訪問介護のヘルパーが1日に訪問できる回数そのものには、上限が定められていません。回数を実質的に決めているのは、要介護度ごとに設定された1か月あたりの区分支給限度基準額と、生活援助を中心とするサービスの基準回数です。要介護1なら月27回、要介護3なら月43回が生活援助の基準回数とされており、これを超えるケアプランは市区町村への届出が必要になります。このほかにも、訪問の間隔が短いと単位数を合算する「2時間ルール」や、ケアプランそのものの組み立て方が回数に影響します。この記事では、区分支給限度基準額の具体的な単位数、生活援助の基準回数、2時間ルールの例外、そして回数を増やしたいときの現実的な選択肢を、制度の数字にもとづいて説明します。

訪問介護そのものに1日の回数制限はなく、月単位の限度額が上限を作ります
介護保険制度上、訪問介護を1日に何回利用できるかという直接の規定はありません。朝・昼・夕・就寝前というように、1日に3回以上ヘルパーが訪問するケアプランも実際に組まれています。重度の要介護者や、頻回の見守りが必要な独居高齢者では、こうした複数回訪問はめずらしくないようです。
回数を実質的に縛っているのは、1日単位ではなく1か月単位の仕組みです。具体的には、要介護度ごとの区分支給限度基準額、生活援助中心型サービスの基準回数、そして訪問間隔に関する2時間ルールという、3つの制度が組み合わさって上限を作り出しています。次の見出しから、それぞれの数字を見ていきます。
区分支給限度基準額は要介護1で16,765単位、要介護5で36,217単位です
訪問介護を含む居宅サービスには、要介護度ごとに1か月あたりの利用限度額が設定されています。これが区分支給限度基準額で、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護などを組み合わせて使う場合の、合計単位数の上限にあたります。
要介護度ごとの区分支給限度基準額(2024年度時点)は次のとおりです。
| 要介護度 | 区分支給限度基準額 |
|---|---|
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
1単位あたりの金額は地域や事業所によって異なりますが、10円前後で計算されることが多く、地域区分の高い地域では11.40円程度になることもあります。10円で単純計算すると、要介護1はひと月あたり約16万7千円分、要介護5では約36万2千円分のサービスを、原則1割(所得に応じて2割・3割)の自己負担で利用できる計算になります。
この限度額を超えて訪問介護を利用した場合、超過分は全額自己負担です。1日に何度もヘルパーを呼べば、それだけ早く月の限度額に到達します。回数の上限というより、財布の上限が先に来る、というのが実態に近いのかもしれません。
なお要支援1・2の人は、要介護者とは別の区分の限度額が設定されており、訪問介護に相当する支援は市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」の訪問型サービスとして提供されます。運営基準を緩和した「訪問型サービスA」のように、有資格者以外の研修修了者が担い手になれる類型を用意している市区町村もあり、サービス内容や回数の設定は自治体ごとに違いが出ます。
生活援助中心型は要介護3の月43回が基準回数の上限になります
生活援助を中心とするサービスについては、2018年10月の制度改正で、月あたりの回数に関するルールが加わりました。厚生労働大臣が定める基準(平成30年厚生労働省告示第218号)により、要介護度ごとに1か月の標準的な回数、いわゆる基準回数が決まっています。
| 要介護度 | 基準回数(月) |
|---|---|
| 要介護1 | 27回 |
| 要介護2 | 34回 |
| 要介護3 | 43回 |
| 要介護4 | 38回 |
| 要介護5 | 31回 |
数字を見ると、要介護3が最多で、要介護4・5はむしろ減っています。要介護度が上がるほど回数が増えるわけではなく、重度になるほど生活援助より身体介護や施設・医療系サービスの比重が高まる実態を反映した結果のようです。
