生活保護費の減額調整に撤回要求!2026年1月の動きと今後の展開

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生活保護費の減額調整に対する撤回要求とは、2026年1月15日に全国の弁護士や支援団体が厚生労働省に対して行った、生活保護基準の「高さ調整」措置の即時撤回を求める行動のことです。この撤回要求は、2025年6月の最高裁判所による生活保護基準引き下げ違法判決を受けて、政府が打ち出した新たな減額計算方式が「判決の趣旨を無視している」という強い抗議に基づいています。全国1254人の弁護士が賛同した声明文と40万筆を超える署名とともに要請書が提出され、原告や非原告を問わず全受給者への完全な被害回復を求める内容となっています。

この問題を理解するためには、2013年に行われた戦後最大規模の生活保護基準引き下げから、10年以上にわたる裁判闘争、そして最高裁での勝訴判決後に政府が新たに持ち出した「高さ調整」という計算方式まで、複雑な経緯を把握する必要があります。本記事では、生活保護費の減額調整と撤回要求をめぐる一連の出来事について、その背景から最新の動向まで詳しく解説します。当事者の声や経済的な影響、そして今後の法的展開についても触れ、この問題が日本の社会保障制度全体に及ぼす影響を明らかにしていきます。

目次

生活保護費の減額調整とは何か

生活保護費の減額調整とは、2013年に厚生労働省が実施した生活扶助基準の大幅な引き下げと、2025年の最高裁判決後に政府が新たに適用した「高さ調整」という二つの措置を指します。2013年の引き下げでは、平均6.5%、最大10%という戦後最大幅の減額が行われました。この引き下げは主に「ゆがみ調整」と「デフレ調整」という二つの計算方式に基づいていましたが、後者のデフレ調整は2025年の最高裁判決で違法と認定されました。

ところが政府は、違法とされたデフレ調整分を全額返還する代わりに、「高さ調整」という新たな計算式を後から適用し、返還額を大幅に圧縮する対応を決定しました。この対応に対して、法律家や当事者から強い反発が起こり、2026年1月15日の撤回要求につながったのです。

2013年の生活保護基準引き下げの背景

政治的な動きと社会的状況

2013年の生活保護基準引き下げには、明確な政治的背景がありました。2012年は生活保護制度にとって受難の年となり、お笑い芸人の親族による受給問題がメディアで大きく報じられ、激しい「生活保護バッシング」が社会全体を覆いました。「不正受給」という言葉が独り歩きし、受給者全体に対する厳しい視線が注がれる中、当時野党であった自民党は、2012年の衆議院議員総選挙の公約において「生活保護給付水準の10%引き下げ」を明確に掲げていました。

2012年末に政権復帰を果たした自民党政権にとって、この引き下げは支持層への約束の履行という意味合いを持っていました。しかし、社会保障の基準改定は本来、客観的なデータと専門家の議論に基づいて決定されるべきものです。ここに「政治的公約」と「専門的根拠」の間の決定的な乖離が生まれることになりました。

ゆがみ調整による減額の仕組み

厚生労働省が引き下げの根拠として用いた一つ目の計算方式が「ゆがみ調整」です。これは、生活保護受給世帯と一般の低所得世帯(年収下位10%層)の消費実態を比較し、世帯人員や年齢、地域による配分の「ゆがみ」を是正するという名目で行われました。具体的には、多人数世帯や都市部の世帯の基準額が、一般の低所得世帯に比べて「高すぎる」として減額されたのです。この調整では、検証結果の数値をそのまま適用するのではなく、激変緩和措置として削減幅を2分の1にする処理が行われましたが、それでも約90億円規模の削減となりました。

デフレ調整による大幅な減額

厚生労働省が用いた二つ目の計算方式であり、後の裁判で最大の争点となったのが「デフレ調整」です。これは、2008年から2011年にかけて消費者物価指数が下落したことを理由に、その下落率である4.78%を直接的に生活扶助基準に反映させ、一律に減額するという措置でした。この調整により、削減総額の大部分を占める約580億円が削減されました。

通常、年金などの社会保障給付の改定には全国消費者物価指数が用いられます。しかし、このデフレ調整において厚生労働省は、独自の「生活扶助相当CPI」という特殊な指数を算出しました。さらに、比較対象期間の起点を、原油価格高騰によって物価が一時的に上昇していた2008年に設定することで、下落率を大きく見せる操作が行われたと指摘されています。これが後に「物価偽装」と呼ばれる問題の核心となりました。

