孤独・孤立対策の内閣府報告書が示す地域支援の具体策とは?誰ひとり取り残さない社会へ

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現代の日本社会において、孤独・孤立は深刻な社会問題として多くの人々に影響を及ぼしています。新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、人と人との「つながり」が希薄化し、あらゆる世代で孤独感を抱える人が増加しました。こうした状況を受けて、内閣府は孤独・孤立に悩む人々を誰ひとり取り残さない社会を実現するため、包括的な対策を推進しています。令和6年4月には日本で初めて孤独・孤立対策に特化した法律が施行され、地域支援具体策も次々と展開されています。本記事では、内閣府が公表している報告書や重点計画に基づき、孤独・孤立対策の全体像から地域での実践的な取り組みまで、詳しく解説していきます。孤独・孤立の問題は高齢者だけでなく、若年層や子育て世代、単身者など、すべての世代に関わる課題です。地域や社会全体でつながりを育み、支え合う仕組みづくりが今、強く求められています。

目次

孤独・孤立対策推進法の制定と法的基盤の整備

令和5年5月31日に孤独・孤立対策推進法が公布され、令和6年4月1日に施行されました。この法律は第211回通常国会において制定された、日本で初めて孤独・孤立対策に特化した法律です。世界的に見ても、孤独・孤立対策を全国民を対象に包括的に規定した法律は画期的なものとして注目されています。

この法律が制定された背景には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、人と人との「つながり」が希薄化し、孤独・孤立の問題が一層深刻化したことがあります。社会活動の制限により、高齢者だけでなく若年層や子育て世代においても孤独感を抱える人が急増しました。外出自粛や在宅勤務の推進により、日常的な人間関係が断たれ、心身の健康に影響を及ぼす事例も多く報告されました。

孤独・孤立対策推進法では、「孤独」を主観的な概念として、「孤立」を客観的な状態として明確に定義しています。孤独とは本人が感じる主観的な寂しさや疎外感を指し、孤立とは社会的なつながりが客観的に欠如している状態を指します。この二つの概念を区別しながらも、両方に対応する包括的な支援が法律の中で明記されています。

法律の基本理念として、当事者等の立場に立った支援が掲げられており、孤独・孤立の状態にある人々とその家族の多様な要因や状態を考慮した支援が求められています。また、国や地方公共団体だけでなく、NPOや企業、地域住民など多様な主体が連携して取り組むことの重要性も強調されています。

孤独・孤立対策推進本部の設置と政府全体での取り組み

令和6年4月、孤独・孤立対策推進法の施行に伴い、内閣に孤独・孤立対策推進本部が設置されました。本部長は内閣総理大臣が務め、全閣僚が本部員として参加しています。これにより、政府全体で孤独・孤立対策に取り組む体制が整備されました。

この推進本部は、国の孤独・孤立対策に関する基本方針を決定し、各省庁間の連携を強化する役割を担っています。孤独・孤立の問題は、福祉、医療、教育、雇用、住宅など、多岐にわたる分野に関連しています。そのため、厚生労働省、文部科学省、国土交通省、総務省、経済産業省など、複数の省庁が連携して施策を展開する必要があります。

推進本部の設置により、これまで縦割りになりがちだった行政の取り組みが、横断的かつ一体的に進められるようになりました。また、地方自治体やNPO、民間企業との連携も推進しており、官民一体となった取り組みが加速しています。定期的に開催される会議では、各省庁の取り組み状況が報告され、課題の共有や新たな施策の検討が行われています。

孤独・孤立対策の重点計画と令和7年度の改定

孤独・孤立対策推進本部は、孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画を策定しています。最初の重点計画は令和3年12月28日に孤独・孤立対策推進会議によって決定されました。その後、令和6年6月11日に孤独・孤立対策推進本部決定により新たな重点計画が策定され、令和7年5月27日に一部改定が行われました。

令和7年度の重点計画では、特に以下の重点取組事項が盛り込まれています。

第一に、こどもや若者のための家庭や学校以外の多様な居場所づくりです。居場所づくりから相談支援などの切れ目のない支援体制の構築、教育や福祉などの分野を横断した地域の「顔の見える関係」づくりなどに着実に取り組むことが求められています。学校や家庭に居場所を見出せない子どもたちが、安心して過ごせる第三の居場所を地域に作ることが重要視されています。

