【2025年改革】厚労省が要介護認定の申請代行を拡大!グループホームや有料老人ホームも対象に

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厚生労働省は2025年に向けて、要介護認定の申請代行ができる事業者の範囲を大幅に拡大する方針を固めました。これまで申請代行が認められていなかった認知症グループホームや介護付き有料老人ホームなどの入居系サービス事業者に対し、新たに代行権限が付与される見通しです。この改革は、急速な高齢化に伴う認定申請件数の増加と、深刻化する認定事務の遅延問題に対処するための重要な施策として位置づけられています。2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、介護需要が爆発的に増加することが予想される中、限られた行政リソースで増大する認定申請を効率的に処理する必要性が高まっているのです。この記事では、要介護認定申請代行の対象拡大に関する制度改正の詳細、その背景にある課題、期待されるメリット、そして懸念されるリスクについて、厚生労働省の最新データと審議会での議論を踏まえながら包括的に解説します。

目次

要介護認定申請代行とは何か

要介護認定申請代行とは、介護保険のサービスを利用するために必要な要介護認定の申請手続きを、本人や家族に代わって専門の事業者が行うことを指します。高齢者や認知症の方にとって、複雑な行政手続きは大きな負担となるため、専門知識を持った事業者が代行することで、スムーズな申請が可能になります。

現行の介護保険法施行規則では、申請代行ができる主体は限定されており、指定居宅介護支援事業者、地域包括支援センター、介護保険施設、社会保険労務士、民生委員などに限られていました。特に、ケアマネジャーが配置されている居宅介護支援事業所による代行が最も一般的であり、実際に申請代行の約8割は指定事業者によって行われているのが現状です。

しかしながら、この限定的な仕組みには実務上の問題がありました。特に、認知症グループホームや有料老人ホームに入居している利用者の場合、日々のケアを担当している施設職員が申請を代行できず、遠方に住む家族に依頼するか、わざわざ外部の居宅介護支援事業所を介さなければならないという非効率な二度手間が発生していたのです。

厚労省が対象拡大を決定した背景

厚生労働省が申請代行の対象拡大に踏み切った背景には、複数の構造的な要因が重なっています。最も大きな要因は、2025年問題と呼ばれる人口動態の転換点に向けた介護保険制度の持続可能性の確保です。

2025年は、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる年であり、介護需要が爆発的に増加する転換点として長年認識されてきました。厚生労働省や財務省は、この時期に向けて介護報酬の改定や制度の見直しを断続的に進めており、訪問介護への定額報酬導入や介護職の賃上げ、さらには障害福祉分野における総量規制の導入など、矢継ぎ早に改革案を打ち出しています。要介護認定の申請代行拡大も、この一連の改革の文脈の中に位置づけられるものであり、単なる手続きの緩和ではなく、制度全体のパンクを防ぐための重要な防波堤としての役割を期待されているのです。

さらに直接的な契機となったのは、内閣府が進める地方分権改革に関する提案募集です。2024年度の提案において、地方自治体から「要介護認定の申請代行ができる事業者を拡大してほしい」という具体的な要望が出されました。自治体側の論理は明確で、特に認知症グループホームや有料老人ホームに入居している利用者の場合、日々のケアを担当している施設職員が申請を代行できないという実務上の非効率を解消し、現場の実態に即した運用を可能にすることが求められていたのです。

この地方からの突き上げと、中央省庁の制度改革の流れが合流することで、今回の対象拡大が実現する運びとなりました。厚生労働省は2024年度中に結論を得て、必要な対応として省令改正等を行うとしており、早ければ2025年度のスタートと同時に、あるいは年度途中から順次、新しい運用が開始される公算が高まっています。

新たに対象となる事業者

今回の厚生労働省の方針により、新たに申請代行が可能となる見通しの事業者は、主に入居系サービスを提供する事業者です。具体的には、認知症対応型共同生活介護、いわゆる認知症グループホームが最も重要な対象となります。グループホームでは計画作成担当者としてケアマネジャーの配置が基準となっているにもかかわらず、これまで申請代行権限がないという制度上のねじれが生じており、実務上の大きな弊害となっていました。

