精神疾患による障害年金の審査請求で認められる成功率は、約15%程度となっています。障害年金が却下や不支給となった場合、審査請求や再審査請求という救済制度を利用できますが、一度国が下した決定を覆すことは容易ではありません。本記事では、精神疾患における障害年金の却下・不支給の原因から、審査請求の具体的な手続き、そして成功率を高めるためのポイントまで詳しく解説します。
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障をきたした方を経済的に支援する公的年金制度です。うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害などの精神疾患による障害年金の申請は年々増加していますが、同時に却下や不支給となるケースも少なくありません。特に2024年度以降は審査が厳格化されており、申請前の十分な準備と、万が一の際の対処法を知っておくことが重要です。

障害年金の基礎知識と精神疾患における対象疾患
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などに支障が出た場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金のことです。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき、つまり初診日に加入していた年金の種類によって、請求できる障害年金が決まります。
国民年金に加入している方は障害基礎年金として1級または2級を請求でき、厚生年金に加入している方は障害厚生年金として1級、2級、3級および障害手当金を請求できます。精神疾患の場合、外見から障害の程度が分かりにくいため、認定基準に沿った適切な書類準備が特に重要となります。
2025年度の障害年金支給額
2025年度の障害年金支給額は、前年度比で1.9%引き上げられました。障害基礎年金の年額は、1級が1,039,625円で月額換算すると86,635円、2級が831,700円で月額69,308円となっています。
障害厚生年金の場合、1級と2級は障害基礎年金に報酬比例年金と配偶者加給年金が加算されます。3級は報酬比例年金のみとなりますが、最低保障額として623,800円が設定されています。子の加算については、2人目までは1人につき239,300円、3人目以降は1人につき79,800円が加算されます。配偶者加給年金は239,300円です。
さらに、障害年金生活者支援給付金として、1級の方には月額6,813円、2級の方には月額5,450円が支給されます。
精神障害における障害年金の対象となる疾患
精神障害の認定基準は障害区分ごとに定められています。対象となるのは、統合失調症および統合失調症型障害並びに妄想性障害、うつ病や双極性障害などの気分感情障害、症状性を含む器質性精神障害、てんかん、知的障害、発達障害の6つの区分です。
注意すべき点として、人格障害は原則として認定の対象となりません。また、神経症についてはその症状が長期間継続し一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならないとされています。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分感情障害に準じて取り扱われます。
精神障害の認定基準と等級判定ガイドラインの仕組み
精神障害の認定において最も重要なのは、具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断することです。障害認定基準では「精神の障害は多種であり、症状は同一原因であっても多様である」として、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮するとされています。
統合失調症については、予後不良の場合もあり障害の状態に該当すると認められるものが多いとされています。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また急激に増悪することもあるため、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮して認定が行われます。
うつ病については、本来症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものであるとされています。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮するとされています。
等級判定ガイドラインによる審査の具体的基準
2016年9月より「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の運用が始まりました。うつ病などの精神疾患の場合は身体的な疾患と比べて数値で障害状態を判断することが難しいため、このガイドラインでより具体的な基準が示されています。
