クローズ就労とオープン就労の違いは開示の有無、76.5%が非開示

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自分の障害や疾患を会社に伝えて働くか、伝えずに働くかで、就労の形は大きく分かれます。伝えて働く方法がオープン就労、伝えずに一般枠で働く方法がクローズ就労です。日本財団が2026年8月に公表した調査によると、発達障害や精神疾患の診断を受けた人の76.5パーセントが、就職活動で診断結果を伝えた経験がないと回答しました。障害者手帳を持たず、一般の採用枠で就職活動をした664人が対象で、伝えた経験がある人はわずか7.6パーセントにとどまります。伝えなかった理由としては、開示して不採用になった経験や不採用への不安が66.4パーセントで最多でした。この記事では、クローズ就労とオープン就労、それぞれのメリットとデメリット、関連する法制度、選び方のポイントまでを整理します。

目次

クローズ就労とオープン就労の違いは障害を開示するかどうかの一点

オープン就労とは、自分が障害や疾患を持っていることを企業に開示したうえで働く方法です。開示先は面接や入社時の会社で、障害者手帳を持っていなくても選べます。応募先は一般雇用枠と障害者雇用枠の両方に広がります。

クローズ就労とは、障害や疾患があることを企業に一切伝えず、一般枠で採用試験を受けて働く方法です。障害者手帳を持っていても、それを申告せずに働けばクローズ就労にあたります。応募先は一般雇用枠に限られます。

両者の違いを表にまとめると、以下のようになります。

項目オープン就労クローズ就労
障害の開示するしない
応募できる枠一般雇用枠と障害者雇用枠一般雇用枠のみ
合理的配慮受けられる原則として受けられない
評価の基準能力に加えて特性への配慮が前提になる能力や実績が中心になる

今回の日本財団の調査対象者は、全員が障害者手帳を持たずに一般枠で就活した人たちでした。診断結果を伝えた7.6パーセントはオープン就労を、伝えなかった76.5パーセントはクローズ就労を選んだと整理できます。手帳の有無にかかわらず、発達障害や精神疾患の診断を受けた人の多くがクローズ就労を選んでいる実態が、このデータから見えてきます。

就活で障害を伝えなかった人は76.5%、日本財団調査で判明

日本財団の調査は2025年12月から2026年2月にオンラインで実施され、2018年4月以降に国内で就職活動や就労を経験した664人から回答を集めました。就活で診断結果を伝えた人は7.6パーセント、伝えた経験と伝えなかった経験の両方がある人は15.9パーセントで、残る76.5パーセントは一度も伝えていません。

伝えなかった理由は複数回答で聞かれ、「開示して不採用になったことがある、または不採用を危惧した」が66.4パーセントで最も多くなりました。開示によって得られるはずの配慮よりも、選考や評価で不利益を受けるかもしれないという恐れのほうが、当事者にとって切実な問題になっていることがわかります。

別の調査では、発達障害や精神疾患のある人の55.0パーセントが、職場で障害への差別的な言動を見聞きした経験があると回答しています。開示への不安は、実際の職場経験に裏付けられたものだと言えそうです。

オープン就労のメリットは合理的配慮を受けやすい点

オープン就労を選ぶ最大の利点は、業務の進め方や作業環境について、特性に応じた調整を職場に申し出やすくなることです。体調や症状に波がある場合でも、周囲の理解を前提にサポートを受けながら働けます。

通院や服薬についても、会社側の理解を得やすくなります。通院のための休暇取得や勤務時間の調整を、事情を隠さずに相談できるため、無理を重ねて体調を崩すリスクを減らせます。

診断や特性を隠し続ける緊張から解放される点も見逃せません。ばれたらどうしようという不安を抱えずに働けることは、長く働き続けるうえで大きな支えになります。障害者雇用枠を選んだ場合は、就労移行支援事業所やハローワークの専門窓口、企業側の受け入れ担当者など、支援体制が整った環境で働ける可能性も高まります。

オープン就労のデメリットはキャリアと給与が制限されやすい点

一方で、障害を理由とした差別や偏見を受けるリスクはゼロではありません。能力や実績よりも障害があること自体に注目されがちで、実力を正当に評価されにくいと感じる当事者もいます。

