認知症の母の通帳、家族に管理義務はある?見せてくれない時の相談先

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同居する家族が認知症の母の通帳を預かっていても、家族だからという理由だけで自由に使える権限が生まれるわけではありません。生活費や介護費のために家族がお金を引き出すこと自体は珍しくありませんが、引き出した金額と使い道を後から説明できる状態にしておく責任は生じます。ここでは、認知症になった親の預金を家族が扱う際の考え方、通帳を見せてもらえないときの相談先、そして成年後見制度をはじめとする公的な支援の仕組みについて整理します。

目次

家族でも認知症の母の預金を自由に引き出せない理由

預金は名義人本人の財産であり、家族がキャッシュカードや暗証番号を預かっていても、そのお金を自由に使える権限が自動的に与えられるわけではありません。介護費や医療費、食費など、本人の生活に必要な支出のために家族が引き出して支払っているケースは実際に多いでしょう。しかし、その場合であっても「何にいくら使ったのか」を後から説明できる状態にしておくことが求められます。

金融機関は口座名義人の判断能力が低下したことを把握すると、本人の財産を守る目的で口座取引を制限することがあります。判断能力の低下が金融機関に伝わるきっかけは、窓口でのやり取りや本人確認の際の受け答えの様子など複数考えられ、家族からの申告がなくても制限がかかる可能性があります。家族だからいつでも自由に引き出せる、という前提で考えるのは避けたほうがよいでしょう。

通帳を預かる家族に求められる管理義務は4つある

法律上、家族というだけで当然に親の財産管理を代行する権限が発生するわけではありません。家族が親の預金を扱う場合、その実態は本人からの委任、つまり頼まれて代わりに行っている状態に近く、委任を受けた者には受け取った金銭を本人の利益のために使い、内容を本人や関係者に説明する責任が伴うと考えるのが基本的な整理です。

家族が親の通帳やキャッシュカードを預かって管理する場合、実務上は次の4点が管理義務に相当する行動として求められます。引き出した金額と使途を記録しておくこと、生活費や介護費、医療費など本人のために使ったことが分かる領収書やレシートを保管しておくこと、他の家族から求められた際に収支の状況を説明できるようにしておくこと、そして本人の財産と自分自身の財産を混同せず明確に区別して管理することです。

記録と説明ができれば疑念を防げる

これらは法律で細かく定められた手続きというより、後々のトラブルを防ぐために実務上欠かせない心がけといえます。収支の記録や領収書の保管を怠ると、実際には適切にお金を使っていたとしても、母のために使われたことを証明する手段がなくなってしまいます。結果として、家族間の疑念を晴らせないまま関係がこじれてしまうこともあるでしょう。

通帳を見せてもらえないときは責めずに話し合いを持ちかける

生活費に使っていると説明する一方で通帳を見せてくれない場合は注意が必要です。もちろん、実際に母親のためだけにお金を使っている可能性は十分にあります。ただ、収支が確認できない状態が続くと、他の家族との間で疑いや不信感が生まれやすくなります。

こうした状況で、いきなり相手を責めるような伝え方は避けたいところです。母のお金の管理状況を家族みんなで確認したい、今後も安心して介護を続けるために収支を共有したい、といった形で話し合いを提案するのが望ましいアプローチです。介護を担っている家族にとっても、日々の対応に追われる中で通帳の管理まで手が回っていなかったり、悪気なく報告を後回しにしていたりするケースは少なくありません。まずは責任追及ではなく、情報共有の場を設けることを目的とした対話から始めることが、関係をこじらせないためのポイントになります。

話し合いの際には、通帳や取引履歴を実際に確認し、介護費や医療費などの支出が分かる領収書もあわせて保管しておくとよいでしょう。これは現時点での不安を解消するだけでなく、将来母の相続が発生した際に使途不明金をめぐるトラブルを防ぐことにもつながります。話し合いに応じてもらえず、お金の使い道がまったく分からない状態が続く場合は、1人で抱え込まず、地域包括支援センターや弁護士などの専門家に相談することも選択肢の一つです。経済的に余裕がない場合には、法テラスが提供する無料法律相談を利用できる場合もあります。収入や資産が一定基準以下であることなどの条件はありますが、まずは相談してみる価値はあるでしょう。多くの弁護士事務所が初回相談を無料としているため、費用面がハードルになっている場合はそうした窓口から利用してみるのも一つの方法です。