日常生活能力の判定は7つの項目について4段階で評価されます。評価項目は、適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性の7項目です。これらを「できる」「概ねできるが時には助言や指導が必要」「助言や指導があればできる」「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」の4段階で評価します。
日常生活能力の程度については5段階で評価されます。最も軽い段階は精神障害を認めるが社会生活は普通にできる状態、次が家庭内での日常生活は普通にできるが社会生活には援助が必要な状態、その次が家庭内での単純な日常生活はできるが時に応じて援助が必要な状態、さらに日常生活における身のまわりのことも多くの援助が必要な状態、最も重い段階が身のまわりのことはほとんどできない状態となっています。
判定平均は、日常生活能力の判定の4段階評価について程度の軽いほうから1から4の数値に置き換え、その平均を算出したものです。この判定平均と日常生活能力の程度の評価を表にあてはめて障害等級の目安とします。
重要な注意点として、目安表に当てはまれば自動的に等級が決まるわけではありません。ガイドラインには「総合評価」という概念があり、診断書の記載内容全体や就労状況、生活環境などを加味して最終決定が行われます。また、表内の「3級」は障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることになります。
評価時の前提条件として単身生活を想定
入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居などにより支援が常態化した環境下で日常生活が安定している場合であっても、単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定し、その場合の日常生活能力について記載することとされています。この点は診断書作成時に医師に伝えておくべき重要なポイントです。
精神疾患の障害年金が不支給・却下になる原因
障害年金の審査は近年厳格化の傾向にあります。厚生労働省年金局の調査報告書によると、2024年度の新規請求のうち非該当割合は13.0%と過去最高の水準となりました。とりわけ精神障害の非該当割合は、2023年度が6.4%であったのに対して、2024年度は12.1%と約2倍の水準になっています。
さらに注目すべきは、精神ガイドラインにおける障害等級の目安よりも下位に認定された割合です。2023年度が44.7%であるのに対し、2024年度は75.3%に急増しています。このことから、2024年度では審査が厳格化されていたことが推測されます。2024年4月以降、精神障害における障害年金の審査は厳格化される傾向があり、以前であれば2級で認定されていたケースが3級で認定されるといった事例が散見され、審査中の返戻も多くなっているとのことです。
不支給となる5つの主な原因
診断書の内容不備は不支給の最も多い原因の一つです。診断書には日常生活にどれだけ支障があるかが記載されますが、症状が軽く記載されると審査側は障害年金を支給する必要はないと判断してしまいます。一般的に患者の方々は医師に対して実際の症状よりも軽く伝える傾向があり、実態が診断書に反映されない場合があります。
初診日の証明困難も大きな障壁となります。過去に受診した病院が閉院していたりカルテが破棄されていると、証明書類を用意できず申請自体が難航してしまいます。
保険料納付要件を満たしていないケースもあります。初診日の前々月までの公的年金の加入期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が加入期間の3分の2以上必要です。または、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないことが必要となる特例もあります。
書類間の矛盾・不備も不支給につながる原因です。病歴・就労状況等申立書は発病からの病歴や通院歴、就労や日常生活の状況などについて本人が作成するものです。記載内容に具体性がない場合や実態と見合わない部分があると不支給につながるため、診断書などとの整合性も確認して作成することが大切です。
審査基準の厳格化も見逃せない要因です。障害年金の財政負担が大きくなっている影響もあり、審査基準が年々厳しくなっています。特に精神疾患や発達障害の場合、外見から障害が見えにくいため審査がより厳格に行われる傾向にあります。
不支給と却下の違いを理解する
不支給と却下は意味が異なります。不支給とは障害等級に該当しないと判断された場合を指し、却下とは申請の形式的要件を満たしていない場合を指します。却下の例としては、初診日が証明できない場合や保険料納付要件を満たしていない場合などが挙げられます。