次に、特定施設入居者生活介護に該当する介護付き有料老人ホーム等も対象に含まれます。有料老人ホームは民間企業が運営するケースも多く、入居者数も年々増加している中、これらの施設が申請代行を行えるようになることは、入居者とその家族にとって大きな利便性の向上につながります。

さらに、小規模多機能型居宅介護、通称小多機と呼ばれるサービス、および看護小規模多機能型居宅介護、通称看多機と呼ばれる複合型サービスも新たな対象となる見込みです。これらのサービスは、通所、訪問、宿泊を組み合わせた柔軟な支援を提供するもので、地域包括ケアシステムの中核を担う存在として期待されています。

これまでこれらの事業者が申請代行から除外されていた背景には、ケアマネジメントの中立性と独立性に関する理念的な議論がありました。居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、特定のサービス事業者に偏ることなく、利用者の利益のために公正中立にプランを作成することが求められてきました。そのため、申請代行という入り口の業務も、中立的な立場の専門職が担うことが望ましいとされてきたのです。

一方、グループホームや特定施設はサービス提供主体そのものであり、自社サービスを利用している顧客の認定申請を、サービス提供者自身が代行することは、本来であればお手盛りのリスクを孕むものでした。しかし、認知症グループホームではケアマネジャーの配置が基準となっているにもかかわらず申請代行権限がないという矛盾が実務上の弊害を大きくしており、厚生労働省はリスクよりも実利、すなわち利便性と迅速化を優先する決断を下したと言えます。

主治医意見書の事前入手という革命的変更

対象事業者の拡大とセットで導入される、もう一つの重要な改革が、申請フローそのものの抜本的な見直しです。具体的には、申請書提出時に、申請者側があらかじめ主治医意見書を入手し、添付することを可能にする運用が明確化されることになります。

従来のフローでは、市町村へ申請書を提出した後、市町村が主治医へ作成依頼書を郵送し、主治医が作成して返送し、それを市町村が受領するという段階を踏んでいました。厚生労働省の令和5年度のデータによれば、この主治医意見書の回収には平均で18.0日もの時間がかかっており、認定事務処理全体の最大のボトルネックの一つとなっていました。

新しいフローでは、申請代行者である施設のケアマネジャーなどが、利用者の通院時に主治医へ意見書作成を依頼し、その場で、または後日手渡しで受け取ることができるようになります。そして申請書と意見書をセットで市町村へ提出することで、市町村は郵送の往復を待つことなく即座に認定調査の手配へ移行できるのです。

この変更により、市町村と医療機関の間で発生していた郵送の往復期間や事務処理のタイムラグが大幅に解消されることが期待されています。厚生労働省は、これを義務化するのではなくあくまで申請方法の一つとして認めるとしていますが、迅速な認定を望む施設側にとっては、この方式が事実上の標準になっていく可能性が極めて高いと考えられます。

医師にとっても、この変更は意見書作成プロセスの変化をもたらします。これまでは市町村からの依頼書を待って作成していましたが、今後は診察室で患者や施設職員から直接、今すぐ書いてほしい、あるいは次回の診察までに用意してほしいと依頼されるケースが増えることになります。これは医師にとって、患者の状態を直接確認しながら記載できるというメリットがある反面、診察時間内の事務負担増という新たな課題も生じさせる可能性があります。

現在の認定事務の深刻な遅延状況

今回の改革を理解する上で欠かせないのが、現在の要介護認定事務がどれほど深刻な遅延状態にあるかという実態です。介護保険法第27条第11項では、要介護認定の申請があった場合、市町村は原則として30日以内に認定の通知を行わなければならないと定めています。これは法定の期間であり、守られるべき基準です。

しかし、この30日ルールは既に完全に形骸化しており、行政の現場は慢性的かつ深刻な遅延状態に陥っています。厚生労働省が公表した令和5年度のデータによれば、申請から30日以内に認定された件数の割合は、全保険者平均でわずか25.1パーセントに過ぎません。これは極めて衝撃的な数字であり、4件に3件が法定期間内に処理されていないという異常事態を意味しています。