この基準回数以上の生活援助中心型サービスをケアプランに位置づける場合、ケアマネジャーは必要性を明記したうえで、市区町村にケアプランを届け出る義務を負います。届け出られたケアプランは、地域ケア会議という多職種が参加する会議体で内容が検証され、必要であれば是正が促されます。ただしこれは、回数の利用を一律に禁止する制度ではありません。不必要に多い生活援助が漫然と組み込まれていないかを確認する仕組みであり、届出をしたからといって直ちにサービスが打ち切られるわけではないのです。
なお、身体介護に引き続いて生活援助を行った場合は、この基準回数には数えません。カウントの対象は、あくまで生活援助中心型として単独で算定された回数だけです。
届出があったケアプランについては、市区町村が内容を確認し、必要に応じて担当のケアマネジャーへの聞き取りや、地域ケア会議での検証を行います。検証の結果、見直しが必要と判断されれば、居宅介護支援事業所は対象のケアプランを再検討し、事業所内で作成している同様・類似のケアプランについても点検します。利用者の自立支援や重度化防止、地域資源の有効活用という観点から、サービス内容が適切かどうかを多職種の視点で確認するための手続きです。
訪問と訪問の間隔が2時間未満だと単位数は合算されます
1日に複数回訪問介護を利用するとき、実務上もっとも影響が大きいのが2時間ルールです。訪問と訪問の間隔がおおむね2時間未満の場合、それぞれ別のサービスとして算定せず、所要時間を合算して1回分として扱います。
このルールがある理由は単純で、短時間のサービスを細切れに繰り返すほど単位数が積み上がってしまう抜け道を防ぐためです。たとえば60分の身体介護を30分ずつ2回に分けて1時間未満の間隔で提供した場合、2時間ルールが適用されれば合算して60分の身体介護として算定されます。1日の回数を増やしても、間隔次第では単位数が増えないケースがあるということです。
一方で、この2時間ルールには例外もあります。頻回の訪問介護が必要な利用者に対応できると認められた事業所が提供する20分未満の身体介護(いわゆる身体02)は、1時間以内に複数回訪問しても別々に算定できます。通院のための乗車・降車介助である通院等乗降介助も、2時間ルールの対象外です。医師が回復の見込みがないと診断した終末期の利用者への訪問介護、そしてあらかじめ計画されていない緊急時訪問介護加算が算定される訪問についても、2時間ルールは適用されません。
つまり、1日に何度もヘルパーを呼ぶこと自体はできても、間隔の設計次第で算定のされ方が変わってきます。ケアプランを組む段階で、間隔についてケアマネジャーや訪問介護事業所とすり合わせておいたほうがよさそうです。
身体介護は20分未満163単位、生活援助は20分以上45分未満で179単位です
1回あたりのサービスがどの時間区分でいくらの単位数になるかも、回数を考えるうえで押さえておきたい数字です。2024年4月の介護報酬改定で見直された基本報酬は次のとおりです。
| 区分 | 時間の目安 | 単位数 |
|---|---|---|
| 身体介護 | 20分未満 | 163単位 |
| 身体介護 | 20分以上30分未満 | 244単位 |
| 身体介護 | 30分以上1時間未満 | 387単位 |
| 身体介護 | 1時間以上1時間30分未満 | 567単位 |
| 身体介護(以降) | 30分増すごとに | 82単位加算 |
| 生活援助 | 20分以上45分未満 | 179単位 |
| 生活援助 | 45分以上 | 220単位 |
| 生活援助(身体介護に引き続く場合) | 20分から25分増すごとに | 65単位 |
| 通院等乗降介助 | 1回 | 97単位 |
短時間の訪問ほど、1回あたりの単位数は小さくなります。裏を返せば、短時間の訪問を1日に複数回組み合わせることで、起床時・食事時・就寝前といった必要なタイミングごとに、細かく身体介護や生活援助を配置できるということです。ただし前述の2時間ルールが働く場面では、間隔を詰めすぎると合算されてしまうため、回数を増やせば単位数も比例して増えるとは限りません。