第二に、単身者の孤独・孤立や社会とのつながりを失い孤立死に至ることを予防する観点からの「居場所・つながりづくり」の取組を推進することです。特に高齢者の単身世帯の増加に対応し、地域での見守りやつながりづくりを強化する必要があります。単身世帯は今後も増加が見込まれており、社会的孤立のリスクが高い層として重点的な支援が必要です。

この改定は、孤独・孤立対策推進法施行及び重点計画策定から1年が経過した初めての改定であり、これまでの取り組みの成果と課題を踏まえた内容となっています。地方自治体やNPOからのフィードバックも反映され、より実効性のある計画へと進化しています。

孤独・孤立の実態に関する全国調査の結果

内閣府孤独・孤立対策推進室は、日本で初めてとなる孤独・孤立の実態把握に関する全国調査を実施しました。この調査は、16歳以上の2万人を対象に行われ、約1万2千人から回答を得ました。

調査では、日本語版UCLA孤独感尺度(3項目短縮版)を用いて、孤独感の程度を測定しました。この尺度は国際的にも広く使用されている信頼性の高い測定方法です。その結果、「しばしばある・常にある」「ときどきある」「たまにある」を合わせて39.3%の人が孤独感を抱えていることが明らかになりました。別の集計方法では、36.4%の人々が孤独を感じていることが分かりました。これは、約3人に1人が孤独を経験していることを意味します。

この調査結果は、孤独・孤立が特定の年齢層や属性に限らず、広く社会全体の問題であることを示しています。特に、若年層や中年層においても高い割合で孤独感を抱えている実態が浮き彫りになりました。従来、孤独・孤立は高齢者の問題と捉えられがちでしたが、実際には若い世代も深刻な孤独感を抱えており、世代を超えた対策が必要であることが明確になりました。

また、調査では孤独感と心身の健康状態との関連も分析されており、孤独感が高い人ほど健康状態が良くない傾向にあることが確認されました。孤独・孤立は単なる心の問題ではなく、身体的な健康にも影響を及ぼす重要な社会的決定要因であることが科学的に裏付けられています。

地方版官民連携プラットフォームの推進と地域での実践

孤独・孤立対策を効果的に推進するため、内閣府は地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業を展開しています。このプラットフォームは、地域の実情に応じた施策を構築するためのハブとして機能します。

令和6年度には、32の地方公共団体(都道府県・指定都市21団体、市町村11団体)がこの事業に参加しました。プラットフォームでは、多様な活動が展開されています。

まず、地域の実情に応じた施策の構築です。各地域の特性や課題に合わせて、効果的な孤独・孤立対策を立案します。都市部と地方部では孤独・孤立の様相が異なるため、画一的な施策ではなく、地域特性を活かした取り組みが重要です。

次に、居場所などの地域資源の把握です。地域に存在する様々な支援資源やコミュニティスペースを調査し、データベース化することで、支援が必要な人々を適切な場所につなげることができます。地域には意外と多くの居場所や支援団体が存在しますが、それらの情報が整理されていないため、必要な人に届いていないケースが少なくありません。

さらに、関係者間での情報共有も重要な役割です。行政、NPO、企業、医療・福祉関係者など、多様なステークホルダーが情報を共有し、連携を深めることで、より包括的な支援が可能になります。定期的な会議やネットワーキングイベントを通じて、顔の見える関係づくりが進められています。

広報・啓発活動も積極的に行われています。孤独・孤立の問題について社会的な理解を深め、「助けを求めてもいい、助けますよ」という機運を醸成することが目指されています。孤独や孤立を抱える人が声を上げやすい社会をつくることが、支援の第一歩です。

また、ネットワークを構築するNPO等の基盤強化支援も行われています。地域で活動するNPOや市民団体の運営基盤を強化し、持続可能な支援体制を構築することが重要です。多くのNPOは財政的な課題や人材不足に直面しており、こうした基盤強化の支援が活動の継続に不可欠です。

市町村支援も重点的に実施されています。都道府県が主体となって、域内の市町村が孤独・孤立対策を推進できるよう、ノウハウの提供や財政支援を行っています。小規模な市町村では専門的な知識や人材が不足していることが多く、都道府県レベルでのサポートが重要な役割を果たしています。

孤独・孤立対策推進交付金による財政支援

内閣府は、地域における孤独・孤立対策を財政面から支援するため、孤独・孤立対策推進交付金を創設しました。令和6年度には、当初予算として1億3,100万円が計上されました。