事務処理期間の詳細な内訳を見ると、申請日から二次判定日までの全体の平均所要日数は39.8日となっており、法定期間を約10日も超過しています。その内訳として、認定調査所要期間が10.9日、主治医意見書所要期間が18.0日、介護認定審査会等期間が16.9日となっており、特に主治医意見書の回収が最大のボトルネックとなっていることが明確に示されています。

さらに深刻なのは、一部の保険者では最大処理期間が80日を超えているケースも存在し、地域間格差も極めて大きいという点です。このような状況下で、申請手続きの入り口を円滑化し、少しでもタイムラグを短縮することは、行政にとって喫緊の課題であり、待ったなしの状況となっていました。

認定の遅延は、利用者にとっても深刻な影響を及ぼします。認定が遅れることで必要なサービスの利用開始が遅れたり、暫定プランでの利用を余儀なくされたりするケースが発生します。また、施設側にとっても、認定有効期間が切れてしまえば、暫定プランでの請求となり、万が一認定結果が予想より低ければ過誤調整で返金が発生するリスクがあり、経営上のキャッシュフローにも影響を及ぼすのです。

申請代行拡大がもたらすメリット

申請代行対象の拡大は、関係するすべてのステークホルダーに対してメリットをもたらすと期待されています。まず、利用者と家族にとっては、手続きの負担が大幅に軽減されることが最大のメリットです。特に遠距離介護の場合、申請書一枚を出すために帰省したり、郵送のやり取りをする手間が省けることは、精神的にも経済的にも大きな支援となります。

認知症の方や判断能力が低下した高齢者にとって、複雑な行政手続きを自分で行うことは極めて困難です。日々のケアを担当し、利用者の状態を最もよく理解している施設職員が申請を代行できるようになることで、より正確で適切な申請が可能になります。施設入居時の一括契約の中に認定申請代行が含まれるようになれば、家族の心理的な負担も大きく軽減されることでしょう。

市町村にとっても、複数のメリットが期待できます。家族による手書きの申請書よりも、専門知識を持った施設職員による作成の方が記載の正確性は高く、申請書類の不備是正にかかるコストを削減できます。また、主治医意見書の事前提出が進めば、医師への依頼業務が減り、前述した平均39.8日という事務処理期間の短縮に直結することが期待されています。

介護施設側にとっても、申請代行は単なる手間ではなく、経営的メリットも存在します。認定の更新や区分変更が遅れることは、施設にとってキャッシュフローのリスクとなります。自ら代行を行い、主治医意見書も事前に入手してプロセスをコントロールすることで、認定の空白期間を防ぎ、確実な報酬請求につなげることができるのです。つまり、申請代行の拡大は、施設経営の安定化ツールとしての側面も持っているということができます。

また、施設にとっては、入居者へのサービスの質を向上させるという観点からも重要です。認定が遅れることで必要なサービスが提供できなかったり、暫定プランでの対応を余儀なくされたりすることがなくなれば、より安定した質の高いケアを提供することが可能になります。これは利用者の満足度向上にもつながり、施設の評判や信頼性の向上にも寄与すると考えられます。

懸念されるリスクと倫理的課題

利便性の向上という光の側面がある一方で、影の側面として最も懸念されるのが倫理的リスクです。厚生労働省の審議会においても、複数の委員からこの点について懸念が示されています。

最大のリスクは、利用者への囲い込みです。サービス提供事業者が申請代行権を持つことで、様々な利益相反行為が行われる可能性があります。たとえば、施設の空室状況や報酬単価アップのために、利用者の状態がそれほど悪化していないにもかかわらず、重度化したとして区分変更申請を行うという不適切な行為が考えられます。要介護度が高くなれば、施設が受け取る介護報酬も増加するため、経済的なインセンティブが働くのです。

また、本来であれば在宅復帰や他のサービス形態が適している利用者に対し、情報の非対称性を利用して自施設に留まるよう認定プロセスをコントロールするという行為も懸念されます。家族に対して全部やっておきますからと伝えることで、家族が利用者の状態やケアプランの内容に関心を持つ機会を奪い、施設の運営をブラックボックス化させてしまう可能性もあるのです。

