精神科訪問看護とは、精神疾患を持つ方が自宅で安心して療養生活を送れるよう、看護師や作業療法士などの専門職が訪問して支援を行う医療サービスです。精神科訪問看護における医療保険と介護保険の使い分けで最も重要なポイントは、精神科訪問看護指示書が交付された場合、要介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されるという点です。算定要件としては、精神科での勤務経験1年以上、または所定の20時間以上の研修を修了していることが必要となっています。
精神疾患を抱える患者数は増加傾向にあり、入院医療から地域生活への移行が進む中で、精神科訪問看護の重要性はますます高まっています。しかし、医療保険と介護保険のどちらが適用されるのか、算定要件として何が求められるのかなど、制度が複雑であるため正しく理解することが欠かせません。この記事では、精神科訪問看護における医療保険と介護保険の使い分けの判断基準、算定要件の詳細、2024年度診療報酬改定の変更点、自立支援医療制度の活用方法まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。

精神科訪問看護とは?対象疾患と利用条件の基本
精神科訪問看護とは、精神疾患を持つ方やその家族に対して、看護師や作業療法士などの専門職が自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。通常の訪問看護との大きな違いは、精神疾患に特化した専門的なケアを提供する点にあります。精神状態の観察や評価、服薬指導、日常生活の支援、家族への支援など、精神科領域に特有のケアを中心に実施します。
精神科訪問看護の対象となる疾患
精神科訪問看護の対象となる疾患は、世界保健機関(WHO)が提唱する国際疾病分類(ICD)における「精神および行動の障害」の分類(F00からF99)のすべてです。主な対象疾患としては、統合失調症、うつ病・双極性障害、適応障害、発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害など)、アルコール依存症や薬物依存症といった依存症、さらにパニック障害、強迫性障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などが含まれます。
統合失調症は現実感覚の歪みや幻覚、妄想などを特徴とする重度の精神疾患であり、日常生活での自立支援と服薬管理が重要となります。うつ病と双極性障害は気分障害の一種で、気分の波が極端に変動することがあるため、定期的なモニタリングと症状変化への早期対応が求められます。適応障害は環境の変化やストレスに対応できず心身の不調が生じる状態で、通常のストレス反応を超え日常生活に支障をきたすことが特徴です。
精神科訪問看護を利用するための条件
精神科訪問看護を利用するための基本条件は3つあります。まず精神科で精神疾患の診断を受けていること、次に精神科の主治医がいて通院していること、そして主治医が「精神科訪問看護指示書」を発行することです。この3つの条件を満たせば、基本的に誰でも精神科訪問看護を受けることができます。なお、精神疾患の診断を受けていない場合でも、精神的な理由で日常生活を送ることが困難な場合は対象となることがあります。
医療保険と介護保険の使い分け — 年齢別の適用基準
精神科訪問看護において、医療保険と介護保険のどちらが適用されるかは、利用者の年齢や認定状況、交付された指示書の種類によって決まります。原則として医療保険と介護保険を併用することはできず、介護保険の適用条件を満たしている場合は介護保険が優先されます。これは平成12年4月に施行された介護保険法により、在宅の要支援者・要介護者に対しては介護保険からの給付が優先されると定められたためです。
年齢区分ごとの保険適用
利用者の年齢によって適用される保険は異なります。
| 年齢区分 | 保険適用の原則 |
|---|---|
| 65歳以上 | 介護保険の第1号被保険者として、要支援・要介護認定を受けていれば原則として介護保険が適用 |
| 40歳以上65歳未満 | 16の特定疾病に該当し要支援・要介護認定を受けた場合は介護保険、それ以外は医療保険が適用 |
| 40歳未満 | 介護保険は利用不可、医療保険のみ適用 |
40歳以上65歳未満の方については、16の特定疾病に該当していても要支援・要介護に該当しない場合は医療保険が適用されます。また、厚生労働大臣が定める疾病等(末期のがん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など20種類)に該当する場合は、介護保険の認定を受けていても医療保険が適用されます。さらに、主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合は、14日間は医療保険が適用され、週に4日以上の訪問が可能となります。
