就労移行支援を利用しながら就職活動を行う方にとって、履歴書の志望動機は採用の合否を左右する重要な要素です。就労移行支援利用者の履歴書における志望動機の書き方は、「企業への貢献」を軸に、自身の経験やスキル、訓練での成果を具体的に盛り込むことがポイントとなります。本記事では、就労移行支援を利用中の方や障害者枠での就職を目指す方に向けて、履歴書のフォーマット選びから志望動機の構成、自己PRの技術、さらには合理的配慮の伝え方まで、採用担当者の心を動かす応募書類の作成方法を徹底的に解説します。就労移行支援事業所での訓練実績を強みに変え、面接へのチケットを確実に手にするための実践的なノウハウをお伝えします。

就労移行支援利用者が履歴書を書く前に理解すべき企業の視点
履歴書を作成する前に、まず採用する側の企業がどのような視点で応募書類を見ているのかを理解することが大切です。この視点を持つことで、書くべき内容の優先順位が明確になります。
障害者雇用で企業が最も重視する「安定就労」という観点
障害者雇用において、企業が求職者に期待する最も重要な要素は「安定して長く働き続けられること」です。一般枠の採用では即戦力性や高いスキルが最優先されることが多いですが、障害者雇用においては、スキル以上に「定着性」が重視される傾向にあります。採用コストをかけて採用した人材がすぐに離職してしまうことは、企業にとって大きな損失となるためです。
採用担当者は応募書類を見る際、無意識のうちに「体調は安定しているだろうか」「職場のルールを守れるだろうか」「既存社員とうまくやっていけるだろうか」という不安を抱えています。したがって、履歴書や面接全体を通じて発信すべき核心的メッセージは、「私は自分の障害を理解し、コントロールできており、安定して貴社に貢献し続けられます」という点に集約されます。この視点が欠けていると、どれほど立派な資格を持っていても採用には至りにくいのが現実です。
就労移行支援の利用歴が企業に与える安心感
就労移行支援事業所の利用実績は、企業に対して強力なアピールポイントとなります。企業の中には、独力で就職活動をしている求職者よりも、就労移行支援を利用している求職者を好む採用担当者が少なくありません。その理由は三つあります。
第一に、就労移行支援に通っているという事実自体が、「毎日決まった時間に通所できる」という勤怠安定性の証明になるからです。週5日、朝から夕方まで事業所に通い、訓練を受けた実績は、そのまま「会社に通える体力と生活リズム」の裏付けとなります。
第二に、客観的な自己理解が進んでいると期待されるからです。事業所での訓練や面談を通じて、自分の得意なこと、不得意なこと、ストレスのサイン、必要な配慮事項などが整理されている人材は、入社後のトラブルが少なく、マネジメントがしやすいと判断されます。
第三に、就職後の「定着支援」が期待できるからです。入社後に何か問題が起きた際、本人と企業の間に支援員が入って調整してくれる安心感は、企業にとって非常に大きなメリットとなります。
履歴書を作成する際は、この「就労移行支援を利用して準備を整えてきた」というプロセス自体を、隠すべき空白期間ではなく、強力なアピールポイントとして戦略的に位置づける必要があります。
就労移行支援利用者のための履歴書フォーマットの選び方
履歴書の中身に入る前に、「どの履歴書を使うか」という選択から戦略は始まっています。適切なフォーマットの選択は、あなたの情報を最も魅力的に見せるための土台となります。
厚生労働省様式とJIS規格の特徴と違い
長年、日本の履歴書といえば「JIS規格」の様式が標準とされてきました。しかし、2020年7月にJIS規格の解説書から履歴書の様式例が削除され、それに代わる形で2021年4月に厚生労働省が新たな様式例を公表しました。
