障害者雇用は手帳がなく診断書のみでも応募できるか制度から解説

当ページのリンクには広告が含まれています。

診断書だけを持って障害者雇用枠に応募できるかと聞かれれば、答えは基本的にできません。障害者雇用枠の求人は、企業が障害者手帳の所持者を対象に法定雇用率へ算入する仕組みで成り立っており、医師の診断書だけでは選考の土台に乗らないケースがほとんどです。とはいえ、診断書があれば別の道が開けます。障害福祉サービス受給者証を取得し、就労移行支援などの支援を受けながら手帳取得や就職準備を進める方法です。この記事では、なぜ診断書だけでは応募できないのか、手帳を取得するまでにどれくらいの期間がかかるのか、そして手帳なしでも今すぐ動ける方法を、制度の中身まで踏み込んで説明します。

目次

障害者雇用枠への応募には手帳が必要で診断書だけでは選考に進めません

障害者雇用枠が成り立っているのは、企業に一定割合の障害者雇用を義務づける法定雇用率の仕組みがあるからです。障害者の雇用の促進等に関する法律では、障害者は「身体、知的、精神(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定義されています。ただしこの定義が広く読めても、企業が雇用率にカウントできる対象は、身体障害者手帳の所有者、療育手帳の所有者である知的障害者、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた精神障害者・発達障害者に絞られています。診断書は病状の証明にはなりますが、この雇用率算定の要件は満たしません。

法定雇用率のカウント対象は手帳所持者に限定されています

企業がなぜここまで手帳の有無にこだわるのか、理由は単純です。法定雇用率を達成できない企業には納付金が課され、達成した企業には調整金や報奨金が支給されます。ハローワークへの届出でも障害者手帳の提示が求められるため、手帳を持たない人を採用しても法定雇用率には算入できません。せっかく障害者雇用枠で人を採用しても目的が果たせないため、多くの企業が募集要項に「障害者手帳の所持、または申請中であること」を条件として明記しています。

民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.5%となり、2026年7月からは2.7%に引き上げられました。引き上げのたびに、企業は雇用率算入の対象になる手帳所持者の採用意欲を強める傾向にあります。今後も「手帳の有無」が選考の入り口を左右する状況は続くとみられます。

atGPとdodaチャレンジも手帳なしでは応募機能が使えません

大手の障害者専門転職エージェントの運用を見ても、この線引きは徹底されています。atGP転職は手帳がないと求人の閲覧はできても、応募やスカウト受信、エージェントによる本格的な就職支援は利用できません。dodaチャレンジの対象者も「障害者手帳をお持ちの方、または申請中の方」に限られており、診断書のみの段階は対象外です。専門エージェントですら手帳を前提にサービスを設計しているという事実は、診断書のみで障害者雇用枠に挑むことの難しさを裏づけています。

診断書があれば障害福祉サービス受給者証を申請できます

障害者雇用枠に直接応募できなくても、診断書を出発点にできる制度があります。それが就労移行支援です。就労移行支援の対象者は「就職を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者」と定められており、制度上、手帳の所持は必須ではありません。主治医の診断書があること、就労における困難があること、障害福祉サービス受給者証を取得できること、この3つを満たせば利用できます。

受給者証の申請要件は診断書・自立支援医療受給者証・手帳のいずれか1つです

障害福祉サービス受給者証は、手帳とは別に市区町村が交付する福祉サービス利用のための証明書です。申請には、医師の診断書または意見書、自立支援医療受給者証、障害者手帳のいずれか1つがあれば足ります。精神科や心療内科で発行してもらった診断書があれば、それをもとに市区町村の窓口で受給者証の交付を申請できる可能性があります。うつ病や統合失調症などで通院している人が持っていることの多い自立支援医療受給者証も、同様に病気や障害の証明として使えます。

就労移行支援では職業訓練から就職後の定着支援まで受けられます

受給者証を取得できれば、就労移行支援事業所に通いながら生活リズムを整えるトレーニング、ビジネスマナー、パソコンスキルの習得、模擬的な職業訓練、就職活動のサポートを受けられます。専門スタッフが企業とのマッチングや面接対策、就職後の職場定着支援まで一貫して担う事業所も多く、診断書しかない状態から手帳取得や就職までの橋渡し役として機能します。