精神科訪問看護指示書による医療保険優先の仕組み
精神科訪問看護の最大の特徴は、介護保険の被保険者であっても、精神科訪問看護指示書が交付された場合は医療保険が優先されるという点です。これは精神科訪問看護が専門性の高いケアを必要とするためであり、65歳以上の要介護者であっても、精神科訪問看護指示書に基づく訪問看護は医療保険で算定することになります。精神科の主治医から「精神科訪問看護指示書」または「精神科特別訪問看護指示書」が発行された段階で、要介護認定の有無にかかわらず医療保険での訪問看護が提供されます。
精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書の違い
精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書には、発行できる医師、適用保険、併用の可否、対象職種の4つの点で重要な違いがあります。
| 比較項目 | 精神科訪問看護指示書 | 通常の訪問看護指示書 |
|---|---|---|
| 発行できる医師 | 精神科を標榜する医療機関の精神科担当医師のみ | 主治医全般 |
| 適用保険 | 交付された時点で医療保険が優先 | 疾患や利用者の状態により異なる |
| 併用 | 通常の訪問看護指示書とは併用不可 | 精神科訪問看護指示書とは併用不可 |
| 対象職種 | 看護師、作業療法士、精神保健福祉士、保健師 | 看護師等 |
この2つの指示書は併用できないため、同一の利用者に対してはどちらか一方の指示書のみが交付されます。どちらの指示書が交付されるかによって適用される保険が変わるため、訪問看護ステーションでは指示書の種類を正確に確認することが重要です。
認知症が主傷病の場合に注意すべきポイント
認知症は精神疾患と混同されやすいですが、認知症が主傷病である場合は精神科訪問看護指示書の対象外となり、通常の訪問看護指示書によって介護保険が適用されます。精神科訪問看護指示書の主たる傷病名に認知症のみが記載されている場合、その指示書は無効となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
精神疾患を有する患者であり精神科訪問看護指示書が交付された場合は、要介護被保険者等であっても算定できるとされていますが、認知症が主傷病であって精神科訪問看護指示書が交付された患者については算定できないと規定されています。ただし例外として、指示書を発行する医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定している利用者については、認知症であっても精神科訪問看護の対象となります。この例外規定は実務上見落としやすいポイントであるため、該当する利用者がいる場合は医療機関との連携を密にとることが大切です。
精神科訪問看護基本療養費の算定要件と届出の詳細
精神科訪問看護基本療養費とは、精神疾患のある利用者やその家族に対して訪問看護を行った場合に給付される費用です。精神科訪問看護基本療養費には第1から第4までの種類があります。なお、精神科訪問看護基本療養費(II)は2018年4月の診療報酬改定によって廃止されました。
精神科訪問看護基本療養費の種類
精神科訪問看護基本療養費(I)は、同一建物居住者以外の利用者に対して精神科訪問看護サービスを提供した場合に算定する療養費です。「イ」は保健師・看護師・作業療法士が訪問看護サービスを提供した場合に、「ロ」は准看護師が訪問看護サービスを提供した場合に算定します。精神科訪問看護基本療養費(III)は、同一日に同一建物居住者に訪問看護サービスを提供する場合に算定します。精神科訪問看護基本療養費(IV)は、在宅療養に向けて外泊をしている入院患者のうち、厚生労働大臣が定める状態の利用者に対して精神科訪問看護サービスを提供した場合に算定する療養費です。
職員に求められる資格要件
精神科訪問看護基本療養費を算定するには、「精神疾患を有する者に対する看護について相当の経験を有する」保健師・看護師・准看護師・作業療法士が訪問看護を行う必要があります。「相当の経験を有する」とは、精神科を標榜する保険医療機関の精神病棟または精神科外来に1年以上勤務した経験がある者、精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験が1年以上ある者、精神保健福祉センターまたは保健所等における精神保健に関する業務経験が1年以上ある者、または国・都道府県・医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する20時間以上の研修を修了し修了証が交付されている者のいずれかに該当する者を指します。
算定要件を満たすための研修制度