より深刻なのは、本人の意思確認がおざなりにされるケースです。認知症グループホームなどでは、利用者の判断能力が低下していることが多く、本人の意思を十分に確認しないまま強引に申請代行を行うことや、申請が行われているか否かの確認も行わないまま重複して代行を行うことなどが、過去の厚生労働省の資料では指定基準違反の恐れがあり、指定取り消し等の厳正な対処対象になると明記されています。

従来の居宅介護支援事業所であれば、ケアマネジャーは介護支援専門員という資格に基づき、一定の倫理綱領や研修を受けています。しかし、グループホームや有料老人ホームの職員、必ずしもケアマネ資格を持たない相談員などが代行業務を行う場合、その倫理観や法令知識にはばらつきが生じる可能性があります。施設の売上のために申請を通せという経営者からのプレッシャーに対し、現場職員が抵抗できるかどうか、ガバナンスの仕組みが問われることになるでしょう。

市町村にとっても、新たな課題が生じます。不適切な代行を見抜くための審査業務は難化する可能性があり、特定の施設から大量の区分変更申請が出された場合などに、それを検知し調査する体制が必要となります。これまで以上に、モニタリングと監視のコストが増大することが予想されるのです。

デジタル化との融合と将来展望

今回の申請代行対象の拡大は、単独の改革として終わるものではなく、政府が推進する介護分野のデジタル化と密接に関連しています。政府は現在、マイナポータルを通じた介護保険手続きのオンライン化も推進しており、将来的には施設職員がタブレット端末等を用いて、利用者のマイナンバーカード情報を読み取り、その場でオンライン申請を完了させるフローが標準化される可能性があります。

今回の代行主体の拡大は、このデジタル化の布石とも読み取ることができます。ITリテラシーの低い高齢者本人に代わり、IT環境の整った施設の職員がデジタル申請を行うことで、行政のデジタルトランスフォーメーションを一気に加速させる狙いも透けて見えるのです。

2025年度以降、早ければ年度のスタートと同時に新しい運用が開始される見込みですが、介護事業者、特に今回新たに対象となるグループホームや特定施設の事業者は、今のうちから社内マニュアルの整備や家族への説明資料の準備を進める必要があります。申請代行ができるということ自体は、やがて当たり前のサービスとなり、差別化要因にはならなくなるでしょう。

今後は、いかに透明性を持って、本人と家族の意思を尊重した代行を行えるかが、施設の質を測る新たな指標となっていくと考えられます。申請代行のプロセスを可視化し、家族に対して丁寧に説明し、本人の状態変化を正確に捉えた上で適切なタイミングで申請を行う、そうした誠実な対応ができる施設が、利用者と家族から選ばれる時代になっていくのです。

まとめ

要介護認定の申請代行対象拡大は、2025年問題を見据えた介護保険制度の持続可能性を確保するための重要な改革です。厚生労働省は、認知症グループホームや介護付き有料老人ホーム、小規模多機能型居宅介護などの入居系サービス事業者に対し、新たに申請代行権限を付与する方針を固めました。

この改革には、利用者と家族の負担軽減、市町村の事務処理期間短縮、施設の経営安定化といった多面的なメリットがあります。特に、主治医意見書の事前入手が可能になることで、現在平均39.8日かかっている処理期間の大幅な短縮が期待されています。

一方で、囲い込みや利益相反、本人の意思確認の形骸化といった倫理的リスクも存在します。事業者側の高い倫理観と、行政側の適切な監視体制の構築が不可欠です。今後は、単に申請代行ができるということではなく、透明性と誠実さを持って本人と家族の意思を尊重した代行を行えるかどうかが、施設の質を測る重要な指標となっていくでしょう。

2025年に向けて、介護業界は大きな転換期を迎えています。この制度改正を単なる手続きの変更として捉えるのではなく、利用者本位のケアを実現するための重要な機会として活用していくことが求められています。

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