2025年を中心とする第9期介護保険事業計画期間において、介護保険料は全国平均で月額6225円となり、前期と比較して3.5パーセントの引き上げが実施されました。団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年は、日本の介護制度にとって大きな転換点となる年です。都道府県別に見ると、最も保険料が高い大阪府では月額7486円、最も低い山口県では月額5568円となっており、約1.34倍の地域差が存在しています。市区町村単位ではさらに大きな格差があり、大阪市の月額9249円から東京都小笠原村の月額3374円まで、約2.74倍もの開きが生じています。この地域差の背景には、高齢化率の違い、介護サービスの供給体制の差、地域の経済状況、そして単独世帯の割合など、複数の要因が複雑に絡み合っています。高齢化が急速に進む日本において、介護保険料の動向と地域差を理解することは、将来の生活設計を考える上で非常に重要な要素となります。

第9期介護保険事業計画の基本的な枠組み
第9期介護保険事業計画は、令和6年度から令和8年度までの3年間を対象期間としており、2024年4月1日から2027年3月31日までが計画期間となっています。介護保険制度は平成12年4月に創設されて以来、3年ごとに介護保険事業計画を策定し、計画期間ごとに介護保険料を見直す仕組みが確立されています。第9期計画は、2024年度からスタートした最新の計画期間であり、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年問題を見据えた極めて重要な計画位置付けとなっています。
この計画期間では、高齢化の進展に伴う介護需要の増加に対応するため、地域包括ケアシステムの構築と強化が中心的な課題となっています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される体制のことを指します。各市町村が地域の特性に応じて構築することとされており、3年ごとの介護保険事業計画の策定と実施を通じて段階的に推進されています。
第9期計画期間中には、介護報酬の改定も実施されました。2024年度の改定では、改定率はプラス1.59パーセントとなり、介護職員の処遇改善加算の一本化による賃上げ効果を含めると、合計でプラス2.04パーセント相当の改定となっています。この改定では、深刻な人手不足の中で質の高い介護サービスを持続的に提供できる体制づくりが重視されており、介護職員の処遇改善、生産性向上の推進、地域包括ケアの強化などが主な内容として盛り込まれています。
2025年第9期における介護保険料の全国平均額とその意味
厚生労働省が2024年に発表したデータによると、第9期介護保険事業計画期間における第1号被保険者の介護保険料は、全国平均で月額6225円となりました。これは前期である第8期の月額6014円と比較して211円の増加、率にして約3.5パーセントの引き上げとなっています。第1号被保険者とは65歳以上の高齢者のことを指し、この保険料は原則として年金から天引きされる形で徴収される仕組みとなっています。
この介護保険料の上昇には、いくつかの明確な要因が存在しています。第一に、高齢化の進展による介護サービスの需要増加が挙げられます。2025年には団塊の世代が全員75歳以上となることで、要介護認定を受ける人の数が大幅に増加することが予想されています。第二に、介護従事者の処遇改善が進められていることも保険料上昇の一因となっています。介護職員の人材不足が深刻化する中、賃金水準の向上や労働環境の改善を通じて、質の高い介護サービスを提供できる人材を確保する必要があります。第三に、介護サービスの質の向上に向けた取り組みも、コスト増加につながっています。認知症ケアの充実、医療と介護の連携強化、リハビリテーションの充実など、より専門性の高いサービス提供が求められるようになっています。
全国的に見ると、介護保険料は継続的に上昇する傾向が続いています。制度創設時の第1期である平成12年度から平成14年度の期間では月額2911円だった保険料が、第9期では6225円となり、約24年間で約2.14倍に増加しました。同期間における介護費用は約3.0倍に増加しており、保険料の伸びは費用の伸びよりも一定程度抑制されている状況です。これは、公費負担の増加や、効率的なサービス提供の推進、介護予防の取り組みなどによるものです。
保険料の基準額は各市町村が3年ごとに設定しており、地域の実情に応じて異なる金額が設定されています。具体的には、計画期間内に必要となる介護サービスの総費用を見積もり、そのうち第1号被保険者が負担する割合である23パーセントを、被保険者数で割ることで基準額が算出されます。実際の保険料は、この基準額をもとに、所得に応じた段階制で設定されるため、同じ市町村内でも個人の所得によって支払う保険料は異なります。