専門家の意見を軽視した手続き

生活保護法第8条は、保護の基準を厚生労働大臣が定めると規定していますが、その決定には専門的な知見が必要です。通常、基準の改定は社会保障審議会生活保護基準部会での議論を経て行われます。しかし、この「デフレ調整」に関しては、基準部会での実質的な議論や諮問が行われないまま、厚生労働省内部の判断のみで強行されました。専門家委員会がまとめた報告書が出された直後に、報告書にはない独自の計算式を持ち出して削減を決定したこのプロセスこそが、後の最高裁判決で「手続的な過誤」として断罪されることになったのです。

いのちのとりで裁判と最高裁判決

全国規模の集団訴訟の経緯

2013年の引き下げに対し、全国29都道府県で1000人を超える受給者が原告となり、処分の取り消しを求める集団訴訟が提起されました。これが「いのちのとりで裁判」と呼ばれる訴訟です。10年以上にわたる法廷闘争は、地裁や高裁で判断が分かれる激戦となりました。

高等裁判所レベルでは、名古屋高裁は国に「少なくとも重大な過失」があり違法性が大きいとして、減額処分の取り消しだけでなく国家賠償法に基づく損害賠償までも命じる画期的な勝訴判決を出しました。ここではデフレ調整における統計処理の不合理性が厳しく指摘されました。一方で、大阪高裁は厚生労働大臣の広範な裁量権を認め、原告の訴えを退ける敗訴判決を出していました。このように司法判断が割れる中、最高裁の決定が待たれていたのです。

2025年6月27日の最高裁判決の内容

2025年6月27日、最高裁判所第三小法廷は大阪と愛知の訴訟の上告審において、厚生労働大臣による改定決定を取り消す判決を言い渡しました。この判決は、生活保護基準の改定を違法とした史上初の最高裁判決として、極めて重要な意義を持つものとなりました。

判決は削減の根拠となった「デフレ調整」について、三つの観点から違法と結論づけました。第一に、厚生労働省が独自に作成した「生活扶助相当CPI」という物価指数を用いたにもかかわらず、その妥当性について専門家機関である生活保護基準部会の意見を聴取しなかったこと、そして部会の検証結果とは無関係に物価変動率のみをもって機械的に基準を引き下げたことは、統計等の客観的数値との合理的関連性を欠くと判断されました。第二に、生活保護法の趣旨である「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化する際、厚生労働大臣には裁量が認められるものの、専門的知見に基づかない独自の判断で大幅な引き下げを行うことは、その裁量の範囲を超えた違法行為であるとされました。第三に、2008年という特異な物価高騰時を起点とすることで下落率を過大に見積もった点についても、合理性を欠くとの判断が示されました。

一方で、判決は「ゆがみ調整」については直ちに違法とは断定しませんでした。一般低所得世帯との消費実態の均衡を図るという目的自体には一定の合理性があり、専門部会での議論も一定程度踏まえていると見なされたためです。

政府が導入した「高さ調整」の問題点

高さ調整という新たな計算式

最高裁判決を受け、法治国家の行政としては、違法とされた「デフレ調整」による減額分をすべて取り消し、2013年以降に支払われるべきだった本来の金額を全額返還するのが筋です。しかし、厚生労働省が2025年11月に発表し、2026年から実施に移そうとしている対応策は、そのような単純な原状回復ではありませんでした。

厚生労働省は、最高裁で違法とされなかった「ゆがみ調整」の論理を拡張し、新たな減額根拠を考案しました。それが「高さ調整(水準調整)」です。この論理は次のようなものです。「デフレ調整という方法は違法だったかもしれない。しかし、2013年当時の消費実態を改めて精査すると、生活保護受給者の生活水準は一般の低所得世帯よりも高かったことは事実である。したがって、デフレ調整を使わなくとも、一般世帯との均衡を図るためには基準額を引き下げる必要があった」というものです。

具体的には、一般低所得世帯の消費支出額と比較して、生活保護基準がどれだけ高いかを算出した結果、2.49%の引き下げが妥当であったという結論を、2025年になってから「後付け」で導き出しました。

返還額が大幅に圧縮される仕組み

政府はこの「高さ調整」を根拠に、受給者への返還額を次のように計算しました。実際の減額であるデフレ調整は4.78%でこれは違法と確定しました。一方、新たに主張された高さ調整は2.49%です。したがって、返還すべき差額は4.78%から2.49%を差し引いた約2.29%とされました。

つまり、違法に奪われた4.78%分の全額を返すのではなく、その半分以上にあたる2.49%分は「別の理由で正当に減額できたはずだ」として没収し、残りの約2.29%分のみを返還するという決定です。これにより、単身世帯の場合、10年以上の減額に対する補償額は総額で約10万円程度に圧縮されることになりました。

この手法は行政法学上も極めて問題視されています。裁判で「処分の理由が違法」とされたにもかかわらず、判決確定後に「別の理由」を持ち出して処分の結論を維持しようとする行為は、処分取り消し判決の拘束力を潜脱するものであり、行政の誠実性を著しく欠くものです。

