老齢基礎年金を受け取っている人のうち、所得が一定の基準を下回る場合に上乗せされるのが、年金生活者支援給付金です。2026年度の給付基準額は月額5620円で、これは保険料を40年間すべて納めた人が受け取れる満額の目安になります。実際に受け取れる金額は納付期間や免除期間によって変わるため、自分の場合どのくらいの上乗せを見込めるのか、事前につかんでおく必要があります。この記事では、2026年度の給付基準額や支給要件、納付状況別の試算額、申請から振込までの流れを、厚生労働省と日本年金機構が公表している情報にもとづいて整理します。あわせて、年金だけでは生活費を賄いきれない世帯の実情や、iDeCoなど追加の備えについても触れていきます。

年金生活者支援給付金の支給額は月5620円が2026年度の基準
年金生活者支援給付金の2026年度の給付基準額は、月5620円です。前年度と比べると170円、率にしておよそ3.2%の増額になっています。この制度は、2019年10月1日に消費税率が8%から10%へ引き上げられた際、その引き上げ分である2%を財源として創設されました。所得が一定の水準より低い年金受給者に対し、通常の年金とは別枠で月額を上乗せする仕組みで、創設当初の基準額は月5000円でしたが、その後は物価動向などに応じて毎年度改定されています。
この制度は単発の給付金ではなく、「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」にもとづく恒久的な仕組みです。一度支給が決定すれば、要件を満たしているあいだは通常の年金と同じ口座へ継続的に振り込まれます。対象は老齢基礎年金の受給者だけでなく、障害年金や遺族年金の受給者のうち所得などの要件を満たす人も含まれており、老齢・障害・遺族の3区分でそれぞれ基準額が設定されています。
老齢厚生年金は平均月15万289円、老齢基礎年金は平均月5万9310円
厚生労働省の公表データによると、会社員や公務員などが加入する老齢厚生年金の平均年金月額は、全体で15万289円です。男性は16万9967円、女性は11万1413円で、この金額には国民年金の分も含まれています。自営業者や専業主婦などが対象になる老齢基礎年金は、全体の平均が5万9310円で、男性が6万1595円、女性が5万7582円です。
実際の受給額は、現役時代の加入期間や標準報酬月額、標準賞与額によって個人差が大きく出ます。住居費や医療費、健康状態によっては公的年金だけで毎月の生活費をすべて賄うのが難しいケースも珍しくなく、多くの世帯がプラスアルファの備えを必要としているのが実情です。ファイナンシャルプランナーの橋本優理氏は、平均額はあくまで全体の目安であり、ねんきん定期便やねんきんネットを使って自身の将来の受給予想額と見込まれる生活費のギャップを把握しておくことが、具体的な対策の出発点になると述べています。
| 年金の種類 | 全体平均 | 男性平均 | 女性平均 |
|---|---|---|---|
| 老齢厚生年金(月額) | 15万289円 | 16万9967円 | 11万1413円 |
| 老齢基礎年金(月額) | 5万9310円 | 6万1595円 | 5万7582円 |
2026年度の年金額改定は基礎1.9%、厚生2.0%の増額
厚生労働省は2026年度、国民共通の基礎年金を2025年度から1.9%引き上げ、厚生年金についても2.0%の増額改定を行うと発表しました。これで4年連続のプラス改定になります。
改定率の算出には名目手取り賃金変動率2.1%が用いられ、そこから年金の給付水準を将来にわたって維持するためのマクロ経済スライドによる調整として、マイナス0.2%が差し引かれた結果、実際の改定率は1.9%となりました。マクロ経済スライドとは、物価や賃金が上昇しても年金額の伸びをその分だけ抑える仕組みで、少子高齢化が進むなかで年金制度を長期的に持続させるための調整弁として機能しています。
夫が会社員、妻が専業主婦というモデル世帯、具体的には夫が平均標準報酬45万5000円で40年間就業したと仮定した場合、2026年度の老齢厚生年金は夫婦2人分の老齢基礎年金を含めて月23万7279円で、前年度比プラス4495円になります。先ほどの老齢厚生年金の平均受給額(全体で15万289円)と比べると、モデル世帯のほうがかなり高い水準です。これはモデル世帯の試算が「平均的な標準報酬で40年間フルに就業した場合」という条件を前提としているためで、実際の受給額は加入期間や報酬水準によって上下します。
支給対象は65歳以上・市町村民税非課税など3つの要件
