2026年度から日本の子育て支援に大きな変化が訪れます。すべての自治体で実施される「こども誰でも通園制度」は、親の就労状況に関わらず、未就園児を保育所などに預けられる画期的な仕組みです。これまでの保育制度が共働き家庭を主な対象としていたのに対し、専業主婦家庭や育児休業中の家庭も含めて、すべての子育て家庭を支援するという大きな転換を意味しています。2025年11月に改定された最新のQ&Aでは、利用時間の上限が月10時間とされ、保育士不足に対応するための経過措置も設けられることが明らかになりました。この新しい制度は、孤立育児の解消や児童虐待の予防といった社会課題の解決を目指すものですが、一方で保育現場の人材不足という深刻な課題にも直面しています。来年の本格実施を前に、制度の全体像と現実的な課題について、詳しく見ていきましょう。

こども誰でも通園制度とは何か
こども誰でも通園制度は、2026年度から全国すべての市区町村で開始される新しい子育て支援の仕組みです。この制度の最大の特徴は、親の就労状況を一切問わないという点にあります。従来の保育制度では、保育所に入所するためには「保育の必要性」という認定が必要でした。つまり、両親が働いているか、病気や介護などの事情がある場合に限られていたのです。
しかし、こども誰でも通園制度では、そうした要件が撤廃されました。専業主婦の家庭でも、育児休業中の家庭でも、フリーランスで不規則な働き方をしている家庭でも、希望すれば保育所などに子どもを預けることができます。これは日本の子育て支援政策における大きなパラダイムシフトと言えるでしょう。
制度の対象となる子ども
対象となるのは、原則として0歳6ヶ月から満3歳未満の子どもです。より正確には、3歳になる前々日まで利用することができます。ただし、すでに保育所や幼稚園、認定こども園に通っている子どもは対象外となります。あくまでも「未就園児」が対象です。
興味深いのは、認可外保育施設に通っている子どもも利用できるという点です。企業主導型保育事業所以外の認可外保育施設を利用している家庭に対して、質が担保された認可保育所などの環境に触れる機会を追加で提供することを意図しています。これにより、保育の質の格差を縮小する効果も期待されています。
支援の目的が根本的に変わった
この制度が革新的である理由は、支援の主体が「保護者」から「子ども」へと明確に転換した点にあります。従来の一時預かり事業は、保護者のリフレッシュや冠婚葬祭、就労といった「保護者の必要性」に対応するためのものでした。一方、こども誰でも通園制度は子どもの良質な成育環境の確保を第一の目的としています。
親が働いているかどうかに関わらず、すべての子どもに専門家による発達支援と他者との交流の場を保障するという考え方です。これは2023年に創設されたこども家庭庁が掲げる「こどもまんなか社会」の理念を具現化する制度設計となっています。
2025年11月改定の最新Q&Aで明らかになったこと
2026年度の本格実施を前に、こども家庭庁の検討会では制度の詳細な運用方法について議論が重ねられてきました。2025年10月に開催された第2回検討会で示された方針は、制度の理想と現実の狭間を如実に表すものとなりました。
利用時間の上限は月10時間
最も注目されていた利用時間の上限については、子ども一人あたり月10時間とする方針が決定されました。これは2024年度から2025年度にかけて実施されてきた試行事業の上限設定を、そのまま本格実施でも踏襲する形です。
月10時間という時間数は、1回2時間の利用を月5回、あるいは1回1時間の利用を月10回といった使い方を想定しています。保護者が美容院に行く時間や、役所での手続きの時間、あるいは単純に休息する時間として活用できますが、本格的な就労のサポートとしては明らかに不足しています。
なぜ月10時間なのか
検討会の内部では、有識者や当事者から「月10時間では短すぎる」「孤立育児の解消や子どもの発達支援という目的を達するには不十分だ」という意見が多数表明されました。にもかかわらず、上限が月10時間に据え置かれた最大の理由は、保育士の人材確保が極めて困難という現実でした。
全国の市町村を対象にした調査では、実に74%の自治体が「保育士の人手不足で2026年の開始に間に合わない」と回答しています。制度の理想を追求して利用時間を増やせば、現場の保育士の負担はさらに増大します。こども家庭庁は、制度の質や量よりも、まずは全国一斉に開始するという形式を優先せざるを得なかったのです。
2年間の経過措置が意味するもの
