就労移行支援における精神保健福祉士の役割とは、精神障害を抱える方々の一般企業への就職と社会復帰を専門的にサポートすることです。精神保健福祉士は国家資格を持つ専門職として、相談支援や個別支援計画の作成、就職活動支援から職場定着支援まで幅広い支援内容を担っています。就労移行支援事業所では精神障害に精通した精神保健福祉士の存在が不可欠であり、利用者一人ひとりの状況に合わせた個別支援を行うことで、一般就労の実現をサポートしています。
本記事では、就労移行支援制度の概要から精神保健福祉士の具体的な支援内容と役割、就職率や職場定着率などの実績、そして精神保健福祉士になるための資格取得方法まで詳しく解説します。精神障害を持ちながら一般企業への就職を目指している方や、就労支援の分野で活躍したいと考えている方にとって、参考となる情報をお届けします。

精神保健福祉士とは何か
精神保健福祉士とは、精神保健福祉士法(平成9年法律第131号)に基づく国家資格です。この資格は「精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者」と法律で定義されています。
精神保健福祉士は名称独占資格であり、この資格を持たない者が「精神保健福祉士」と名乗ることは法律で禁じられています。2025年1月時点での登録者数は約10.8万人に達しており、精神障害者支援の中核を担う専門職として社会的な認知が広がっています。英語ではPSW(Psychiatric Social Worker)と呼ばれ、精神科ソーシャルワーカーとも称されます。
精神保健福祉士制度が生まれた歴史的背景
精神保健福祉士制度の成り立ちを理解するには、日本における精神障害者に関する法制度の歴史を知ることが重要です。日本では精神病者監護法の時代から精神障害者を家族の責任のもとで監護するという考え方が根付いていました。この法律では、精神障害者を地方長官の許可を得て、監護の責任者(主に家族)が私宅などに監置できるとされていました。
1950年(昭和25年)に「精神衛生法」が制定され、これが日本の精神障害者施策の実質的な始まりとなりました。その後、1984年の宇都宮病院事件をきっかけに精神衛生法の改正を求める声が国内外から高まり、1987年に「精神保健法」が公布されました。この法律では精神障害者の人権擁護と社会復帰の促進がうたわれ、任意入院制度が創設されるなど、大きな転換点となりました。
1995年には障害者基本法の成立を受けて精神保健法が大幅に改正され「精神保健福祉法」が成立しました。これにより精神障害者が法的にも明確に「障害者」として認知され、「自立と社会経済活動への参加」が目的に加えられました。こうした流れの中で、精神障害者の社会復帰の促進と自立への援助を進める上で相談援助を行う専門職の必要性が高まり、1988年の精神衛生法改正以来、衆参両院より7回にわたり附帯決議が行われるなど、専門職創設の機運が高まっていきました。
1997年12月の臨時国会最終日に「精神保健福祉士法」が成立し、1998年4月1日から施行されました。第1回の国家試験は1999年1月に実施され、精神保健福祉士という国家資格が正式に誕生しました。2010年12月には、精神保健福祉士が地域移行支援や地域定着支援に携わることの明確化や、誠実義務を新たに定めるなどの法改正が行われ、その役割はさらに拡大しています。
就労移行支援制度の基本と対象者
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づいて提供される障害福祉サービスの一種です。2006年に障害者総合支援法と同時に定められた「障害福祉サービス」における就労支援の種類の一つであり、一般企業への就職や在宅での就職を目指す障害者や難病のある方を対象としています。利用者が事業所に通所する形態を基本に、進捗に応じて企業見学や実習等も組み合わせた支援が行われます。現在、全国に3,400か所以上の就労移行支援事業所が存在しています。
就労移行支援を利用できる対象者と条件
就労移行支援の利用条件は4つの要件を全て満たす必要があります。まず、18歳以上65歳未満であること、次に障害もしくは難病を抱えていること、そして一般企業への就職を目指していること、最後に受給者証を所有していることです。
対象となる障害や疾患は幅広く、精神障害(統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、てんかん、適応障害など)、発達障害(注意欠如・多動性障害、アスペルガー症候群、自閉症など)、身体障害、難病(障害者総合支援法の対象疾病)などが含まれます。就労移行支援は障害者手帳を所有していない方でも利用できる点が大きな特徴です。障害者手帳がない場合は、主治医の意見書や定期的な通院履歴が必要になることがあります。