原告と非原告の間に設けられた格差

この問題にはもう一つの深刻な側面があります。それは、裁判に参加した「原告」と参加しなかった「一般受給者」の間に露骨な待遇差を設けたことです。一般受給者(約300万世帯)には上記の差額である約10万円のみが支給されます。一方、原告(約700〜1000人)には、差額に加えて「特別給付金」として高さ調整で差し引かれる2.49%分も上乗せして支給されます。つまり、実質的にデフレ調整分の全額(約20万円と遅延損害金相当額)が返還されることになります。

政府はこれを「長期間の訴訟負担への配慮」と説明していますが、法律家や支援団体は、これを「原告団の切り崩し」や「口止め料」であると批判しています。生活保護行政には「無差別平等の原理」があり、同じ時期に同じ違法な処分を受けた国民に対し、裁判をしたかどうかで救済内容に倍以上の格差をつけることは、法の下の平等を定めた憲法14条にも抵触する疑いが濃厚です。

2026年1月15日の撤回要求の詳細

提出された要請書の内容

2026年1月15日、厚生労働省前および記者会見場において、弁護士グループと支援団体「いのちのとりで裁判全国アクション」は、政府の対応に対し断固たる抗議を行いました。全国1254人の弁護士が賛同した声明文と40万筆を超える署名とともに提出された要請書の骨子は以下の内容でした。

まず「高さ調整」の即時撤回として、判決の趣旨に反する後出しジャンケン的な減額調整を撤回し、2013年の基準に戻すことを求めています。次に完全な被害回復として、原告・非原告を問わず、デフレ調整およびゆがみ調整によって不当に減額された全期間の差額を全額支給することを求めています。また、謝罪と検証として、10年以上にわたり違法な状態で受給者の生活を圧迫し続けたことへの謝罪と、なぜ専門家の意見を無視してデフレ調整が強行されたのか第三者委員会による徹底的な検証を行うことを求めています。さらに「水準均衡方式」の見直しとして、一般低所得世帯との比較で基準を決める現行方式が貧困のスパイラルを招いている現状を改めることを求めています。

当事者が語る生活の実態

記者会見には、長年法廷で戦ってきた原告も出席し、悲痛な叫びを上げました。埼玉訴訟の原告である佐藤晃一さんは「月3900円の減額は、私にとって3日分の食材費にあたる」と語りました。また、愛知訴訟原告の千代盛学さん(71歳、視覚障害者)は、月13万円の保護費から2650円減額された生活の実態を語りました。朝は薬を飲むためのパン1個、昼は抜き、夜は冷凍した手料理を少しずつ食べる生活です。「生かさず殺さずの状態」と表現されるその生活では、週に一度のシャワーがやっとで、夏場のクーラーも控えざるを得ません。「国は間違いを認めてほしい」という彼の言葉は、単なる金額の問題を超えた人間の尊厳に関わる訴えです。

原告団からは、すでに裁判の途中で232名以上の原告が亡くなっていることも報告されました。「死んでから勝っても意味がない」「生きているうちに人間らしい生活を取り戻したい」という切実な願いが会場を包みました。

インフレ下での「10万円」の問題点

深刻化する物価高騰の影響

政府が提示する「10万円の一時金」が、いかに現実の生活実態とかけ離れているか、2025年から2026年にかけての経済データが示しています。食料インフレについては、2025年11月時点での食料インフレ率は6.10%に達し、一部統計では前年同月比7.1%の上昇を記録しています。特に、日本人の主食である米類は2024年後半からの急騰が続き、前年比で約50%近い上昇を見せています。また、コーヒー豆(+64.1%)やチョコレート(+50.9%)など、嗜好品も含めた広範な品目で価格が倍増しており、食卓を直撃しています。

電気やガスなどの光熱費も上昇傾向にあり、政府の補助金終了の影響もあって家計負担は増大しています。2025年の消費者物価指数(コアCPI)は2.7%の上昇、2026年も1.7%から2.0%の上昇が見込まれており、物価高は一過性のものではありません。

補償額の実質的な価値

生活保護世帯のエンゲル係数(消費支出に占める食費の割合)は一般世帯よりも高く、食料品価格の高騰は生存に直結します。政府が提示した「約10万円(単身)」という金額は、現在の物価水準においては単身世帯の生活費の1ヶ月分にも満たない額です。これを、2013年から12年間にわたって毎月削られ続けた金額の総額として提示することは、経済的な合理性を欠いています。