さらに深刻なのは、月10時間という非常に低いハードルでさえ、すべての自治体が達成できるわけではないという現実です。そのため、2026年度から2027年度の2年間に限り、経過措置が設けられることになりました。
この経過措置により、保育士不足などで対応が難しい自治体は、月3時間から10時間未満の範囲内で、国が定める上限よりもさらに短い時間を独自の上限として設定することが認められます。つまり、ある市では月10時間使えるのに、隣の市では月3時間しか使えないという地域格差が公式に容認されることになったのです。
これは「全国すべての自治体で」「誰でも」同じサービスが受けられるという制度の普遍性が、開始初年度から崩壊することを意味します。住んでいる場所によって受けられる支援の量が大きく変わる「郵便番号による格差」が生じてしまうのです。
制度の具体的な利用方法
それでは、実際にこの制度をどのように利用するのでしょうか。こども家庭庁が開発している「こども誰でも通園制度 総合支援システム」を通じて、予約から利用、請求までが一元管理される仕組みが整えられています。
利用開始までの流れ
まず保護者は、居住する市区町村の窓口やオンラインで利用申請を行います。市区町村は申請内容を確認し、子どもの年齢などが要件を満たしていれば利用を認定します。認定されると、保護者専用のシステムアカウントが発行されます。
次に、保護者はシステムにログインして、利用したい保育所などの事業所を検索します。初回利用の前には、事業所との面談が必須となっています。この面談では、子どものアレルギーの有無や発達の特性、健康状態などを詳しく伝える必要があります。
面談が終われば、システム上で空いている利用枠を時間単位で予約できるようになります。利用当日は、事業所が提示する二次元コード(QRコード)をスマートフォンで読み取り、登園と降園を記録する仕組みです。
親子通園という選択肢
この制度の柔軟な点として、親子での利用も可能とされています。特に初めての集団生活となる子どもが、新しい環境に安全に適応できるよう配慮された仕組みです。
親子通園には複数のメリットがあります。子どもにとっては、親がいる安心感の中で、徐々に場所や保育士、他の子どもに慣れることができます。保護者にとっては、保育士の専門的な子どもへの関わり方を間近で見ることで、育児スキルを学ぶ機会となります。また、保育士と直接対話することで、親自身の孤立感の解消や相談先の確保にもつながります。
利用料金と公費負担の仕組み
制度を利用する際の費用負担について、詳しく見ていきましょう。この制度は、保護者が支払う利用料と、国・自治体が負担する公費によって成り立っています。
保護者の利用料は1時間300円が標準
保護者が事業者に直接支払う利用料の標準的な金額は、1時間あたり300円とされています。ただし、これはあくまで標準額であり、所得に応じた負担軽減措置が設けられる見込みです。
生活保護世帯は無料、住民税非課税世帯は1時間60円、市区町村民税額が一定以下の世帯は90円や150円といった形で、自治体の判断により利用料が減免されることが想定されています。すべての家庭が制度を利用しやすくするための配慮です。
公費による補助金の実態
保護者が支払う1時間300円は、保育にかかるコストの全額ではありません。残りの大部分は、国と自治体が公費負担として事業者に補助金を支払います。
2025年度の試行事業における補助単価は、子ども一人1時間あたり、0歳児が1,300円、1歳児が1,100円、2歳児が900円となっています。例えば0歳児の場合、保護者が300円を支払い、公費が1,300円を負担するため、事業者の収入は合計1,600円となります。
これは、安全確保のために最も手厚い人員配置が必要な0歳児保育のコストが、社会全体で1時間あたり約1,600円と評価されていることを示しています。利用者はその約2割を負担し、残りの約8割は税金で賄われる構造です。
特別な配慮が必要な子どもへの加算
すべての子どもの育ちを応援するという理念から、特に支援が必要な子どもを受け入れる事業者には、基礎単価に加えて加算が支給されます。
障害児や要支援家庭の子どもには400円が加算され、医療的ケア児(喀痰吸引や経管栄養など)には2,400円が加算されます。医療的ケア児への加算は、看護師などの専門職の配置を想定した手厚いものとなっています。
ただし、障害児や発達に特性のある子どもに対する400円という加算額については、現場から「リスクや負担に見合わない」という声も上がっています。安全確保のために1対1に近い手厚い見守りが必要な場合、この加算額では専門の保育士を追加で配置することは現実的に困難だからです。
2026年度の財源は未確定