厚生労働省様式の特徴として、性別欄が任意化され、「男・女」を選択する欄がなくなりました。また、「通勤時間」「扶養家族数」「配偶者の有無」「配偶者の扶養義務」といったプライバシー項目も削除されています。これにより、家族構成などのプライベートな事情ではなく、応募者本人の適性や能力に焦点が当てられるようになりました。志望動機欄は「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」として一つの大きな欄にまとめられており、自由度が高いのが特徴です。
JIS規格の特徴としては、学歴・職歴欄が広く、職歴が長い方が詳細に経歴を書きたい場合には有利です。一方で、自己PR欄が比較的小さいため、アピールしたい内容が多い障害者雇用の応募書類としては、やや窮屈に感じる可能性があります。
基本的には「厚生労働省様式」を選べば間違いありません。どの企業に出しても失礼にならず、最も標準的な選択です。ただし、職歴の多さやアピールしたいポイントの分量に合わせて、JIS規格や一般用フォーマットを使い分ける柔軟性も持ちましょう。
履歴書は手書きとパソコン作成どちらが適切か
かつては「履歴書は手書きで心を込めて書くもの」という考え方が根強くありましたが、現代の障害者雇用の現場においては、その常識は覆りつつあります。結論として、「パソコン作成」が圧倒的に推奨されます。
パソコンで履歴書を作成することには複数のメリットがあります。まず、パソコンで履歴書を作成すること自体が、WordやExcelの基本的な操作スキルを持っていることの証明になります。事務職やデータ入力職を希望する場合、これは必須のアピールとなります。次に、書き損じてもすぐに修正でき、誤字脱字のリスクを減らせます。企業ごとに志望動機を書き換える際も効率的です。さらに、採用担当者にとって、手書きの文字よりも活字の方が読みやすく、短時間で情報を把握できるため、好印象につながりやすい傾向があります。
手書きが必要なのは、企業側から「手書き必須」と指定があった場合のみです。その際は、黒のボールペンを使用し、消せるボールペンは避けてください。修正液や修正テープは絶対に使用せず、一文字でも間違えたら新しい用紙に書き直すのが鉄則です。
証明写真で好印象を与えるための撮影ポイント
履歴書の写真は、採用担当者が応募者の情報を読み取る前に目にする、極めて重要な「第一印象」の決定要素です。ここで「暗い」「だらしない」という印象を与えてしまうと、どれほど素晴らしい経歴が書かれていても、その内容がポジティブに伝わらなくなってしまいます。
撮影場所については、スピード写真機でも許容範囲ですが、可能な限り写真館での撮影をお勧めします。プロのカメラマンによる照明と姿勢の指導は、顔色を明るく健康的に見せ、「意欲」と「清潔感」を演出してくれます。
服装は、男性はダークスーツにネクタイ着用、女性もスーツやジャケット着用が基本です。シャツの第一ボタンが開いていたり、ネクタイが曲がっていたりしないよう注意します。髪型は、目や眉が見えるように整え、清潔感を最優先しましょう。
表情については、真顔すぎると「怖い」「暗い」印象になりがちです。口角をわずかに上げ、歯を見せない程度の穏やかな微笑みを意識することで、「一緒に働きやすそう」という親近感を与えることができます。自撮り写真、スナップ写真の切り抜き、プリクラ、過度な加工アプリの使用は、社会人としての常識を疑われるため絶対に避けましょう。
就労移行支援の利用歴を履歴書の職歴欄に書く方法
障害者雇用における履歴書作成で最も多くの方が悩むのが「職歴欄」です。「病気で働いていなかった期間はどう書けばいいのか」「就労移行支援に通っていたことは職歴になるのか」という疑問に対し、採用担当者の心理を踏まえて解説します。
職歴欄の基本ルールと正しい記載方法
まずは基本ルールの確認です。これらが守られていないと「事務処理能力が低い」「注意力が散漫」と判断されるリスクがあります。
年号については、履歴書全体を通して、西暦か和暦のどちらかに統一します。混在は避けてください。会社名は「株式会社」と正式名称で書き、「(株)」と略さないようにします。同様に、高校も「〇〇県立〇〇高等学校」と正式名称で記載します。