都道府県別の介護保険料平均額と地域特性
都道府県別に介護保険料を見ると、大きな地域差が存在していることが明らかになります。2025年を中心とする第9期計画期間において、都道府県別の平均保険料では、最高額と最低額の間に約1.34倍の格差が生じています。この格差は、各地域の高齢化の進展状況、介護サービスの供給体制、地域経済の状況など、複数の要因が複雑に絡み合って生じているものです。
最も保険料が高い都道府県は大阪府で月額7486円となっています。大阪府に続いて保険料が高いのは青森県の月額6715円、秋田県の月額6565円となっており、上位3府県はいずれも月額6500円を超える高水準となっています。大阪府が全国で最も高い保険料水準となっている背景には、都市部特有の要因が存在しています。核家族化が進み、子供世代との同居率が低いため、介護サービスへの依存度が高まっています。また、単独世帯の高齢者が多く、訪問介護や施設サービスなどの利用率が高くなっています。さらに、介護施設の整備が進んでいることも、サービス利用を促進し、結果として保険料の上昇につながっています。
一方、最も保険料が低い都道府県は山口県で月額5568円となっています。山口県に続いて低いのは茨城県の月額5609円、長野県の月額5647円となっており、下位3県はいずれも月額5700円を下回っています。これらの地域では、地域コミュニティによる支え合いが比較的機能していることや、家族による介護が行われる割合が高いことなどが、保険料の抑制につながっていると考えられます。
主要都市圏を見ると、首都圏では東京都が月額6320円、神奈川県が月額6340円、埼玉県が月額5922円、千葉県が月額5885円となっています。中部地方の愛知県は月額5957円、近畿地方では京都府が月額6608円、兵庫県が月額6344円、九州地方では福岡県が月額6295円となっています。大都市圏では全国平均を上回る地域が多く、都市部における高齢化と介護需要の高さが反映されています。
東北地方では、青森県や秋田県など保険料が高い県が目立ちます。これは、高齢化率が全国平均を大きく上回っていることが主な要因です。高齢者の割合が高い地域では、介護サービスの需要が相対的に高まり、それに伴って介護保険料も高くなる傾向があります。また、若年人口の流出により、介護を担う家族が近くにいない高齢者が増えていることも、介護サービス利用の増加につながっています。
市区町村別に見る介護保険料の大きな格差
都道府県別の差以上に、市区町村別に見ると、さらに大きな格差が存在しています。保険者単位である市区町村別では、最高額は大阪府大阪市の月額9249円、最低額は東京都小笠原村の月額3374円となっており、その格差は約2.74倍に達しています。この大きな格差は、各自治体の規模、人口構成、介護サービスの整備状況、地域経済の状況など、極めて多様な要因によって生じています。
保険料が高い市区町村の上位には、大阪市に続いて大阪府守口市が月額8970円、同じく大阪府門真市が月額8749円、岩手県西和賀町が月額8100円と続いています。上位は大阪府内の自治体が占めており、都市部における高齢化と介護需要の高さが顕著に表れています。大阪市の保険料が全国で最も高い理由としては、高齢化率の高さ、単独世帯の多さ、介護サービス利用率の高さなどが挙げられます。
大阪市では、高齢者の一人暮らし世帯が特に多く、家族による介護が期待できないため、公的な介護サービスへの依存度が極めて高くなっています。訪問介護、通所介護、施設サービスなど、あらゆる種類の介護サービスの利用率が高い水準にあります。また、大阪市は介護施設の整備を積極的に進めてきた結果、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの定員数が多く、施設サービスの利用者数も多くなっています。施設サービスは居宅サービスと比較して費用が高額になる傾向があるため、これが保険料の上昇につながっています。
守口市や門真市など、大阪市周辺の自治体も同様の傾向を示しています。これらの地域では、高度経済成長期に人口が急増した後、近年では高齢化が急速に進んでおり、介護需要が急激に増加しています。また、これらの地域は大阪市のベッドタウンとして発展した経緯があり、核家族世帯が多く、高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯の割合が高いという特徴があります。