ここで重要な注意点があります。これまで述べた利用料や補助単価は、すべて2025年度までの試行事業の基準額です。2026年度からの本格実施における最終的な金額は、2025年末の予算編成の中で決められる予定であり、2025年11月時点ではまだ確定していません。
現場の保育所からは、近年の物価高騰に伴う光熱費や給食費のコスト増を背景に、「現状の補助額では赤字になる」として補助額の増額を求める声が上がっています。この補助単価が、現場の運営を支えられる水準まで引き上げられるかどうかが、事業者の参入意欲を左右する重要な鍵となっています。
実施場所と運営形態
こども誰でも通園制度は、新たな施設を建設するものではありません。既存の社会資源を最大限に活用する方針が取られています。
どこで実施されるのか
実施場所は、保育所、認定こども園、幼稚園、地域型保育事業所、さらには地域子育て拠点など、多岐にわたります。すでに保育の専門性を持つ施設が、新しい制度の受け皿となるのです。
一般型と余裕活用型
運営形態については、主に2つの型が想定されています。一般型は、既存の在園児クラスとは別に、本制度の利用者専用のクラスや空間を設けて保育を行う形態です。専用の保育士を配置し、短時間利用の子どもたちに特化した環境を整えます。
一方、余裕活用型は、既存の在園児クラスの定員の空き枠を活用して、在園児と一緒に保育を行う形態です。多くの施設が選択せざるを得ないと予想されるのは、この余裕活用型です。
しかし、余裕活用型には大きな懸念があります。それは、既存の在園児への保育の質への影響です。毎日のように入れ替わる短時間利用の子どもに保育士が対応することで、クラス全体の運営が不安定になり、在園児一人ひとりへのきめ細やかな関わりが薄れる可能性が指摘されています。
保育現場が抱える深刻な課題
制度の理念は素晴らしいものですが、それを実現する現場には深刻な課題が山積しています。
アセスメントの難しさ
試行事業を通じて、保育現場から最も強く指摘されている課題が、子どもの特性を把握するアセスメント能力の必要性です。在園児であれば、保育士は毎日の関わりの中で時間をかけて子どもの発達状況、性格、家庭環境を把握していきます。
しかし、本制度の利用者は、月に数時間、不定期にしか来園しません。保育士は、その極めて短時間の関わりの中で、子どものアレルギーの有無、発達の遅れ、気質、家庭での様子などを素早く見抜き、安全を確保しながら、その子どもに最適な発達支援を提供しなくてはなりません。
これは従来の保育以上に、高度な専門性と観察眼、アセスメント能力を要求するものです。このための専門研修の仕組みや、面談の質をどう担保するかが、制度の保育の質を左右する重要課題となっています。
保育士不足という最大の壁
制度の最大のアキレス腱は、物理的な保育士の不足です。全国の市町村の74%が「保育士の人手不足で準備が間に合わない」と懸念を表明している現実は、極めて深刻です。
制度を運用する当事者である自治体の4分の3が、開始前から実行不可能の声を上げているのです。この深刻な懸念こそが、月10時間という低い上限設定や、月3時間すら容認する経過措置という、理念を後退させるような制度設計を余儀なくさせた直接の原因となっています。
国民が感じる不信感
この保育現場の苦境は、国民にも冷静に見透かされています。制度を利用しないと回答した理由の第1位は、「保育士不足が懸念されるため」となっています。保護者自身が、現場の疲弊を肌で感じ取り、これ以上の負担をかけることに罪悪感や不安を感じているのです。
さらに、制度に関心がないと回答した層からは、「実現性がなく現実的でない」といった政府の少子化対策への不信感が示されています。新しい制度を施行する前に、まず保育士の待遇を改善すべきだという、政策の順序に関する根本的な批判です。
政府が新しい制度を打ち出す一方で、その担い手である保育士の抜本的な待遇改善を先送りにし続けることは、深刻な政策的矛盾と言わざるを得ません。現場の疲弊を顧みずに新たなタスクを追加することは、保育業界全体の疲弊と人材流出をさらに加速させるリスクをはらんでいます。
既存の在園児への影響
保育現場が抱える最も切実なジレンマは、保育所に通っている子どもたちの保育に支障があってはならないという点です。保育士が、毎日のように入れ替わる短時間利用児の対応に追われることで、そのしわ寄せはクラス全体の運営の不安定化となり、既存の在園児一人ひとりへのきめ細やかな関わりが薄れることへの強い懸念があります。
これは保育の質に関する深刻なトレードオフの問題です。誰でも利用できるという利便性を追求することが、既存の利用者の保育の質を低下させる可能性を秘めているのです。こども家庭庁が示す「支障があってはならない」というガイドラインは、保育士の増員や補助金の増額といった具体的な裏付けがなければ、現場に無理を強いる精神論に陥りかねません。