就労移行支援の利用期間と費用
就労移行支援を利用できる期間は原則として最長2年間です。2年間の利用期間内であれば、別の事業所に移って利用を続けることも可能です。厚生労働省によると、就労移行支援事業所の利用期間は2年以下が93.5%と最多で、就職者の平均利用月数は15.9ヶ月(約1年4ヶ月)となっています。2年間の標準利用期間が経過した場合でも、市町村による個別審査で必要性が認められれば、最大1年間の延長が可能です。
利用料金については、厚生労働省によって定められた仕組みがあり、9割を市区町村が補助金で負担し、1割の利用料金を利用者が支払う形となっています。実際には収入によって負担額が決まるため、約9割の方が無料で利用しています。
世帯収入による月額上限額は、生活保護受給世帯が0円、市町村民税非課税世帯が0円となっています。一般1(収入概ね300万円から600万円以下)は9,300円、一般2(上記以外)は37,200円です。交通費は原則自己負担ですが、一部の自治体では助成金が支給される場合もあります。横浜市では公共交通機関を利用する場合、その実費または定期代全額を支給しています。
就労移行支援における精神保健福祉士の配置と役割
就労移行支援における精神保健福祉士の役割は、精神障害を抱える方々の就労実現を専門的な知識と技術でサポートすることです。厚生労働省のデータによると、就労移行支援事業には884人、就労継続支援事業には2,430人の精神保健福祉士が配置されています(平成28年社会福祉施設等調査)。就労支援事業所を利用する精神障害者が増加傾向にあるため、精神障害に精通した精神保健福祉士の需要は高まり続けています。
相談支援と問題解決という中心的役割
精神保健福祉士の最も重要な役割の一つが相談支援と問題解決です。精神疾患を抱えている方(入院している方を含む)の地域での生活への移行・継続のための環境調整や、社会復帰の促進を行います。通院治療が必要な方は生活面の問題、就労面の問題など幅広い困難を抱えていることが多く、精神保健福祉士はこれらの問題解決のためのサポートを行います。必要な福祉サービスや活用できる情報を提供し、地域で生活が続けられるよう支援することが求められます。
就労支援サービスの利用援助
精神保健福祉士は、クライエントが働くことを通して自立した生活を送れるよう、就労支援サービスの利用を援助します。就労移行支援や就労継続支援の情報を提供し、場合によっては見学等に同行するなどの支援も行います。大切なのは、当事者の方が望む生活に向けて必要な情報を提供したり一緒に考えたりして、選択肢を増やすことです。精神保健福祉士は支援者として答えを押し付けるのではなく、利用者自身が選択できるよう寄り添う姿勢を大切にしています。
個別支援計画の作成支援
利用者一人ひとりの状況に合わせた支援計画を立て、仕事に必要な知識や技術の習得をサポートすることも精神保健福祉士の重要な役割です。アセスメント(査定・評価)を行い、利用者の希望する生活像と必要な支援・目標を具体化した計画を作成します。
アセスメントとは、利用者や家庭の情報、環境などの利用者の状況を把握し、日常生活の評価から希望する生活や課題等を把握することです。このアセスメントをもとに個別支援計画を作成するため、非常に重要な作業といえます。アセスメント・個別支援計画の作成はサービス管理責任者の責務として行われますが、精神保健福祉士はその専門性を活かしてこのプロセスに深く関与します。原案を作成し、事業所内で原案についての検討会議(個別支援会議)を行います。
令和6年度報酬改定では、大人のサービスについて原則利用者が担当者会議に参加することが義務付けられました。就労アセスメントの結果は、相談支援事業所がサービス等利用計画作成の参考とするだけでなく、利用者の進路先等において個別支援計画を作成する際の参考ともなり、利用者を支援する各支援機関で情報共有することで有効な連携体制を構築できます。モニタリングの頻度について、就労移行支援では最低3ヶ月に1度、モニタリング(個別支援計画の実施状況の把握など)を行い、モニタリング報告書を作成し、個別支援計画を新たに立て直したり修正する必要があります。
多職種連携による総合的支援
精神保健福祉士は、職業指導員や生活支援員、サービス管理責任者などの他の職種と密に連携を取りながら、多角的な支援を提供します。精神障害を抱える方の就労を対象とするため、精神疾患に関する専門的な知識がある精神保健福祉士が求められています。医療機関との連携も重要であり、主治医からの情報を支援に活かしたり、就労状況を医療側にフィードバックしたりするなど、医療と福祉をつなぐ役割も担っています。