一方、保険料が低い市区町村では、小笠原村に次いで北海道音威子府村、群馬県草津町が月額3600円、宮城県大河原町が月額4000円となっています。小笠原村のように保険料が低い自治体は、高齢者数が少ないことや、地域コミュニティによる支え合いが機能していることなどが要因として考えられます。小笠原村は東京都心から約1000キロメートル離れた太平洋上の離島であり、人口が少なく、高齢者数も限られています。このような小規模な自治体では、介護サービスの需要自体が少ないため、保険料も低く抑えられています。
ただし、離島や過疎地域では介護サービスの供給体制が十分でない場合もあり、保険料の低さが必ずしもサービスの充実を意味するわけではありません。むしろ、介護サービス事業者が参入しにくく、サービスが不足しているために利用が限定的となり、結果として保険料が低く抑えられているケースもあります。これらの地域では、今後の高齢化の進展に伴い、介護サービスの整備と人材確保が大きな課題となっています。
介護保険料に地域差が生じる複合的な要因
介護保険料に都道府県別や市区町村別の地域差が生じる要因は、単一のものではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。これらの要因を理解することは、今後の介護保険制度のあり方を考える上で重要です。
第一の要因は、高齢化率の違いです。高齢者の割合が高い地域では、介護サービスの需要が高まり、それに伴って介護給付費が増加し、介護保険料も高くなる傾向があります。特に東北地方や地方都市では高齢化が進んでおり、保険料が高くなりやすい状況にあります。さらに、75歳以上の後期高齢者の割合が高い地域では、要介護認定率も高くなる傾向があります。年齢別の要介護認定率を見ると、65歳から69歳では約2.8パーセントですが、90歳以上になると約72.7パーセントにまで跳ね上がります。このため、後期高齢者の多い地域では、介護サービスの需要が特に高くなります。
第二の要因は、介護サービスの供給体制の違いです。介護施設や介護サービス事業所が充実している地域では、サービスの利用が促進され、結果として介護給付費が増加し、保険料も上昇する傾向があります。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどの施設が多い地域では、施設サービスの利用者が多くなります。施設サービスは月額10万円から15万円程度の費用がかかることが一般的であり、居宅サービスと比較して給付費が高額になる傾向があります。このため、施設整備が進んでいる地域では、保険料も高くなりやすいのです。
第三の要因は、地域の所得水準や経済状況の影響です。所得水準が高い地域では、質の高い介護サービスへの需要が高く、それに応じたサービス供給が行われています。また、所得が高い高齢者は、介護保険サービスに加えて自費でのサービスも利用することができるため、全体としてサービス利用量が多くなる傾向があります。ただし、介護保険料の算定においては調整交付金という仕組みがあり、所得水準が低い自治体に対しては国からの財政支援が手厚くなるように調整されています。これにより、地域間の格差が一定程度抑制されています。
第四の要因は、単独世帯や高齢者のみの世帯の割合です。家族による介護が期待できない世帯が多い地域では、公的な介護サービスへの依存度が高まり、保険料も上昇しやすくなります。特に大都市部では、核家族化が進み、高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯の割合が高くなっています。これらの世帯では、日常生活の支援や介護が必要になったときに、家族の支援を受けることが難しく、訪問介護やデイサービス、施設サービスなどの利用が不可欠となります。
第五の要因は、地域の医療と介護の連携体制の違いです。医療と介護の連携が効果的に行われている地域では、過剰なサービス利用が抑制され、適切なサービス提供が行われることで、保険料の上昇が抑えられる可能性があります。地域包括ケアシステムが効果的に機能している地域では、医療機関、介護事業所、地域の関係機関が連携して高齢者を支える体制が整っており、重複したサービス提供や不適切なサービス利用が減少します。
第六の要因は、要介護認定率の地域差です。要介護認定率とは、65歳以上の高齢者のうち、要介護または要支援の認定を受けている人の割合のことです。要介護認定は全国一律の基準で判定されるため、地域による認定基準の差は生じないように設計されています。しかし、実際には地域によって認定率に差が見られます。これは、地域の高齢化の進展状況、医療と介護の連携体制、地域住民の介護に対する意識、認定申請の促進状況などが影響していると考えられます。
介護保険料の算定方法と所得段階別の仕組み