老齢年金生活者支援給付金を受け取るには、65歳以上で老齢基礎年金を受給していること、本人と世帯全員が市町村民税非課税であること、そして前年の年金収入額とその他の所得の合計が所得基準額以下であることの、3つの条件をすべて満たす必要があります。2026年度の所得基準額は80万9000円から90万9000円の範囲に設定されています。
この所得基準額は毎年度見直される可能性があり、年度によって金額が変動します。基準額をわずかに超えるだけで対象外になるケースもあるため、自身の前年所得を正確に把握しておくことが重要です。2026年度の給付基準額(月額5620円)は、前年度と比べて170円、約3.2%の増額になっており、物価上昇に合わせて毎年度改定される仕組みのため、今後も社会情勢に応じて見直される見込みです。
保険料480カ月納付なら合計7万6228円が受給総額の目安
支給要件を満たし、国民年金保険料を40年間、480カ月すべて納付済みの場合は、毎月5620円が支給されます。この場合、老齢基礎年金の満額(月額7万608円、昭和31年4月2日以降生まれの人が対象)と合わせると、受給総額は月7万6228円になります。
保険料の納付状況や免除期間によって、実際に受け取れる給付金と老齢基礎年金の額は大きく異なります。以下は、1956年4月2日以降生まれで支給要件を満たした人を対象にした、納付パターン別の概算です。老齢基礎年金額は、免除期間を2分の1(国庫負担分)で評価した概算値になっています。
| 納付状況 | 給付金(月額) | 老齢基礎年金(月額) | 合計(月額) |
|---|---|---|---|
| 480カ月納付(免除なし) | 5620円 | 7万608円 | 7万6228円 |
| 400カ月納付(免除なし) | 4683円 | 5万8840円 | 6万3523円 |
| 360カ月納付・120カ月全額免除 | 7157円 | 6万1782円 | 6万8939円 |
| 300カ月納付・180カ月全額免除 | 7926円 | 5万7369円 | 6万5295円 |
| 240カ月納付・240カ月全額免除 | 8694円 | 5万2956円 | 6万1650円 |
| 240カ月納付(免除なし) | 2810円 | 3万5304円 | 3万8114円 |
| 120カ月納付・360カ月全額免除 | 1万231円 | 4万4130円 | 5万4361円 |
| 120カ月納付(免除なし) | 1405円 | 1万7652円 | 1万9057円 |
| 納付なし・480カ月全額免除 | 1万1768円 | 3万5304円 | 4万7072円 |
この表からわかるとおり、納付月数が同じでも「免除なしで納付した期間」と「全額免除を受けた期間」とでは、給付金と老齢基礎年金の合計額の構成比がかなり違います。全額免除期間が長いケースほど給付金の割合は大きくなる一方、老齢基礎年金そのものは下がる傾向にあり、両方を合わせた実際の月額で比較することが欠かせません。480カ月フルで納付した場合の合計額(7万6228円)と、120カ月納付・360カ月全額免除だった場合の合計額(5万4361円)を比べると、月額で2万円以上の差になります。年間ではおよそ26万円以上の差になり、老後の家計への影響は小さくありません。
実際の平均受給額は基準額の約78%にとどまる月4249円
これまで見てきた月5620円という数字は、保険料を480カ月すべて納付した場合に受け取れる満額の基準額です。しかし実際に受給している人の平均額は、この基準額を下回っています。
令和8年3月現在、老齢年金生活者支援給付金の認定件数は438万4472件、給付金総額(月額)は186億2900万円にのぼります。これを受給者1人あたりに換算すると、平均給付金額は月4249円でした。令和7年度の基準額(月5450円)と比べると1201円低く、基準額のおよそ78%にとどまる水準です。
実際の平均受給額が基準額を下回る背景には、保険料の未納期間や免除期間の有無、老齢基礎年金の受給資格期間の長短など、加入履歴の違いが影響しています。先ほどの試算表でも示したとおり、保険料の納付済期間が480カ月に満たない人や、免除期間を含む人は、基準額どおりの5620円を受け取れるとは限りません。「年金生活者支援給付金イコール月5620円」という基準額の数字だけをそのまま受け取るのではなく、自身の納付実績に応じた見込み額を、ねんきん定期便や年金事務所への相談を通じて個別に確認しておくと、現実的な老後資金計画につながります。
障害年金・遺族年金向け給付金は所得基準472万1000円が目安