相談のタイミングも重要です。時間が経つほど、当時のやり取りの記憶や取引履歴といった証拠が失われやすくなるうえ、仮に使い込みが疑われる事態に発展した場合、返還を求められる期間には制限があります。少しでも不安を感じた段階で早めに相談しておくことが、将来的な選択肢を狭めないためにも大切になります。

地域包括支援センターには4つの役割がある

家族だけで話し合っても解決の糸口が見えない場合、最初の相談先として利用しやすいのが地域包括支援センターです。市区町村ごとに設置されており、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、専門知識を持った職員が相談に応じる窓口で、相談は無料で利用できます。

地域包括支援センターには大きく分けて4つの役割があります。1つ目は総合相談支援で、高齢者にまつわる悩みや困りごとについて幅広く相談を受け付け、内容に応じて適切な機関や制度、サービスにつないでくれます。2つ目は介護予防で、要支援認定を受けた高齢者の介護予防ケアプラン作成などを通じて、介護が必要になる前の予防を支援します。3つ目は権利擁護で、高齢者が安心して生活するために財産や権利を守るための支援を行う役割です。詐欺や悪徳商法の被害相談・対応もこの役割に含まれます。4つ目は財産管理支援で、判断能力の低下によって金銭管理や各種手続きが難しくなった高齢者の財産を不当な契約から守るため、成年後見制度の案内や手続きのサポートを行います。

通帳を見せてもらえない、本当に適切にお金が使われているのか不安、といった悩みは、地域包括支援センターが対応する相談内容の典型例です。家族だけで抱え込まず早い段階で専門職に相談することで、感情的な対立を避けながら、成年後見制度の要否も含めた具体的な次の一手を客観的にアドバイスしてもらえる可能性があります。

財産管理に不安があるなら成年後見制度を検討する

認知症が進み、本人が財産管理や契約の判断を十分に行えなくなった場合には、成年後見制度の利用を検討できます。成年後見制度とは、家庭裁判所が選んだ成年後見人などが本人に代わって財産管理や契約手続きを支援する制度です。この制度の目的はあくまで本人の利益を守ることにあり、家族が自由にお金を使えるようにするための制度ではない、という点は誤解されやすいので注意が必要でしょう。

成年後見人には本人の親族が選ばれる場合もあれば、弁護士や司法書士など専門職が選ばれる場合もあります。誰が選任されるかは家庭裁判所の判断によるため、必ずしも家族の希望どおりになるとは限りません。後見人が選任されると本人の財産は後見人によって管理され、収支の記録や家庭裁判所への報告が求められるようになります。それまで特定の家族に委ねられていた財産管理が、より客観的で透明性の高い仕組みのもとに置かれることになるのです。

後見制度支援預金で不正な引き出しを防ぐ

後見人が選任された後は、必要に応じて後見制度支援預金を利用できる場合があります。この仕組みでは、後見制度支援預金口座における入出金等の取引の際に、家庭裁判所が発行する指示書が必要になります。日常的な生活費の管理とは別に、まとまった金額を動かす際には家庭裁判所のチェックが入るため、不正な引き出しの防止につながる仕組みといえます。

ただし、成年後見制度の利用には一定の手続きや費用がかかるため、すべての家庭に必ずしも必要というわけではありません。申立てには戸籍謄本や診断書などの書類の準備が必要であり、家庭裁判所での審理を経て後見人が選任されるまでには一定の時間もかかります。専門職後見人が選任された場合には、継続的に報酬が発生することも念頭に置く必要があります。一方で、家族間で財産管理への不信感が生じている場合や、高額な預金がある場合には成年後見制度は有力な選択肢となります。家族の一人が単独で管理を担い続けることによる負担や、他の家族からの疑念を根本的に解消できる可能性がある点は、制度を利用する大きな利点です。