就職活動支援と職場定着支援
就労前のトレーニングや実際の就職活動に関する助言、職場への定着のための支援等を行うことも精神保健福祉士の重要な役割です。履歴書や志望動機の添削、模擬面接の実施、企業への同行など、就職活動の各段階で専門的なサポートを提供します。就職後も職場定着のための支援を継続し、利用者が安定して働き続けられるよう見守ります。
就労移行支援の具体的な支援内容とプログラム
就労移行支援では「就職するため」「長く働き続けるため」に、様々な就労訓練プログラムが行われます。カリキュラムは「社会スキル」「ビジネススキル」「専門スキル」「就活スキル」が身につくよう構成されており、PCスキル、コミュニケーション、セルフマネジメント、ビジネスマナー・スキル、就職活動、模擬就労、余暇活動など、就労へ向けたスキルアップとセルフケアについてバリエーション豊富に用意されています。
ビジネスマナーと社会生活技能の訓練
就労移行支援の訓練では、あいさつや時間管理、報告・連絡・相談など、ビジネスマナーの基本を身につけるプログラムが用意されています。これらの内容は座学だけでなく、グループワークやロールプレイなど実践的な形式で行われることが多いです。社会人として働く上で必要な基本的なマナーを、実際の場面を想定しながら繰り返し練習することで、自然に身につけていくことができます。
コミュニケーション訓練とSST
SST(社会生活技能訓練)と呼ばれるトレーニングは、就労移行支援において特に重要なプログラムです。日常の中でよくある人間関係の場面をロールプレイで体験し、どのように対応すればよいかを学びます。精神保健福祉士は特にこの分野で専門性を発揮し、精神障害のある利用者が職場で円滑なコミュニケーションを取れるよう支援します。
例えば、上司への報告の仕方や同僚への依頼方法、困ったときの相談の切り出し方など、職場で実際に起こりうる場面を想定して練習します。精神障害のある方の中には対人関係に不安を感じる方も多いため、このようなトレーニングを通じて自信をつけていくことが大切です。
職場体験と模擬就労
就労移行支援事業所の内外で職場体験プログラムや現地実習を行います。事業所内で仮想の職場を設定し、事務や軽作業、食品加工、機械製図や清掃などの業務を体験することで、自分の適性を見つけ出すことができます。実際の職場に近い環境で作業を行うことで、働くことへのイメージを具体化し、自分に向いている仕事を探る機会となります。
就職活動の実践的サポート
就労移行支援では、実際の面接を想定した模擬面接が繰り返し行われます。質問への受け答えだけでなく、入退室のマナーや話し方、表情、姿勢といった非言語的な要素も含めて総合的に練習できます。履歴書や志望動機の添削も行われ、個人の特性に合わせた職種を支援員と一緒に考え、得意にあった仕事を見つけることができます。精神保健福祉士は利用者の強みや特性を理解した上で、最適な就職先を一緒に探していきます。
事業所のタイプによる違い
就労移行支援事業所には「一般型」と「専門特化型」という支援のスタイルがあります。一般型では、基礎的なビジネスマナーや生活訓練、コミュニケーションスキルの向上を目的としたプログラムが組まれています。専門特化型では、デザイン、IT、事務職、介護、販売など、分野ごとの専門スキルを集中的に学ぶことができます。
精神疾患や発達障害に特化した就労移行支援では、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、公認心理師など専門的な知識を持った職員が在籍しており、精神的な相談を行うことができます。利用者は自分の状況や目指す就職先に合わせて、適切な事業所を選ぶことが重要です。
就労移行支援の就職率と職場定着率
就労移行支援の効果を測る重要な指標として、就職率と職場定着率があります。厚生労働省の最新調査によると、就労移行支援事業所から一般企業への就職率は56.2%です。令和5年の全体での就職率は58.8%となっており、年々上昇傾向にあります。2023年度の一般就労移行率は57.2%でした。就労移行支援の利用者は年々増加しており、それに伴って一般企業への就職率も少しずつ上昇しています。就労系福祉サービスから一般企業へ就職する人の数は年々増加しており、2020年度は約2.2万人が一般就労への移行を実現しました。
就労移行支援利用者の職場定着率