診断書作成における重要ポイント
精神の障害に対する障害年金は、精神障害や知的障害または発達障害により日常生活に継続的に制限が生じ支援が必要な場合に、その障害の程度に応じて障害等級を決定し支給するものです。適切な障害等級の決定にあたっては、診断書の内容ができるかぎり詳細かつ具体的に記載されていることが大変重要です。
日常生活能力の判定欄が最重要
精神の診断書では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」欄と「日常生活能力の程度」欄という記載項目があり、精神の障害の程度の認定において最も重要な部分となります。この項目は診断書に「判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください」と赤字で記載されているように、日常生活能力は単身で生活し誰からの援助も得られない状態を想定して記入することになっています。
同居者の有無の記載について
診断書において一番のポイントとなるのは「同居者の有無」です。単身で生活している場合は、一人で問題なく生活できていると判断され障害の程度も軽度にみられる可能性があります。単身者の場合でも、家族や友人などの支援者が頻繁に自宅を訪れて支援をしているのであれば、その事を記載してもらうようにしましょう。
就労状況の記載が等級判定に大きく影響
精神の診断書には「就労状況」を記載する欄があり、実際に請求人の就労状況は等級判定にかなり大きな影響を及ぼします。認定基準では「現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類や内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する」とされています。一般就労をして十分な給与をもらい数年間安定して勤められている以外は、就労していると記載しない方が無難との見解があります。
援助の内容を具体的に記載してもらう
「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄や「備考」欄に、受けている具体的な援助の内容を詳しく書くように医師に依頼することが重要です。誰にどのような援助を受けているかを具体的に記載してもらいましょう。
医師への情報提供の重要性
主治医は主に診察室での本人を見て状況を判断せざるを得ないので、障害状態をどうしても実際の状態より軽く見る傾向があります。特に本人のみが外来受診しているという場合は、主治医に実際の日常生活の状況が伝わっていません。診断書にも症状の変動を踏まえて記載するため、主治医とは日頃から実態を共有しておくことが重要です。
労働能力については、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、またどの程度の労働ができるのか等を認定側がわかるようにしっかり記載してもらいます。労働できない場合はできるだけ「就労不能」や「労働能力はない」と明確に書いてもらいましょう。
病歴・就労状況等申立書の効果的な書き方
病歴・就労状況等申立書は、障害年金を請求する際に必ず必要な書類で、日常生活の様子や就労状況、どのくらい障害が生活に影響があるのかという診断書だけでは伝わらない障害の様子を伝える書類です。診断書は医師の視点から障害の状態を評価しますが、短い診察時間のみで患者の生活状況までを把握するのは困難です。一方で病歴・就労状況等申立書は請求者本人の視点でこれまでの経過や日常生活の様子を伝えられる書類です。
診断書との整合性を保つことが最重要
受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書の3つの発病日と初診日は合わせておくのが良いです。まず診断書を何回も読みその内容を頭に入れ、診断書の内容と矛盾しないように注意を配ります。その上で「診断書の内容を補強する」という記載方針をもって作成を行っていきます。
障害認定基準を意識した記載
障害認定基準の個別の支給要件を明確に意識するとともに、個別の支給要件に該当する具体的事実を丁寧に書き並べていくことが大事です。病歴を記入する際には一定の決まりがあり、同じ医療機関に長く通っている場合や通院していない期間が長い場合は、その期間を3から5年ごとに区切って記入します。
客観的事実の記載に徹する
客観的事実を淡々と書いていき、そのなかで病状や困りごとをアピールしていきます。病歴・就労状況等申立書は「障害年金の受給に対する熱い思い」を記載するものではありません。精神的つらさや経済的困窮は障害年金の支給可否とは関係がありません。大切なのは「できるかできないか」です。
就労にも一人暮らしにも何らかの援助が必要なはずで、その援助の内容をきちんと医師に伝え診断書に書いてもらい、こと細かな部分を病歴・就労状況等申立書にきちんと記載するようにしましょう。
