介護保険と障害福祉サービスの65歳併用、認められる条件

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介護保険と障害福祉サービスは、65歳を境に利用のルールが切り替わります。原則は介護保険サービスが優先されますが、同行援護や就労継続支援のように介護保険にないサービスは65歳を過ぎても障害福祉サービスとして使い続けられます。支給量が介護保険だけでは足りない場合や、身近に介護保険の事業所がない場合も、市町村の判断で障害福祉サービスの利用や併用が認められます。この記事では、2026年09月09日時点の制度内容にもとづいて、併用が認められる条件と65歳到達前後の手続きの流れ、利用者負担を軽くする制度までをまとめます。

目次

介護保険優先の原則は絶対ではなく市町村が個別に判断する

障害者総合支援法第7条は、介護保険の給付を受けられる場合、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを優先して利用しなければならないと定めています。これが「介護保険優先の原則」です。65歳になって要介護認定や要支援認定を受けると、それまで障害福祉サービスとして使っていた居宅介護や生活介護、短期入所のうち介護保険に相当するものは、訪問介護や通所介護、短期入所生活介護へと切り替わっていきます。

この仕組みは、40歳以上の国民が保険料を出し合って高齢期の介護を支える社会保険制度の枠組みに、65歳以降のサービス利用を合わせる考え方にもとづいています。とはいえ「優先」は「一律の強制」ではありません。厚生労働省は令和5年6月30日、社会・援護局障害保健福祉部企画課の事務連絡で、自立支援給付と介護保険制度の適用関係について留意事項と運用の具体例を改めて示し、機械的な認定を避けるよう自治体に求めています。窓口での説明が原則論だけで終わっているように感じたときは、この事務連絡の存在を踏まえて、個別事情を聞いてもらえないか相談してみる価値があります。

65歳問題は介護保険と障害福祉、二つの制度の歴史から生まれた

介護保険優先の原則がなぜ存在するのかは、二つの制度の成り立ちを見るとつかみやすくなります。介護保険法は1997年に成立し、2000年4月に施行されました。高齢化にともなう社会保障費の増大や、核家族化と介護する家族自身の高齢化によって家庭内だけでは介護を支えきれなくなったことを背景に、介護を地域や社会全体で支える仕組みとして始まった制度です。

障害者福祉の分野では、この介護保険の枠組みを参考にしながら、2003年4月に支援費制度が始まり、2006年4月には障害者自立支援法が施行されました。ところがこの法律が導入した応益負担の原則、つまりサービス量に応じて利用者が負担する仕組みが障害者や家族の生活を圧迫し、2008年10月には違憲訴訟が起こされています。2010年1月に国と原告団のあいだで基本合意が成立し、障害者自立支援法を廃止して新法を施行することが確認され、2013年に障害者総合支援法の施行という形で一つの到達点を迎えました。

このように、障害福祉制度は介護保険制度を後追いする形で整備が進んできた経緯があります。65歳到達時に障害福祉サービスから介護保険サービスへ切り替わる仕組みも、この二つの制度が別々の法律として組み立てられてきたことの延長線上にあります。負担のあり方をめぐる過去の議論を踏まえ、2018年度には利用者負担の増加を償還払いで抑える高額障害福祉サービス等給付費などの救済措置が設けられました。制度の背景にこうした経緯があることを知っておくと、窓口での説明もより理解しやすくなります。

障害福祉サービスの継続利用や併用が認められる主なケース

介護保険優先の原則があっても、次のような事情があれば障害福祉サービスの継続利用や、介護保険サービスとの併用が認められます。

同行援護、行動援護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助といった、介護保険に同等のサービス類型がないものは、65歳を過ぎても障害福祉サービスとして利用を続けられます。重度訪問介護のうち外出時の移動介護など、介護保険の訪問介護にはない機能を含む部分も同様です。