この交付金は、地方公共団体向け中間支援団体向けの2つのプログラムに分かれています。

地方公共団体向けのプログラムでは、都道府県等が「地方版官民連携プラットフォーム」の構築に要する経費を支援します。また、都道府県等による補助事業を通じて、域内市町村のプラットフォーム構築も支援されます。これにより、都道府県レベルだけでなく、市町村レベルでも孤独・孤立対策のネットワークが構築されることが期待されています。

中間支援団体向けのプログラムでは、孤独・孤立対策に取り組むNPO等の運営基盤を強化する中間支援組織に対して支援を行います。補助上限額は600万円、補助率は3分の2となっています。中間支援組織とは、個別のNPOを支援し、ネットワークづくりや能力開発を行う組織のことで、地域の支援体制の要となる存在です。

令和6年度補正予算及び令和7年度当初予算案では、交付金の名称が社会参加活躍支援等孤独・孤立対策推進交付金に変更され、予算額も大幅に増額されました。令和6年度補正予算では24億円、令和7年度当初予算案では1億3,600万円が計上されています。

この予算の大幅な増額は、孤独・孤立対策の重要性が政府内で高まっていることを示しており、より多くの地域やNPO等が支援を受けられる体制が整いつつあります。交付金の活用により、これまで財政的な制約で実施できなかった取り組みが可能になり、地域での支援の幅が広がることが期待されています。

NPO等の取組モデル調査と先進事例の横展開

令和7年度には、地域における孤独・孤立対策に関するNPO等の取組モデル調査の公募が開始されました。この調査事業では、約90件程度の事業が採択される予定です。

公募から事業開始までのスケジュールとしては、令和7年4月から6月上旬にかけて公募と審査が行われ、採択候補団体等が決定されました。6月下旬には契約締結が行われ、事業が開始されました。

この事業は、地域で先進的な取り組みを行っているNPO等の活動を調査し、その成果を全国に普及させることを目的としています。採択された団体は、事業実施を通じて得られた知見やノウハウを報告書にまとめ、他の地域での展開に役立てることが期待されています。

モデル調査の対象となる活動には、NPO主導のプラットフォーム事務局機能の発揮による事業の継続性確保、居場所づくり活動、NPOネットワークを活用した食支援活動などが含まれています。これらの活動は、地域の実情に応じた多様なアプローチを示すものとなっています。

例えば、食支援活動では、単に食事を提供するだけでなく、その場を通じて孤立している人々とつながり、必要な支援につなげる役割も果たしています。食を通じた支援は、「困っている」というハードルを下げ、気軽に参加できる入口として機能します。

つながりサポーター養成講座による人材育成

孤独・孤立対策を地域で推進するためには、支援の担い手となる人材の育成が不可欠です。そのため、内閣府はつながりサポーター養成講座の実施団体の募集を開始しました。

つながりサポーターとは、地域において孤独・孤立の状態にある人々に気づき、適切な支援につなげる役割を担う人材です。この養成講座では、孤独・孤立の基礎知識、傾聴スキル、地域資源の活用方法、関係機関との連携方法などが学べます。

令和7年度には、多くの団体が養成講座の実施に手を挙げており、全国各地でつながりサポーターが育成される見込みです。これにより、地域での見守りや支援のネットワークがより充実することが期待されています。

つながりサポーターは、専門的な資格を持つ支援者ではありませんが、日常生活の中で気軽に声をかけ、必要に応じて専門機関につなぐという重要な役割を果たします。地域住民が支援の担い手となることで、より身近で温かみのある支援が実現します。

また、つながりサポーター自身にとっても、地域での役割を持つことで社会参加や生きがいにつながるという側面があります。支援する側と支援される側という固定的な関係ではなく、相互に支え合う関係性が生まれることが理想です。

地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制

孤独・孤立対策は、地域共生社会の実現と密接に関連しています。地域共生社会とは、制度・分野の枠や、「支える側」「支えられる側」という従来の関係を超えて、地域住民や多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会のことです。

この実現に向けて、市町村における包括的支援体制の構築が進められています。包括的支援体制とは、属性を問わない相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する体制のことです。従来の福祉制度は、高齢者、障害者、児童など属性ごとに縦割りになっていましたが、実際の生活課題は複合的であり、縦割りの支援では対応しきれないケースが増えています。