短期間の職歴については、原則として社会保険に加入していた職歴はすべて記載します。隠しても雇用保険の履歴などで発覚する可能性があり、経歴詐称とみなされるリスクがあるためです。基本は「正直かつ正確に」書くことが大切です。
空白期間をポジティブな準備期間として表現する方法
病気療養などで職歴に空白がある場合、それをそのままにしておくと、採用担当者は「何もしていなかったのではないか」「働く意欲が低いのではないか」というネガティブな想像を膨らませてしまいます。この空白期間を「回復と次なる飛躍のための準備期間」として再定義し、記述することが重要です。
採用担当者が空白期間について気にしているのは、過去の事実よりも、現在の状態と未来の予測です。したがって、説明の焦点は「過去の辛さ」ではなく「現在の回復と意欲」に合わせる必要があります。
具体的な表現例として、療養に専念していた場合は「体調不良により療養。現在は完治しており、主治医からも就労許可を得ております」と記載することで、「現在は問題ない」ことを明記し、担当者の最大の懸念である健康不安を払拭できます。
自己研鑽をしていた場合は「療養期間中、体調の回復に努めると同時に、独学で簿記3級の資格を取得しました」といった形で、休んでいる間も前向きに活動していたことを示せます。
生活リズムを確立していた場合は「再発防止のため、規則正しい生活習慣の確立とストレス管理法の習得に専念しておりました」と記載し、自己管理能力が高まったことをアピールできます。
就労移行支援事業所の通所歴の記載パターン
就労移行支援事業所での訓練期間は、雇用契約に基づかないため厳密な意味での「職歴」ではありません。しかし、これは「就労準備が整っていることの証明」であるため、履歴書上で積極的にアピールすべき情報です。
職歴欄に含めるパターンとして、職歴の時系列の中に組み込んで書く方法があります。わかりやすく、ブランク期間ではないことを視覚的に伝えられます。
| 年月 | 経歴 |
|---|---|
| 令和〇年〇月 | 株式会社A 退社 |
| 令和〇年〇月 | 就労移行支援事業所〇〇 通所開始(ビジネスマナー、PCスキル訓練、軽作業訓練に従事。週5日の通所を継続中) |
| 令和〇年〇月 | 同事業所 退所予定 |
自己PR欄や備考欄に書くパターンもあります。職歴欄はあくまで雇用契約のみとし、別の欄で補足する方法です。「職歴の空白期間については、就労移行支援事業所に通所し、就労に向けた訓練を行っておりました。現在は週5日安定して通所できており、就労可能な体力とリズムが整っております」といった形で記載します。
就労継続支援A型・B型経験者の職歴の書き方
就労継続支援A型は雇用契約があるため、堂々と「職歴」として記載します。会社名だけでなく「就労継続支援A型事業所〇〇」と明記することで、障害への配慮を受けながら就労していた実績を示せます。
就労継続支援B型は雇用契約はありませんが、実務経験として評価されることが多いため、職歴欄または自己PR欄に記載します。特に、「検品作業でミス率0%を達成」「皆勤賞を受賞」といった具体的な成果を添えることで、労働能力の高さをアピールできます。
就労移行支援利用者の志望動機の書き方と構成
志望動機は、履歴書の中で最も個性が表れる部分であり、採用担当者が「この人は自社に合うか」を判断する決定的な材料です。多くの応募者が陥りがちな「NGパターン」を避け、心に響く志望動機を作るためのフレームワークを解説します。
採用担当者の評価が低いNG志望動機の特徴
障害者雇用の応募書類でよく見られる、しかし採用担当者からの評価が低い志望動機には共通点があります。それは、「自分本位」になっていることです。
「勉強させてほしい」という表現は、会社は学校ではないため、受動的で貢献意欲が低いとみなされます。「家から近いから」「給料が良いから」という理由は、正直かもしれませんが、そのまま書くと「条件さえ良ければ他の会社でもいいのか」と思われます。