年金生活者支援給付金には、老齢基礎年金の受給者を対象とした老齢年金生活者支援給付金のほかに、障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金の2種類があります。障害年金生活者支援給付金は、障害等級1級の場合が月7025円(前年比プラス212円)、障害等級2級の場合が月5620円(前年比プラス170円)です。遺族年金生活者支援給付金は月5620円(前年比プラス170円)になっています。
これらは、前年の所得が扶養親族なしの場合で472万1000円以下であることが支給要件の目安とされており、老齢年金生活者支援給付金とは所得基準の考え方が異なります。より正確には、所得基準額は「472万1000円+扶養親族の数×38万円」以下という式で計算され、扶養親族が同一生計配偶者のうち70歳以上の人や老人扶養親族に該当する場合は1人につき48万円、特定扶養親族や16歳以上19歳未満の扶養親族に該当する場合は1人につき63万円が加算されます。扶養親族の人数や属性が多いほど、所得基準額の上限は高くなる仕組みです。
なお、この所得判定では、障害年金や遺族年金そのものといった非課税収入は判定に用いる所得に含まれません。老齢年金生活者支援給付金の判定で使う「年金収入額とその他所得の合計」とは考え方が異なる部分なので、自分がどの制度区分に該当するかによって、確認すべき所得の範囲も変わってきます。
補足的老齢年金生活者支援給付金は所得基準超過者への経過措置
前年の年金収入額とその他の所得の合計が80万9000円を超え90万9000円以下(昭和31年4月1日以前生まれの人は80万6700円を超え90万6700円以下)の場合には、通常の老齢年金生活者支援給付金の代わりに補足的老齢年金生活者支援給付金が支給されます。所得基準額をわずかに超えたことで給付金がまったくもらえなくなる急激な変化を緩和するための、経過的な仕組みです。
補足的老齢年金生活者支援給付金の金額は、5620円に保険料納付済期間を480カ月で割った数値と、調整支給率を掛け合わせて算出します。調整支給率は生年月日によって異なり、昭和31年4月2日以後生まれの人は(90万9000円-前年の年金収入金額とその他の所得の合計)を10万円で割った数値、昭和31年4月1日以前生まれの人は(90万6700円-前年の年金収入金額とその他の所得の合計)を10万円で割った数値になります。所得が基準額の下限に近いほど調整支給率は1に近づき、給付額は通常の給付基準額に近くなります。逆に所得が上限に近づくほど調整支給率は0に近づき、給付額は少なくなっていきます。
国民年金保険料の免除期間を有する人については、老齢基礎年金額の引き上げに伴う支給額の改定が2026年4月分から実施されました。年度替わりのタイミングで受給額が変動することがあるため、毎年度、自身に届く通知書などで金額を確認しておくとよいでしょう。
申請は郵送・電子申請・窓口の3通り、緑の封筒に注意
年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受給しているだけで自動的に支給されるものではなく、原則として本人による請求手続きが必要です。対象になる可能性がある人には、日本年金機構から緑の封筒で年金生活者支援給付金請求書が送付されます。令和7年1月以降は、はがき型の請求書が送付されるケースもあり、届いた場合はその様式に沿って手続きを進める必要があります。
手続きの方法は主に3通りです。ひとつは郵送による提出で、送付された請求書に氏名などの必要事項を記入し、近くの年金事務所へ郵送します。もうひとつはマイナンバーカードとスマートフォンを使い、マイナポータル経由でオンライン申請する電子申請で、これははがき型の請求書が届いた人が対象です。3つめは年金事務所の窓口で、新たに年金請求を行う際に給付金請求書もあわせて窓口へ提出する方法になります。請求書を提出しないまま放置すると、本来受け取れるはずの給付金を受け取れない状態が続くため、対象になりうる人は早めに手続きを済ませておいたほうがよいでしょう。送付されるはずの請求書が届かない、あるいは紛失してしまった場合は、最寄りの年金事務所や年金相談センターに問い合わせれば、手続き方法の案内を受けられます。
支給は偶数月の中旬、前月分と前々月分をまとめて振込
振込のタイミングは、原則として偶数月の中旬に、前月分と前々月分の2カ月分をまとめて、通常の年金と同じ受取口座へ、年金とは別枠で支払う形が取られています。たとえば10月分と11月分の給付金は、12月中旬にまとめて振り込まれます。請求手続きが完了した月の翌月分から支払いが始まるのが原則なので、請求が遅れるほど、さかのぼって受け取れる開始時期も後ろ倒しになる点には注意が必要です。