精神障害者保健福祉手帳の取得には初診から6ヶ月以上の経過が必要です

診断書のみの状態から障害者雇用枠を目指す現実的なルートの一つが、正式に手帳を取得することです。手帳の種類によって申請方法も必要な期間もかなり違うため、それぞれ確認しておく必要があります。

精神障害者保健福祉手帳の申請には、精神障害に係る初診日から6ヶ月を経過した日以後に作成された医師の診断書が求められます。精神科や心療内科を最初に受診してから半年以上経っていなければ、そもそも申請自体ができません。申請書類の受付後は審査委員会での審査を経て、手帳交付の可否と1級から3級までの等級が決まり、交付まで3ヶ月程度かかるのが一般的です。有効期間は2年で、期限の3ヶ月前から更新申請ができます。

身体障害者手帳は指定医の診断書で交付までおよそ1〜3ヶ月です

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医師の診断書・意見書(作成日から3ヶ月以内のもの)を用意し、市区町村の障害福祉窓口で申請します。縦4cm×横3cmの顔写真、マイナンバーが確認できる書類、本人確認書類なども必要です。交付までは通常1ヶ月程度ですが、地域や申請内容によっては2〜3ヶ月、障害の状態が判断しにくい場合や書類の補正が必要な場合はさらに時間がかかります。等級は1級から7級まで区分されますが、7級単独では交付対象になりません。

療育手帳は児童相談所などの判定を経て交付されます

知的障害を対象とする療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所での判定を経て交付されます。名称や判定基準は自治体によって異なり、東京都では「愛の手帳」という名称が使われているなど地域差があります。

以下に3種類の手帳の要点をまとめます。

手帳の種類申請の前提条件交付までの目安期間有効期限
身体障害者手帳指定医師による診断書・意見書(作成後3ヶ月以内)1ヶ月〜3ヶ月程度更新不要(状態変化時に再認定)
精神障害者保健福祉手帳初診日から6ヶ月経過後の診断書3ヶ月程度2年ごとに更新が必要
療育手帳児童相談所・知的障害者更生相談所での判定自治体により異なる自治体により異なる

いずれの手帳も申請から交付までに数ヶ月単位の期間がかかります。特に精神障害者保健福祉手帳は初診から6ヶ月という条件があるため、診断を受けたばかりの人がすぐに取得することはできません。診断書のみの段階から手帳取得を目指すなら、この期間を見越して早めに主治医へ相談し、申請の準備を進めておく必要があります。

オープン就労の1年後定着率は約70%でクローズ就労の2倍以上です

手帳がない、あるいは取得するかどうかで迷っている場合、就労の形として押さえておきたいのがオープン就労とクローズ就労という考え方です。両者の違いは、就労先に病気や障害を開示するかどうかにあります。オープン就労は一般枠・障害者雇用枠のどちらでも働ける形で、企業に障害の内容を開示したうえで配慮を受けながら働きます。クローズ就労は障害を開示せず、一般枠のみで働く形です。

項目オープン就労クローズ就労
障害の開示ありなし
応募できる枠一般枠・障害者雇用枠の両方一般枠のみ
1年後の定着率約70%前後約30%前後
メリット業務内容や勤務形態で配慮を受けやすい能力や実績で評価されやすく給与面で不利になりにくい
デメリット偏見を受ける可能性や給与水準の低さ特別な配慮を求めにくく一人で抱え込みやすい

オープン就労は障害特性に応じた環境で働けるぶん定着率が高い一方、クローズ就労はプライバシーを保ちながら能力本位で評価されやすいという特徴があります。どちらが優れているという話ではなく、自分の状態と何を優先したいかで選ぶものです。

診断書のみの段階で選べる進路は主に2つです

手帳を取得していない段階では、法律上も企業の運用上も、障害者雇用枠でのオープン就労は選びにくいのが実情です。現実的な進路は、診断書を基に障害福祉サービス受給者証を取得し、就労移行支援などの支援を受けながら手帳取得や就職準備を進める道と、当面は一般枠でのクローズ就労を選び、必要に応じて職場に配慮を相談する道の2つです。どちらか一方に絞る必要はなく、並行して検討する人も少なくありません。