「自分の病気を治したい」という動機も避けるべきです。職場は治療の場ではなく、「リハビリのために働きたい」という動機は企業にとってリスクとして捉えられます。「配慮が充実しているから」という理由も、配慮環境に惹かれるのは当然ですが、それだけを志望動機にすると「権利ばかり主張する人」と誤解される恐れがあります。
採用担当者に響く志望動機の黄金の3段構成
採用担当者に響く志望動機には、必ず「貢献」の視点が含まれています。「私は貴社に何ができるか」を軸に、以下の3段構成で組み立てましょう。
第1段:結論(Why This Company?) では、なぜその会社を選んだのかを述べます。企業の理念、事業内容、独自の取り組みへの共感を示します。
第2段:根拠(Why Me?) では、自分のこれまでの経験、スキル、訓練での成果が、その会社の業務にどう活かせるかを説明します。
第3段:結び(Commitment) では、入社後の抱負として、配慮を受けながらもどのように貢献していきたいかという決意を述べます。
この構成に沿って志望動機を作成することで、採用担当者に「この人なら会ってみたい」と思わせる説得力のある内容になります。
障害特性別・職種別の志望動機例文テンプレート
具体的な例文を紹介します。これらをベースに、自分のエピソードを組み込んでアレンジしてください。
精神障害(うつ・双極性障害)の方が事務職を志望する場合は、回復の安定性と、過去の事務経験・PCスキルをアピールすることがポイントです。
「私が貴社を志望した理由は、『多様な人材が活躍できる社会の創造』という企業理念に深く共感し、その一翼を担いたいと考えたからです。前職では約5年間、一般事務としてデータ入力や電話応対、書類作成に従事しておりました。特に正確性と処理スピードには自信があり、月次のデータ集計業務ではミスの削減と効率化に貢献しました。体調不良により一度退職いたしましたが、現在は通院と服薬管理、生活リズムの改善により、主治医からも安定してフルタイム就労が可能との判断をいただいております。貴社におかれましては、これまでの事務経験と就労移行支援で磨き直したPCスキルを活かし、チームの業務を支える縁の下の力持ちとして貢献したいと考えております。自身の体調管理を徹底しつつ、周囲の方々と協調して長く安定して業務に取り組む所存です。」
発達障害(ASD/ADHD)の方が軽作業・製造職を志望する場合は、特性を「強み」として表現することがポイントです。
「貴社の製品がお客様の手元に届くまでの品質を支える、検品・軽作業の業務に魅力を感じ、志望いたしました。私には発達障害の特性がありますが、その一方で、決められた手順を正確に繰り返す作業や、細かい不備を見つける作業においては、高い集中力を持続させることができます。就労移行支援事業所でのピッキング訓練では、3ヶ月間ミスゼロを達成し、指導員からも『安心して作業を任せられる』との評価をいただきました。貴社に入社後は、この特性を活かして正確かつ迅速な作業を心がけ、生産性の向上と品質維持に貢献したいと考えております。また、報告・連絡・相談を徹底し、チームの一員として信頼される働きを目指します。」
身体障害(車椅子・内部障害)の方がテレワーク・ITエンジニア職を志望する場合は、IT活用で貢献する姿勢を示すことがポイントです。
「貴社が推進されているテレワークを中心とした柔軟な働き方と、障害の有無に関わらず成果を公平に評価する社風に強く惹かれ、応募いたしました。私は車椅子を使用しており通勤には物理的な課題がありますが、在宅勤務の環境であれば、移動の負担なく業務に最大限のパフォーマンスを発揮できます。前職ではWebエンジニアとしてJavaを用いたシステム開発に3年間従事し、納期遅れのない確実な実装を心がけてまいりました。現在は就労移行支援にて最新のフレームワークの学習も進めております。貴社におかれましても、これまでの開発経験と技術力を活かし、システムの品質向上と新規サービスの開発に貢献したいと考えております。」
