障害のある方の外出を支援する福祉サービスには「移動支援」「同行援護」「行動援護」という3つの制度があります。これらは全て外出時の移動介助や介護を提供するサービスですが、実施主体、対象者、サービス内容、従事者の資格要件などに明確な違いがあります。
移動支援は市町村が実施する地域生活支援事業で、主に知的障害や精神障害のある方の社会参加や余暇活動を支援します。一方、同行援護と行動援護は国が管轄する個別給付サービスで、それぞれ視覚障害者と行動上著しい困難のある知的・精神障害者を対象としています。
これらのサービスを適切に選択し活用するためには、各制度の特徴や違いを正しく理解することが重要です。2024年の報酬改定により処遇改善加算の一本化や新たな加算制度も導入され、サービスの質向上が図られています。利用者のニーズに最も適したサービスを選択できるよう、詳しく解説していきます。

移動支援・同行援護・行動援護の基本的な違いは何ですか?
移動支援、同行援護、行動援護の最も大きな違いは実施主体と法的位置づけにあります。移動支援は障害者総合支援法における「地域生活支援事業」として市町村が実施主体となるサービスです。そのため、サービス内容や利用ルール、報酬単価は市町村によって異なります。
一方、同行援護と行動援護は同じ障害者総合支援法でも「個別給付(自立支援給付)」に位置づけられ、国が実施主体となります。これにより全国で統一されたサービス基準や要件が定められており、どの地域でも同じ条件でサービスを受けることができます。
支援の目的と内容も大きく異なります。移動支援は映画鑑賞、美術館訪問、趣味のサークル参加、地域イベントへの参加など、社会参加や余暇活動といった「行きたい外出」を可能にすることが主目的です。グループ支援型も可能で、複数人が同時にサービスを受けることもできます。
同行援護は視覚障害者専用のサービスで、移動時の視覚的情報提供、代筆・代読、移動の援護が中心となります。利用者の「目」となって状況を詳細に言葉で伝える専門的な支援が特徴です。行動援護は知的障害や精神障害による行動上の困難がある方を対象とし、自傷行為や他害行為などの行動障害の予防と対応、危険回避のための援助が主な内容となります。
サービス提供の柔軟性においても違いがあります。移動支援は市町村が実施主体のため地域の実情に応じた柔軟な運用が可能ですが、同行援護と行動援護は国の統一基準により厳格な要件が定められています。また、複数人同時支援については、移動支援のみが可能で、同行援護と行動援護は原則としてマンツーマンでの支援となります。
それぞれのサービスの対象者と利用条件の違いを教えてください
移動支援の対象者は主に知的障害者、精神障害者、一部の身体障害者です。最も特徴的なのは、支援区分や障害者手帳の有無に関わらず利用できる点です。市町村がサービスの必要性を認めれば利用可能で、比較的利用のハードルが低いとされています。ただし、発達障害児の場合は診断書または児童相談所発行の判定証明書の提出が必要な場合があります。
同行援護の対象者は視覚障害によって移動に著しい困難を有する方に限定されます。利用には「同行援護アセスメント調査票」での評価が必要で、移動に関する点数が1点以上、かつ移動障害以外の欄(視力障害、視野障害、夜盲)のいずれかが1点以上である必要があります。身体障害者手帳を所持していなくても利用できる場合がありますが、最終的な判断は自治体によります。介護保険対象者でも同行援護は利用可能です。
行動援護の対象者は知的障害または精神障害があり、行動に関して著しい困難を有する方で、以下の両方の条件を満たす必要があります。第一に障害支援区分が区分3以上であること(18歳未満は区分適用外ですが、相当する支援度合いが必要)。第二に障害支援区分の認定調査項目における行動関連項目12項目の合計点数が10点以上であることです。
行動関連項目には「危険認知能力」「異食・盗食の有無」「他害・自傷の有無」「てんかん発作の有無や頻度」「コミュニケーション能力」「説明理解能力」「大声・奇声を出すか」などが含まれ、これらによって行動障害の発生頻度や支援の必要度が厳格に評価されます。
利用手続きの違いでは、移動支援は市町村の福祉窓口への相談から始まり、比較的簡易な手続きで済みます。同行援護と行動援護は障害支援区分の取得が必要で、相談支援事業所でのサービス等利用計画作成、市町村での支給決定など、より複雑な手続きを経る必要があります。申請から決定までの期間も、移動支援は約1ヶ月程度、同行援護と行動援護は1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
従事者の資格要件や専門性はどのように異なりますか?
移動支援の従事者は「ガイドヘルパー」(正式名称:移動介護従事者)と呼ばれ、必要な研修を修了した専門ヘルパーが支援を行います。ガイドヘルパーの資格要件や研修内容は各自治体に委ねられているため、地域によって異なります。一般的には「全身性障害」「知的障害」「視覚障害」の3種類の研修に分かれており、比較的取得しやすい資格とされています。介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)の資格を持っている場合、研修科目の一部が免除されることもあります。
同行援護の従事者になるには、より専門的な資格が必要です。「同行援護従業者養成研修」の修了が基本要件で、これには一般課程と応用課程があります。一般課程は講義12時間以上、実技演習8時間以上の合計20時間程度のカリキュラムで、受講期間は3〜4日程度です。一般課程を修了すれば同行援護に従事できます。
応用課程は講義2時間、演習10時間の合計12時間程度で、受講期間は2日程度です。同行援護のサービス提供責任者として働くには応用課程の修了が必須となります。その他、介護福祉士や居宅介護職員初任者研修修了者で視覚障害者・児の福祉に関する事業に1年以上の直接処遇職員経験がある者、国立障害者リハビリテーション学院視覚障害学科修了者も資格要件を満たします。
行動援護の従事者は「行動援護従業者」と呼ばれ、最も厳格な要件が設定されています。従事者になるには2つの条件を満たす必要があります。第一に「行動援護従業者養成研修」または「強度行動障害支援者養成研修(実践研修)」の修了、第二に知的障害や精神障害がある方への直接処遇経験1年以上(かつ180日以上)です。
サービス提供責任者になるには、さらに3年以上(かつ540日以上)の実務経験が必要です。2025年7月時点の最新情報として、サービス提供責任者および従業者の要件において、介護福祉士や実務者研修修了者等を行動援護従業者養成研修修了者とみなす経過措置が令和9年3月31日まで延長され、その後廃止されることが決定されています。
これらの資格要件の違いは、各サービスが対象とする障害特性の専門性の違いを反映しています。移動支援は幅広い障害に対応するため比較的柔軟な要件、同行援護は視覚障害という特定の障害に対する専門的な技術、行動援護は行動障害という高度な専門性を要する支援に対応した要件となっています。
サービス利用時の費用負担や制限事項に違いはありますか?