独居高齢者は短時間訪問を複数回組み合わせて見守りの頻度を確保しています
近くに家族などの支援者がいない独居高齢者や、高齢者のみの世帯では、1日の中でどれだけ見守りの頻度を確保できるかが切実な課題になります。こうしたケースでは、短時間の訪問介護を1日に複数回組み合わせ、起床時の安否確認、食事や服薬のタイミングでの見守り、就寝前の確認というように、生活リズムに沿ったケアプランが組まれることがあります。
ただし、訪問介護の回数だけで安心を確保しようとすると、区分支給限度基準額や2時間ルールの制約にすぐぶつかります。配食サービスによる安否確認や、センサー・カメラを使った見守り機器、地域の民生委員による訪問活動など、介護保険サービス以外の見守り手段を組み合わせている家庭も少なくありません。訪問介護の回数を無理に積み増すより、地域の見守り資源とあわせて考えたほうが、結果的に現実的なケアプランになることが多いようです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護なら回数を気にせず月額定額で利用できます
通常の訪問介護は、ケアプランに位置づけた回数分だけ、その都度出来高で単位数が積み上がる仕組みです。これに対して、1日に何度も短時間の訪問を受けたいというニーズに向いているのが、地域密着型サービスの定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。
このサービスは、日中・夜間を通じた定期的な巡回訪問と、利用者からの通報にもとづく随時訪問を組み合わせて提供します。安否確認や排せつ介助、服薬介助といった短時間の支援を1日に複数回受けることを前提に組み立てられており、通常の訪問介護のような出来高制ではなく、要介護度に応じた月額定額制の報酬体系を採っています。
そのため、1日に何度短時間の訪問を利用しても、自己負担額が訪問回数に比例して増えることはありません。要介護1の場合、訪問看護サービスを併用するプランで利用者負担(1割)がひと月あたり約7,900円台、訪問看護を利用しないプランでは約5,400円台とされており、通常の訪問介護を回数分積み上げるより家計の見通しを立てやすい面があります。24時間対応の相談窓口を備えている点も特徴です。
ただし地域密着型サービスであるため、原則として事業所が所在する市区町村に住民票がある人しか利用できません。通常の訪問介護と併用する場合にも一部制約があります。区分支給限度基準額や2時間ルールの制約が気になる場合には、選択肢のひとつとして検討する余地があるでしょう。
総合事業の生活援助のみサービスには月20回・16回という目安もあります
介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスなど、一部のサービス類型では、生活援助のみを内容とするサービスについて、所要時間に応じた月あたりの回数の目安が設けられている場合があります。所要時間20分以上45分未満なら月20回程度まで、45分以上なら月16回程度までという基準が使われることがあるようです。
こうした回数の目安は、実施主体である市区町村や事業所によって運用が異なります。要支援の人が「総合事業に移ってから利用できる回数が変わった」と感じるとすれば、この運用差が理由になっていることが多いのではないでしょうか。あくまで参考情報として捉え、実際の利用にあたっては担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認するのが確実です。
事業所の人員体制によっても対応できる回数は変わります
制度上の上限だけでなく、実際にサービスを提供する訪問介護事業所側の人員体制も、回数を左右する要素です。訪問介護事業所には常勤のサービス提供責任者を配置することが基準で定められており、利用者数やヘルパーの人数に応じて、事業所が1日に対応できる訪問件数には物理的な限界があります。
特に深夜や早朝の時間帯、あるいは同じ時間帯に複数の利用者が集中する場合には、事業所の体制によっては希望どおりの回数・時間帯でヘルパーを確保できないこともあります。日中の柔軟な複数回訪問や、迅速な緊急対応を安定して提供できる事業所は、一定の人員基準や実績要件を満たした特定事業所加算を算定していることが多く、事業所選びのひとつの目安になります。