知的障害の方が清掃・バックヤード職を志望する場合は、真面目さ、継続力、素直さをアピールすることがポイントです。
「私は、体を動かして働くことや、場所をきれいに掃除することが大好きで、貴社の清掃スタッフを志望しました。就労移行支援事業所では、ビルの清掃訓練を1年間休まず続けました。最初は道具の使い方が難しかったですが、指導員の方に教えてもらいながら練習し、今では手早くきれいにできるようになりました。『いつも丁寧に掃除してくれてありがとう』と言われるのがとても嬉しいです。難しい計算や複雑な説明を理解するのには少し時間がかかりますが、決められた手順を一度覚えれば、毎日同じように真面目に作業を続けることができます。貴社でも、お客様に気持ちよく過ごしていただけるよう、一生懸命、笑顔で清掃に取り組みたいと思います。」
就労移行支援利用者の自己PRの書き方とリフレーミング技術
自己PRは、「私にはこんな能力があります」と伝えるだけでなく、「私のこの特性は、御社の仕事にこのように役立ちます」と変換して伝える場です。障害特性を一見ネガティブなものと捉えず、視点を変えて「強み」として表現する技術が、面接官の印象を劇的に変えます。
障害特性を強みに変えるリフレーミングの具体例
自分の短所だと思っている部分は、裏を返せば長所になります。以下を参考に、自分の特性をポジティブな言葉に変換してみましょう。
神経質・心配性・不安が強い特性は、「正確性」「リスク管理能力」「細部への注意力」「慎重さ」という強みに変換できます。「細かい点が気になる性格を活かし、書類の誤字脱字チェックやデータ入力の整合性確認において高い精度を発揮します」とアピールできます。
こだわりが強い・融通が利かない特性は、「粘り強さ」「マニュアル遵守」「質の追求」「専門性」という強みに変換できます。「決められたルールや手順を徹底して守ることができます。品質のバラつきが許されない検品業務などで力を発揮します」とアピールできます。
内向的・口数が少ない特性は、「傾聴力」「真面目」「黙々と作業に集中できる」「口が堅い」という強みに変換できます。「周囲の雑音に惑わされず、目の前の作業に没頭できる集中力があります。守秘義務を徹底する業務にも向いています」とアピールできます。
感受性が強い・疲れやすい特性は、「共感力」「相手の立場で考えられる」「変化に気づく力」という強みに変換できます。「相手の些細な表情の変化や職場の雰囲気を感じ取ることができるため、困っている人へのサポートや細やかな気配りが可能です」とアピールできます。
衝動的・落ち着きがない特性は、「行動力」「発想力」「エネルギーがある」「好奇心旺盛」という強みに変換できます。「フットワークが軽く、新しい環境や変化に対しても恐れずに挑戦することができます」とアピールできます。
説得力のある自己PRを作るSTAR法とPREP法
自己PRをより説得力のあるものにするために、以下のフレームワークを使ってエピソードを構成します。
STAR法は、エピソードを具体的に語るための手法です。Situation(状況)として「どのような場面で」、Task(課題)として「何が問題だったか」、Action(行動)として「どう解決したか」、Result(結果)として「どうなったか」を順に説明します。
例えば、「前職のデータ入力業務で入力ミスが多く、ダブルチェックに時間がかかっていました。そこで自分専用のチェックリストを作成し、指差し確認を導入しました。その結果、ミスがゼロになり、作業時間を20%短縮できました」という形で構成します。
PREP法は、話の要点を明確にするための手法で、履歴書の限られたスペースでは特に有効です。Point(結論)として「私の強みは、目標達成に向けた『継続力』と『正確性』です」と述べ、Reason(理由)として「一度決めたことは最後までやり遂げる責任感があるからです」と説明し、Example(具体例)として「就労移行支援事業所では、PC訓練において『ミスゼロ』を目標に掲げ、独自のチェック体制を実践しました。その結果、事業所内で最も正確な作業ができると評価されました」と示し、最後にPoint(結論)として「この強みを活かし、貴社の事務部門においても、信頼される戦力として貢献したいと考えています」と締めくくります。