費用負担の仕組みは3つのサービスで基本的に同じですが、詳細な料金設定に違いがあります。いずれもサービス利用料金の1割が利用者負担となり、世帯所得に応じた月額負担上限額(0円、4,600円、9,300円、37,200円など)が設定されています。
移動支援は市町村が実施主体のため、利用料金は市町村によって異なります。一般的に1時間あたり2,500円から3,000円程度を設定している自治体が多いです。同行援護と行動援護は国の統一基準により、1単位あたりの金額が地域によって定められており、東京都23区では1単位あたり11.2円となっています。
実費負担項目も共通しており、ヘルパーの交通費、食事代、観劇・映画等の入場料は利用者の実費負担となります。ただし、移動支援では一部自治体が交通費を事業所負担としている場合もあります。
利用制限事項では、3つのサービス共通で以下の外出は利用できません。通勤、通学、通所、営業活動などの経済活動に関わる外出、通年かつ長期にわたる外出、社会通念上不適当と見なされる外出(ギャンブル、飲酒目的など)です。
移動支援特有の制限として、宿泊を伴う外出や施設入所者の通院は原則利用できません。また、家族が同行できる場合は基本的に利用できませんが、強度行動障害や医療的ケアが必要な場合は例外的に認められることがあります。一部自治体では「2時間ルール」が適用され、1日に複数回サービスを利用する際の時間間隔によって料金計算方法が変わります。
同行援護と行動援護は1日の範囲内で用務を終えられる外出に限定されます。行動援護では1日に1回の援助、1日あたりのサービス提供時間は原則8時間までという制限があります。
車両利用の制限も異なります。移動支援では、ヘルパーが運転する車での移動中は常時介護できないため原則算定対象外ですが、自家用有償旅客運送の登録がある場合は可能です。行動援護では2024年に要件が緩和され、行動援護従業者が運転する車での移動が可能となりましたが、運転中は報酬の算定対象外となります。
サービスの併用制限では、移動支援と同行援護・行動援護の併用は原則できません。国が提供する同行援護や行動援護が市町村の移動支援よりも優先されるためです。ただし、行動援護のサービス量が不足する場合など、例外的に移動支援で補填することが認められるケースもあります。
2024年の報酬改定で各サービスにどのような変更がありましたか?
2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス報酬改定は、サービスの質向上や人材確保を目的として実施され、2025年4月から適用される重要な更新内容も含まれています。最も大きな変更点は処遇改善加算の一本化です。
従来の「福祉・介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つが「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化され、4区分に整理されました。これにより介護・福祉職の賃金改善だけでなく、職場の魅力向上や定着率の向上が図られています。この加算の算定要件である「キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ」と「職場環境等要件」の経過措置期限が令和7年度中に延長されました。
業務継続計画(BCP)の義務化も重要な変更点です。災害や感染症発生時にもサービスを継続するためのBCP策定が義務化され、令和7年度から未策定の場合の減算措置の経過措置が終了しました。事業所は必ずBCPを策定し、定期的な研修や訓練を実施する必要があります。
虐待防止措置に関する新たな制度も導入されました。虐待防止措置や身体拘束の適正化に関する減算制度が設けられ、適切な措置を講じていない事業所には減算が適用されます。これにより利用者の人権保護と安全確保がより強化されています。
強度行動障害を有する障害者への支援体制強化として「集中的支援加算」が新設されました。中核的人材の配置や集中的支援が評価され、行動援護サービスの質向上が期待されています。
同行援護サービス特有の改定では、特定事業所加算の算定要件に重症心身障害児および医療的ケア児への支援が追加されました。また、2025年制度改正において、盲ろう者向け通訳・介助員が同行援護従業者の要件を満たす場合、特定事業所加算の要件が拡大されました。事業所の職員の20%以上がこの要件を満たす場合、特定事業所加算が取得可能となります。
地域連携の強化も重要な変更点です。グループホーム等における地域連携推進会議の設置が、令和6年度の努力義務から令和7年度には完全義務化されました。「地域生活支援拠点等機能強化加算」も新設され、地域における相談支援やサービス事業所間の情報連携を担うコーディネーターの配置が評価されます。
ICT活用の推進により業務効率化が図られています。クラウド型記録システムや業務進捗の可視化ツール、スマホやタブレットによる入力補助などが推奨され、これらは業務改善や加算取得につながると期待されています。
これらの改定により、外出支援サービス全体の質向上と持続可能な支援体制の構築が目指されており、利用者にとってより安心で質の高いサービス提供が期待されています。









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