治体の教育委員会、発達障害者支援センターといった既存の公的な相談窓口も、最初に相談する入り口として検討する価値があります。
発達障害者支援センターが最初の入り口として使いやすい理由
発達障害者支援センターは、年齢を問わず本人や家族がさまざまな相談をできる公的な専門機関であり、地域内でギフテッドや2Eに詳しい医療機関や専門家を探したい場合に、まず問い合わせてみる窓口として実務上よく用いられています。才能はありそうだが学校生活でのつまずきが大きいといった漠然とした違和感の段階でも相談できるため、特定の団体に絞り込む前の入り口として活用しやすいのが利点です。学校生活での困難と特定分野での突出した能力が同時に見られる場合には、一つの窓口だけで判断せず、教育・医療・福祉それぞれの専門家に横断的に相談しながら、子どもに合った環境を探っていくことが大切です。
同じ悩みを抱える人とのつながりも、支援の一つの形になります。詩歩子さんは、全国各地で開催される文学作品の展示即売会「文学フリマ」を通じて、他の出品者たちとのつながりを築いてきました。母・睦子さんが今最も心配しているのは、詩歩子さんが今後、自立した生活を送れるかということです。娘を前にしてあまり言えないけれど、たまには母親を休みたいときもある、でも自分の人生ではその選択肢はなかったという言葉には、長年にわたり一人で娘を支え続けてきた母親の切実な思いがにじみます。同じような生きづらさを経験してきた人とつながりたいという思いから、詩歩子さんは母親とともにTEAM GIFTEDを訪ね、足立瑛児さんとの対話の中で、日本ではギフテッド教育がほぼ無い状態であり、高IQの子どもに対する知識が不足していると語っています。同じようにPTSDに悩む人へのメッセージを求められた詩歩子さんは、生きているだけで偉いんだよと答えました。
2Eギフテッドという言葉は才能と困難を切り離さずに使うべき概念
「2Eギフテッド」という言葉は、あくまで本人の特性や困難を理解し、必要な支援につなげるための概念であり、周囲の人が誰かに安易に当てはめてよいレッテルではありません。詩歩子さんの事例で見たように、発達障害の診断が凶悪事件と結びつけて語られたり、愛情不足といった根拠のない決めつけに使われたりした過去があります。高いIQや突出した才能があるからといって困難を軽視してよい理由にはならず、逆に発達障害の診断があるからといって、その人の才能や可能性を狭めてよい理由にもなりません。才能と困難のどちらか一方だけを切り取って評価するのではなく、その両方が同じ一人の人間の中に同居しているという前提に立つことが欠かせません。周囲がこの前提を共有できるかどうかが、本人が安心して自分の力を発揮できる環境をつくれるかどうかを大きく左右します。
2Eギフテッドの理解は「生きているだけで偉い」という言葉から始まる
2Eギフテッドとは、特定の分野で並外れた才能を持ちながら、同時に発達障害の特性によって学習や生活面での困難を抱える人を指す言葉です。優れた才能は氷山の一角にすぎず、水面下には周囲との違いによる孤立や感覚過敏、対人関係の困難、そこから生じる二次的な精神的な苦しみが隠れていることがあります。詩歩子さんや足立瑛児さんの歩みが示すように、2Eギフテッドが抱える生きづらさは周囲の無理解や偏見によって深刻化することも少なくありません。一方で、専門的な理解を持つ支援者や、才能を生かせる居場所との出会いが、回復や自己肯定感の獲得につながっていくこともまた事実です。
文部科学省の有識者会議による提言をきっかけに、日本でも2Eギフテッドへの支援の必要性が少しずつ認識され始めていますが、学齢期を過ぎた後の継続的な支援体制はまだ発展途上にあります。発達障害は一生の問題だという三野原信二副理事長の言葉のとおり、学校だけでなく、就労や地域生活を含めた長期的な視点での支援の枠組みづくりが、今後さらに求められていくでしょう。
もし身近に、突出した才能を持ちながら学校生活や対人関係に強いつまずきを抱えている子どもや大人がいたら、その様子を変わっているの一言で片付けるのではなく、2Eギフテッドという視点から捉え直してみることも一つの手がかりになります。そのうえで、TEAM GIFTEDやギフテッド応援隊、教育機関の相談窓口など、専門的な知見を持つ相談先につながることが、本人と家族双方にとって、生きづらさを和らげる第一歩になるはずです。詩歩子さんが語った生きているだけで偉いんだよという言葉には、才能の有無や診断名以前に、まず本人が安心して存在できる居場所が必要なのだという実感が込められています。学校、家庭、医療、福祉、そして同じ立場の当事者同士のつながりが、それぞれの持ち場でその土台を少しずつ支えていくことが、これから求められていきます。








