訪問入浴介護は、看護職員と介護職員が自宅を訪問し、専用の簡易浴槽を使って入浴の介護を行う介護保険サービスです。対象は原則として要介護1から要介護5の認定を受けている人で、料金は1回あたり1,266単位、自己負担1割の地域では1,266円程度が目安になります。要支援1・2の人は「介護予防訪問入浴介護」という別区分が対象で、利用条件や単位数も異なります。この記事では、訪問入浴介護を実際に検討している人に向けて、利用条件、料金の内訳、加算による変動、他サービスとの違い、事業所を選ぶ際の確認点までをまとめました。

訪問入浴介護の対象は要介護1から5で主治医の入浴許可が必須です
訪問入浴介護を利用できるのは、要介護1から要介護5の認定を受けている人です。とくに、寝たきりの状態にある人や、身体の状態が重く自宅の浴槽やデイサービスの入浴設備を使えない人が主な対象になります。
利用条件として、主治医から入浴の許可が出ていることが前提です。持病や術後の状態、感染症の有無によっては、入浴そのものが身体への負担になる場合があるため、事前に医師の判断が必要になります。サービス当日も、看護職員が体温や血圧、脈拍などのバイタルサインを確認し、その日の体調によって入浴できるかどうかを判断します。体調が優れないと判断された場合は、無理に全身浴を行わず、部分浴や清拭に切り替えます。
寝たきりで自力での起き上がりが難しい人、自宅の浴室が狭く介助スペースを確保できない人、自宅の浴槽をまたぐことや浴槽内での座位保持が難しい人、経管栄養や気管切開などの医療的なケアを受けながら生活している人、褥瘡があり皮膚状態の管理をしながら入浴したい人は、訪問入浴介護の利用条件に当てはまりやすい層といえます。
要支援1・2は浴室なしや感染症時のみ介護予防訪問入浴介護を使えます
要支援1・2の認定を受けている人は、要介護者向けの訪問入浴介護ではなく「介護予防訪問入浴介護」が対象サービスになります。ここで注意したいのは、要支援の人が使える範囲が要介護の人よりも狭く限定されている点です。
介護予防訪問入浴介護を利用できるのは、自宅に浴室が設置されていない場合や、感染症などの理由でデイサービスの入浴設備といった他の入浴手段を利用することが困難な場合に限られます。つまり要支援の人にとって訪問入浴介護は、他の方法で入浴を確保できないときに使う選択肢という位置づけです。スタッフの体制も、看護職員1名と介護職員1名の合計2名で行われ、看護職員1名以上と介護職員2名以上の合計3名以上が基本になる要介護者向けサービスとは人員配置が異なります。
訪問入浴介護の基本料金は1回1,266単位で1割負担なら1,266円です
介護保険サービスの料金は、サービスごとに決まっている単位数に、地域ごとの1単位あたりの単価をかけて算出します。1単位はおおむね10円が基準ですが、人件費の地域差を反映して、都市部では10円を超える地域もあります。
要介護者向けの訪問入浴介護は、基本報酬が1回あたり1,266単位です。1単位10円の地域であれば1回の総費用は12,660円になり、自己負担が1割の人は1,266円、2割の人は2,532円、3割の人は3,798円が目安になります。自己負担割合は本人の所得水準によって1割から3割の間で決まります。
要支援者向けの介護予防訪問入浴介護は、2024年度の介護報酬改定で基本報酬が856単位/回に設定されました。同じく1単位10円の地域であれば費用総額は8,560円で、自己負担1割の人は856円が目安です。要介護者向けと要支援者向けとで単位数に差があるのは、人員配置やサービス提供時間の違いが反映されているためです。
部分浴・清拭に切り替わると単位数は10%減り自己負担も下がります
訪問入浴介護は全身浴を基本としますが、利用者の体調によっては部分浴や清拭に切り替えることがあります。この場合、基本報酬から10%の減算が行われる仕組みになっています。
具体的には、介護予防訪問入浴介護で清拭を行った場合の単位数は767単位/回になります。要介護者向けの訪問入浴介護でも同様の考え方で減算が適用されるため、体調によってその日の入浴内容が変わると、請求される料金もその回ごとに変わることになります。毎回同じ金額になるとは限らない点は、家計の見通しを立てるうえで押さえておきたいところです。