制度上は複数回の訪問が可能でも、実際に対応してくれる事業所があるかどうかは別の話です。回数を増やしたい場合は、ケアマネジャーを通じて、対応可能な事業所の体制についてもあわせて相談するとよいでしょう。
同居家族がいると生活援助は原則利用できません
回数とあわせて誤解されやすいのが、同居家族がいる場合の生活援助の扱いです。身体介護は同居家族の有無にかかわらず利用できますが、生活援助は原則として、利用者本人が一人暮らしであるか、同居家族が病気やけがなどやむを得ない事情で家事を行えない場合に限って認められます。
同居家族がいても、その家族が高齢である、就労のため日中不在である、病気やけがで家事が行えないといった事情があれば、ケアマネジャーが状況を評価したうえで、ケアプランに生活援助を位置づけることは可能です。その場合も、同居家族による対応がなぜ難しいのかという理由をケアプラン上に明記する必要があり、市区町村によっては個別の確認を求められることもあります。
判断の基準になるのは、同居しているかどうかという形式ではなく、実際にその家族が家事を担えるかどうかという実態です。同じ「同居家族あり」という状況でも、家族が日中フルタイムで働いている世帯と、家族が在宅で健康に過ごしている世帯とでは、認められ方が変わってきます。利用者や家族としては、家事が難しい理由を具体的にケアマネジャーへ伝えることが、適切なケアプランにつながる近道といえそうです。
生活援助では家族の家事やペットの世話は対象外です
生活援助は利用者本人の日常生活に必要な支援に限定されており、保険給付の対象外となる内容も明確に決まっています。
| 対象外の内容 | 具体例 |
|---|---|
| 家族のための家事 | 家族の食事の調理、家族分の洗濯・掃除 |
| 特別な家事 | 大掃除、換気扇の掃除、窓ふき |
| 不在時の対応 | 本人が留守のときの掃除、来客対応 |
| 自動車関連 | 自家用車の洗車・清掃 |
| ペットの世話 | 世話や散歩 |
| 園芸作業 | 草むしり、水やり、庭木の剪定 |
| 特定の買い物 | 酒類などの嗜好品、お中元・お歳暮などの贈答品 |
| 遠方の買い物 | 日常の買い物圏を超えた買い物代行 |
これらは訪問介護として提供できない内容というだけで、需要そのものがなくなるわけではありません。介護保険外の自費サービスを提供する事業者を利用すれば、対応できる場合が多いようです。
回数を増やしたいときはケアマネジャーへの相談と自費サービスの併用が現実的です
訪問介護の回数は利用者本人が自由に決められるものではなく、ケアマネジャーが作成するケアプランにもとづいて設定されます。ケアプランでは、心身の状態、家族の介護力、住環境、通所介護や短期入所生活介護、福祉用具貸与といった他のサービスとの組み合わせを踏まえて、必要な回数・時間帯・内容が決まります。
もっと回数を増やしたいと感じたら、まずケアマネジャーに相談し、心身の状態や支給限度額の範囲内で調整できるかどうかを確認するのが順序です。限度額を超える回数を希望する場合は、超過分を自費で利用するか、介護保険外の自費サービスを組み合わせる方法があります。
同居家族分の家事、外出の付き添い、ペットの世話といった、介護保険ではカバーしきれないニーズに対応する自費の訪問介護サービスを提供する事業者も増えてきました。こうした自費サービスには回数の上限がなく、利用者の希望と事業者の受け入れ体制さえ合えば、柔軟に組むことができます。介護保険サービスと自費サービスを組み合わせれば、実質的に1日に何度でもヘルパーの支援を受けられる体制をつくることもできるでしょう。
訪問介護の回数や利用できるサービスの範囲は、要介護度や生活状況、地域の実情によって変わってきます。現在のケアプランが適切かどうか確認したい場合や、事業所の対応体制を知りたい場合は、担当のケアマネジャーや市区町村の高齢福祉担当窓口、地域包括支援センターに相談するのが確実な方法です。