介護保険の支給限度基準額の範囲内では、それまでと同水準のサービス量を確保できないケースもあります。この場合、市町村が状況を確認したうえで、不足分について障害福祉サービスの上乗せ支給を認めることがあります。身近な地域に利用できる介護保険サービスの事業所がない、または定員に空きがないといった事情がある場合も、障害福祉サービスの利用が認められます。

要介護認定の結果が非該当になった場合は、そもそも介護保険サービスを使えないため、引き続き障害福祉サービスの支給決定を受けることになります。また、障害支援区分の認定調査の結果からみて、要介護認定の結果だけでは本人の障害の状態を十分に説明できないと認められる特段の事情がある場合も、個別の判断で障害福祉サービスの利用が認められます。

これらはすべて、市町村の窓口が本人の心身の状況や介護者の状況、居住環境などを総合的に見て判断するものです。65歳が近づいたら、担当のケースワーカーや相談支援専門員、市町村の障害福祉担当窓口へ早めに相談しておくと、判断の材料をそろえやすくなります。

65歳到達前後の手続きは3か月前から動き出す

介護保険の申請は、65歳の誕生日のおよそ3か月前から始められます。多くの自治体では、65歳到達前に介護保険サービスへの移行案内が郵送で届きます。案内が届いたら、地域包括支援センターやこれまでの相談支援専門員、サービス提供事業所の担当者に相談し、どのサービスが介護保険に切り替わり、どのサービスが障害福祉サービスとして残るのかを整理します。

続いて市町村の介護保険担当窓口へ要介護認定・要支援認定を申請します。申請には主治医の意見書が必要になるため、かかりつけ医への相談も早めに済ませておきたいところです。申請後は認定調査員による訪問調査が行われますが、この調査項目や判定基準は障害支援区分の認定調査とは異なります。障害支援区分で重い判定を受けていた人が、要介護認定では想定より軽い区分になることもあるため、結果を見てから支援量の過不足を確認する姿勢が欠かせません。

認定調査の結果と主治医意見書をもとに一次判定、続いて介護認定審査会による二次判定が行われ、要支援1・2、要介護1から5、または非該当のいずれかに区分されます。申請から結果通知までは、通常1か月程度かかります。認定を受けたら、居宅介護支援事業所のケアマネジャーを選び、ケアプランの作成を依頼します。要支援と判定された場合は、地域包括支援センターが介護予防ケアプランの作成を担います。

障害福祉サービス固有のサービスを継続する場合は、サービス等利用計画の見直しを行い、相談支援専門員と連携しながら支給決定の手続きを進めます。介護保険と障害福祉サービスを併用する場合は、ケアマネジャーと相談支援専門員がそれぞれの計画に矛盾が出ないよう調整する必要があります。実務では64歳ごろから相談支援専門員が介護保険制度の説明を始め、65歳が近づいた段階でケアマネジャーとの顔合わせを設けるという進め方がとられることが多く、65歳以降もケアマネジャーと相談支援専門員の両方が関わり続ける体制がとられる場合があります。相談支援専門員は本人の意思決定を支える伴走型の関わりを大事にし、ケアマネジャーは日常生活動作の維持や改善という具体的な介護ニーズへの対応を重視する傾向があるため、両者の視点をすり合わせることが65歳移行後の生活の安定につながります。

ここで頼りになる相談支援専門員は、指定された業務の実務経験を積んだうえで相談支援従業者初任者研修を修了した人が担う職種で、サービス等利用計画の作成とモニタリングのほか、施設や病院からの地域生活への移行支援なども担っています。日ごろから利用者本人や家族と面談を重ね、生活の現状や意向を把握してきた立場だからこそ、65歳移行のタイミングでもケアマネジャーとの橋渡し役として機能しやすいという特徴があります。

なお、40歳から64歳までの人でも、がん末期や脳血管疾患など16種類の特定疾病により要介護・要支援状態になった場合は、65歳を待たずに介護保険サービスが優先されるルールが適用されます。これは通称「みなし2号」と呼ばれ、特定疾病に該当する持病がある人は、40歳以上65歳未満であっても早めに主治医や市町村窓口へ相談しておく必要があります。