障害者雇用枠では、業務内容が定型的な仕事に限定されやすく、昇進や異動の選択肢が一般枠に比べて狭くなる傾向があります。給与水準についても、障害者雇用枠は一般枠より低く設定されるケースが多く、経済的な不安要素になりえます。

開示した情報が期待した理解や配慮に結びつかない場合、かえって特別扱いとして孤立感を深めてしまうこともあります。オープン就労の満足度は、受け入れる企業側の理解度や体制によって大きく左右されます。

クローズ就労のメリットは能力本位の評価とプライバシー保護

クローズ就労を選ぶ理由にも合理性があります。最大の利点は、障害を意識せず一人の労働者として働けることです。周囲から特別視されずに、能力や実績だけで評価されるチャンスを得やすくなります。

キャリアアップの機会も、一般枠の労働者と同じように開かれます。昇進や異動、責任のある業務への抜擢など、障害者雇用枠では制限されがちな選択肢を選べます。給与面でも一般枠での採用となるため、障害者雇用枠と比べて不利になりにくい傾向があります。

プライバシーが保たれる点も大きなメリットです。診断や通院歴、特性について職場の誰にも知られずに働けます。日本財団の調査で「不採用を危惧した」という理由が66.4パーセントにのぼったことからも、多くの当事者が「知られること」自体を強く警戒していることがうかがえます。

クローズ就労のデメリットは合理的配慮を受けられないリスク

クローズ就労の最大の問題は、障害者差別解消法が定める合理的配慮を受けられないことです。障害を申告していない以上、企業側は特別な配慮を提供する義務を負いません。体調不良時の休憩や業務量の調整、コミュニケーション方法への配慮を求めにくく、無理をして働き続けることになりやすくなります。

業務上の困りごとを相談しにくいという問題もあります。作業が苦手な理由を説明しようとすると障害の存在に触れざるをえなくなるため、相談自体をためらう当事者は少なくありません。

さらに深刻なのは、障害による業務遂行の難しさが表面化したときに、解雇や降格などの不利益な扱いを受けるリスクがあることです。特性を隠したまま働き続けた結果、ミスが続いたり周囲との軋轢が生じたりして、体調を崩してから初めて障害が明らかになるケースもあります。この場合、企業側の理解を得られないまま関係が悪化しやすくなります。

職場定着率は入社1年で58.4%に低下する

厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査では、障害者雇用枠での就職者の定着率は、就職後3か月時点で76.5パーセントである一方、1年後には58.4パーセントまで下がる傾向が報告されています。

障害の種別によって定着状況には差があります。知的障害や発達障害のある人は比較的安定して定着しやすいのに対し、精神障害のある人は定着が難しいケースが多いとされます。平均勤続年数も、知的障害者が10年2カ月であるのに対し、発達障害者は3年2カ月にとどまるという推計があります。

体調や特性の波が周囲から見えにくい障害ほど、開示の有無や職場の理解度が定着率に直結しやすくなります。合理的配慮を受けられるオープン就労のほうが長期的な就労継続につながりやすい可能性がある一方、実際には多くの当事者が不採用への懸念からクローズ就労を選んでいます。定着率の低さの背景には、開示できないまま無理を重ねてしまう構造が一因としてありそうです。

2024年4月に合理的配慮の提供が企業の法的義務になった

障害者差別解消法は、障害者手帳の有無にかかわらず、すべての障害者に対する合理的配慮の提供を企業に求めています。採用試験での時間延長や、業務内容・環境の調整などがこれにあたります。2024年4月1日の法改正により、それまで努力義務だった民間企業の合理的配慮の提供は、法的義務になりました。この改正で、企業は自社の職場環境だけでなく、顧客を含む製品やサービスの利用者に対しても、合理的配慮を提供する必要が生じています。

ただし、この合理的配慮は障害があることが企業側に伝わっていることが前提の制度です。クローズ就労のように障害を開示していない場合、企業はその存在を知らないため、法律上の配慮義務を果たしようがありません。法制度が整備されるほど、開示すれば守られる仕組みは強まる一方で、開示しなければその恩恵を受けられないという構図も同時に強まります。

法定雇用率は2026年7月に2.7%へ引き上げられた

障害者雇用促進法も2024年4月1日に改正され、法定雇用率は2.3パーセントから2.5パーセントに引き上げられました。対象となる事業主の範囲も、従業員43.5人以上から40.0人以上へと広がりました。