介護保険料の算定方法を理解することは、なぜ地域によって保険料が異なるのか、また自分が支払う保険料がどのように決まるのかを知る上で重要です。介護保険料は、各市町村が3年間の介護サービス費用を見込み、それを基に算定されます。具体的な算定プロセスは、複数のステップから成り立っています。
まず、各市町村は、計画期間内に必要となる介護サービスの総費用を見積もります。これには、訪問介護、通所介護、施設サービスなど、すべての介護サービスの利用見込みを積み上げて算出します。次に、この総費用のうち、第1号被保険者が負担する割合である23パーセントを算出します。介護保険の財源は、公費が50パーセント、第1号被保険者の保険料が23パーセント、第2号被保険者の保険料が27パーセントという割合で構成されています。そして、第1号被保険者が負担すべき総額を、被保険者数で割ることで、基準額が算出されます。
実際の保険料は、この基準額をもとに、所得に応じた段階制で設定されます。多くの自治体では、所得段階を13段階に分けており、基準額に対する割合を乗じて個人の保険料を決定しています。ただし、自治体によっては16段階や17段階など、より細かく区分している場合もあります。より細かい区分を設定することで、所得に応じたきめ細かな保険料設定が可能となり、低所得者の負担軽減と高所得者の応分の負担という公平性が図られています。
所得段階の設定は、本人や世帯の課税状況、所得金額などによって決まります。最も低い第1段階は、生活保護受給者や老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税の人などが該当し、基準額の0.3倍から0.5倍程度の保険料となります。第2段階は、世帯全員が住民税非課税で、本人の年金収入と合計所得金額の合計が80万円以下の人などが該当し、基準額の0.5倍から0.7倍程度となります。第3段階は、世帯全員が住民税非課税で、第2段階に該当しない人が該当し、基準額の0.7倍程度となります。
第4段階から第6段階は、本人が住民税非課税だが世帯内に住民税課税者がいる人が該当します。第4段階は基準額の0.9倍程度、第5段階は基準額そのもの、第6段階は基準額の1.2倍程度となります。第7段階以降は、本人が住民税課税者となり、所得金額に応じて段階が上がっていきます。最も高い段階では、高所得者に対して基準額の2倍から3倍程度の保険料が設定されています。一部の自治体では、特に所得が高い層に対して、基準額の3倍を超える保険料を設定している場合もあります。
低所得者に対しては、公費を投入した軽減措置が実施されています。特に第1段階から第3段階の人については、国と地方自治体が負担する公費により、保険料率がさらに引き下げられています。これは、消費税率の引き上げに伴い、2019年10月から実施されている措置です。これにより、所得が少ない高齢者でも負担可能な水準に保険料が抑えられており、必要な介護サービスを利用できるよう配慮されています。
また、介護保険料には調整交付金という仕組みがあり、高齢化率が高い自治体や、所得水準が低い自治体に対しては、国からの財政支援が手厚くなるように調整されています。通常の国庫負担金に加えて、この調整交付金が配分されることで、地域間の格差が一定程度抑制されています。調整交付金は、全国平均と比較して高齢化率が高い自治体や、所得水準が低い自治体に重点的に配分されるため、これらの自治体では保険料の上昇が抑えられる効果があります。
基準額は市町村によって大きく異なります。第9期計画期間において、ある自治体では月額5000円程度、別の自治体では月額7000円を超えるなど、地域によって2倍近い差が生じています。これは、各地域の高齢化率、介護サービスの利用状況、サービス提供体制などが大きく異なるためです。
第2号被保険者の介護保険料の仕組み
介護保険制度では、65歳以上の第1号被保険者だけでなく、40歳から64歳までの第2号被保険者も保険料を負担しています。第2号被保険者の保険料は、加入している医療保険を通じて徴収される仕組みとなっており、第1号被保険者とは異なる算定方法が用いられています。
2025年度における第2号被保険者の介護保険料平均額は、事業主負担分と公費分を含めて月額6202円と見込まれています。ただし、この金額は事業主負担分を含む総額であり、実際に被保険者本人が負担する金額は、会社員の場合は事業主と折半するため、この半分程度となります。
会社員や公務員などの健康保険加入者の場合、介護保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を乗じて算出されます。2025年度の保険料率は、協会けんぽでは一律1.59パーセント、健康保険組合では平均1.74パーセントとなっています。この保険料は原則として事業主と被保険者が折半で負担し、給与や賞与から天引きされます。