就労移行支援を利用して就職した方の職場定着率は、3ヶ月間で90.3%、1年間では76.0%という高い数値を示しています。一方、何の支援制度も受けていなかった方の職場定着率は、3ヶ月の時点で71.8%、1年の時点で52.7%と、1年経つと約半分の方が退職しているというデータがあります。
就職後6ヶ月時点での職場定着率は89.5%という高い数値となっています。就職1年後の障害者全体の職場定着率が58.4%なのに対して、就労移行支援事業所の卒業生の職場定着率は82.3%です。このデータは、就労移行支援を利用することで職場への定着がより確実になることを示しています。
障害種別による定着率の違い
就労移行支援を利用後の定着率の全国平均を見ると、精神障害が49.3%、発達障害が71.5%と障害ごとにばらつきがあります。精神障害のある方の定着率が比較的低いことから、精神保健福祉士による専門的なサポートが不可欠であることがわかります。精神障害のある方は症状の波があったり、ストレスへの対処が難しかったりすることがあるため、きめ細やかな支援と継続的なフォローが重要となります。
就労移行支援のメリットとデメリット
就労移行支援を利用するメリットは多岐にわたります。まず、生活リズムの安定という点では、ほとんどの事業所で通所時間が決まっているため、規則正しい生活習慣が身につきやすくなります。就職活動のサポートについては、履歴書や志望動機の添削・面接の練習等、就職活動で必要な一通りのサポートを受けられます。さらに個人の特性に合わせた職種を支援員と一緒に考え、得意にあった仕事を見つけることができます。
職場定着支援として、就職後も継続的なサポートを受けられ、就労後の不安や悩みを解決することができます。自己理解の深化という面では、プログラムを進めていく中で、自分の強み・弱点や障害のデメリットに対する理解を深められます。特にコミュニケーションが苦手な人や、引きこもり気味の人はメリットが大きくなります。就労移行支援事業所を利用して良かったと感じている人は全体の91.0%で、ほとんどの方が「利用して良かった」と回答しています。
就労移行支援のデメリットと注意点
一方でデメリットも存在します。最大のデメリットは収入がないことです。就労移行支援はあくまで「障害者が働けるようになるための訓練施設」という位置づけなので、賃金は一切発生しません。アルバイト禁止という制約もあり、就労移行支援に通所している期間は、基本的にアルバイトや仕事が禁止されています。ただし、障害年金や生活保護は受け取ることができます。
交通費問題として、管轄する自治体によって交通費などの経費が支給されないケースがあります。また、利用期間が長期にわたる可能性もあります。うつ病等の精神疾患の方は体調を考え少しずつ進めていくため、長期にわたる場合もあります。
とはいえ、就労移行支援事業所の通所期間中は収入がなくなるというデメリットさえクリアできれば、基本的にはメリットの多いサービスといえます。一般企業への就職を実現できれば安定した収入も見込めるため、将来への投資として捉えることが大切です。
就労定着支援との連携と2025年の新制度
就労移行支援と就労定着支援の大きな違いは「就労に向けた支援」か「就労後の定着に向けた支援」かという点にあります。就労移行支援は主に一般就労に向けたスキルの習得や就職活動のサポートが目的である一方、就労定着支援は支援期間の終了後に特別な支援無しでも仕事を続けていくことができるような状態を目指すことを目的としています。
具体的には「就職支援+就職後6か月までの職場定着支援」が就労移行支援、「就職後7か月目からの職場定着支援」が就労定着支援となります。多くの就労移行支援事業所では、就労定着支援サービスも行っており、利用者は就職後7か月目からも同じ事業所から定着支援を受けられます。
就労定着支援の利用期間は就職後6ヶ月を経過した頃から最長3年間で、1年ごとに契約を更新します。就労移行支援などを利用して就職した方が対象となります。就職後、仕事や人間関係、生活リズムの変化など、さまざまな課題に直面することがありますが、就労定着支援では専門の支援員が利用者本人や企業、医療機関などと連携し、課題解決のための相談や助言を行います。必要に応じて企業と連携を取り、三者面談などを行う場合もあります。
2025年10月開始の就労選択支援
2025年10月に「就労選択支援」という新たな制度が開始されました。これは障害者総合支援法の改正で創設された制度で、障害のある人が自分に合った働き方や就労支援サービスを選びやすくするための仕組みです。就労移行支援や就労継続支援A型・B型を利用する前に、本人の希望や能力、生活状況を短期間で整理し、将来の働き方を検討することを目的としています。
