発達に不安を感じるお子さまを育てる保護者の方にとって、児童発達支援は心強いサポートとなるサービスです。しかし、「どうやって利用すればいいの?」「料金はどのくらいかかるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
児童発達支援は、0歳から小学校入学前までの発達に課題を持つお子さまが、日常生活や社会生活に必要なスキルを身につけるための福祉サービスです。近年、施設数は急速に増加しており、2023年時点で全国に13,412ヶ所の事業所が設置されています。これは2014年と比べて約4倍という驚異的な増加率です。
2024年度の報酬改定により、支援の質がさらに向上し、3歳以降の無償化制度も継続されています。本記事では、児童発達支援の基本的な仕組みから具体的な利用方法、料金体系、そして後悔しない事業所選びのコツまで、保護者の方が知っておくべき重要な情報をQ&A形式でわかりやすく解説します。

児童発達支援とは何ですか?どのような子どもが利用できるのでしょうか?
児童発達支援とは、小学校就学前の障害のあるお子さま、または発達に遅れや気になる点があるお子さまを対象に、心身の発達を促すためのサポートを提供するサービスです。2012年の児童福祉法改正により、従来の「児童デイサービス」から分離独立し、未就学児に特化したサービスとして確立されました。
対象となるお子さまの条件は以下の通りです:
- 年齢:0歳から小学校入学前(概ね6歳)まで
- 状態:障害のあるお子さま、または発達に遅れや気になる点があるお子さま
- 診断の要否:医学的な診断名や障害者手帳の取得は必須ではありません
重要なのは、明確な診断がなくても、自治体が療育の必要性を認めれば利用できるという点です。多くの場合、1歳半検診や3歳児検診で発達の遅れを指摘されたことがきっかけとなりますが、「お子さまの発達が気になったとき」が利用を検討する最適なタイミングと言えるでしょう。
児童発達支援では、厚生労働省が定める「児童発達支援ガイドライン」に基づき、5つの領域を中心とした総合的な支援を行います:
- 健康・生活:食事、着替え、トイレなどの基本的生活スキル
- 運動・感覚:粗大運動や微細運動の発達支援
- 認知・行動:情報処理能力や適切な行動習得
- 言語・コミュニケーション:会話やジェスチャーなど多様な表現方法
- 人間関係・社会性:集団行動への適応や他者との関わり
サービスは「児童発達支援事業所」と「児童発達支援センター」の2種類の施設で提供されます。事業所は身近な療育の場として、センターは地域の中核的な支援拠点として機能し、医療型では治療も並行して行われます。
児童発達支援を利用するにはどのような手続きが必要ですか?
児童発達支援を利用するためには、お住まいの市区町村が発行する「通所受給者証(障害児通所受給者証)」の取得が必要です。この受給者証は、福祉サービスを利用するための証明書であり、療育手帳とは別の書類です。
利用開始までの7つのステップをご紹介します:
ステップ1:相談
まず、市区町村の福祉担当窓口や児童発達支援センターに相談します。この段階で、受給者証申請の流れや必要書類について確認しておきましょう。
ステップ2:支援利用計画案の作成
障害児相談支援事業所に「障害児支援利用計画案」の作成を依頼します。この計画案は、お子さまの課題や必要な支援を明確にするために作成されます。保護者が「セルフプラン」として自分で作成することも可能ですが、専門的な知識が必要なため事業所への依頼が推奨されます。
ステップ3:施設見学・体験
利用を検討している施設を実際に見学し、可能であれば体験利用をします。お子さまも一緒に連れて行き、施設の雰囲気、支援プログラムの内容、スタッフの対応などを確認することが重要です。
ステップ4:受給者証の交付申請
利用したい施設が決まったら、市区町村に受給者証の交付申請を行います。必要書類は以下の通りです:
- 支給申請書
- 発達支援が必要だとわかる書類(医師の意見書など)
- マイナンバー(申請者と児童の両方)
- 印鑑
- 障害児支援利用計画案
ステップ5:調査・審査
申請後、自治体の調査員による聞き取り調査が行われ、サービスの必要性や支給量(月に利用できる日数)が決定されます。
ステップ6:受給者証の交付
審査が通ると、申請から1〜2ヶ月後に受給者証が郵送されます。受給者証には、利用可能なサービスの種類、有効期間(通常1年間)、支給量、負担上限月額などが記載されています。
ステップ7:契約・利用開始
受給者証が届いたら、選んだ事業所と利用契約を結びます。契約手続きには1〜2時間程度かかることが多く、その後サービスの利用が開始されます。
重要なポイントは、申請から受給者証発行まで時間がかかることです。余裕を持って早めに手続きを進めることをお勧めします。また、受給者証で認められた支給量の範囲内であれば、複数の事業所を並行して利用することも可能です。
児童発達支援の料金はどのくらいかかりますか?
