就労移行支援を利用できるのは、原則として18歳以上65歳未満で、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、または国の指定難病のいずれかに該当し、一般企業への就職を希望している人です。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書があれば利用できるケースが多く、条件は思っているより幅広く設定されています。ここでは、年齢と障害種別のそれぞれについて、例外規定も含めて具体的に整理します。

年齢は原則18歳以上65歳未満、例外は児童相談所長の意見書と継続利用のみ
就労移行支援の年齢要件は、原則18歳以上65歳未満です。ここで重要なのは、この判定が支給決定の申請時点ではなく、サービスの利用を開始する時点で行われるという点です。利用を開始したあとに65歳を迎えても、その時点で資格を失うことはなく、そのまま継続して利用できます。
例外は2つあります。1つ目は、15歳以上18歳未満の障害児について、児童相談所長が就労移行支援の利用が適当だと判断し、意見書を出した場合です。中学卒業後から高校在学中の年代で、すでに一般就労を見据えた準備を始めたい人向けの仕組みです。この例外は児童相談所長の判断が前提になるため、希望すれば自動的に認められるものではなく、事前に児童相談所や市区町村の窓口に相談する必要があります。
2つ目は、65歳に達したあとも利用を継続できるケースです。65歳に達する前の5年間、障害福祉サービスの支給決定を継続して受けており、65歳に達する前日の時点で就労移行支援の支給決定を受けていた人に限り、65歳以降も同じサービスを利用し続けられます。ここで注意したいのは、この規定はあくまで利用継続を前提にした措置で、65歳を過ぎてから新規に申し込むことはできないという点です。65歳以降の障害福祉サービスは介護保険サービスへの移行が原則になっているため、就労移行支援の継続利用は、そのなかの限定的な例外だと理解しておくとよいでしょう。
対象となる障害は身体・知的・精神・発達・難病の5区分
就労移行支援の障害要件は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、そして国が指定する難病等の5区分に整理できます。障害者総合支援法は特定の疾患名だけを列挙して線引きする形にはなっておらず、働くうえで支援を必要とする状態にあるかどうかを実質的な判断基準にしています。
身体障害は視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害を含む
身体障害には、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、心臓機能障害や腎臓機能障害などの内部障害が含まれます。身体障害者手帳を持っている人はもちろん、手帳の交付基準に満たなくても、医師の意見書によって就労にあたって配慮が必要と判断されれば対象に含まれます。通勤の負担を減らしたい、身体の状態に合わせた作業環境がほしい、体力面の不安から段階的に準備を進めたいといった動機で利用する人が多い区分です。
知的障害は療育手帳の交付対象が中心
知的障害は、療育手帳(自治体によって愛の手帳や緑の手帳とも呼ばれます)の交付対象となる状態を中心に、コミュニケーションや抽象的な判断、金銭管理の面でサポートを要する人が該当します。就労移行支援では、作業手順を細かく分解した反復練習や、視覚的に分かりやすい指示出しを取り入れながら、実際の職場に近い環境での実習を重ねる支援が行われます。
精神障害は利用者数が最も多い区分で、うつ病や統合失調症などが対象
精神障害は、就労移行支援の利用者のなかでも人数が特に多い区分です。うつ病、双極性障害、統合失調症、不安症、適応障害、パニック症、対人恐怖症、強迫性障害、てんかん、高次脳機能障害などが対象に含まれます。在宅であれば無理なく働けるが通勤や対人関係に強い不安がある、聴覚過敏で通勤電車や職場の騒音がつらい、過去の失敗から新しい環境に踏み出す不安が強いといった、症状に応じた個別の事情を抱えて利用を始める人が目立ちます。精神障害への理解や支援プログラムの内容は事業所ごとに差があるため、自分の症状や希望する働き方に合った事業所を選ぶことが欠かせません。
発達障害はADHD・ASD・LD/SLDが対象