内閣府は、孤独・孤立対策と重層的支援体制整備事業との連携に関する通知を発出し、両施策の効果的な連携を促進しています。これにより、孤独・孤立の問題を抱える人々が、既存の福祉サービスと新たな支援策の両方から包括的な支援を受けられる体制が整備されつつあります。

地域協議会の設置も推進されています。地方公共団体は、孤独・孤立対策に関係する機関で構成される地域協議会を組織し、必要な情報交換や支援内容の協議を行うことができます。この協議会には、行政機関だけでなく、社会福祉協議会、NPO、地域のボランティア団体、医療・福祉関係者、企業など、多様な主体が参加します。

協議会を通じて、複雑な課題を抱える個人や家庭について、関係機関が情報を共有し、役割分担をしながら支援することが可能になります。ただし、個人情報の取り扱いには十分な配慮が必要であり、本人の同意を基本としつつ、必要な場合には適切な情報共有が行えるような仕組みが整備されています。

こども・若者の居場所づくりと世代を超えた支援

令和7年度の重点計画では、こどもや若者のための家庭や学校以外の多様な居場所づくりが重点取組事項として位置づけられました。こども家庭庁を中心に、こどもの居場所づくりが推進されています。

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえでは、居場所づくりを進めようとする自治体を支援するプロジェクトを立ち上げています。居場所づくりに関する動画を作成し、無料で公開することで、全国の自治体やNPOが参考にできるようにしています。

こどもの居場所には、こども食堂、学習支援教室、プレーパーク、ユースセンターなど、様々な形態があります。これらの居場所は、単に食事を提供したり勉強を教えたりするだけでなく、こどもたちが安心して過ごせる場所、様々な大人や友達と出会える場所、自分らしくいられる場所として機能しています。

こども食堂は、全国で急速に増加しており、地域のつながりの拠点としても注目されています。こども食堂では、こどもだけでなく、高齢者や子育て世代など、様々な年代の人々が集まり、世代を超えた交流が生まれています。これにより、地域全体のつながりが強化され、孤独・孤立の予防にもつながっています。

教育と福祉の連携も重視されています。学校と地域の支援機関が連携することで、困難を抱えるこどもや家庭を早期に発見し、適切な支援につなげることができます。スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが地域の資源と連携することで、より効果的な支援が可能になります。

また、不登校や引きこもりの若者に対する支援も重要な課題です。学校に行けなくなった子どもたちが社会とのつながりを完全に失わないよう、学校以外の居場所や学びの場を提供することが求められています。フリースクールや適応指導教室、ユースワークの取り組みなどが各地で展開されています。

自治体の具体的な取り組み事例と地域の創意工夫

全国各地の自治体では、地域の特性を活かした様々な孤独・孤立対策が展開されています。ここでは、先進的な取り組みを行っている自治体の事例を紹介します。

山形県では、令和7年6月30日に官民連携のプラットフォーム「やまがたつながり支えあいネットワーク」のキックオフイベントを開催しました。このイベントでは、孤独・孤立対策に取り組む関係団体による基調講演及びトークセッションが実施され、県内の多様な主体が一堂に会して情報共有と連携強化を図りました。また、山形市と鶴岡市は、地方版「孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム」推進事業(モデル事業)を活用し、市町村レベルでのプラットフォーム構築を進めています。

千葉県松戸市では、「ウェルカムベビープロジェクト」という独自の取り組みを実施しています。このプロジェクトは、市内で出産した人に対して企業から協賛を募って出産祝いを渡すというものです。重要なのは、その渡し方で、原則として手渡しにしており、相手と顔の見える繋がりができる仕組みとなっています。出産直後の孤立しやすい時期に、地域とのつながりを作ることで、子育ての孤立を防ぐ効果が期待されています。

また、松戸市では「駄菓子屋カフェくるくる」というプロジェクトも展開しています。NPOがキッチンカーを購入して駄菓子屋を運営し、アウトリーチ(出張型支援)の試みが行われています。駄菓子屋という昔懐かしい形態を用いることで、世代を超えた交流の場を創出しています。

名古屋市では、令和7年度に孤独・孤立講演会を開催し、市民への啓発活動を行っています。また、令和5年7月から8月にかけて「名古屋市生活状況に関する調査」を実施し、年齢層別に孤独・孤立の感じ方を調査しました。この調査結果をもとに、年齢層や属性に応じた効果的な施策を展開しています。