児童発達支援の料金は、利用料金全体の1割を保護者が負担し、残りの9割は国や自治体が負担する仕組みになっています。この自己負担分を「利用者負担」と呼びます。
基本的な利用者負担額は、1回あたり1,000円〜1,200円程度です。これは、実際のサービス費用が1回あたり約10,000円前後であることの1割に相当します。
ただし、ご家庭の経済的負担を軽減するため、世帯の収入状況に応じて「利用者負担上限月額」が設定されています。この上限額を超えて費用が発生することはありません。
利用者負担上限月額の区分(2024年度改定版):
- 生活保護世帯:0円
- 低所得世帯(市町村民税非課税世帯):0円
- 一般1(市町村民税課税世帯、所得割28万円未満、概ね年収890万円~920万円以下):4,600円
- 一般2(上記以外):37,200円
具体的な計算例をご紹介します:
2歳のお子さまが1回1,000円のサービスを月に8回利用した場合(合計8,000円)
- 生活保護・低所得世帯:0円
- 一般1世帯:上限額の4,600円
- 一般2世帯:上限に達していないため8,000円
その他の費用として、利用料以外におやつ代(50円/回程度)、昼食代、活動の材料費、イベント参加費、送迎費用などが実費として発生する場合があります。これらは無償化や負担上限額の対象外となります。
負担軽減のポイント:
- 複数のサービスを利用する場合は「上限管理」サービスにより、世帯全体の負担が調整されます
- 申請により受けられる軽減制度もあるため、詳細は自治体窓口で確認しましょう
- 事業所によって実費部分が異なるため、契約前に確認することが大切です
3歳以降の無償化制度について詳しく教えてください
2019年10月1日から開始された児童発達支援の無償化制度は、多くのご家庭にとって大きな経済的メリットをもたらしています。この制度により、対象年齢のお子さまは利用者負担が完全に無料となります。
無償化の対象期間は、満3歳になって初めての4月1日から小学校に入学するまでの3年間です。例えば、2歳で満3歳になったお子さまの場合、翌年の4月1日から無償化の対象となります。
対象となるサービスは以下の通りです:
- 児童発達支援
- 医療型児童発達支援
- 居宅訪問型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
- 福祉型障害児入所施設
- 医療型障害児入所施設
無償化の大きなメリットは、新たな手続きが不要という点です。対象年齢に達すると自動的に無償化が適用されるため、保護者の方が特別な申請をする必要はありません。
また、幼稚園や保育園との併用も可能です。お子さまが幼稚園や保育園、認定こども園などに通いながら児童発達支援を利用する場合も、両方とも無償化の対象となります。これにより、集団生活と個別支援を組み合わせた、より充実した発達支援を受けることができます。
注意すべき点もあります。無償化の対象は利用料のみであり、以下の費用は別途保護者負担となります:
- 医療費
- 食材料費(おやつ代を含む)
- 行事費
- 交通費
- その他の実費
無償化制度の活用例:
従来月額4,600円の負担があった一般1世帯のお子さま(4歳)の場合、年間で55,200円の負担軽減となります。この浮いた費用を、お子さまの他の習い事や家族の生活向上に活用できるため、家計への影響は非常に大きいと言えるでしょう。
無償化により、経済的な理由で利用を躊躇していたご家庭も、安心してお子さまに必要な支援を受けさせることができるようになりました。この制度は、すべての子どもが等しく発達支援を受けられる社会の実現に向けた重要な一歩となっています。
良い児童発達支援事業所を選ぶにはどのようなポイントを確認すべきですか?
お子さまに合った児童発達支援事業所を選ぶことは、お子さまの成長発達にとって極めて重要です。後悔しない事業所選びのために、以下の7つの重要ポイントを確認しましょう。
1. 利用目的の明確化
まず、「何のためにサービスを利用したいのか」を明確にしましょう。「言葉の遅れが気になる」「集団行動に慣れてほしい」「保護者の自由な時間がほしい」など、目的により最適な事業所は変わります。複数の目的がある場合は、優先順位をつけることが重要です。
2. 事業所の専門性と特徴
事業所ごとに得意とするプログラムが異なります:
- 運動療育:体幹トレーニングや感覚統合
- 音楽療育:リズム遊びや楽器を使った活動
- 学習支援:文字や数の概念形成
- 個別療育:マンツーマンでの集中的支援
- 集団療育:社会性やコミュニケーション力向上
また、専門職員の配置状況も確認しましょう。作業療法士、言語聴覚士、理学療法士、心理士などの専門スタッフがいる事業所では、より専門的な支援が期待できます。
3. サービス提供時間の確認
事業所には大きく分けて2つのタイプがあります:
- 長時間預かり型:日中の長時間をお預かりし、生活支援も含む
- 短時間療育特化型:1〜2時間程度の集中的な療育
ご家庭の状況(仕事の有無、他のきょうだいの状況など)に合わせて選択しましょう。
4. 送迎サービスの利便性
2025年版で特に重視すべきポイントとして、送迎の有無や範囲があります。送迎サービスがある場合、対応エリア、送迎時間、費用なども確認しましょう。送迎がない場合は、駐車場の有無や公共交通機関でのアクセスも重要な判断材料となります。
5. 事業所の雰囲気とスタッフの対応
実際の見学・体験を通じて確認すべき点:
- 施設の清潔さや安全性
- スタッフの子どもへの接し方
- 他の利用児の様子
- お子さま自身が楽しそうにしているか
この最後の点が最も重要です。お子さまが「また行きたい」と思える場所かどうかが、継続利用の鍵となります。
6. 情報共有の仕組み
支援中のお子さまの様子をどのように知ることができるかも重要です:
- 連絡帳:毎回の活動内容や様子の記録
- 定期面談:支援計画の見直しや相談
- 参観の機会:実際の支援の様子を見学できるか
- 写真や動画:活動の様子を視覚的に共有
7. 空き状況と利用しやすさ
人気の事業所では待機期間が発生することがあります。見学時に空き状況や今後の利用可能時期を確認しましょう。また、急な体調不良時のキャンセル対応や振替制度の有無も確認しておくと安心です。
相談支援専門員の活用も忘れずに。彼らは保護者に寄り添いながら事業所選びをサポートしてくれる心強い味方です。一人で悩まず、積極的に相談しながら、お子さまにとって最適な「成長の場」を見つけていきましょう。









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