障害福祉サービスと訪問看護は併用可能、時間帯の重複だけ注意

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障害福祉サービスと訪問看護は、原則として併用できます。両者は根拠となる法律も報酬の仕組みも異なる別の制度であり、生活支援を担う障害福祉サービスと、医療的なケアを担う訪問看護は、そもそも役割が違うからです。ただし同一時間帯に両方のサービス提供時間を重複させ、それぞれの事業所が報酬を請求することは原則できません。この記事では、併用の基本ルールから、居宅介護や重度訪問介護、精神科訪問看護、グループホームでの利用まで、具体的な組み合わせのパターンを整理します。65歳到達後の扱いや請求実務の注意点も含めて、事業所の担当者や利用者本人・家族が判断に迷いやすいポイントをまとめました。

目次

障害福祉サービスと訪問看護は併用できる、同一時間帯の重複だけが例外

自宅や障害者グループホームで生活している障害のある方が、日中に居宅介護や重度訪問介護、生活介護などを利用しながら、健康管理のために訪問看護を依頼することは制度上問題ありません。厚生労働省の通知や各種Q&Aでも、両サービスの同時利用そのものを禁止する規定はなく、地域生活を支えるために必要な組み合わせとして位置づけられています。

併用時に守るべき原則は一つです。同一時間帯にサービスの提供時間を重複させ、複数の事業所がそれぞれ報酬を請求することはできません。これは公的財源の重複給付を避けるための考え方で、たとえば午前10時から11時まで居宅介護のヘルパーが訪問しているのと同じ時間帯に訪問看護師も訪問して看護を提供した場合、原則としてどちらか一方しか報酬請求ができないか、重複部分について調整が必要になります。

もっとも、この原則には例外もあります。重度の身体障害があり、入浴介助の場面で喀痰吸引や状態観察といった医療的な管理と身体介護を同時に行う必要があるケースなどでは、本人と各事業所の日程調整がどうしても難しく、同時間における支援の必要性が客観的に認められる場合に限り、例外的に重複した時間帯での利用が認められることがあります。この判断は自治体によって基準が異なるため、重複利用を検討する際は市町村の障害福祉担当窓口や指定特定相談支援事業所への事前相談が欠かせません。

居宅介護や重度訪問介護は時間帯を分けて訪問看護と組み合わせる

居宅介護や重度訪問介護と訪問看護を併用する際に誤解されやすいのが、同一時間帯にはいかなる場合も両方を利用できないという理解です。正確には、事業所が同一時間帯・同一内容の支援を重複して提供し、それぞれが報酬を請求することができないというルールであり、支援内容・時間帯・利用者のいずれかが異なっていれば併用そのものに問題はありません。

最も一般的なパターンは、時間帯を分ける方法です。午前中はヘルパーによる食事や排せつ、入浴などの身体介護を居宅介護で利用し、午後は訪問看護師による健康チェックやリハビリテーションを別枠で利用すれば、提供時間が重ならないためそれぞれの事業所が問題なく報酬を請求できます。

同一時間帯であっても、支援の内容が明確に異なる場合は認められることがあります。ヘルパーが身の回りの世話をしている傍らで、看護師が医療機器のチェックや服薬管理などまったく別の医療行為を行うケースがこれにあたります。ただしこの判断は自治体や個別の事情によって分かれるため、支給決定を行う市町村や相談支援専門員との事前調整が必要です。

なお、重度訪問介護は訪問介護の一部サービスにある「2時間ルール」(前後の訪問との間隔が2時間未満の場合に所要時間を合算するルール)が基本的に適用されません。長時間にわたる継続的な見守りや介護が必要な利用者の実態に合わせた制度設計になっているためです。一方、訪問看護は医療保険と介護保険のいずれの場合も、同一時間帯に両方の訪問看護を重複利用することはできません。医療保険の適用条件に該当する場合は医療保険の訪問看護を利用し、介護保険の訪問看護は算定できないという整理になります。