この法定雇用率はさらに段階的な引き上げが予定されており、2026年7月1日には2.5パーセントから2.7パーセントに引き上げられました。対象となる事業主の範囲も拡大され、より多くの企業が障害者雇用に取り組む義務を負っています。厚生労働省の集計では、2.5パーセント段階の法定雇用率を達成できていない企業が63,364社にのぼりました。未達成の事業主には、障害者雇用納付金制度に基づき、不足人数1人あたり月額5万円の納付が求められます。長期の未達成が続くと企業名が公表される措置もあり、採用活動や取引先からの評価に響きかねません。こうした制度的な圧力の高まりは、障害者雇用枠、つまりオープン就労の求人が今後さらに増えていく可能性を示しています。

合理的配慮の具体例と就労移行支援事業所という相談先

合理的配慮と言われても、具体的にどんな対応が該当するのかイメージしにくいという声は多くあります。内閣府や厚生労働省が公表している事例集では、発達障害のある人への配慮として、業務の指示を口頭だけでなく文書やメモでも渡すこと、作業の優先順位や手順を明確にしたスキルマップシートを使うこと、企業在籍型のジョブコーチがマンツーマンで指導すること、体調の波を自分で把握できるセルフケアシートを活用することなどが紹介されています。精神疾患のある人への配慮としては、通院や体調不良時に休暇を取りやすくする勤怠調整、静かな環境で作業できる席の配置、業務量や納期の調整などが挙げられます。

合理的配慮として認められるには、障害が原因の困難さであること、本人の自己対処だけでは解決しきれないこと、企業側にとって過重な負担にならない範囲であることが前提になります。要望すればすべて通るわけではなく、本人と企業が話し合いながら実現可能な着地点を探るプロセスが必要です。

どう伝えればいいかわからない、直接会社に言うのは不安だと感じる当事者には、就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターといった支援機関を間に挟む方法があります。就労移行支援事業所は就職活動の支援だけでなく、企業とのマッチングや入社後の職場定着支援まで担い、本人に代わって、あるいは本人と一緒に、企業へ必要な配慮を伝える役割も果たします。

障害者手帳がなくてもオープン就労は選べる

障害者手帳を持っているかどうかと、オープン就労かクローズ就労かは、必ずしも一致しません。日本財団の調査対象者は全員、障害者手帳を持たずに一般枠で就活した人たちでした。手帳を持っていなくても、発達障害や精神疾患の診断結果を企業に伝えればオープン就労にあたります。逆に手帳を持っていても、それを一切申告せずに一般枠で働けばクローズ就労になります。

発達障害の場合、知的障害を伴わないケースの多くで交付対象になるのは精神障害者保健福祉手帳です。この手帳を取得すると、NHK受信料の減免や公共交通機関の運賃割引、上下水道料金の割引といった公共料金の優遇に加え、等級によっては心身障害者医療費助成制度による医療費負担の軽減、障害者雇用枠を含む就労支援サービスの利用が可能になります。申請には精神科医など専門医の診断書が必要で、初診日から6カ月以上経過していることが条件です。

一方で、手帳を取得することへの心理的なハードルもあります。障害者という枠に自分を位置づけることへの抵抗感や、取得の事実が周囲に知られるのではないかという不安から、診断を受けていても申請に踏み切らない人は少なくありません。手帳を取るかどうかと、開示するかどうかは、それぞれ独立して考えるべき問題です。

在宅ワークとテレワークはオープンでもクローズでも選べる

オープン就労かクローズ就労かという議論に加えて、働く場所や時間の柔軟性そのものを重視する動きも広がっています。厚生労働省は、障害のある人がテレワーカーとして働く際の採用準備から定着支援、雇用管理までをまとめた事例集を公表しており、企業と支援機関の連携でテレワークという働き方の選択肢を広げる取り組みが進んでいます。

在宅ワークで選べる職種は、プログラマーやWebデザイナーのような専門性の高いものから、データ入力やWebライティングのようにパソコンの基本操作があればこなせるもの、軽作業やテレアポなどパソコンが苦手でも取り組めるものまで幅広くあります。通勤の負担や、職場の人間関係、環境音といった体調管理に影響しやすい要素を減らせる点は、発達障害や精神疾患のある人にとって大きな利点です。