制度の真の価値と意義
数々の課題が山積する中、それでもこの制度が2026年に開始されることには、確実な意義があります。
保護者にとっての具体的なメリット
当事者である保護者にとって、この制度には明確なメリットが存在します。第一に、理由を問わず物理的に子どもを預けられる時間が確保されることです。たとえ短時間でも、自分の時間を持てることは精神的な余裕につながります。
第二に、そして最も重要なのは、子育ての専門家である保育士と定期的に接点を持ち、子育ての相談先を得られることです。産休・育休中に社会から隔絶された感覚に陥る孤立育児の負担感を、一時的にでも軽減する効果が期待されます。
第三に、将来、本格的に共働きに移行する際や、3歳からの幼稚園入園を見据え、子どもがその園に合うかどうかを試す「保育園の選定」という目的にも活用できます。
時間ではなく接続が重要
月10時間という時間は、保護者の本格的なリフレッシュや就労のためには、確かに短すぎます。しかし、本制度の真の価値は、提供される時間の量そのものにあるのではありません。
本制度の核心的価値は、保育システムの外側にいた孤立した家庭が、月に1〜2回、定期的に保育の専門家や地域社会と接続するための正規の仕組みとして機能する点にあります。この接続こそが、児童虐待防止というセーフティネットの目的と、専門家による発達支援という目的を達成するための、最低限の接点となります。
この接点から、より手厚い支援が必要な家庭を専門機関につなぐことが可能になります。月10時間という限られた時間でも、定期的に専門職の目が行き届くことで、潜在的なリスクを早期に発見できる意義は極めて大きいのです。
制度創設の背景にある社会課題
なぜ今、このタイミングで国はこれほど大きな制度改革に踏み切ったのでしょうか。その背景には、現代日本が抱える深刻な社会課題があります。
加速する少子化への対応
日本の出生率は低下の一途をたどっています。2024年の出生数は過去最低を更新し、少子化は待ったなしの状況です。社会全体で子育てを支える体制を抜本的に強化し、「子どもを産み育てやすい」という実感の伴う環境整備が急務となりました。
産休・育休期の保護者負担
最も育児の手間がかかる0歳から2歳の時期、特に産休・育休中の保護者が日中子どもと一対一で向き合う負担は極めて大きく、その精神的・肉体的疲弊が社会問題化しています。核家族化が進み、祖父母の支援が得られない家庭も増えています。
児童虐待の防止
児童虐待の相談対応件数は依然として高止まりしています。その背景の一つとして、保護者が社会から孤立し、育児の悩みを誰にも相談できずに抱え込む孤立育児が指摘されています。保育所に通っていない未就園児は、行政や専門職の目が行き届きにくい存在です。
本制度は、こうした家庭と子どもを保育所という社会資源に定期的に接続させることで、育児の負担を軽減すると同時に、潜在的な家庭のリスクを早期に発見し、専門的な支援につなげるセーフティネットとしての機能が強く期待されています。
こども家庭庁の創設
2023年に発足したこども家庭庁は、省庁の垣根を超えてすべての子育て家庭を支援する司令塔としての役割を担います。本制度は、その司令塔が打ち出す目玉政策の一つとして位置づけられています。子ども政策を一元的に推進する新しい組織だからこそ、実現できた制度とも言えます。
システムによる運用管理
制度の日々の運用は、デジタル技術を活用して効率化が図られています。
総合支援システムの機能
こども家庭庁が開発・提供する「こども誰でも通園制度 総合支援システム」を通じて、全国の利用状況や予約が一元管理される計画です。このシステムは利用者、事業者、自治体の三者を繋ぎ、予約管理、データ管理、請求書発行などを統合的に処理します。
保護者はスマートフォンやパソコンから、利用したい保育所を検索し、空いている時間枠を予約できます。予約のキャンセルもオンラインで可能です。利用当日は二次元コードを読み取ることで、登園と降園を記録します。事業者は、この利用実績に基づいて、システムを通じて自治体に補助金を請求します。
デジタル化の光と影
システムの利便性は高い一方で、制度の入り口には課題も存在します。利用の第一歩は、役所への申請と認定です。本制度が最もアクセスしてほしい、社会とのつながりが希薄で孤立育児の状態にある保護者にとって、まず役所に申請し、認定を受け、アカウントを発行してもらうという一連のステップは、心理的にも実務的にも高い障壁となり得ます。