訪問看護ステーションと障害福祉サービス事業所の双方を運営する法人やグループの場合、利用者情報や訪問スケジュールの共有が一本化しやすく、時間帯の重複を避ける調整や緊急時の連絡体制の構築がスムーズに進むという実務上の利点もあります。訪問看護を開始する際は、まず主治医の指示のもとで訪問看護ステーションの管理者や看護師が訪問看護計画書を作成し、医療処置の内容や観察項目、訪問頻度を整理したうえで、居宅介護・重度訪問介護の事業所や相談支援専門員と情報を共有していく流れが基本になります。

精神科訪問看護は就労継続支援や生活介護と別日・別時間帯で併用

精神疾患のある方の場合、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、生活介護といった日中活動系サービスを利用しながら、精神科訪問看護を受けるケースが多く見られます。精神科訪問看護は、看護師などが利用者の自宅を訪問し、服薬管理の支援や症状の観察、生活リズムの改善、家族への助言などを行う医療サービスです。日中活動サービスの利用日以外の日に訪問看護を行う、あるいは活動の前後の時間帯に訪問するなど、時間帯を分けて併用するのが一般的な運用です。

就労継続支援事業所などで看護職員との連携体制を整えている場合には、医療連携体制加算を算定できることがあります。事業所に看護師が常駐していなくても、地域の医療機関や訪問看護ステーションと24時間連携できる体制を構築している場合に評価される加算で、精神科訪問看護ステーションが連携先として関わるケースも増えています。

生活介護との併用については、同一日に生活介護と就労継続支援B型など複数の日中系障害福祉サービスを同時に利用することは通常できませんが、訪問看護は訪問先と時間帯が異なるため、別日または生活介護の前後の時間帯に利用すれば併用は可能です。ただし市町村によって具体的な運用や判断が異なるため、事前確認は必須です。

障害者グループホームでの訪問看護は医療保険での算定が原則

共同生活援助(グループホーム)は、障害のある方が世話人などの支援を受けながら共同生活を営む住まいの場を提供する障害福祉サービスです。グループホームでの生活支援と訪問看護による医療的ケアは制度の枠組みが異なるため、原則として問題なく併用できます。厚生労働省の通知でも、共同生活援助の利用者が医療保険による訪問看護を受けることは認められています。

65歳未満のグループホーム入居者が訪問看護を利用する場合は、原則として医療保険での算定になります。厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの重度神経難病、人工呼吸器を使用している状態など)に該当する場合や、精神科訪問看護指示書が交付されている場合などに医療保険の訪問看護が適用されます。医療的ケアが日常的に必要な入居者が増えている背景から、グループホームと訪問看護ステーションが連携して定期的な巡回や緊急時対応の体制を構築する例も広がっています。

グループホームにおいても、看護師の配置がなくても地域の医療機関などとの連携体制が整っていれば、医療連携体制加算の対象になる場合があります。これにより、医療的ケアが必要な利用者を受け入れやすい体制づくりが進められています。

65歳到達後も訪問看護は介護保険優先原則の対象外という点に注意

障害福祉サービスを利用している方が65歳に到達した場合、あるいは40歳から64歳までの方で特定疾病に該当する場合、介護保険法に基づくサービスが優先して適用されるという原則があります。介護保険法と障害者総合支援法の適用関係を定めたこの考え方は、一般に介護保険優先原則、いわゆる65歳問題と呼ばれています。

障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則として介護保険サービスを優先して利用することになります。ただし、同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援など、介護保険に相当するサービスがない障害福祉サービス固有のものは、65歳以降も引き続き障害福祉サービスとして利用が認められています。介護保険サービスのみでは必要な支援量を満たせない場合など、一定の要件のもとで障害福祉サービスの上乗せ利用が認められることもあります。

訪問看護は障害福祉サービスそのものとは別枠の制度であるため、65歳到達によって訪問看護自体が利用できなくなるわけではありません。65歳以上で要介護認定を受けている場合は介護保険の訪問看護が原則として優先されますが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合など、一定の条件下では医療保険の訪問看護が継続して適用されるケースもあります。ケアマネジャーや相談支援専門員、市町村の窓口に相談しながら整理していくことが望ましいでしょう。