入手方法と作成方法
年金事務所や市役所などに取りに行く方法と日本年金機構のホームページからダウンロードして入手する方法があります。ダウンロードはエクセル版とPDF版が準備されています。手書きで作成しても問題ありませんが、パソコンが使える方はエクセルでの作成をおすすめします。読みやすく修正も簡単にできるため便利です。
知的障害や発達障害の場合の注意点として、生来性の知的障害の場合は原則的に初診日は知的障害を疑って病院に行った日ではなく出生日になります。知的障害の場合はその時点で特に異常が見られなかった場合でも出生時から書く必要があります。
本人による記載が困難な場合には、家族やこれまでの経過を理解している人などに代筆を依頼しても構いません。周囲に代筆を頼める相手がいない場合は、社会保険労務士に代筆を依頼する手段もあります。
初診日の証明方法と対処法
障害年金の請求において初診日の特定と証明は非常に重要です。初診日によって、請求できる年金の種類が障害基礎年金か障害厚生年金かが決まり、保険料納付要件の判定時期や障害認定日も決まります。
カルテがない場合の5つの対処法
医療機関のカルテの保存期間は5年とされているため、初診日がかなり前にある場合はすでにカルテが廃棄されている場合や閉院していることが多くあります。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する方法があります。記録が取れず受診状況等証明書が提出できないときは、受診状況等証明書が添付できない申立書を作成し、2番目に受診した医療機関に最初の医療機関の名称や初診日が記載された記録があるか確認します。もし次に受診した医療機関にもカルテや受診記録が残っていない場合は、同様に申立書を作成しその次の医療機関に証明書の作成を依頼します。紹介状が残っている場合は受診状況等証明書に紹介状のコピーを添付することで初診日の証明ができます。
カルテ以外の記録を確認する方法もあります。カルテはなくても受診者の氏名や受診日などの記録が残っている場合があります。その記録からわかる範囲で受診状況等証明書に記入していただくことで初診日の証明として有効となる場合があります。医療機関のレセプトコンピュータなどに受診日だけが残っているケースもあるため、日付だけでも記録がないか確認してみましょう。
参考資料を添付する方法として、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、手帳申請時の診断書、生命保険や損害保険、労災保険の給付申請時の診断書、事業所等の健康診断の記録、健康保険の給付記録、お薬手帳、領収書、診察券、小学校や中学校等の健康診断の記録や成績通知表、交通事故証明などが挙げられます。
第三者証明を活用する方法もあります。20歳以降に初診日がある場合は、原則として複数の第三者による証明とその他の参考資料を併せて提出した場合、審査し本人の申し立てた日を初診日とすることが可能となりました。第三者証明は請求者の三親等以内の親族は第三者と認められません。三親等以外の親族、隣人、学校の教師や同級生、勤務先の上司や同僚などが考えられます。
5年以上前の記録がある場合は、請求の概ね5年以上前に作成された診療録等に本人申立ての初診日が記載されていてこれを根拠に作成した受診状況等証明書であれば、その証明書単独で初診日を認めてもらえます。
審査請求(不服申立て)の手続きと流れ
審査請求とは、障害年金の支給決定や不支給決定、等級の判定など国が行った処分に対し「その決定内容は誤っているのではないか」と異議を申し立てて見直しを求める制度です。障害年金の不服申立てには、1回目に行う「審査請求」と2回目に行う「再審査請求」の2種類があります。
審査請求の期限と提出先
不支給決定通知を受け取った日の翌日から起算して3ヶ月以内に審査請求を行わなければなりません。この期限を過ぎると原則として審査請求はできなくなります。審査請求は全国に8つある管轄の地方厚生局の社会保険審査官に対して行います。口頭でも文書でも可能とされていますが、一般的にはしっかり記録が残るように文書で行います。
審査請求書は住所地を管轄する地方厚生局の社会保険審査官宛に電話をして取り寄せるほか、地方厚生局のホームページからダウンロードできます。申請書類は年金事務所で受け取れます。また、提出先も年金事務所で行えます。
審査請求の流れ
審査請求書の作成と提出を行い、社会保険審査官による審査が行われ、必要に応じて口頭意見陳述があり、そして決定が通知されるという流れになります。この一連のプロセスには通常3から6ヶ月程度かかります。
審査請求書作成の重要ポイント
審査請求をする際には、不支給や却下、その等級になった理由を知っておくことが大切です。理由を確認した上で「どこがおかしいのか」「何がおかしいのか」主張する内容を考える必要があります。