共同生活援助やグループホームは65歳を過ぎても住み続けられる

同行援護や行動援護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型・B型は、介護保険に同等のサービスがないため、65歳以降も障害福祉サービスとして利用を続けられます。移動支援も、地域生活支援事業として多くの自治体で継続利用が可能とされています。

共同生活援助、いわゆるグループホームについては、65歳に達する前から入居し継続して利用してきた人であれば、65歳を過ぎても同じグループホームに住み続けられる取扱いが一般的です。介護保険の認知症対応型共同生活介護は対象者が認知症の高齢者に限られるなど要件が異なるため、単純に置き換えられるサービスではないという理由からです。ただし、加齢に伴って心身の状態が変化した場合には、介護保険サービスの利用や、より支援体制の整った施設への住み替えが必要になることもあるため、事業所や市町村との相談は継続的に行う必要があります。

これらのサービスをどこまで継続利用できるかは、最終的には各市町村の判断や地域の実情によって差が出る部分でもあるため、担当窓口への個別確認が欠かせません。

利用者負担は高額障害福祉サービス等給付費で軽くなる

65歳になり介護保険サービスへ移行すると、それまで障害福祉サービスで負担がなかった、または低額だった人でも、介護保険の1割から3割の利用者負担が新たに発生することがあります。この負担増に対応するため、いくつかの軽減制度が用意されています。

高額障害福祉サービス等給付費は、同一世帯における障害福祉サービスと介護保険サービスの利用者負担額の合計が基準額を超えた場合に、超過分が償還される制度です。介護保険の高額介護サービス費が適用されたあとも残る負担額があれば、この給付費の対象になります。

新高額障害福祉サービス等給付費は、対象をさらに絞った制度です。65歳に達する日の前5年間、居宅介護や重度訪問介護、生活介護、短期入所など介護保険相当の障害福祉サービスを1種類でも利用していた低所得または生活保護受給の人が対象で、65歳到達後に利用する障害福祉相当の介護保険サービスの利用者負担額が償還払いで戻ってきます。この制度により、要件を満たす低所得の高齢障害者は、介護保険移行後も実質的な自己負担がほぼ生じない仕組みになっています。ただし償還は自動では行われず、市町村への申請が必要になるため、対象になりそうな人は65歳到達前から障害福祉担当窓口に相談しておくことが望まれます。

低所得で生活保護に近い状況にある人には、境界層該当措置という制度もあります。介護保険の利用者負担や保険料を通常の基準で負担すると生活保護が必要になってしまうものの、より低い基準を適用すれば生活保護に至らずに済む人について、負担を軽くする仕組みです。適用を受けるには、まず福祉事務所へ生活保護の申請を行い、境界層に該当する旨の証明書の交付を受けたうえで、介護保険の担当窓口に提出します。軽減は利用者負担割合の引き下げや負担限度額の引き下げなど段階的に適用され、令和8年8月1日施行の見直しでも基準額の調整が加えられました。65歳移行に伴う負担増が心配な人は、早めに介護保険担当課や福祉事務所へ相談してみてください。

支給量が足りない場合は上乗せ支給で補える

介護保険サービスの支給限度基準額の範囲内では、それまで受けていた障害福祉サービスと同水準のサービス量を確保できない場合があります。このとき、市町村の判断で不足分について障害福祉サービスの支給決定を行う仕組みが上乗せ支給です。区分支給限度基準額の範囲内で訪問介護を利用しても、重度の障害により毎日長時間の身体介護が必要な人にとっては支援量が足りないことがあり、そうした場合に介護保険サービスへ障害福祉サービスとしての居宅介護や重度訪問介護を上乗せして利用できます。

上乗せ支給を受けるには、介護保険サービスの支給限度額をどの程度利用しているか、それでもなお不足する支援量がどれだけあるかを具体的な資料とともに市町村へ説明し、支給決定を受ける必要があります。このプロセスには相談支援専門員やケアマネジャーの協力が欠かせません。