合理的配慮の伝え方とナビゲーションブックの作成方法
障害者雇用において、企業とのミスマッチを防ぐ最大の鍵は「合理的配慮」のすり合わせです。しかし、面接の場で口頭だけで全てを伝えるのは困難です。そこで役立つのが、「ナビゲーションブック」という補助資料です。
ナビゲーションブックとは何か
ナビゲーションブックとは、自身のプロフィール、障害特性、得意なこと、苦手なこと、就労上で必要な配慮事項、そして自分で行っている対処法を体系的にまとめた資料です。「自分の取扱説明書」とも呼ばれます。履歴書や職務経歴書とは別に作成し、面接時に提出または持参します。これにより、企業側は「この人をどうマネジメントすればよいか」を具体的にイメージでき、採用への不安が軽減されます。
配慮事項を伝える際の黄金の方程式
配慮を求める際に最も重要なのは、「配慮の要求」と「自分の対処」をセットで伝えることです。「〜してください」だけでは依存的に見えますが、「自分でも〜していますが、どうしても難しい部分は〜をお願いします」と伝えることで、自律した職業人としての姿勢を示すことができます。
構成フォーマットとして、「困りごと」としてどのような場面で何が起こるか、「必要な配慮」として企業にお願いしたい具体的なサポート、「自分の対処」としてその配慮を受ける代わりに自分で行う工夫を記載します。
障害・症状別の合理的配慮の具体的な記載例
以下は、ナビゲーションブックや履歴書の「本人希望記入欄」に使える、具体的な配慮依頼の例です。
通勤・勤務時間に関する配慮について、満員電車が困難な場合は「満員電車での通勤は精神的・身体的負担が大きく、体調悪化のリスクがあります。可能であれば、時差出勤やフレックスタイム制の利用を希望いたします」と依頼し、自分の対処として「混雑時間を避けることで安定して出勤し、業務終了時間を調整することで所定労働時間を確保します」と記載します。
通院の必要性がある場合は「月に1回、定期的な通院が必要です。業務に支障が出ないよう事前に調整いたしますので、半日休暇や時間単位有休の取得をご配慮いただけますと幸いです」と依頼し、「通院日は業務の閑散期や午後の時間帯を選び、引き継ぎを徹底します」と対処を示します。
コミュニケーション・指示に関する配慮について、聴覚障害や聴覚情報処理障害がある場合は「口頭での指示は聞き逃しや聞き間違いが発生する可能性があるため、重要な指示や連絡はチャットツール、メール、筆談など、文字ベースでお願いできますでしょうか」と依頼し、「口頭で指示を受けた際は、その場でメモを取り、内容を復唱して認識のズレがないか確認します」と対処を示します。
発達障害で曖昧な指示が苦手な場合は「『あれ』『これ』『適当に』といった抽象的な指示の理解が難しい傾向があります。具体的かつ明確な指示をいただけますと、ミスなく業務を遂行できます」と依頼し、「指示内容が不明確な場合は、そのままにせず、必ず質問させていただきます」と対処を示します。
環境・感覚過敏に関する配慮について、聴覚過敏がある場合は「周囲の話し声や電話の音が気になり、集中力が低下することがあります。業務に支障のない範囲で、ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓の使用を許可いただけますと幸いです」と依頼し、「電話対応が必要な時間はイヤホンを外すなど、業務に支障が出ないよう柔軟に対応します」と対処を示します。
休憩・体調管理に関する配慮について、疲れやすく集中力が続かない場合は「長時間の連続作業では集中力が低下しやすいため、1時間ごとに5分程度の小休憩を自席で取らせていただけますでしょうか。短時間の休憩を挟むことで、高いパフォーマンスを維持できます」と依頼し、「休憩時間はタイマーで管理し、業務時間を圧迫しないよう徹底します」と対処を示します。