具体的な例を挙げると、協会けんぽに加入している標準報酬月額30万円の会社員の場合、介護保険料は月額4770円となりますが、このうち被保険者本人の負担は半額の2385円となり、残りの2385円は事業主が負担します。標準報酬月額が高い人ほど保険料も高くなる仕組みとなっており、所得に応じた負担の公平性が図られています。標準報酬月額が50万円の場合は、保険料は月額7950円、本人負担は3975円となります。
また、会社員や公務員の被扶養配偶者などについては、個別に保険料を納付する必要はありません。これは、健康保険の被扶養者として扱われるためであり、配偶者が加入している医療保険から保険料が支払われる仕組みとなっています。専業主婦や専業主夫など、収入が一定額以下で配偶者の扶養に入っている人は、介護保険料を個別に支払う必要がありません。
一方、自営業者などの国民健康保険加入者の場合、介護保険料は世帯の所得と第2号被保険者の人数に応じて算定されます。具体的には、所得に応じた所得割額と、被保険者数に応じた均等割額の合計となります。所得割率と均等割額は市区町村ごとに異なるため、同じ所得でも住んでいる地域によって保険料が変わることがあります。国民健康保険の介護保険料率は、市区町村によって1.5パーセントから2.5パーセント程度まで幅があります。
第2号被保険者が納める保険料は、介護保険財政全体の約27パーセントを占めています。第1号被保険者の保険料が23パーセント、国や都道府県、市町村の公費が50パーセントという負担割合となっており、これらの財源によって介護保険制度が運営されています。現役世代である第2号被保険者が保険料を負担することで、高齢者を社会全体で支える仕組みが実現されています。
過去24年間の介護保険料の推移から見る将来予測
介護保険制度は平成12年4月に創設されて以来、3年ごとに事業計画期間を設定し、保険料の見直しを行ってきました。過去24年間の保険料の推移を振り返ることで、今後の動向を予測する手がかりが得られます。
第1期である平成12年度から平成14年度の期間では、保険料は月額2911円でした。制度創設当初は、介護サービスの基盤整備が進んでいなかったこともあり、比較的低い水準からのスタートとなりました。第2期である平成15年度から平成17年度は月額3293円となり、第1期から382円、率にして13.1パーセントの増加となりました。この時期は、介護サービスの利用が本格化し始めた時期でもあります。
第3期である平成18年度から平成20年度は月額4090円となり、第2期から797円、率にして24.2パーセントという大幅な増加となりました。この時期は、介護予防の重視や地域密着型サービスの創設など、制度の大きな見直しが行われた時期でした。第4期である平成21年度から平成23年度は月額4160円となり、第3期から70円、率にして1.72パーセントの増加にとどまりました。リーマンショック後の経済状況もあり、保険料の上昇は抑制されました。
第5期である平成24年度から平成26年度は月額4972円となり、第4期から812円、率にして19.5パーセントの大幅な増加となりました。この時期は、団塊の世代が65歳に到達し始める時期であり、第1号被保険者の増加が顕著となりました。第6期である平成27年度から平成29年度は月額5514円となり、第5期から542円、率にして10.9パーセントの増加となりました。この時期は、地域包括ケアシステムの構築が本格化した時期でもあります。
第7期である平成30年度から令和2年度は月額5869円となり、第6期から355円、率にして6.4パーセントの増加となりました。増加率は徐々に落ち着きを見せ始めていますが、金額としては着実に上昇を続けています。第8期である令和3年度から令和5年度は月額6014円となり、第7期から145円、率にして2.4パーセントの増加となりました。増加率は過去最小となり、一定の抑制効果が見られました。
そして第9期である令和6年度から令和8年度は月額6225円となり、第8期から211円、率にして3.5パーセントの増加となりました。第8期よりも増加率はやや上昇しましたが、依然として一定の水準に抑えられています。
このように、第1期から第9期までの24年間で、介護保険料は2911円から6225円へと約2.14倍に増加しました。同期間における介護費用は約3.0倍に増加しており、保険料の伸びは費用の伸びよりも抑制されている状況です。これは、公費負担の増加や、効率的なサービス提供の推進、介護予防の取り組みなどによるものです。
今後の見通しとしては、2040年には、1971年から1974年の第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代が65歳から70歳となり、65歳以上の高齢者人口がピークを迎えることが予測されています。この時期には、介護保険料が第1号被保険者、第2号被保険者ともに月額9000円程度にまで増加すると見込まれています。