精神科の実務経験がない看護師等が精神科訪問看護基本療養費を算定するためには、20時間以上の所定の研修を受講する必要があります。研修カリキュラムには、精神疾患を有する者に関するアセスメント、病状悪化の早期発見・危機介入、精神科薬物療法に関する援助、医療継続の支援、利用者との信頼関係構築・対人関係の援助、日常生活の援助、多職種との連携、GAF尺度による利用者の状態の評価方法の8項目が含まれます。研修は「日本訪問看護財団」「全国訪問看護事業協会」「日本介護福祉士実務者研修養成協会東北福祉カレッジ」などが実施しています。研修修了後は、最寄りの地方厚生(支)局に届出を行うことで、翌月から算定が可能となります。
届出の手続き
精神科訪問看護基本療養費を算定するには、地方厚生(支)局に「精神科訪問看護基本療養費に係る届出書」を提出する必要があります。各月の月末までに受理された届出は、その翌月から算定が可能になります。従事者の変更があった場合も算定要件に影響する変更となるため、速やかに変更届を提出することが求められます。
精神科訪問看護指示書の有効期間と記載要件
精神科訪問看護指示書は、入院中以外の精神疾患を有する患者に対して、適切な在宅医療を確保するために指定訪問看護に関する指示を行うことを評価するものです。患者の診療を担う保険医(精神科の医師に限る)が、診療に基づき指定訪問看護の必要性を認め、当該患者またはその家族等の同意を得て交付します。
有効期間の取り扱い
精神科訪問看護指示書の指示期間は1ヶ月から最長6ヶ月と定められています。その期間内で、利用者の状況に応じて主治医が期間を設定します。指示期間が空白の場合は記載日から1ヶ月間が有効期限となります。6ヶ月を超えた指示を設定している場合は無効となるため、指示書の受領時には必ず指示期間を確認することが重要です。
記載にあたっての注意事項
精神科訪問看護指示書の記載にあたっては、緊急時の連絡先として診療を行った保険医療機関の連絡先を必ず記載することが求められます。また、原則として主たる傷病名の傷病名コードを記載します。2024年度の診療報酬改定では、同年6月からレセプトのオンライン請求が開始されたことに伴い「傷病名コード」の記載が追加されました。主たる傷病名の項目には精神科訪問看護の対象となる病名が記載されていなければならず、認知症のみが記載されている場合は通常の訪問看護指示書の対象となります。
精神科特別訪問看護指示書について
精神科特別訪問看護指示書は、精神疾患を有する利用者が急性増悪等により一時的に頻回な訪問看護を必要とする場合に交付される指示書です。指示期間は最大14日間で、1ヶ月に1回限りの交付という制限があります。この指示書が交付されると、週4日以上の訪問が可能となるため、利用者の状態が急変した際には主治医との速やかな連携が求められます。
2024年度診療報酬改定による変更点とGAF尺度の重要性
2024年度の診療報酬改定では、訪問看護管理療養費に重要な変更がありました。これまで一律1日3,000円(月の2日目以降の訪問の場合)であった訪問看護管理療養費が、訪問看護管理療養費1(1日3,000円)と訪問看護管理療養費2(1日2,500円)の2区分に分けられました。
訪問看護管理療養費1の算定要件
訪問看護管理療養費1を算定するためには、訪問看護ステーション利用者のうち同一建物居住者の占める割合が7割未満であることが前提条件です。加えて、別表第7・第8に該当する者への訪問看護について相当な実績があること、または精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうちGAF尺度が40以下の利用者数が月に5人以上であることのいずれかに該当する必要があります。
GAF尺度の記載要件と重要性の高まり
GAF尺度(Global Assessment of Functioning:機能の全体的評定尺度)とは、精神障害者の社会的・職業的・心理的機能を0から100の数値で評価する尺度です。2020年の診療報酬改定では、精神障害のある利用者への訪問看護において、その月の初回訪問時のGAF尺度の点数を訪問看護記録書、訪問看護報告書、訪問看護療養費明細書に記載することが精神科訪問看護基本療養費の算定要件とされました。
2024年の改定ではGAF尺度の点数が従来以上に重視されることとなり、訪問看護管理療養費1の算定要件にもGAF尺度40以下の利用者数が基準として含まれるようになりました。訪問看護ステーションにとって、GAF尺度の適切な評価と記録がこれまで以上に重要な業務となっています。
精神科訪問看護の利用回数と訪問時間の制限
医療保険が適用となる精神科訪問看護は、原則として1日1回、週3日までが訪問回数の上限です。ただし、一定の条件を満たす場合は週3回を超えて利用することができます。
退院後3ヶ月以内の利用者には週5回まで精神科訪問看護が可能です。また、精神科特別訪問看護指示書が交付された場合は14日間にわたり週4日以上の訪問が可能となります。退院後3ヶ月を超えている利用者で週4日以上の訪問看護を必要とする場合は、精神科特別訪問看護指示書の交付が必要です。