発達障害グレーゾーンは手帳がなくても受給者証で支援を受けられます

発達障害の診断基準をすべて満たさない場合、いわゆるグレーゾーンと判断され、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳が交付されないことがあります。手帳の取得はあくまで本人の任意で、法律上必須のものではありません。グレーゾーンで手帳を取得できない、あるいは取得しない場合でも、発達障害者支援センター、地域若者サポートステーション、障害者就業・生活支援センター(通称なかぽつ)、就労移行支援事業所といった支援機関を利用できます。ここでも鍵になるのは障害福祉サービス受給者証で、これを取得できれば手帳なしでも各種の福祉的就労支援を受けられる可能性があります。就職活動を進める際は、自分の得意・不得意を丁寧に自己分析し、職場にどのような配慮を求めたいのかを具体的に説明できるよう準備しておくことが欠かせません。

難病患者の雇用率算定は2027年をめどに手帳なしでも対象になる見通しです

障害者手帳を持たない難病患者も、現状の障害者雇用枠に応募できない典型的なケースです。障害者雇用枠の求人には体調に配慮した短時間勤務や軽作業の仕事が多く用意されていますが、応募には障害者手帳が必要で、手帳を持たない難病患者は対象外とされてきました。医療費助成の対象となる難病患者のうち、実際に手帳を持っている人は約56%にとどまるというデータがあり、多くの難病患者が現行制度の狭間に置かれているのが実情です。

この課題を受け、厚生労働省は企業に義務づける障害者雇用率の算定対象に、手帳を持たない難病患者らも含める方向で検討を進めています。関連法の改正は2027年をめどに議論されており、実現すれば診断書や医師の意見書などをもとに一定の基準を満たす難病患者も、雇用率の算定対象、ひいては障害者雇用枠の応募対象に含まれる可能性があります。現時点ではまだ改正前の段階で、手帳を持たない難病患者が障害者雇用枠に直接応募することは基本的にできませんが、この動向は今後も追いかける価値があります。

手帳取得後は2年ごとの更新を怠ると新規申請からやり直しになります

診断書のみの状態から努力して手帳を取得できても、そこで終わりではありません。精神障害者保健福祉手帳は有効期限が2年間と定められており、2年ごとに更新手続きが必要です。更新申請は有効期限の3ヶ月前から可能で、申請書、顔写真、印鑑、身分証明書、マイナンバーカード、診断書または障害年金証書の写しなどが必要になります。診断書による更新の場合、有効期限の4ヶ月前あたりから主治医に作成を依頼しておくと余裕を持てます。精神障害は症状の軽減や重症化が比較的短期間で起こり得るため、2年ごとの再認定で等級が変わることもあります。更新を忘れて期限切れになった場合、手帳はいったん失効し、再取得には新規申請と同じ手続きが必要です。せっかく取得した手帳が失効すると、雇用契約や勤務条件に影響が及ぶ可能性もあるため、更新時期は早めにカレンダーで管理しておくことをおすすめします。

面接で伝えるべきは症状の詳細ではなく必要な配慮です

障害福祉サービス受給者証の取得や手帳の申請を進めながら就職活動をする場合、面接でどこまで自分の障害や体調について話せばよいか迷う人は多いはずです。障害者雇用促進法は、企業に対して応募者が障害者手帳を持っているかどうかの確認を求めていますが、診断名や症状の詳細、通院歴や治療内容のすべてを開示するよう義務づけてはいません。伝えるべき基準は、働くうえで必要な配慮に関することです。

配慮事項は、エントリーシートに記入欄があればそこに書く方法のほか、面接の場で配慮事項をまとめた書類を提出する方法もあります。精神障害のある人のうち約4割が、就職前に自分の障害や必要な配慮を十分に伝えられなかったと感じているというデータもあります。採用担当者が障害者雇用の専門知識を必ずしも持っているとは限らないため、企業側の理解を前提にせず、自分から具体的な配慮内容を明確に伝える姿勢が求められます。服薬のタイミングなど自己管理の工夫があれば、それも合わせて伝えることで、企業側の不安を和らげ、受け入れ体制の検討にもつながりやすくなります。手帳を取得していない、あるいは申請中の段階でも、こうした伝え方のアドバイスを受けられる就労移行支援事業所やハローワークの専門窓口はあります。