サービス提供体制強化加算は最大44単位、認知症専門ケア加算も料金に上乗せされます
訪問入浴介護の料金には、基本報酬に加えて事業所の体制やケア内容に応じた加算が上乗せされる場合があります。サービス提供体制強化加算は、介護職員のうち介護福祉士の資格を持つ人の割合が高い、あるいは勤続年数の長い介護福祉士の割合が一定基準を満たしている事業所が算定できる加算で、要件を満たすと1回あたり44単位が上乗せされます。
認知症専門ケア加算は、認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上の利用者が一定割合以上を占め、認知症ケアに関する研修計画の作成や実施といった要件を満たす事業所が算定する加算です。認知症への配慮を重視したい場合、こうした加算を取得している事業所かどうかは選定の目安になります。
このほか、中山間地域などに居住する利用者へのサービス提供に対する特別地域訪問入浴介護加算や、介護職員の賃金改善を目的とした処遇改善加算も、事業所によって適用状況が異なります。契約前に重要事項説明書でどの加算が適用されているかを確認しておくと、想定していた金額とのずれを防げます。
週1回利用の目安は月5千円台、週2回では1万円台前半です
訪問入浴介護の利用回数そのものに法律上の上限はありません。ただし、要介護度ごとに設定されている介護保険の区分支給限度基準額の範囲内で、ケアマネジャーと相談しながら回数を決めていくのが実務上の進め方です。訪問入浴介護だけを頻繁に利用すると、訪問介護や福祉用具貸与など他の在宅サービスに使える限度額を圧迫してしまうため、週1回から週2回程度に収めるケースが多く見られます。
費用の目安として、1回1,266単位、自己負担1割、1単位10円の地域を前提にすると、週1回(月4〜5回)の利用では自己負担がおよそ5千円台から6千円台になります。週2回(月8〜9回)に増やすと、単純計算でその倍近い1万円台前半に達する見込みです。実際の金額は地域単価や加算の有無によって変わるため、正確な見積もりはケアマネジャーや事業所に確認するのが確実です。厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システムには、要介護度とサービスの種類、利用回数を入力して月額費用の概算を試算できるページも用意されています。
自己負担の月間上限は非課税世帯で15,000円から24,600円です
介護保険サービスの1か月あたりの自己負担合計額が、所得に応じた上限額を超えた場合、超過分は高額介護サービス費として払い戻されます。上限額は世帯の所得状況によって段階的に設定されており、市区町村民税が世帯全員非課税の場合は月額24,600円、そのうち前年の合計所得金額と公的年金等の収入額の合計が80万円以下の人は、個人としての上限が月額15,000円になります。現役並みの所得がある課税世帯では、課税所得の水準に応じて月額44,400円から140,100円程度まで上限額が上がります。
訪問入浴介護は他の在宅サービスに比べて1回あたりの自己負担額が高めなので、複数のサービスを組み合わせて利用する月は、合計額がこの上限に近づくことがあります。上限を超えた分は申請によって払い戻されるため、市区町村の介護保険担当窓口やケアマネジャーに確認し、申請を忘れないようにすることが負担軽減につながります。福祉用具の購入費や住宅改修費、施設利用時の居住費・食費は、この制度の対象に含まれません。
2024年度改定で看取り連携体制加算(64単位)が新設されました
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、訪問入浴介護にいくつかの見直しが加えられました。ひとつは看取り連携体制加算の新設です。人生の最終段階にある利用者に対して、主治医や訪問看護事業所と連携しながら本人の意向を尊重した入浴介護を提供できる体制を整えている事業所を評価する加算で、利用者が亡くなった日および死亡日以前30日以内に限り、1回につき64単位が算定されます。看取り期であっても身体を清潔に保ち、少しでも快適に過ごしてもらうためのケアを後押しする仕組みです。