審査請求を行う際には「原処分のどこが不当なのか」「その根拠は何か」をはっきりさせておくことが大事です。審査請求書に「体調が悪くて辛いから認めてほしい」などの心情を記載しても審査には影響がありません。障害認定基準と提出書類を踏まえて「どこが不当なのか」を根拠を示して理論的に請求書を作成する必要があります。
審査請求の結果
審査官は提出された書類を再検討し、処分が法令に照らして適正だったかを判断します。その結果、処分の取消である容認、棄却、却下のいずれかの決定がなされます。棄却と却下の違いとして、棄却は申立てを理由がないとしてまた法に合わないとして無効の言渡しをすることであり、却下は申立てや提案などをそもそも受け付けないことを指します。
再審査請求の手続きと公開審理
審査請求の結果にさらに不服がある場合は再審査請求へ進みます。再審査請求は裁判でいうところの第二審にあたり、審査請求の決定内容に不服がある場合は更に社会保険審査会に対して再審査請求を行うことができます。再審査請求で争うのはあくまで原処分であり、審査請求の決定内容を争う訳ではありません。
再審査請求の期限に注意
再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に行う必要があります。審査請求より期限が1か月短いので注意が必要です。
社会保険審査会の審査体制
審査請求は社会保険審査官による独任制の審査であるのに対して、再審査請求では複数の委員から構成される社会保険審査会が審査を行っています。委員は法律又は社会保険に関する学識経験者から両議院の同意を得て厚生労働大臣に任命された者です。社会保険審査会では「合議制」が採用され、公開審理には参与も出席します。
公開審理について
審査請求とは異なり再審査請求の特徴的な点は「公開審理」の開催です。請求書を出して半年ぐらい経つと公開審理が厚労省で開かれます。そこに請求人や代理人が出席し主張することも可能です。
再審査請求後の選択肢
裁決も一審の決定と同様、容認(原処分の取り消し)か棄却(原処分を妥当とするもの)、または却下(再審査請求が適法ではないとされたもの)のいずれかで、これが行政段階での最終決定となります。提訴期限は審査請求の決定または再審査請求の裁決があったことを知った日から6か月です。
審査請求の成功率と統計データ
障害年金での審査請求や再審査請求において、容認などのもともとの処分が取り消されたり取り下げられたりしたものは約15%と言われています。不服申立ては一度国が決めたことに対して「誤りがあるのではないか」と伝えて見直しを求めるもので、とても難しい手続きになります。
審査請求で認められる割合
関東信越厚生局が公表した資料によると、審査請求で認められた割合は2014年が決定2,576件中で容認率10.6%、2015年が決定2,521件中で容認率9.0%、2012年度から2013年度では約2,800件中の約90件である3.2%が認められました。処分変更を含めた実質容認率はおおむね約7.0から8.0%となります。つまり審査請求で認められるのはおおむね1割程度です。
再審査請求の容認率
2016年度は処分変更が170件、容認が152件で処理総数2,161件中となり、容認率は14.90%と大きく落ち込みました。2017年度はこの流れを継続し、処分変更が130件、容認が99件で処理総数1,848件となり、容認率は12.39%まで下がりました。つまり2016年以降は2割弱程度しか認められない状況です。社会保険審査会のメンバーが変わった2016年度から容認件数と原処分変更のどちらも顕著に減っています。
審査請求成功事例に学ぶ精神障害のケース
実際に審査請求が認められた精神障害関連の事例から、成功のポイントを学ぶことができます。
うつ病関連の成功事例
ある事例では、障害認定日以降に勤務実績があったものの労働に著しい制限があったことを証明し、遡って3級であると主張しました。さらに現在の日常生活状況より2級に該当していると主張した結果、主張がすべて認められました。
別の事例では、初診日の証明が取れずに不支給となりましたが、20歳前の初診日だったため証言等を添付して審査請求を行い、その他の状況証拠を集めて審査請求をおこなった結果、初診日が認定され年金も認められました。
統合失調症の成功事例
現況届で不支給になったケースで、診断書の内容では2級でもおかしくなかったものの、一人暮らしをされている等の状況が影響している可能性があると判断し、実態を説明して2級であると主張しました。再審査請求までもつれましたが、無事2級が認められました。
双極性感情障害の成功事例
仕事をされていたことがネックになって不支給となっていましたが、当時の勤務状況を証明する書類や証言を添付して審査請求を行い、障害認定日は3級、現在は2級と主張しその通り認められました。
発達障害の成功事例
診断書の内容から2級と認定されるべき内容であると判断するも不支給でした。診断書の具体的項目から2級であると主張して審査請求をし、主張が全面的に認められました。
審査請求成功のポイント