診断書のみの段階でも取れる行動は3つあります

ここまでの内容を踏まえると、手帳を持たず診断書のみの段階にある人が取れる現実的な行動は、大きく3つに整理できます。1つ目は、主治医に相談して障害福祉サービス受給者証の申請を検討することです。診断書または医師の意見書があれば、市区町村の窓口で受給者証の交付を申請できる可能性があり、取得できれば就労移行支援などの支援サービスを利用できるようになります。2つ目は、手帳取得の要件を確認し、計画的に申請準備を進めることです。精神障害者保健福祉手帳なら初診から6ヶ月経過後に診断書を用意する必要があり、身体障害者手帳なら指定医による診断書・意見書が必要になります。いずれも交付まで数ヶ月かかることを踏まえ、早めに主治医や自治体の窓口へ相談しておくと安心です。3つ目は、当面は一般枠での就職活動、つまりクローズ就労も並行して検討することです。手帳取得や受給者証の申請には一定の期間がかかるため、生活の基盤を確保する観点から、一般枠での就職・転職活動を並行して進めるのも現実的な選択肢になります。就労後に体調や状況が変わったら、あらためて手帳取得やオープン就労への切り替えを検討することもできます。

ハローワークの専門援助部門も相談先として利用できます

手帳の有無にかかわらず、就職活動の相談先として押さえておきたいのがハローワークの専門援助部門です。障害のある人の就職を専門にサポートする窓口で、手話通訳の配置や専門家によるカウンセリング、発達障害のある人向けの精神・発達障害者雇用トータルサポーターによるサポートなど、障害の特性に応じた支援を幅広く提供しています。障害者専用の求人情報のほか、求人票や履歴書の書き方、企業への問い合わせ方法、面接指導、職業適性検査まで対応しており、診断書のみで手帳を持たない段階でも相談自体は可能です。

あわせて活用したいのが地域障害者職業センターです。ハローワークと連携しながら専門的な職業リハビリテーションを提供する機関で、希望の職種に応じて職業能力を評価し、一人ひとりに合った支援計画を立てます。センター内での作業体験や職業準備講習といった求職者向けの支援に加えて、事業主への相談・援助や職場へのジョブコーチ派遣など、企業側への働きかけも行っています。手帳取得や障害福祉サービス受給者証の申請を進めながら、こうした公的な支援機関を早い段階から併用しておくと、就職活動全体の見通しが立てやすくなります。

障害者雇用枠への応募は、原則として障害者手帳の所持、または申請中であることが条件になっており、医師の診断書だけでは応募できないというのが現状の結論です。これは障害者雇用促進法に基づく法定雇用率のカウントの仕組みに起因しており、企業や転職エージェントの多くが手帳の有無を厳格に確認しています。ただし診断書があれば障害福祉サービス受給者証の交付を申請できる場合があり、これを取得すれば就労移行支援などの支援サービスを利用しながら、手帳取得や就職に向けた準備を進められます。手帳を取得しない、あるいは取得できない場合でも、一般枠でのクローズ就労という選択肢や、発達障害者支援センター、地域若者サポートステーション、障害者就業・生活支援センターといった手帳なしで利用できる支援機関があります。難病患者の雇用率算定対象化など、今後の制度改正で状況が変わる可能性もあるため、最新の情報を確認しながら自分に合った進路を選んでいく必要があります。まずは主治医や自治体の障害福祉窓口、あるいは就労移行支援事業所に相談し、自分の状況でどの制度が使えるのかを具体的に確認することが、次の一歩を踏み出す最も確実な方法です。

就労移行支援の利用を検討する場合も、診断書があれば申請できる可能性があります。詳しい申請手続きについては手帳なしでも安心!就労移行支援の診断書利用可能性と申請手続きガイドで解説しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次