訪問時間については、1回30分程度が標準的な時間となっています。利用者の状態や必要性に応じて訪問時間を調整することもあります。退院直後は状態が不安定になりやすいため、退院後3ヶ月以内に手厚い訪問体制が認められている点は制度設計上の大きなポイントです。
複数名訪問看護加算の算定要件と職種別の加算額
精神科訪問看護では、複数名で訪問した場合に複数名精神科訪問看護加算を算定できる場合があります。この加算を算定するためには、精神科訪問看護指示書に複数名訪問の必要性が記載されていること、利用者やその家族から複数名での訪問について同意を得ていること、保健師または看護師と他の専門職(保健師・看護師・作業療法士・准看護師・看護補助者・精神保健福祉士)による訪問であること、そして30分以上の訪問であることの4つの要件を満たす必要があります。
職種別の加算額と制限
職種と訪問回数によって加算額および算定日数の制限が異なります。
| 職種 | 加算額 | 制限 |
|---|---|---|
| 看護師 | 9,000円 | 1日に2回まで |
| 保健師 | 4,500円 | 1日に1回 |
| 作業療法士 | 14,500円 | 1日に3回以上の訪問が対象 |
| 看護補助者・精神保健福祉士 | 3,000円 | 週1日を限度 |
事業所の都合(新人研修や引き継ぎなど)で複数名で訪問する場合は加算の対象とならない点に注意が必要です。また、同意が得られたことを訪問看護記録に文書化しておくことが、算定上の重要な要件となっています。
自己負担額の軽減と自立支援医療制度の活用方法
医療保険で精神科訪問看護を利用する場合の自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。
| 年齢区分 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 小学生以上から70歳未満 | 3割 |
| 70歳以上75歳未満 | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上 | 1割(現役並み所得者は3割) |
自立支援医療制度による負担軽減
自立支援医療とは、心身の障害に対する医療費の自己負担を軽減できる制度です。精神疾患の治療のために医療機関に通院している方が対象で、通院で発生する医療費(診療や薬代)のほか、往診・デイケア・訪問看護なども対象になります。自立支援医療が適用されると、小学生以上から70歳未満の方の自己負担額は通常の3割から1割まで軽減されます。
月額上限額の設定
自立支援医療では、世帯の所得と疾病の状態(「重度かつ継続」に該当するかどうか)に応じて、月あたりの自己負担額の上限が設定されています。
| 所得区分 | 月額上限額 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 低所得1(市町村民税非課税世帯・本人収入80万円以下) | 2,500円 |
| 低所得2(市町村民税非課税世帯・本人収入80万円超) | 5,000円 |
| 中間所得層1(所得割3万3千円未満) | 5,000円(重度かつ継続の場合) |
| 中間所得層2(所得割3万3千円以上23万5千円未満) | 10,000円(重度かつ継続の場合) |
| 一定所得以上(所得割23万5千円以上) | 20,000円(重度かつ継続の場合) |
自立支援医療の申請方法
自立支援医療の申請には、自立支援医療費支給認定申請書、通院している病院・診療所の医師が記入した診断書、健康保険証、身元確認ができる書類(マイナンバーカード等)、世帯所得の状況が確認できる資料が必要です。有効期限は最大1年間で、毎年更新手続きが必要となります。申請は市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
なお、東京都では低所得者世帯向けに「精神障害者通院医療費助成」が設けられており、自己負担額が実質0円となる制度があります。各自治体によって独自の助成制度がある場合があるため、居住地の自治体に確認することをおすすめします。
精神科訪問看護の具体的な支援内容と多職種連携
精神科訪問看護の主な目的は「再発予防」「生活支援」「社会資源の活用支援」の3つです。精神疾患を持つ方が地域で安定した生活を送るためには、継続的な支援と見守りが欠かせません。精神科訪問看護師は利用者の自宅を定期的に訪問し、精神状態の観察や評価を行いながら日常生活を支援します。
服薬管理と日常生活の支援