うつ病などの精神疾患では1人暮らしができていることを理由に障害の程度を軽く見られ、低い等級と判断されたり不支給とされることがあります。このようなケースでは、1人暮らしをしているが家族や友人の援助が欠かせないことを具体的に審査請求書の理由の中で記載することにより請求が認められた例があります。
神経症とされていても「お薬手帳」で抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬が処方されていたことや、精神障害者保健福祉手帳の診断書に精神病の病態を示していることが窺われる記載があったケースでは、これらを参考資料として審査請求書に添付することで認められました。
社労士への依頼のメリットと費用
障害年金の申請や審査請求を社会保険労務士に依頼することには複数のメリットがあります。申請手続きを1回で済ませることができ、申請の認定確率を飛躍的に高められます。社労士に依頼することで書類の収集や作成など面倒な手続きを任せることができるので、自身は安心して療養に専念することができます。
費用の内訳
相談料は有料の場合「30分5,000円」のように時間制の料金設定となっていますが、障害年金の申請に関しては無料としている社労士事務所も多くあります。着手金は0円から5万円程度で無料の事務所も多いです。事務手数料は手続きの際に発生する郵送費、電話代、年金加入条件の確認調査などの経費で、相場は10,000から30,000円です。
成功報酬(手続報酬)の報酬額は年金支給額の2から3ヶ月としている社労士事務所が多いです。遡及がある場合は遡及金額の10から15%程度の報酬が一般的です。多くの社労士では報酬額を「年金の2ヵ月分+消費税」「初回振込額の10%+消費税」のどちらか高い方としています。「最低10万円+消費税」を設定している所も結構あります。
実費は障害年金の請求に必要な書類を社労士が代理取得する場合に立て替えた費用で、支給・不支給の結果を問わず支払うことになります。
例えば年金の年間受給額が120万円だった場合、報酬は12から18万円+消費税ほどになります。成功報酬制では障害年金の受給が決定した後に報酬を支払い、申請の結果不支給となってしまった場合は報酬を支払う必要はありません。
料金体系が複雑な場合は具体的な事例を挙げて説明を求めるのも良いでしょう。社労士選びの際は料金だけでなく、経験や実績、コミュニケーション能力なども総合的に判断することが大切です。
不支給になった場合の3つの対処法
障害年金の不支給決定を受けた場合、審査請求、再申請、状態悪化による請求の3つの対応方法があります。
審査請求は不支給決定に不服がある場合に、決定通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に行います。再申請は新たな診断書や資料を用意して再度申請を行う方法です。状態悪化による請求は障害の状態が悪化した場合に行う新たな請求です。
再申請の注意点
一度不支給決定を受けてからの再申請の場合は、前回提出した書類も必ずチェックされることになります。そのため、思わぬ形で前回の提出書類が足を引っ張ることもあります。
不支給や却下を避けスムーズに障害年金の申請を行うためには、障害年金専門の社労士に相談することを検討しましょう。審査請求や再審査請求を行うことで再度のチャンスはありますが、可能性は決して高くないため専門家のサポートを受けることが望ましいとされています。
2025年の制度改正と今後の動向
2025年に厚生労働省から障害年金制度に関する改正法案が打ち出され、従来の制度が見直される運びになりました。制度の改正検討が行われるのは実に40年ぶりとのことです。
日本弁護士連合会は2025年7月10日に、障害認定基準の透明性と制度自体の公平性などを求める会長声明を公表しました。障害認定基準等を見直し、障害年金について公平な制度の構築を求めています。
2024年4月以降、精神障害における障害年金の審査は厳格化されている傾向があります。今後も審査基準の動向に注意が必要です。
まとめ
障害年金の申請、特に精神疾患による申請は、複雑な手続きと厳しい審査を伴います。不支給や却下となった場合でも審査請求や再審査請求という救済手段がありますが、成功率は約15%程度と決して高くはありません。
申請の際には診断書の内容が実態を正確に反映しているか確認し、病歴・就労状況等申立書を診断書と整合性をもって作成することが重要です。初診日の証明資料を早めに準備し、日常生活における困難さや援助の必要性を具体的に記載しましょう。必要に応じて専門家である社労士に相談することも有効な手段です。
審査請求を行う場合は「原処分のどこが不当なのか」を障害認定基準に基づいて論理的に主張することが求められます。感情的な訴えではなく、客観的な根拠に基づいた主張が成功への鍵となります。









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