口座凍結は判断能力の低下を金融機関が把握したときに起こる

通帳を見せてもらえないという悩みとあわせて知っておきたいのが、金融機関による口座凍結のリスクです。口座が凍結されるタイミングは、口座名義人の判断能力が低下していると金融機関が判断したときとされています。家族が銀行の窓口で親が認知症になったと相談したことがきっかけになる場合や、本人が窓口でうまく受け答えができず行員が判断能力の低下に気づく場合、あるいはATMで連日限度額いっぱいの引き出しが続き不審な取引として銀行側に警戒される場合が挙げられます。

金融機関が口座を凍結する目的は、あくまで名義人本人の財産を保護することにあります。判断能力が低下した状態で本人が十分に理解しないまま金融取引をしてしまったり、詐欺などの犯罪に巻き込まれたりするリスクを防ぐための措置であり、家族による使い込みを疑っているとは限りません。とはいえ、いったん口座が凍結されると生活費や介護費の引き出しにも支障が出るため、家族にとっては大きな負担になります。

判断能力の低下を理由に口座が凍結されてしまった場合、法定後見制度を利用することが基本的な対処法になります。事前の備えがないまま凍結が起きてしまうと、選択肢は成年後見制度の利用にほぼ限られてしまうということです。判断能力が十分にあるうちから、家族での話し合いや財産管理の準備を進めておく意味は大きいでしょう。

凍結を防ぐ事前対策は本人が元気なうちにしか使えない

通帳を見せてくれない、管理が不透明といった不安の背景には、そもそも家族の誰か一人に管理が集中してしまい、他の家族が関与できない状態になっていることが多いものです。こうした状態を防ぎ、将来の口座凍結にも備える方法として、いくつかの制度が知られています。

代理人カードと予約型代理人サービスの違い

銀行の代理人カードは、本人に代わって家族が引き出しなどを行える銀行独自のサービスで、比較的手軽に利用できます。ただし、代理人カードはあくまで本人の判断能力がある元気なうちに使うことを前提とした制度で、認知症の進行によって判断能力が失われた後は、原則として利用が続けられなくなる点に注意が必要です。日常のちょっとした引き出しには便利ですが、口座凍結そのものを防ぐ手段としては限界があります。

予約型代理人サービスは、本人が元気なうちに将来判断能力が低下した場合に備えてあらかじめ代理人を登録しておく仕組みで、一部の金融機関が提供しています。事前登録しておくことで、認知症が進行した後も登録された代理人が一定の取引を行えるため、口座凍結によって生活費の支払いに困るリスクを軽減できるとされています。

家族信託と任意後見制度の役割分担

家族信託は、本人が元気なうちに財産の管理を信頼できる家族に託しておく契約に基づく仕組みです。家庭裁判所が直接関与しない分、比較的柔軟な財産管理ができるとされ、契約の範囲内であれば認知症発症後も発症前と同様の感覚で金銭管理を続けられる点が特徴です。ただし、家族信託は財産管理に関する仕組みであり、介護施設への入所手続きなど本人の生活や医療・介護に関する契約行為、いわゆる身上監護までは対象に含まれません。

任意後見制度は、本人が元気なうちに将来の後見人となる人物や委任する事務の内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。実際に判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、契約の内容に沿って財産管理や身上監護が行われます。成年後見制度と同様に家庭裁判所や監督人による一定のチェックが入るため透明性を確保しやすい一方、柔軟性という点では家族信託に比べて制約が大きくなる面もあります。

これらの制度はそれぞれ得意分野が異なるため、状況に応じて組み合わせて活用されることも多いといえます。預金の管理は家族信託で柔軟に行いつつ、施設入所や医療契約など身上監護に関わる部分は任意後見制度でカバーするというように、複数の制度を補完的に使うことで、より実効性の高い認知症対策につながるとされています。いずれの制度も本人の判断能力が十分にあるうちに準備しておく必要がある点は共通しており、まだ大丈夫と先延ばしにしているうちに認知症が進行し、選択肢が限られてしまうケースも少なくありません。すでに母親が認知症になっている今回のようなケースでは、これらの事前対策ではなく、成年後見制度など発症後でも利用できる制度を中心に検討することになります。