北海道では、「ほっかいどう孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム」を立ち上げ、広域的な連携体制を構築しています。北海道のように広大な面積を持つ地域では、都市部と地方部で孤独・孤立の状況が異なるため、それぞれの地域特性に応じた支援策が必要です。プラットフォームでは、地域間の情報共有や好事例の横展開を促進しています。

SNS相談体制の整備とデジタル時代の支援

若年層を中心に、電話よりもSNSでのコミュニケーションが主流となっている現状を踏まえ、政府は電話相談に加えてSNS相談体制の整備を進めています。

SNS相談の利点は、いつでもどこでも気軽に相談できることです。電話では声を出せない環境にいる人や、電話で話すことに抵抗がある人でも、SNSなら相談しやすくなります。また、文字でのやり取りのため、自分の気持ちを整理しながら相談できるという利点もあります。

厚生労働省や内閣府は、様々な分野でSNS相談窓口を設置しています。自殺対策、DV被害、児童虐待、いじめ、生活困窮など、多様な問題に対応する相談窓口が用意されています。特に若者の自殺対策においては、SNS相談が大きな役割を果たしており、多くの相談が寄せられています。

相談員の研修も充実させており、SNSでの相談に特有のコミュニケーションスキルや、緊急時の対応方法などを学ぶ機会が提供されています。また、AIを活用した自動応答システムと人間の相談員を組み合わせることで、24時間365日の対応を実現している事例もあります。初期対応をAIが行い、必要に応じて人間の相談員につなぐというハイブリッド型の相談体制が注目されています。

国の孤独・孤立対策官民連携プラットフォームと全国的な連携

内閣府は、全国レベルでの情報共有と連携を促進するため、国の孤独・孤立対策官民連携プラットフォームを運営しています。このプラットフォームには、国の関係省庁、地方自治体、NPO、企業、研究機関など、多様な主体が参加しています。

プラットフォームでは、定期的に会合が開催され、最新の取り組み事例の共有、課題の検討、連携方策の協議などが行われています。また、ウェブサイトを通じて、各地の好事例や活用可能な支援制度の情報を発信しています。

このプラットフォームを通じて、孤独・孤立対策に取り組む様々な主体がつながり、知見やノウハウが共有されることで、全国的な支援の質の向上が図られています。ある地域で成功した取り組みを他の地域でも展開できるよう、ノウハウの標準化や横展開の仕組みづくりが進められています。

企業の役割と取り組みによる社会貢献

孤独・孤立対策は、行政やNPOだけでなく、企業も重要な役割を担っています。企業は、従業員の孤独・孤立対策、地域社会への貢献、商品・サービスを通じた支援など、様々な形で貢献できます。

従業員の孤独・孤立対策として、メンタルヘルスケアの充実、社内コミュニケーションの活性化、テレワーク環境でのつながり支援などが行われています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及した後、従業員の孤立感が増しているという課題に対応するため、オンラインでの交流の場を設けたり、定期的な面談を実施したりする企業が増えています。

地域社会への貢献としては、NPOへの寄付や協賛、社員のボランティア活動の支援、地域のイベントへの協力などが行われています。松戸市のウェルカムベビープロジェクトのように、企業が自治体の施策に協賛する事例も増えています。

また、商品やサービスを通じた支援も注目されています。高齢者向けの見守りサービス、配食サービス、オンラインでのコミュニティサービスなど、孤独・孤立の予防や解消に役立つサービスが開発されています。例えば、配食サービスでは単に食事を届けるだけでなく、配達員が利用者の様子を確認し、異変があれば家族や関係機関に連絡する見守り機能を付加している事例もあります。

デジタル技術とICTの活用による新しいつながり

孤独・孤立対策において、デジタル技術ICT(情報通信技術)の活用が重要な役割を果たすようになっています。特に、新型コロナウイルス感染症の流行以降、対面での交流が制限される中で、オンラインでのつながりづくりの重要性が再認識されました。

総務省は、2020年からデジタル活用支援員制度を推進しており、高齢者を中心にICT利活用の向上を図っています。この制度では、地域の支援員が高齢者等に対してスマートフォンやタブレットの使い方、オンラインサービスの利用方法などを支援しています。