全体としては「就労選択支援→就労移行支援・A型・B型→就労定着支援」という流れで、就労系サービスが配置されています。この新制度により、障害のある方がより自分に合った就労支援サービスを選択できるようになることが期待されています。
精神保健福祉士の資格取得方法と国家試験
精神保健福祉士になるためには、国家試験に合格し、登録を受ける必要があります。受験資格を得る方法は全部で11パターンあり、主な経路としては、4年制大学で指定科目を修めて卒業する方法、2年制または3年制の短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(または1年以上)相談援助の業務に従事する方法、精神保健福祉士短期養成施設(6ヶ月以上)を卒業する方法、精神保健福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業する方法などがあります。
2026年実施予定の第28回国家試験は、1月31日と2月1日に行われ、合格発表は3月3日に予定されています。試験地は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県の7か所です。試験は全132問で、専門科目48問と社会福祉士との共通科目84問から構成されます。社会福祉士の資格を持っている場合は共通科目が免除され、専門科目の48問のみとなります。
合格基準は正答率約60%で、第27回試験では70点が合格点でした。受験料は精神保健福祉士のみ受験する場合24,140円、社会福祉士と同時受験の場合36,360円、共通科目免除の場合18,820円となっています。2025年実施の第27回試験では、6,642人が受験し4,694人が合格、合格率は70.7%でした。過去5年の合格率は64.2%から71.1%で推移しています。
精神保健福祉士と社会福祉士の違い
社会福祉士と精神保健福祉士は、どちらも福祉分野の国家資格ですが、対象とする領域に違いがあります。社会福祉士は高齢者、障害者、児童、低所得者など、相談援助の対象が幅広いのに対し、精神保健福祉士は精神に問題を抱えている方の相談援助に特化しています。
社会福祉士は、高齢者やこども、身体や精神に障害のある人、生活困窮者など、さまざまな理由で日常生活が困難な方の相談援助を担います。各施設利用の手続き代行や、医療・福祉機関とのコーディネート役なども果たします。精神保健福祉士は、精神保健福祉に関する専門的知識や技術を持って精神障害者に対し相談援助をする資格であり、精神科病院や施設での入院・退院支援、地域での生活支援、リハビリテーション、就労支援、精神障害者の権利擁護などが主な仕事となっています。
ダブルライセンスの可能性とメリット
社会福祉士と精神保健福祉士は、両方の試験の受験資格を満たせばダブルライセンスが可能です。受験資格を最短で満たすためには、両方で必要な科目を履修できる4年制の福祉系大学で学ぶ必要があります。2つの資格試験には共通科目があるため、どちらかの資格を持っている場合は共通科目が免除されます。
ダブルライセンスのメリットとして、就職先の選択肢が広がること、資格手当のアップ(社会福祉士で約1万4,000円、精神保健福祉士で約1万5,000円)、幅広い種類の福祉の専門知識が身につくため相談者の多様な悩みに対応できることなどが挙げられます。受験者の合格率は社会福祉士が約30%、精神保健福祉士が約60%とされており、精神保健福祉士の方が合格率は高くなっています。
精神保健福祉士の年収と勤務先
精神保健福祉士の年収は、公益社団法人社会福祉振興・試験センターの調査によると、令和元年の平均年収は404万円です。この平均年収は、平成27年に実施された前回調査と比較して57万円アップしています。2015年の347万円から2020年には404万円へと7年間で約15%上昇しました。月給は各種手当込みで約28万円、賞与・ボーナスは70万円程度となります。初任給は約23万3,200円、手取り額は平均約17万円から21万円前後が相場です。
勤務先別の年収比較
| 勤務先 | 平均年収 |
|---|---|
| 司法関係(保護観察所・更生保護施設等) | 521万円 |
| 行政機関 | 485万円 |
| 大規模病院(医療分野) | 430万円程度 |
| 精神保健福祉センター | 420万円程度 |
| 障害者福祉サービス事業所等 | 390万円程度 |
| 小規模クリニック | 380万円程度 |
平均年収が最も高いのは司法関係で521万円となっています。司法関係は保護観察所や更生保護施設などが職場で、国家公務員としての勤務になります。行政機関は485万円で、精神保健福祉センターでの勤務になると地方公務員の扱いになります。