もうひとつは業務継続計画(BCP)に関する見直しです。感染症や災害が起きた場合にもサービスを継続できるよう、対応方針をまとめたBCPを未策定の事業所は基本報酬が減算されることになりました。感染症のまん延防止のための指針の整備や非常災害時の具体的な計画の策定については、2025年3月31日までを経過措置期間として減算が猶予されていましたが、その期間はすでに終了しており、現在はBCPを未策定の事業所であれば減算の対象になります。事業所を選ぶ際は、こうした感染症・災害対応の体制が整っているかどうかも確認しておきたいポイントです。
訪問入浴介護の利用者の約9割は要介護3以上の中重度者です
訪問入浴介護は、2000年(平成12年)4月に始まった介護保険制度のもとで整備された居宅サービスのひとつです。制度創設以前は、市区町村がサービス内容を決める措置制度のもとで在宅福祉が進められていましたが、急速な高齢化の進行や寝たきり高齢者の増加、核家族化による家族の介護力低下を背景に、本人や家族がサービスを選べる仕組みへと移行しました。この転換により、民間事業者の参入も進み、訪問入浴介護のような専門性の高いサービスが全国に広がる土台ができました。
現在、訪問入浴介護の利用者のうち約90%は要介護3以上の中重度者が占めているとされています。この数字からも分かるとおり、訪問入浴介護は軽度者向けというよりも、寝たきりに近い状態や、自宅の浴槽での入浴が実質的に難しい重度の要介護者を支える役割を担っているサービスです。高齢化が進むなかで在宅介護を選ぶ世帯が増えるほど、こうした中重度者向けの入浴支援の需要は今後も一定の水準で続くと見込まれています。
訪問介護・デイサービスの入浴介助との違いは看護職員を含む3人体制です
入浴に関する介護保険サービスには、訪問入浴介護のほかに、訪問介護の身体介護としての入浴介助と、デイサービスでの入浴介助があります。それぞれの違いを整理すると、次のようになります。
| サービス | 実施場所 | スタッフ体制 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 訪問入浴介護 | 自宅(専用の簡易浴槽) | 看護職員1名以上+介護職員2名以上(計3名以上) | 寝たきりで自宅の浴槽が使えない人 |
| 訪問介護の入浴介助 | 自宅(既存の浴槽) | ホームヘルパー1名 | ある程度自力で浴槽をまたげる人 |
| デイサービスの入浴介助 | 施設(特殊浴槽・個浴) | 施設の介護職員・看護職員 | 外出できる身体状況の人 |
訪問介護の身体介護(60分以上90分未満)を1割負担で利用した場合の自己負担額は500円台程度とされており、訪問入浴介護に比べると負担は軽くなります。一方でデイサービスは、送迎が必要になる分、外出できるだけの身体状況が求められますが、入浴以外にもレクリエーションや機能訓練、食事などを一体的に受けられる点が特徴です。訪問入浴介護は、看護職員を含む3名体制で自宅にいながら専用の浴槽を使える点が最大の違いで、寝たきりであっても住み慣れた居室で医療的な視点を持ったスタッフの見守りのもとに入浴できます。
訪問入浴介護のメリットは自宅で全身浴に近い入浴ができる点です
訪問入浴介護の利点は、自宅にいながら安全に全身浴に近い入浴ができることです。身体を清潔に保つことは感染症予防や皮膚トラブルの防止につながり、湯船につかることによる血行促進も期待できます。人と接する機会が生まれることで気分転換になり、生活の質の維持にもつながります。
看護職員が同行するため、入浴前後のバイタルチェックや体調管理が行われる点も安心材料です。持病がある人や体調が不安定な人でも比較的落ち着いて利用しやすく、褥瘡がある場合は皮膚の状態に応じたケアや、必要な福祉用具の提案を受けられることもあります。介護保険が適用されるサービスなので、所得に応じた自己負担割合でサービスを受けられる点も経済的な利点です。
駐車スペースの確保と医療行為への非対応が訪問入浴介護の注意点です
一方で、いくつか注意しておきたい点もあります。料金面では、訪問介護の入浴介助と比べて1回あたりの自己負担額が高くなる傾向があります。1割負担でも1,000円台になることが多く、利用頻度を増やすほど月々の負担も大きくなるため、ケアプラン全体の中でどの程度の頻度にするかを検討する必要があります。