精神科の治療において服薬は非常に重要な位置を占めます。精神科の処方薬は精神状態に直結するため、適切な服薬管理が病状の安定に不可欠です。しかし、精神疾患を抱える方の中には症状の特性上、毎日継続して内服することが難しい方も少なくありません。精神科訪問看護師は訪問時に服薬状況を確認し、利用者と相談しながら服薬管理を支援します。お薬カレンダーの活用や服薬時間と日常の習慣を結びつける工夫など、利用者の生活スタイルに合った方法を提案することで、症状の悪化を未然に防ぎ、入院に至らずに済むケースも多くあります。
日常生活の支援としては、生活リズムの調整、セルフケア支援、食事・栄養管理、外出支援など多岐にわたります。精神疾患を抱える方は昼夜逆転や不規則な生活になりやすい傾向があるため、睡眠状況の確認や日中の活動促進を通じて生活リズムの安定を図ります。外出への不安が強い利用者には、段階的に外出の機会を増やしていく支援も行います。
家族への支援と社会復帰のサポート
精神科訪問看護の対象は利用者本人だけでなく、その家族も含まれる点が精神科以外の訪問看護との大きな違いです。精神疾患を抱える利用者と家族は良好な関係を築きにくい傾向があり、家族は利用者の病気についての理解が不十分であったり、接し方に悩みを抱えていることが多いです。精神科訪問看護師は家族に対して、精神疾患についての適切な情報提供、利用者との接し方についてのアドバイス、家族自身の精神的なサポート、緊急時の対応方法の確認、利用可能な社会資源の紹介といった支援を行い、家族全体の健康維持と家族関係の改善を目指します。
社会復帰を目指す利用者には、地域活動支援センターでの軽作業や就労継続支援事業所の利用など、段階的な社会参加の機会を紹介します。居場所づくりや仲間との交流を持つ支援も行い、孤立を防ぎます。就労を目指す利用者には、就労支援機関との連携や職場での配慮事項についてのアドバイスも実施します。
多職種連携と緊急時の対応
精神科訪問看護師は、主治医・医療機関との連携において訪問看護報告書を通じて利用者の状態を報告し、症状の変化があった場合は速やかに対応を協議します。障害福祉サービスを利用している場合は相談支援専門員と情報を共有し、サービス等利用計画との整合性を図ります。市区町村の担当保健師と連携して地域での支援体制を構築するほか、介護保険サービスを併用している場合はケアマネジャーや介護サービス事業所とも連携し、切れ目のない支援を提供します。
精神状態が急激に悪化した場合や自傷・他害のリスクが高まった場合には、主治医や医療機関と連絡を取り適切な対応を行います。必要に応じて入院調整を行うこともあります。緊急時に備えてあらかじめ利用者や家族と緊急連絡先や対応方法を確認しておくことも精神科訪問看護の重要な役割です。
実務で役立つ医療保険・介護保険の判断フロー
精神科訪問看護における医療保険と介護保険の使い分けは、4つのステップで判断できます。
ステップ1として利用者の年齢を確認します。40歳未満の場合は医療保険のみが適用されます。ステップ2として要介護・要支援認定の有無を確認し、認定を受けていない場合は医療保険が適用されます。ステップ3として指示書の種類を確認します。精神科訪問看護指示書が交付されている場合は、要介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。通常の訪問看護指示書の場合は、要介護認定を受けていれば介護保険が適用されます。ステップ4として主傷病を確認し、認知症が主傷病の場合は精神科訪問看護指示書の対象外となり介護保険が適用されます(精神科在宅患者支援管理料算定の場合を除く)。
訪問看護ステーションに求められる対応
訪問看護ステーションが精神科訪問看護基本療養費を算定するためには、算定要件を満たす職員の確保(精神科での勤務経験1年以上、または所定の研修修了)、地方厚生(支)局への届出書の提出、精神科訪問看護指示書の受領と記載内容(特に主傷病名・指示期間)の確認、月の初回訪問時のGAF尺度の評価と訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書への記載が必要です。これらの対応を漏れなく行うことが、適切な算定と質の高いサービス提供の基盤となります。
よくある間違いと注意点
実務で特に注意すべき点として、認知症が主傷病の場合は精神科訪問看護の対象外であること、精神科訪問看護指示書の有効期間が6ヶ月を超えている場合は無効であること、指示期間が空白の場合は記載日から1ヶ月間が有効期限となること、精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書は同一利用者に対して併用できないことが挙げられます。これらの点を正しく理解し、日々の業務において確認を徹底することが適切なサービス提供につながります。精神科訪問看護は精神疾患を抱える方の地域生活を支える重要なサービスであり、制度を正しく理解した上で利用者一人ひとりに最適なサービスを届けることが求められます。









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