発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD/SLD(限局性学習症)などが含まれます。パソコンを使う仕事に就きたいがビジネスマナーや報連相を練習したい、ケアレスミスが多く対策を身につけたい、対人コミュニケーションが苦手で職場での関わり方を学びたいといった動機で利用する人が多く見られます。発達障害の特性は一人ひとり大きく異なるため、得意なことと苦手なことを支援員と一緒に整理し、それに応じた職種を検討していく進め方が中心になります。
難病はパーキンソン病やクローン病など指定難病が対象
障害者総合支援法は、身体・知的・精神障害に加えて、国が指定する難病等を抱える人も対象に含めています。パーキンソン病などの神経・筋疾患、クローン病や潰瘍性大腸炎などの消化器系疾患、再生不良性貧血などの血液系疾患、全身性エリテマトーデスなどの免疫系疾患、特発性間質性肺炎などの呼吸器系疾患、特発性拡張型心筋症などの循環器系疾患が対象範囲に入ります。難病に理解がある職場で働きたい、体調に波があり安定した就労が難しいため段階的に準備したい、何から手をつければよいか分からず相談したいという声が、難病のある利用者からはよく聞かれます。難病は外見から分かりにくく体調の変動も予測しづらいため、通院への配慮や通所日数の柔軟な調整に対応してくれるかどうかを、事業所選びの段階で確認しておく必要があります。
障害者手帳がなくても医師の意見書で利用できる
就労移行支援の利用に、障害者手帳の所持は必須ではありません。手帳を取得していなくても、主治医の診断書や意見書によって支援が必要な状態だと認められれば、市区町村から支給決定を受けて利用を開始できます。申請時に必要な書類は、障害者手帳、医師の診断書、医師の意見書、自立支援医療受給者証のいずれか1つと、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類です。手帳の取得を迷っている段階でも、まずは主治医に就労移行支援の利用を検討している旨を伝え、意見書の作成が可能かどうかを相談するところから始められます。
申請から受給者証発行まで2週間から1カ月程度かかる
就労移行支援を利用するまでの手続きは、いくつかの段階を踏んで進みます。まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や地域の相談支援センターで、障害福祉サービス受給者証の申請手続きについて説明を受けます。次に主治医に相談し、利用にあたって必要な意見書を作成してもらいます。手帳がある場合は手帳のコピー、ない場合は診断書や意見書、自立支援医療受給者証のいずれかを用意し、本人確認書類とあわせて市区町村の窓口に申請書類一式を提出します。申請時には職員との面談で、現在の生活状況や就労に関する希望が聞き取られます。受給者証の発行までは、申請からおおむね2週間から1カ月程度かかるのが一般的です。受給者証を取得したあとは、利用したい就労移行支援事業所を選び、見学や体験利用を経て利用契約を結び、サービスの利用を開始します。
利用期間は原則2年、就職率は全国平均56.2%
就労移行支援の利用期間は、障害者総合支援法にもとづき原則2年間、月数にすると24カ月です。この期間のなかで、スキルの習得から就職活動、内定獲得までを目指します。一定の事情があれば、市区町村の個別審査によって2年を超える延長が認められる場合もありますが、延長や再利用、利用期間のリセットが認められるかどうかは自治体ごとの判断になるため、必ず延長できるとは限りません。
就労移行支援事業所から一般企業への就職率は、全国平均で56.2%です。事業所単位で見ると幅は大きく、東京都福祉局の調査では就職率が43.3%にとどまった年度もある一方、就職率91%、定着率84%を掲げる事業所や、年間2,585人の就職者を輩出し就職6カ月後の定着率が90.7%に達する事業所もあります。就職後6カ月時点の職場定着率は、全国平均で82.3%から89.5%程度です。就職した人の大半が半年後も同じ職場で働き続けている水準だといえます。ただし、これらの数値は支援体制や対象とする障害特性、地域性によって変動幅が大きいため、就職率や定着率を比較する際は、算出対象の期間や母数が事業所ごとに違う点にも注意が必要です。見学の際に、直近の就職者数や定着率がどの期間・どの利用者集団を対象にした数字なのかを質問してみると、実態に近い数字がつかめます。