年齢別年収の推移
年齢別の年収を見ると、20代の平均年収は男性325万円・女性311万円、30代で男性420万円・女性351万円、40代で男性492万円・女性399万円、50代で男性541万円・女性451万円となっています。年齢が上がるごとに年収も上昇し、50代でピークに達します。
精神保健福祉士の給料水準は、国家公務員の給料体系に準じているケースが多く見られます。基本給は飛び抜けて高くないものの、各種手当やボーナスといった待遇面が比較的充実しているのが特徴です。精神保健福祉センターや障害者福祉サービス事業所などで働くことは、地方公務員扱いになるので、勤務年数と共に昇給が見込めます。住居手当や通勤手当など各種手当も充実しています。
精神保健福祉士が働く場所の分布
精神保健福祉士が働く施設・事業所は、障害者福祉関係が27.8%で最も高く、次いで医療関係で26.5%です。さらに高齢者福祉関係17.2%、行政機関9.7%、地域福祉関係5.9%、児童・母子福祉関係5.8%と続きます。障害者福祉分野の職場は、生活介護事業所やケアホーム、自立訓練事業所や就労移行(継続)支援事業所、地域活動支援センターなど多岐にわたります。就労のための訓練施設では、就職に関するアドバイスを行います。
精神保健福祉士の将来性と需要の高まり
精神保健福祉士の需要は今後さらに高まることが予想されます。日本は急速に高齢化が進み、福祉のニーズは年々増加しています。認知症やうつ病を抱える高齢者や、介護家族の心理的な負担の課題を解決するためには精神保健福祉士の専門知識が欠かせません。
企業では産業ソーシャルワーカーとしてストレスを抱えた社員をケアし、ハローワークでは精神障害者雇用トータルサポーターとして精神障害者の就労支援を行うなど、活躍の場は広がっています。産業分野における精神保健福祉士の仕事は、企業で働く社員が健康で生き生きと働けるよう、職場環境を整備することです。ストレスによる精神疾患の予防やメンタルケア、ワーク・ライフ・バランスを整えるために必要な支援を実施します。具体的には、ストレスチェックで高ストレス者と判定された社員との面談や、精神障害のある社員の労働に関するアドバイスなどを行います。
就労移行支援における今後の展望
精神障害者の就労支援において、精神保健福祉士の役割はますます重要になっています。精神疾患を抱えている人は長い間入院していることも多く、すぐに就労するのは難しいこともあります。そのような場合には、まずリハビリテーションとして就労支援施設を紹介し、徐々に社会復帰できるようにサポートしていきます。面接を通して相談者の希望や適性を理解し、その人に合った解決策を見つけていくことが大切です。
精神保健福祉士には社会と精神的障害がある方がつながりを持てるように導くコーディネーター的役割であることが求められています。就労移行支援の現場では、精神障害のある方の職場定着率向上という課題に取り組むため、より専門的で継続的な支援が求められるようになっています。
就労移行支援の利用開始までの流れ
就労移行支援を利用するまでの流れを説明します。まず、就労移行支援事業所を探すことから始めます。お住まいの地域の役所にある障害福祉課等に相談すると、通える範囲内にある事業所を紹介してもらえます。WAMNET(ワムネット)などのインターネットを利用して検索することもできます。
次に、事業所の見学・体験を行います。実際の雰囲気や細かなプログラム内容、他の利用者の様子などを確認し、利用後のミスマッチを防ぐ材料とします。複数の事業所を見学して比較検討することをお勧めします。
利用したい事業所や利用時期が決まったら、お住いの行政窓口に就労移行支援を利用したい旨を伝え、必要書類を用意してから受給者証の申請を行います。受給者証を取得するには、申請後1ヶ月から3ヶ月ほどかかります。障害福祉サービス受給者証の発行後、利用する事業所と利用契約を交わし、事業所のスタッフが「個別支援計画」を作成します。この計画に基づいて、いよいよ就労移行支援の利用が始まります。
就労移行支援の利用を検討している方は、まずお住まいの地域の障害福祉課や就労移行支援事業所に相談し、見学や体験を通じて自分に合った事業所を見つけることが大切です。精神保健福祉士をはじめとする専門スタッフのサポートを受けながら、一般就労に向けて着実に歩みを進めていくことが、社会復帰と自立への第一歩となります。









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