成年後見制度ほど大がかりでなければ日常生活自立支援事業も選択肢

成年後見制度は財産管理から身上監護まで幅広くカバーできる反面、手続きに時間がかかり、専門職後見人が選任されれば継続的な報酬も発生します。そこまでの制度は大げさに感じる、もう少し軽い形で日常のお金の管理だけ支援してほしい、という場合には、社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業も選択肢の一つとして知られています。

日常生活自立支援事業は、社会福祉協議会が本人との契約に基づき、福祉サービスの利用援助を中心に、日常的な金銭管理や重要書類等の預かり・保管などの支援を行うことで、高齢者や障害のある方などの権利を守ることを目的とした事業です。対象となるのは、軽度の認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方のうち、預金の出し入れや公共料金の支払い、重要書類の保管を一人で行うことに不安がある方などとされています。

成年後見制度との大きな違いは、対象となる支援の範囲と、本人に求められる判断能力の程度にあります。次の表で整理します。

比較項目日常生活自立支援事業成年後見制度
支援の範囲福祉サービスの利用援助と日常的な金銭管理が中心施設の入退所契約など生活全般に関わる法律行為まで援助可能
本人に必要な判断能力契約の意味や内容をある程度理解できる判断能力が必要法定後見の場合、本人の判断能力は必要とされない
終了方法本人の意思で契約を終了できる判断能力が回復しない限り、原則として本人が亡くなるまで継続
費用実施主体ごとに定められた利用料財産状況や業務内容に応じて家庭裁判所が報酬額を決定

母親の判断能力がどの程度残っているか、どこまでの支援を必要としているかによって、日常生活自立支援事業と成年後見制度のどちらが適しているかは変わってきます。まずは地域包括支援センターや社会福祉協議会の窓口に相談し、本人の状態に合った制度を案内してもらうところから始めるとよいでしょう。

記録を残さないと相続で使途不明金トラブルになりかねない

通帳を見せてもらえない状態を放置してしまうと、その不安は母親が亡くなり相続が発生した後まで持ち越されることがあります。相続の場面では、亡くなる前後に被相続人の預金口座から引き出され、用途が分からないままになっているお金を使途不明金と呼び、相続人同士の争いの火種になりやすいとされています。

管理を担っていた家族が母のために使ったと主張しても、他の相続人がそれを鵜呑みにできるとは限りません。リフォームのために使った、入院費用に充てたといった具体的な説明とともに領収書などの証拠を示せれば大きな問題にはなりにくいものの、証拠がなく説明もあいまいなままだと、他の相続人から使い込みではないかと疑われ、感情的な対立に発展しかねません。

法的な観点からは、引き出したお金が実質的に生前贈与にあたると判断された場合、その分は特別受益として扱われ、相続財産に持ち戻したうえで遺産の取り分を計算し直すことがあります。相続開始前の引き出しは基本的に遺産分割調停の対象にはなりませんが、相続開始後の引き出しについては使い込みの事実が明らかであれば、民法906条の2の規定により、他の相続人全員の同意があれば遺産分割の対象に含めることができるとされています。

生前の段階から誰がいつ何のためにお金を引き出したのかを記録し、家族間で共有できる状態にしておくことが、将来の相続トラブルを防ぐもっとも効果的な方法だといえるでしょう。通帳を見せてもらえないという状況に不安を感じているのであれば、それは杞憂で終わるかもしれない懸念であると同時に、将来の相続をめぐる火種を早めに摘み取っておく機会にもなり得ます。

成年後見制度の費用は申立てで6万円から47万円かかる

成年後見制度の利用を検討するうえで、多くの家族が気になるのが費用面でしょう。成年後見制度を申し立てる際には、申立て費用や必要書類の収集費用などがかかり、合計でおおよそ6万円から47万円程度になるとされています。内訳を整理すると次のとおりです。

費用項目目安
申立手数料・後見登記手数料(収入印紙代)3,400円分
送達・送付費用(郵便切手代)4,000円分程度
不動産登記事項証明書・残高証明書等の発行費用数百円から数千円程度
家庭裁判所が必要と判断した場合の鑑定費用約10万円から20万円程度
専門家(司法書士・弁護士等)への申立て代行報酬15万円から25万円程度