利用料金は、サービスにかかった費用の1割が自己負担の原則です。1日あたりの目安はおよそ500円から1,400円程度ですが、世帯の所得に応じて1カ月あたりの負担上限額が定められているため、上限額に達すればそれ以上の負担は発生しません。生活保護世帯や市区町村民税非課税世帯では自己負担が0円になるケースも多く、実質的な負担なしで利用している人も少なくありません。正確な負担上限額は、申請窓口となる市区町村に確認するのが確実です。
就労継続支援A型・B型との違いは「訓練の場」か「働く場」か
就労移行支援は一般企業への就職に向けた準備とトレーニングの場であるのに対し、就労継続支援A型・B型は実際に働く場そのものを提供します。就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んだうえで、比較的軽度な就労が可能な人が働きながらスキルを身につける仕組みで、最低賃金が保障されます。就労継続支援B型は雇用契約を結ばず、体調や特性に応じたペースで軽作業や生産活動に取り組みながら工賃を得る仕組みで、一般就労がすぐには難しい人や、まずは生活リズムを整えたい人に向いています。
就労移行支援の対象者は一般の事業所で働くことが可能と見込まれる人であるのに対し、就労継続支援A型・B型は一般の事業所に雇用されることが現時点で困難な人を前提としています。将来的に一般企業への就職を明確に目指しているなら就労移行支援、まずは働くこと自体に慣れたい、あるいは体調面から一般就労が難しいなら就労継続支援A型・B型が選択肢になります。
なお、就労移行支援と就労継続支援A型・B型は、どちらも日中活動系の障害福祉サービスに区分されるため、原則として同時に利用することはできません。ただし厚生労働省はこれを一律に禁止しているわけではなく、市区町村が支援上の必要性を認めた場合には、複数の日中活動サービスを組み合わせて利用できる余地も残されています。同一のサービスを複数の事業所で同時に利用することも基本的には想定されておらず、事業所を変更したい場合は、一度利用を終了してから新しい事業所と契約を結び直す形になります。
生活保護を受給していても併用できる
生活保護を受給している人であっても、就労移行支援をはじめとする障害福祉サービスの利用に制限はなく、生活保護と就労移行支援を併用すること自体は認められています。生活保護受給中に就労移行支援へ通いながら、就職に向けた準備を進めている人は珍しくありません。生活状況や他制度の利用状況によって扱いが変わるケースもあるため、迷った場合は自己判断せず、担当のケースワーカーや市区町村の障害福祉課、利用を検討している事業所に事前に確認しておくと安心です。
在宅・オンラインでの訓練も選択肢になる
通勤そのものが体調面の大きな負担になる人には、事業所に通所せず自宅からオンラインで訓練を受けられる在宅利用という選択肢もあります。疲れやすい特性や体調の波がある人が、慣れた自宅環境でストレスを抑えながら訓練を進められる点がメリットです。プログラムの内容は、オンラインでの朝の挨拶や体調確認、連絡事項の共有から始まり、Wordなどを使ったパソコン訓練、ビジネスマナー講座、在宅ワークやテレワークに必要なコミュニケーション講座、一日の振り返りまでを含む半日単位で組まれるケースが一般的です。履歴書の添削や模擬面接、求人紹介といった就職活動のサポートもオンラインで受けられる事業所が増えており、通所が難しいことを理由に利用自体を諦める必要はなくなってきています。対応可否や具体的なプログラム内容は事業所ごとに異なるため、申し込み前の見学や相談の段階で、在宅訓練の実施体制を確認しておくとよいでしょう。
支援内容全体は、個別支援計画にもとづき、生活リズムや体調の安定を図る段階から、パソコンスキルやビジネスマナーといった就労準備スキルを身につける段階、実際の職場に近い環境での実習や求人への応募活動を行う段階、そして就職後の職場定着支援までを、原則最長24カ月のなかで段階的に組み立てていきます。利用者一人ひとりの障害特性や希望する働き方、これまでの職歴によって重点を置く内容は変わり、支援員が定期的な面談を通じて計画を見直しながら伴走します。