履歴書提出前のチェックポイントと面接への準備
書類が完成しても、まだ終わりではありません。その書類を持って面接に臨むための最終チェックと、面接官へのアプローチ戦略を確認します。
履歴書提出前に確認すべきNGチェックリスト
提出ボタンを押す前、あるいは封筒に入れる前に、以下の項目を必ずチェックしてください。これらのミスは「不採用」に直結します。
使い回しをしていないかを確認します。志望動機がどの会社でも通じる汎用的な内容になっていませんか。会社ごとの固有名詞や事業内容に触れ、「その会社でなければならない理由」が含まれているか確認しましょう。
誤字脱字・略語がないかを確認します。「(株)」は使用せず「株式会社」と書きます。「H20」ではなく「平成20年」と書くのが正式です。
ネガティブすぎる表現がないかを確認します。「自信がありません」「配慮がないと働けません」といった依存的な表現は避け、「経験は浅いですが、学ぶ意欲はあります」「配慮があれば十分に力を発揮できます」という前向きな表現に変換しましょう。
修正液を使用していないかを確認します。履歴書は公的な文書の性格を持ちます。修正液や修正テープの使用は厳禁です。一枚書き直す労力が誠意として伝わります。
空欄がないかを確認します。「本人希望欄」や「趣味・特技」が空欄だと「書き忘れ」と思われます。特になければ「特になし(貴社の規定に従います)」などと記入して埋めましょう。
面接での逆質問の戦略と効果的な質問例
書類選考を通過した後に待つ面接では、書類に書いたことと面接で話すことの一貫性が問われます。面接官が最も見ているのは、就労の安定性、自己理解、職場定着の可能性の3点です。
面接の最後には必ず「何か質問はありますか」と聞かれます。ここで「特にありません」と答えるのはもったいないことです。以下のような質問で、意欲と働くイメージをアピールしましょう。
意欲を示す逆質問として「入社までに準備しておくべきスキルや、勉強しておくべきことはありますか」と質問できます。
定着を意識した逆質問として「配属予定の部署では、私と同じような障害のある方がどのような工夫をして活躍されていますか」「業務に慣れるまで、定期的な面談の機会などはありますでしょうか」と質問できます。
一方、「給料は上がりますか」「有給はすぐ取れますか」といった条件面ばかりを聞く質問は、働く意欲を疑われるため避けましょう。これらは内定後や最終段階で確認するのが適切です。
まとめ
就労移行支援を利用しながら就職活動を行う方にとって、履歴書の志望動機は単なる「経歴の記録」ではなく、面接という土俵に上がるための重要なマーケティングツールです。企業が障害者雇用で最も重視するのは「安定して長く働き続けられること」であり、就労移行支援の利用歴は、勤怠安定性、自己理解、定着支援の観点から、企業に安心感を与える強力なアピールポイントとなります。
志望動機は「貢献」を軸に、「なぜその会社か」「なぜ自分か」「入社後の決意」の3段構成で組み立てることで、採用担当者の心を動かす内容になります。自己PRでは、障害特性をリフレーミングして強みに変換し、STAR法やPREP法を使って説得力のあるエピソードを構成しましょう。合理的配慮を伝える際は、配慮の要求と自分の対処をセットで示すことで、自律した職業人としての姿勢をアピールできます。
障害者雇用における就職活動のゴールは、単に「内定をもらうこと」ではありません。自分自身の特性を深く理解し、必要な環境を言語化し、それを受け入れてくれる企業と対等なパートナーシップを結ぶこと、そしてその場所で「自分らしく、長く、安定して働き続けること」こそが真のゴールです。本記事で紹介した戦略や例文を、ぜひあなた自身の言葉にアレンジして活用してください。









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