10年間の累積的な減額総額は、単純計算でも数十万円に上ります。さらに、その間に買い替えられなかった家電製品、我慢した医療、切り詰めた栄養費などを考慮すれば、被害の実態は「10万円」では到底償えない規模に達しています。インフレによって貨幣価値が下がっている2026年において、過去の減額分を利子もつけず、さらに「高さ調整」で目減りさせて返還することは、実質的な価値としてはさらに低い補償しか行わないことを意味します。

水準均衡方式が抱える構造的な問題

比較対象の問題点

今回の「高さ調整」の根拠とされている「水準均衡方式」自体が抱える構造的な欠陥についても、専門家から強い批判が上がっています。厚生労働省は、生活保護基準を「一般国民の所得下位10%層の消費実態」に合わせて設定する方針(水準均衡方式)をとっています。しかし、ここには重大な落とし穴があります。

日本の所得格差が拡大し、ワーキングプアが増加する中で、「所得下位10%層」の生活水準自体が、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を割り込んでいる可能性が極めて高いのです。最低賃金が生活保護基準ギリギリ、あるいはそれを下回る地域も存在し、年金支給額も抑制されています。このように貧困化が進む層を比較対象(物差し)にすれば、生活保護基準は自動的に下がり続けます。そして生活保護基準が下がれば、それに連動している最低賃金や住民税非課税基準、就学援助の基準も下がる圧力を受けることになります。

貧困のスパイラル

弁護士や支援団体は、これを「貧困のスパイラル」あるいは「引き下げの悪循環」と呼んで警鐘を鳴らしています。「一番苦しい人たちに合わせて生活保護も下げる」という論理は、社会全体の最低生活水準(ナショナル・ミニマム)を底なしに引き下げる結果を招きます。今回の「高さ調整」は、まさにこの「貧困層との比較」を根拠に最高裁で違法とされた減額を正当化しようとするものであり、この論理を許せば、将来にわたって生活保護基準が上がりようのないシステムが固定化されてしまいます。

本来あるべき生活保護基準の決定方式は、生存に必要なカロリーや物品を積み上げて算出する「マーケット・バスケット方式」など、絶対的な必要量を基準にすべきであるとの提言が長年なされています。

他の社会保障制度への波及効果

就学援助や住民税非課税への影響

生活保護基準の問題は、受給者だけの問題ではありません。それは日本社会全体のセーフティネットの強度を決める「錨」の役割を果たしています。生活保護基準の引き下げは、直ちに他の多くの制度に連鎖します。

就学援助については、多くの自治体で就学援助の対象基準は生活保護基準の1.0倍から1.3倍などに設定されています。保護基準が下がれば、援助を受けられなくなる子供が増えることになります。住民税非課税限度額についても生活保護基準に連動しており、基準が下がれば、これまで非課税だった低所得世帯に課税されるようになり、国民健康保険料や介護保険料の負担増にもつながります。

最低賃金への影響

最低賃金は「生活保護水準を下回らないこと」が決定の重要な要素です。保護基準が低く抑えられれば、最低賃金の大幅な引き上げを阻害する要因となります。したがって、今回の「撤回要求」は広く低所得者層全体の利益を守るための闘いでもあります。

今後予想される法的展開

審査請求と新たな訴訟の可能性

政府が「高さ調整」を撤回しない場合、以下のような展開が予想されます。原告団および一般受給者は、今回決定された「追加給付」の決定通知に対し、不服申し立て(審査請求)を行う方針を固めています。審査請求が却下されれば、新たな行政訴訟(第二次いのちのとりで裁判)が全国で提起されることになるでしょう。

国会でも、野党は最高裁判決の趣旨をないがしろにする政府の対応を厳しく追及する構えです。特に「原告と非原告の差別」については合理的な説明が困難であり、大きな争点となります。また、実際に事務を行う地方自治体からは、複雑な計算式や同じ市民を原告か否かで差別することへの戸惑いと反発の声が上がる可能性があります。

生活保護費減額調整と撤回要求をめぐる今後の焦点

2026年1月15日の撤回要求は、単なる金銭の支払いを求める行動ではありません。それは、行政が司法の最高判断を尊重し、自らの過ちを率直に認めて謝罪できるか、そして国家が最も困難な状況にある人々の「命」と「尊厳」を財政論理や数字のトリックよりも優先できるかという、国家の品格を問うものです。

「国は間違いを認めて欲しい」という千代盛さんの言葉は、今の日本社会が直面している倫理的な問いそのものです。10万円という現在の物価水準ではあまりに頼りない金額で、過去10年間の違法行為の幕引きを図ろうとする政府の姿勢に対し、司法、市民社会、そしてメディアがどのように対峙していくのかが問われています。この問題は、日本の生存権保障の未来を決定づける重要な分水嶺となるでしょう。

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