就職が決まったあとの職場定着の場面では、ジョブコーチが企業に出向いて支援する仕組みも用意されています。知的障害や精神障害のある人が職場に馴染めずに困っているとき、ジョブコーチはあいさつや報連相といった対人面のコミュニケーション、遅刻や欠勤を防ぎ生活リズムを整える基本的な労働習慣、仕事内容の理解や作業の質を上げるための実務面、通勤そのものへの支援まで、幅広い角度から個別にサポートします。就労移行支援事業所内での訓練成果だけでなく、実際の職場で1カ所から4カ所程度の実習を行い、事業所内での作業能力と、ストレスのかかる本番の職場での能力を比較しながらアセスメントを重ねる進め方も一般的です。個別支援計画には、アセスメントの結果と課題の要約、可能な限り数値で測れる具体的な目標、通所場所や訓練時間、訓練科目の現状と今後の変更計画、就職の実現可能性や必要な配慮、就職後に想定される課題と対応策までが盛り込まれ、支援員はこの計画にもとづいて利用者と伴走します。
大学生や休学中の学生も条件を満たせば利用できる
年齢要件を満たしていれば、学校に在籍したままでも就労移行支援を利用できる場合があります。2017年4月の働き方改革実行計画にもとづく運用の見直しにより、大学生を含む在学中の人も利用対象に含められるようになりました。卒業年度に在籍し卒業に必要な単位取得が見込まれていること、利用が学業に支障をきたさないこと、本人が利用を希望していること、市区町村が就職につなげられる見込みがあると判断することといった条件を満たせば、在学中からの利用が認められます。
休学中の学生についても、自治体の個別判断によって利用が認められています。休学期間中に就労移行支援を通じて自信をつけたのち復学し、卒業後に就職につながった事例が報告されています。高校生の場合は、夏休みや冬休みといった長期休暇を使って体験利用を行い、卒業と同時に本格的に事業所へ通い始める人が多いようです。学業と就労準備を両立させたい学生にとって、卒業を待たずに準備を始められる点は、見落とされがちな重要なポイントです。
企業側の雇用ルールの変化も就労移行支援の役割を広げている
就労移行支援の対象が広がってきた背景には、企業側の障害者雇用ルールの変化もあります。障害者雇用促進法は1960年に身体障害者雇用促進法として制定され、1976年の改正で法定雇用率制度が努力義務から義務へと切り替わり、納付金制度も導入されました。その後、2013年の改正で事業主に差別の禁止と合理的配慮の提供義務が課され、これは2016年に施行されました。雇用率の算定基礎に精神障害者を加える改正は2018年に施行され、精神障害のある人の一般就労がそれまで以上に企業にとって現実的な選択肢になりました。さらに2022年の改正では、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者や重度障害者を雇用した場合も雇用率に算定できるようになり、これは2024年に施行されています。短時間からの就労が雇用率の対象に含まれたことで、体調に波がある人や長時間勤務が難しい人にとっても、一般企業への就職という選択肢が現実的なものになってきました。こうした企業側の受け入れ環境の変化は、就労移行支援を利用して一般就労を目指す人が増えている流れとも重なっています。
利用者層は精神障害・発達障害の割合が増え、経歴も多様化している
2019年9月時点の利用者数は約4万人で、その後も増加が続いています。事業所数は2012年時点の2,518カ所から2018年には3,503カ所を超えるところまで拡大し、その後はやや落ち着いた推移を見せています。利用者の内訳では、精神障害や発達障害のある人の割合が増える一方、特別支援学校を卒業してそのまま利用を始める人の割合は相対的に減り、代わりに一般の高校や大学を卒業した人、一度就労経験があってから利用を始める人といった、多様な経歴を持つ利用者が増えています。精神障害や発達障害への社会的な理解が広がったことに加え、在学中の利用や手帳なしでの利用といった間口の広がりが、これまで制度を知らなかった人や対象外だと思い込んでいた人の利用につながっている面もあります。利用条件そのものは法律で定められた枠組みですが、その枠組みのなかで実際に誰が利用しているかという実態は、時代とともに形を変えてきています。
自分が利用条件に該当するかどうかを確かめる一番早い方法は、お住まいの市区町村の窓口や相談支援センター、あるいは気になる就労移行支援事業所に直接問い合わせることです。年齢と障害種別の要件は幅広く設定されており、手帳がない、在学中である、生活保護を受給しているといった事情があっても、利用の道が閉ざされているとは限りません。