社会保障給付費全体では、2040年には2018年の約1.6倍に増加すると予測されており、その中でも介護給付費は約2.4倍と最も大きな伸びが見込まれています。また、医療と介護の保険料率を合わせると、年収の13.9パーセント程度にまで上昇する可能性があり、現役世代の負担も大幅に増加することが懸念されています。
地域包括ケアシステムと今後の課題
2025年以降、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となることで、介護需要はさらに増加することが予想されています。この状況に対応するため、地域包括ケアシステムの構築が全国的に推進されています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される体制のことです。
このシステムは、各市町村が地域の特性に応じて構築することとされており、3年ごとの介護保険事業計画の策定と実施を通じて推進されています。地域の自主性や主体性に基づいて、それぞれの地域の実情に応じた体制づくりが行われているため、地域による取り組みの差も生じています。
都市部では75歳以上人口の急速な増加が見込まれる一方、地方の町村部では75歳以上人口の増加は緩やかですが全体の人口減少が進んでいます。このように地域によって高齢化の進展状況が大きく異なるため、それぞれの地域に適した地域包括ケアシステムの構築が必要となっています。都市部では、単独世帯の高齢者が多いため、見守りや生活支援サービスの充実が重要となります。一方、地方部では、介護サービス事業所が少なく、人材確保も困難な状況にあるため、限られた資源を効率的に活用する工夫が求められています。
介護人材の確保も深刻な課題です。厚生労働省の推計によると、第9期介護保険事業計画期間中の介護職員の必要数は増加し続けており、地域によっては人材不足が深刻化しています。特に地方部では、若年人口の減少により介護人材の確保がより困難となっており、処遇改善や働き方改革などの対策が急務となっています。2024年度の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善に重点が置かれ、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果が盛り込まれました。しかし、依然として介護職員の賃金水準は他産業と比較して低い状況にあり、さらなる改善が必要とされています。
介護予防の推進も重要です。要介護状態になることを予防し、要介護状態になっても悪化を防ぐことができれば、高齢者本人の生活の質を維持するだけでなく、介護給付費の抑制にもつながります。各自治体では、介護予防教室や健康づくり事業、認知症予防プログラムなど、様々な予防事業が展開されています。運動機能の維持向上、栄養改善、口腔機能の向上、閉じこもり予防、認知機能の維持など、多岐にわたる取り組みが行われています。
地域間格差の是正も重要な課題です。都市部と地方では、介護サービスの供給体制や高齢化の状況が大きく異なるため、それぞれの地域の実情に応じた施策が求められています。市町村レベルでの取り組みとなるため、自治体の予算規模や職員数の違いによって、取り組みの内容や進捗に地域差が生じることも課題となっています。小規模な自治体では、専門的な知識を持つ職員の確保が難しく、計画策定や事業実施において困難を抱えている場合があります。都道府県や国による支援が重要となります。
今後の課題としては、持続可能な介護保険制度の構築が挙げられます。保険料の上昇を抑えつつ、必要な介護サービスを確保するためには、介護予防の推進、効率的なサービス提供体制の構築、介護人材の確保と育成、ICTやロボット技術の活用などが重要となります。また、利用者負担割合の見直しも議論されており、現在1割から3割となっている自己負担について、2割負担の対象範囲を拡大する方向で検討が進められています。
このような将来見通しを踏まえると、介護保険制度の持続可能性を確保するための抜本的な改革が必要となります。給付と負担のバランスを見直し、効率的なサービス提供体制を構築することで、保険料の上昇を抑制しながら必要なサービスを確保することが求められています。2025年を中心とする第9期計画期間は、団塊の世代の高齢化が進む重要な時期であり、今後も介護保険料の動向と地域差の推移を注視していく必要があります。









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