システムの利便性の裏に、入り口で最も支援が必要な人をふるい落としてしまう危険性が内包されているのです。自治体には、申請のハードルを下げるための丁寧な広報や、アウトリーチ(訪問支援)による働きかけが求められます。
今後の展望と課題
2026年の月10時間でのスタートは、あくまで第一歩に過ぎません。政府は今後、この利用時間の上限を段階的に拡大することを目指すでしょう。
成功の鍵は人材と財源
しかし、利用時間の拡大を阻む保育士不足と財源不足という2つの巨大な壁を乗り越えない限り、本制度は理念倒れに終わる危険性を常に内包しています。制度の成否は、こども家庭庁が保育現場の処遇改善という足元の課題にどれだけ本気で取り組み、持続可能な財源を確保できるかに、その全てがかかっています。
保育士の給与水準は、専門職としての責任の重さに見合っていないという指摘が長年なされてきました。人材確保のためには、給与の大幅な引き上げ、労働環境の改善、キャリアパスの明確化など、抜本的な対策が不可欠です。
地域格差の解消
経過措置により、地域によって利用できる時間に大きな差が生じることは、制度の普遍性を損なう重大な問題です。2年間の経過措置が終了する2028年度以降は、すべての自治体で少なくとも月10時間の利用が保障されるよう、国による人材確保の支援が求められます。
保育の質の担保
制度が拡大すればするほど、保育の質を維持することが重要になります。短時間利用の子どもを受け入れる保育士には、従来以上に高度なアセスメント能力や専門性が求められます。継続的な研修の機会を提供し、保育士のスキルアップを支援する体制が必要です。
また、既存の在園児への保育の質を低下させないためには、十分な人員配置が不可欠です。補助金の水準を、現場の実態に見合ったものに引き上げることが求められます。
利用を検討する保護者へのアドバイス
実際にこの制度の利用を検討している保護者の方々に向けて、いくつかのポイントをお伝えします。
早めの情報収集を
2026年度の開始に向けて、各自治体では順次、制度の詳細な案内が始まります。自治体のホームページや広報誌、子育て支援センターなどで情報を収集しましょう。申請開始の時期や方法、利用できる施設のリストなどが公表される予定です。
面談で丁寧に情報を伝える
初回の面談は非常に重要です。子どものアレルギーや健康状態、発達の特性、好きな遊び、苦手なことなど、できるだけ詳しく保育士に伝えましょう。短時間しか子どもと関わらない保育士にとって、保護者からの情報は安全な保育を行うための貴重な手がかりとなります。
親子通園から始めるのも一案
いきなり子どもを預けることに不安がある場合は、最初は親子通園から始めることも検討してみてください。子どもが環境に慣れる過程を一緒に見守ることができ、保育士との信頼関係も築きやすくなります。
月10時間を有効に使う
限られた時間を最大限に活用するために、利用の目的を明確にしましょう。定期的な通院や役所の手続き、美容院など、どうしても子連れでは難しい用事に充てるのも良いでしょう。また、単純に自分の時間を持つことも立派な目的です。育児から離れてリフレッシュすることは、長い目で見れば子どもにとってもプラスになります。
保育士との信頼関係を大切に
この制度の最大の価値は、子育ての専門家との接点が持てることです。日頃の子育ての悩みや不安を相談できる相手として、保育士との関係を大切にしましょう。迎えの時に少し時間を作って、その日の子どもの様子を聞いたり、気になることを相談したりすることで、孤立育児の解消につながります。
まとめ:第一歩としての意義
こども誰でも通園制度は、日本の子育て支援政策における大きな転換点です。親の就労状況に関わらず、すべての子どもに質の高い保育環境へのアクセスを保障するという理念は、真に「こどもまんなか」の社会を目指すものと言えます。
一方で、月10時間という限られた時間数、地域による格差を容認する経過措置、そして何よりも深刻な保育士不足という課題は、制度の持続可能性に大きな疑問符を投げかけています。理想と現実の狭間で、現場の保育士に過度な負担を強いることがあってはなりません。
2026年度の開始は、ゴールではなく出発点です。制度が真に機能し、すべての子どもと家庭を支えるものとなるためには、保育士の待遇改善と人材確保、十分な財源の確保、保育の質の担保という課題に、国と自治体が本気で取り組む必要があります。
制度の成否は、今後数年間の運用の中で明らかになっていくでしょう。私たち一人ひとりが、この新しい制度の動向に関心を持ち続け、必要に応じて声を上げていくことが、より良い子育て支援社会の実現につながるのではないでしょうか。









コメント