高齢者の単身世帯が増加する中で、ICTの活用は孤独・孤立の予防に大きな効果をもたらしています。研究によれば、一人暮らしの高齢者で、自宅で過ごす時間が長く会話相手が少ない人にとって、スマートスピーカーが日常の挨拶や雑談の相手として機能することが明らかになっています。

また、定年退職後の男性や、家族を亡くした高齢者にとって、インターネットを通じた交流は、孤独に陥ることを防ぎ、新しい生活を構築する大きな力となります。インターネットを通じて同じ趣味や関心を持つ人々とつながることで、年齢や居住地を超えた新しい人間関係を築くことができます。

総務省の2023年通信利用動向調査によれば、60歳以上のインターネット利用率は80%を超えており、SNS利用者も年々増加しています。この状況を受けて、高齢者向けのオンラインコミュニティが注目を集めています。

オンラインコミュニティは、高齢者の社会参加を促進する場として、また孤立を防ぎ、話を聞いてもらいやすい場として機能しています。対面での集まりが難しい地方在住の高齢者や、身体的な理由で外出が困難な人にとって、オンラインコミュニティは貴重な交流の場となっています。

東京都練馬区では、2012年からFacebookを活用した認知症予防プログラムが実施されています。このように、SNSを認知機能の維持や向上に活用する取り組みも広がっています。参加者は、日常の出来事を投稿したり、他の参加者の投稿にコメントしたりすることで、社会的なつながりを保ちながら脳の活性化を図っています。

デジタルデバイドへの配慮と包摂的なアプローチ

一方で、デジタル技術の活用を進める上では、デジタルデバイド(情報格差)の問題にも配慮が必要です。高齢者の中には、スマートフォンやパソコンの操作に不慣れな人も多く、デジタル技術を活用した支援から取り残される可能性があります。

そのため、デジタル活用支援員による丁寧なサポートや、操作が簡単な機器の開発、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型の支援など、多様なアプローチが求められています。また、デジタル技術に頼りすぎず、アナログな方法も併用することで、すべての人が支援を受けられる体制を整えることが重要です。

例えば、オンラインでの交流会を開催する際も、参加が困難な人のために対面での会場を設け、オンラインと対面を同時に実施するハイブリッド形式を採用することで、より多くの人が参加できるようになります。

民間団体とボランティアの活動による地域の支え合い

孤独・孤立対策において、民間団体ボランティアの活動は不可欠な要素です。政府の施策だけでは手が届かない細やかな支援や、地域に根ざした活動は、NPOや市民団体、ボランティアによって担われています。

全国各地では、様々な民間団体が独自の工夫を凝らした活動を展開しています。見守り活動、居場所づくり、食支援、学習支援、相談支援など、その形態は多岐にわたります。これらの団体の多くは、小規模ながらも地域の実情に精通しており、きめ細かな支援を提供しています。

ボランティアの役割も重要です。地域住民がボランティアとして活動に参加することで、支援が必要な人とのつながりが生まれるだけでなく、ボランティア自身の社会参加や生きがいにもつながります。また、ボランティア同士のつながりも生まれ、地域全体のネットワークが強化されます。

内閣府の孤独・孤立対策推進交付金では、こうした民間団体やボランティアの活動を支援するため、NPO等の運営基盤強化に対する補助が行われています。財政的な支援だけでなく、活動のノウハウを共有する場の提供や、他団体とのネットワークづくりの支援も行われています。

孤立死予防の取り組みと地域での見守り体制

令和7年度の重点計画では、単身者の孤立死予防が重点取組事項として位置づけられました。高齢化の進展と単身世帯の増加により、誰にも看取られずに亡くなる孤立死のリスクが高まっています。

孤立死を防ぐためには、早期発見継続的な見守りが重要です。地域での見守り活動には、民生委員や自治会、地域包括支援センターなどの公的な主体だけでなく、新聞配達員、宅配業者、郵便局員、コンビニエンスストア、電力・ガス会社など、日常的に地域を巡回する事業者も協力しています。

これらの事業者は、日常業務の中で異変に気づきやすい立場にあります。郵便物が溜まっている、電気やガスの使用状況に変化がある、いつも顔を出す人が最近見かけないなど、些細な変化を察知して関係機関に連絡することで、早期発見につながります。