請求書を提出してから実際に支給が決定するまでは、おおむね1〜2カ月程度かかります。支給が決定すると、日本年金機構から「年金生活者支援給付金 支給決定通知書」が送付され、その後、初回の支払月の上旬にはあらためて振込通知書が届く流れです。
通常の年金と年金生活者支援給付金を同時に受給している人については、これまで別々に送付されていた年金の改定通知書・振込通知書と、給付金の同種の通知書が、大判はがき1枚にまとめて送付される仕組みに変わっています。毎年度、金額が改定されるたびにこの通知書が届くため、内容を確認して自身の受給額の推移を把握しておくとよいでしょう。
引っ越しをした場合の住所変更については、日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば原則として別途の届出は不要です。一方で、マイナンバーが未登録の場合や、住民票上の住所と実際の居住地が異なる場合、成年後見を受けている場合などは、あらためて住所変更の届出が必要になります。国民年金の第1号被保険者については、原則として住民票の転出・転入・区内転居の届出を行えば、国民年金にかかる住所変更の手続きも連動して完了する仕組みです。制度全般についての疑問や、自身が対象になるかどうかを個別に確認したい場合は、年金生活者支援給付金専用ダイヤル(ナビダイヤル0570-05-4092)や、最寄りの年金事務所に問い合わせると、より詳しい案内を受けられます。
65歳以上夫婦のみ世帯は月4万円以上の赤字、iDeCo拡充も選択肢に
公的年金や給付金制度は老後の貴重な基盤ですが、満額を受給できたとしても、それだけで生活費のすべてをカバーできるとは限りません。総務省の2025年の調査によると、65歳以上で夫婦のみ・無職の世帯における平均的な家計は、月4万円以上の赤字になっています。年金生活者支援給付金や公的年金の受給額だけでは、この赤字分を完全にカバーしきれないケースが多く、現役時代からの資産形成の必要性を裏づける数字です。
まずは、ねんきん定期便やねんきんネットで現在の加入実績にもとづく将来の年金見込み額を確認し、老齢基礎年金の納付月数・免除月数を洗い出して、年金生活者支援給付金の支給要件に該当するかどうかをチェックしておきましょう。そのうえで、老後に想定される生活費と年金・給付金の見込み額との差額を試算し、差額が生じる場合は就労継続やiDeCo、NISAなどの資産形成、個人年金保険といった追加の備えを検討する、という流れで自身の状況を確認していく方法が現実的です。
2026年4月からは、年金制度改正にもとづいてiDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額が段階的に引き上げられ、加入可能年齢も働き方にかかわらず70歳未満まで拡大されました。自営業者などの第1号被保険者は月7万5000円、会社員や公務員などの第2号被保険者は月6万2000円まで拠出限度額が引き上げられており、70歳未満で老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受け取っていない人であれば、iDeCoへの加入や拠出の継続が可能です。iDeCoは掛金の拠出時・運用時・受け取り時のそれぞれで税制優遇を受けられる制度で、NISA(少額投資非課税制度)は資金を比較的自由に引き出せる柔軟性が特徴です。両制度を目的や資金の流動性ニーズに応じて使い分けることが、老後資金づくりの選択肢のひとつになっています。
2026年度の老齢年金生活者支援給付金は、給付基準額が月5620円で、保険料を40年間480カ月すべて納付した場合、老齢基礎年金の満額(月7万608円)と合わせて月7万6228円が受給総額の目安になります。一方で、納付月数や免除月数によって給付金と年金額の組み合わせは大きく変わり、免除期間が多いケースほど給付金の割合が高くなる一方、老齢基礎年金は少なくなる傾向があります。公的年金の平均受給額を見ても、老齢厚生年金で月15万289円程度、老齢基礎年金で月5万9310円程度が目安とされ、性別や現役時代の働き方によって差が大きいのが実情です。年金生活者支援給付金はあくまで低所得の年金受給者を下支えする制度で、これだけで老後の生活費すべてをカバーできるとは限りません。自身の年金見込み額と支給要件を早めに把握し、必要に応じて資産形成などの備えを検討しておくことが、老後の安心につながる一歩になります。