後見人への報酬は財産額に応じて変わる

後見人が選任された後は、継続的に報酬が発生する点も見過ごせません。大阪家庭裁判所が示す報酬のめやすでは、基本報酬となる額は月額2万円が目安とされ、管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合は月額3万円から4万円、5,000万円を超える場合は月額5万円から6万円が目安とされています。司法書士など専門家が成年後見人に選任された場合の報酬相場はおおむね月額2万円から6万円程度とされる一方、家族や親族が成年後見人に選任された場合の報酬は月額0円から6万円程度と幅があり、家庭裁判所の判断によって無報酬となるケースもあります。

このように、成年後見制度には一定の初期費用と継続的な費用負担が伴います。専門職後見人が選任されて長期間にわたり報酬が発生し続けると、本人の財産が徐々に目減りしていくことになるため、制度を利用する前に、費用と得られるメリットである透明性の確保や不正防止を家族でよく比較検討しておくことが望ましいでしょう。

成年後見制度を選ぶ前に知っておきたい制約

成年後見制度は財産管理の透明性を確保できる有力な制度である一方、いくつかの注意点も知られています。成年後見制度の目的はあくまで本人の財産の保護にあるため、たとえ本人や家族が望んでいたとしても、孫にお小遣いをあげたい、自宅をリフォームしたいといった理由では自由にお金を使えなくなる可能性があります。財産を守る、つまり減らさないことが制度の基本方針であるため、株式や投資信託などの資産運用はもちろん、相続対策を目的とした不動産の購入や生前贈与なども原則として行えなくなります。

いったん成年後見制度の利用を始めると、途中でやめたいと思っても取り消しが認められない可能性がある点にも注意が必要です。本人の判断能力が回復しない限り、後見は本人が亡くなるまで続くのが原則であり、一時的に管理を任せたいといった軽い気持ちでの利用には向かない制度だといえます。家庭裁判所や専門家といった第三者が財産管理に継続的に関わることになるため、それまで家族だけで柔軟に対応してきた金銭のやり取りに一定の制約がかかる点も理解しておきたいところです。

こうした注意点を踏まえると、成年後見制度は家族間の不信感を解消し透明性の高い管理体制を作りたいという目的には適している一方、柔軟に財産を活用したいという目的にはあまり向かない制度だといえます。家族の状況や目的に応じて、日常生活自立支援事業や家族信託などの選択肢とあわせて、どの制度が最も実情に合っているかを見極めることが重要になります。

家族全員で通帳の情報を共有する体制をつくる

ここまで見てきたように、認知症の親の財産は家族であっても自由に管理・使用できるものではありません。生活費や介護費として預金を引き出す必要がある場合でも、その使い道を記録し、家族が確認できる状態にしておくことが大切です。

通帳を見せてもらえない状況が続く場合は、そのまま放置せず、家族で話し合いの場を設けることが望ましいでしょう。感情的な対立を避けるためにも、疑っているというスタンスではなく、一緒に安心できる状態を作りたいという姿勢で話を進めることがポイントになります。それでも解決が難しい場合は、地域包括支援センターや弁護士などの専門家に相談し、必要に応じて成年後見制度の利用も検討したいところです。早めに適切な支援を受けることは、親の財産を守るだけでなく、家族全員が安心して介護を続けるためにも重要な意味を持ちます。

介護は多くの場合、特定の家族に負担が偏りやすいものです。財産管理についても同様で、一人の家族だけが背負い込む状態が続くと、本人にとっても支える家族にとっても望ましい形とはいえなくなります。通帳や収支の情報を家族間で共有し、必要に応じて第三者の力も借りながら、無理のない形で親の財産を守っていく体制を整えておくことが、長期化しやすい介護生活を家族全員で乗り切るための土台になるはずです。管理してくれている家族への感謝と、お金の流れを確認したいという気持ちは、決して矛盾するものではありません。両方の気持ちを大切にしながら、家族みんなが安心できる仕組みづくりを進めたいものです。

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