また、センサー技術を活用した見守りサービスも普及しつつあります。自宅に設置したセンサーが生活パターンの変化を検知し、異常があれば家族や支援者に通知するシステムです。プライバシーに配慮しながら、さりげない見守りを実現する技術として注目されています。冷蔵庫の開閉状況や電気の使用状況、室内の人感センサーなど、様々なタイプのセンサーが開発されています。

世界に先駆けた取り組みと国際的な位置づけ

日本の孤独・孤立対策推進法は、世界で初めて孤独・孤立対策を全国民を対象に包括的に規定した法律です。イギリスでは2018年に孤独担当大臣が任命され、先進的な取り組みが行われていましたが、日本の法制化はそれをさらに一歩進めたものと言えます。

この法律の制定により、孤独・孤立対策が政府の重要施策として明確に位置づけられ、継続的かつ体系的な取り組みが可能になりました。また、地方自治体に対しても孤独・孤立対策を推進する責務が明記されたことで、全国的な取り組みの底上げが期待されています。

国際的にも、日本の取り組みは注目されており、他国との情報交換や共同研究なども行われています。孤独・孤立の問題は日本特有のものではなく、多くの先進国が直面している課題です。各国の知見を共有し、効果的な対策を学び合うことで、より良い支援の在り方が見えてくるでしょう。

特に、少子高齢化が進む社会における孤独・孤立対策は、今後多くの国が直面する課題であり、日本の経験が国際的なモデルとなる可能性があります。

今後の課題と展望

孤独・孤立対策は、まだ始まったばかりの取り組みです。今後、さらに効果的な対策を推進していくためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。

まず、孤独・孤立の実態をより詳しく把握することが重要です。年齢層、性別、地域、属性などによって、孤独・孤立の状況や必要な支援は異なります。継続的な調査と分析により、きめ細かな施策を展開する必要があります。初回調査は実施されましたが、経年変化を追うためには定期的な調査が必要です。

次に、支援の担い手の確保と育成です。つながりサポーターの養成を進めるとともに、専門的な支援を行う人材の育成も必要です。また、支援者自身が孤立しないよう、支援者同士のネットワークづくりや、支援者へのサポート体制も重要です。燃え尽き症候群(バーンアウト)を防ぐための仕組みも必要です。

さらに、デジタル技術の活用も課題です。オンラインでのつながり支援、AIを活用した相談体制、データ分析による効果検証など、テクノロジーを活用することで、より効率的で効果的な支援が可能になります。一方で、デジタルデバイドの問題にも配慮し、デジタル技術に不慣れな人々も取り残されないようにする必要があります。

予算の確保も重要な課題です。孤独・孤立対策推進交付金は増額されていますが、全国の自治体やNPOの需要に対してはまだ十分とは言えません。継続的かつ安定的な財政支援が求められています。

また、施策の効果検証も必要です。どのような取り組みが効果的なのか、科学的なエビデンスに基づいて検証し、より効果的な施策に資源を集中させることが重要です。アウトカム指標の設定や、長期的な追跡調査による効果測定が求められています。

まとめ

孤独・孤立対策は、現代社会が直面する重要な課題です。内閣府を中心に、政府全体で包括的な取り組みが進められています。

孤独・孤立対策推進法の制定により、法的な基盤が整備され、推進本部の設置により政府全体での取り組み体制が確立されました。重点計画に基づき、地方版官民連携プラットフォームの構築、交付金による財政支援、NPO等の取組モデル調査、つながりサポーターの養成など、多様な施策が展開されています。

地域レベルでは、各自治体が地域の特性を活かした独自の取り組みを進めています。こども・若者の居場所づくり、単身者への支援、SNS相談体制の整備、デジタル技術の活用など、多様なアプローチが試みられています。

企業や市民社会も重要な役割を担っており、官民一体となった取り組みが進んでいます。地域の民間団体やボランティアの活動は、きめ細かな支援を提供する上で不可欠な存在です。

今後は、実態把握の深化、支援の担い手の確保と育成、デジタル技術の活用、予算の確保、効果検証などの課題に取り組みながら、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、「相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会」の実現を目指していく必要があります。

孤独・孤立の問題は、個人の問題ではなく社会全体の問題です。一人ひとりができることから始め、地域や社会全体でつながりを育んでいくことが求められています。内閣府の報告書や重点計画に示された具体策を、それぞれの地域で実践し、つながりのある温かい社会を創っていくことが、私たち全員に課された使命と言えるでしょう。

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