在宅ワークやテレワークは、オープン就労でもクローズ就労でも選べます。クローズ就労でも、出社の機会が少ない、あるいは対面のコミュニケーションが最小限で済む働き方を選べば、開示しないまま働く負担を軽減できる場合があります。オープン就労として在宅勤務の配慮を正式に求めれば、通院日程に合わせた勤務時間の調整など、より柔軟な働き方を安定的に確保しやすくなります。

クローズからオープンへ転職で切り替えた人もいる

クローズ就労で就職したあと、転職でオープン就労に切り替えた当事者の体験も報告されています。あるケースでは、切り替え後は自身の特性に合った無理のない業務が割り振られるようになり、業務内容や合理的配慮の有無、勤務時間の面でクローズ就労のときとの違いを実感したという声があります。今クローズ就労で働いている人にとっても、この選択が将来にわたって固定されたものではなく、状況や体調、キャリアの方向性に応じて見直せるという事実は、心理的な負担を軽くする材料になりえます。

一方で、クローズ就労には隠し続けることの限界というリスクもあります。業務でのミスが特性に起因すると気づかれたり、通院の頻度や様子から周囲が異変を察知したりして、意図せず障害の存在が職場に伝わってしまうことは起こりえます。この形で伝わってしまうと、開示するタイミングや伝え方を自分でコントロールできないぶん、計画的にオープン就労へ移行する場合より不利益が大きくなりやすくなります。

無理を重ねると二次障害のリスクが高まる

クローズ就労を続けるうえで特に注意したいのが、二次障害のリスクです。発達障害のある人は、特性そのものによる困難さに加えて、周囲の無理解や過度な負担が積み重なることで、うつ病や適応障害といった精神疾患を併発しやすいことが知られています。二次障害はすべての発達障害のある人に起こるわけではありませんが、生きづらさや困りごとを放置し、適切な対処をとらないまま働き続けた場合に発症しやすいとされます。発達障害の診断を受けたことがなかった大人が、うつ病の発症をきっかけに初めて自分の発達特性に気づくケースも珍しくありません。

早めに専門機関へ相談することで、深刻化を防げる可能性は高まります。相談先には、精神保健福祉法に基づき各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターがあり、心の不調に関する相談やアドバイス、医療機関の情報提供を行っています。発達障害者支援センターのように、診断済みの人だけでなく発達障害の可能性がある人やその家族も対象に、日常生活や就労の支援を行う機関も各地にあります。誰にも相談できない状態を長期化させることは二次障害のリスクを高める一因になりうるため、開示するかどうかとは別に、支援機関への相談は早い段階で検討する価値があります。

クローズ就労とオープン就労はどちらを選ぶべきか

どちらが正解ということはなく、障害の特性や症状の程度、必要とする配慮の内容、本人の価値観によって最適な選択は変わります。

通院のための定期的な休暇や、音や光への配慮、コミュニケーション方法の調整など、日常的な配慮が必要な場合は、それを職場に理解してもらえるオープン就労のほうが長期的な就労継続につながりやすくなります。反対に、日常的な業務遂行にほとんど支障がなく体調管理も自己完結できる場合は、クローズ就労で一般枠の待遇やキャリアを追求する選択も十分に合理的です。

収入を重視するなら、障害者雇用枠より給与水準が高くなりやすいクローズ就労、あるいはオープンでも一般枠での就労を検討する価値があります。開示による職場での人間関係への影響をどう捉えるかも判断材料になります。プライバシーを重視するのか、理解者を得て働くことを優先するのか、本人の価値観に委ねられる部分は大きいと言えます。

この選択は一度決めたら固定されるものではありません。転職のタイミングで見直すことも可能で、就労移行支援事業所を利用しながら、まずはオープンで働いて自分に合うかどうかを確かめる段階的な進め方をとる当事者もいます。今回の日本財団の調査が示した76.5パーセントという数字の裏には、一人ひとりが抱える不安と、それでも働き続けようとする選択があります。自分の特性と職場環境の実情を照らし合わせながら、開示するかどうかを決めていくことが、結果的に長く働き続けるための土台になります。

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