浴槽を積んだ車両を自宅前や近くに駐車するスペースが必要になる点も見落としがちです。集合住宅や道路の狭い地域では、駐車の可否を事前に事業所や管理会社に確認しておく必要があります。また、いつもと違う簡易浴槽や複数のスタッフが自宅に出入りする状況に対して、利用者本人が緊張や不安、時には入浴拒否といった反応を示すこともあります。とくに認知症のある人の場合は、初回利用時に見慣れないスタッフや機材に戸惑うケースが見られるため、事業所側の声かけや家族の付き添いで安心感を持ってもらう工夫が求められます。
訪問入浴介護のスタッフが対応できるのはあくまで入浴に関する介護で、点滴の管理や医療処置といった医療行為そのものが必要な場合は、別途訪問看護サービスを組み合わせる必要があります。看護職員ができることとできないことを事前に確認し、必要に応じて訪問診療のクリニックや訪問看護ステーションと連携している事業所を選ぶと、体調急変時にも落ち着いて対応してもらいやすくなります。
利用開始までの流れはケアマネジャーへの相談から始まります
訪問入浴介護を利用するまでの流れは、まず市区町村の窓口で要介護認定を申請するところから始まります。認定調査や主治医意見書をもとに要介護度が判定され、要介護1以上、あるいは要支援1・2の認定を受けます。
要介護の認定を受けた場合は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談し、ケアプランに訪問入浴介護を組み込んでもらいます。要支援の認定を受けた場合は、地域包括支援センターに相談し、介護予防ケアプランを作成してもらう流れになります。ケアプランが整ったら、希望する訪問入浴介護事業所と利用契約を結びます。契約時には、料金やキャンセル規定、緊急時の対応方針について説明を受けます。
契約後は、事業所の看護職員が事前訪問を行い、居室の広さや浴槽を設置するスペース、給排水の確保方法を確認したうえで初回のサービス提供日を決めます。利用当日は、看護職員がバイタルチェックを行ったあと、介護職員と協力して浴槽を居室に設置し入浴介助を行い、入浴後は水分補給や着替えの介助、体調の最終確認をしてサービス記録に署名や押印をして終了です。当日必要なものは、入浴後の着替えとサービス記録用の印鑑が基本ですが、事業所によってはバスタオルや替えのシーツの準備を求められることもあるため、契約時に確認しておくと安心です。
事業所選びは看護職員の配置と感染症対策の確認がポイントです
訪問入浴介護の事業所を選ぶ際は、料金や加算の内容に加えて、次のような点も確認しておくと安心です。
看護職員の配置状況や医療機関との連携体制は、体調が変化しやすい人にとって重要な確認事項です。緊急時にどのような連絡・対応体制が取られているかを事前に把握しておきましょう。感染症対策の実施状況も見ておきたい点で、訪問入浴介護は複数の利用者の自宅を回るサービスであるため、浴槽やタオル、リネン類の消毒・交換方法など、対策の手順が明確な事業所を選ぶことが望まれます。
福祉用具のレンタルなど関連サービスとの連携があれば、褥瘡予防のマットレスといった、入浴時の身体状態に合わせた福祉用具の提案を受けやすくなり、入浴介護と日常のケアを一体的に組み立てられます。体調不良などで急に入浴が難しくなった場合の対応方法や、キャンセル料の有無についても、契約前に確認しておくとトラブルを避けやすくなります。
訪問入浴介護は、要介護1から5の人(要支援1・2の人は浴室がない、または感染症などの事情がある場合に限り介護予防訪問入浴介護)を対象に、看護職員を含むスタッフが自宅を訪問して専用の浴槽で入浴介護を行う介護保険サービスです。基本料金は要介護者向けで1回1,266単位、要支援者向けで1回856単位となっており、自己負担割合や部分浴・清拭への切り替え、各種加算の有無によって実際の支払額が変わります。自宅の浴室では入浴が難しい人にとって、身体の清潔保持だけでなく心身のリフレッシュにもつながるサービスなので、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、料金体系と医療連携の体制が整った事業所を選ぶところから検討を始めるとよいでしょう。