共生型サービスなら同じ事業所を使い続けられる

障害福祉サービスの事業所が介護保険サービスも提供している場合、65歳をまたいでも同じ事業所・同じスタッフから支援を受け続けられる可能性があります。この仕組みは共生型サービスと呼ばれ、2018年度の介護保険法・障害者総合支援法の同時改正により創設されました。障害福祉と介護保険のいずれか一方の指定を受けている事業者が、もう一方の指定を受けやすくする特例で、対象はホームヘルプに相当する訪問系、デイサービスに相当する通所系、ショートステイに相当する短期入所系のサービス類型です。

従来、障害福祉サービス事業所が新たに介護保険の指定を受けるには人員基準や設備基準を別途満たす必要がありましたが、共生型サービスの枠組みでは一方の基準を満たしていれば他方の基準の一部が緩和されるため、事業者にとっても参入のハードルが下がります。65歳が近づいてきたら、通所先や訪問介護の事業所が共生型サービスの指定を受けているかどうかを確認しておくとよいでしょう。顔なじみのスタッフのもとで支援を続けられるかどうかは、生活の安定に直結する部分だからです。

受給者証と被保険者証、両方の更新時期を把握しておく

障害福祉サービスの利用には障害福祉サービス受給者証が、介護保険サービスの利用には介護保険被保険者証が、それぞれ必要です。65歳到達に伴って両方の証を並行して管理する場面も出てきます。

障害福祉サービス受給者証は支給決定の有効期間が定められており、期限のおよそ2から3か月前に市町村から更新案内が届きます。更新申請は有効期間終了の2か月前から可能です。65歳をまたいで障害福祉サービス固有のサービスを続ける場合は、介護保険への移行手続きと並行して受給者証の更新も忘れずに行う必要があります。

介護保険被保険者証にもとづく要介護・要支援認定の有効期間は、新規申請なら原則6か月、区分に変更がない更新なら原則12か月です。更新申請は満了日の60日前から満了日までの間に行えます。認定の有効期間が切れるとサービス利用に支障が出るため、更新時期を把握し、余裕をもって申請することが欠かせません。必要書類はサービスの種類や自治体によって異なるため、更新の際は市町村窓口で最新情報を確認してください。

65歳問題への向き合い方でよくある疑問

65歳になったら今の事業所を必ず変えなければならないのかという疑問には、共生型サービスの指定を受けた事業所であれば変える必要がない場合が多いと答えられます。要介護認定の結果に納得できないときはどうすればよいかという疑問には、介護保険審査会への審査請求という不服申立ての手続きが用意されていると答えられます。同様に、障害福祉サービスの支給決定に納得できない場合も、障害者総合支援法にもとづく審査請求という救済手続きがあります。まずは市町村の窓口で判定の理由を確認し、それでも納得できなければこうした手続きの利用を検討する流れになります。

利用者負担が急に増えて生活が苦しくなりそうだという不安には、高額障害福祉サービス等給付費や新高額障害福祉サービス等給付費、境界層該当措置といった軽減制度の存在を伝えたうえで、市町村の窓口への早めの相談を勧めるのが現実的な対応です。制度は申請主義であり、黙っていても適用されるわけではないからです。

まとめ 65歳到達の3か月前から窓口と一緒に準備を進める

障害福祉サービスを利用してきた人が65歳を迎えるとき、介護保険サービスへの移行は原則ですが、機械的にすべてが切り替わるわけではありません。同行援護や就労継続支援のような障害福祉サービス固有のものは継続利用でき、支給量が足りなければ上乗せ支給、事業所が身近になければ例外的な対応、低所得であれば手厚い負担軽減策と、生活を支えるための仕組みが複数用意されています。

これらの制度の多くは申請しなければ使えません。65歳到達の3か月前を目安に、地域包括支援センターや相談支援専門員、市町村窓口と連携しながら、支援が途切れないよう手続きを進めていくことが何より大切です。制度の詳細は自治体ごとの運用差もあるため、最終的な確認は必ずお住まいの市町村窓口で行ってください。

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