共生型サービスに訪問看護は含まれない

平成30年度(2018年度)に創設された共生型サービスは、高齢者と障害児者が同一の事業所で訪問系・通所系・短期入所系のサービスを受けやすくすることを目的とした制度です。訪問介護と居宅介護・重度訪問介護、通所介護と生活介護・自立訓練・児童発達支援、短期入所生活介護とショートステイなどが、共生型サービスとして相互に指定を受けられる対象になっています。

これにより、障害福祉サービスを利用してきた方が65歳に到達し介護保険が優先適用となる場面でも、使い慣れた事業所を継続して利用しやすくなります。事業所側にとっても、介護保険と障害福祉の両方の指定を受けることで、職員間の連携強化や人材確保の効率化につながるとされています。

ただし訪問看護は共生型サービスの対象サービスには含まれていません。訪問看護はあくまで医療保険または介護保険を根拠とする医療サービスであり、共生型サービスの枠組みとは別に、それぞれの制度ルールに従って提供・請求されます。共生型の居宅介護事業所を利用している場合であっても、訪問看護を組み合わせる際には、同一時間帯の重複を避けるという基本原則が同様に適用される点に注意が必要です。

在宅人工呼吸器の利用者には医療保険の限度を超える訪問看護制度がある

筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病により在宅で人工呼吸器を使用している方には、通常の医療保険の訪問看護に加えて特別な支援制度が用意されています。国は平成10年度から在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業を実施しており、特定疾患により在宅で人工呼吸療法を行っている患者に対して、通常の医療保険で定められた回数を超える訪問看護を提供できる仕組みを整えています。

東京都をはじめとする自治体でも、在宅人工呼吸器使用難病患者訪問看護事業として、医療保険の限度を超えた訪問看護を委託事業の形で提供し、在宅療養環境の整備や実態把握、看護方法に関する調査研究を進めています。こうした在宅人工呼吸療法を行う方は、医療保険による訪問看護に加え、医療保険によるリハビリテーションの訪問、介護保険による福祉用具の貸与や購入、そして障害者総合支援法に基づく重度訪問介護や重度障害者等包括支援などを組み合わせて利用するケースが一般的です。

医療依存度が非常に高い利用者ほど、障害福祉サービスと訪問看護、さらには難病法に基づく各種支援事業を多層的に組み合わせる必要があり、関係機関の連携がより重要になります。市町村の障害福祉担当、保健所の難病相談窓口、訪問看護ステーション、相談支援専門員が一体となって支援体制を構築することが、在宅生活の継続を支える基盤です。

サービス等利用計画に訪問看護の情報を位置づけて連携する

相談支援専門員がサービス等利用計画を作成する際には、利用者の総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえたうえで、最も適切な障害福祉サービスの組み合わせを検討します。訪問看護のように医療保険や介護保険を根拠とするサービスは障害福祉サービスの支給決定の対象そのものではありませんが、利用者の生活全体を支える要素であるため、サービス等利用計画の中に位置づけて記載し、関係機関との連携内容を明確にしておくことが望ましいとされます。

相談支援専門員が自ら行う業務には、居宅等への訪問によるアセスメントおよび定期的なモニタリングの実施が含まれます。モニタリングでは、サービス等利用計画に基づく支援が実際に利用者のニーズに適合しているかどうかを確認し、必要に応じて計画の見直しを行います。訪問看護の利用状況や医療的なケアの内容についても、病院の医療ソーシャルワーカーや訪問看護ステーションの看護師から情報提供を受け、その内容をサービス等利用計画やモニタリング結果に反映させることで、生活支援と医療支援の整合性を保てます。

こうした多職種間の情報共有は、支援内容や時間帯の重複を避けるための実務的な調整でも重要な役割を果たします。相談支援専門員、主治医、訪問看護ステーション、障害福祉サービス事業所という複数の関係者が、それぞれの専門性を活かしながら定期的に情報交換を行う体制を構築することが、安定した地域生活を継続するための鍵になります。

2024年度報酬改定で医療的ケア児者への支援体制が強化された

令和6年度(2024年度)の障害福祉サービス等報酬改定では、重症心身障害児や医療的ケア児者への支援体制を強化する方向での見直しが行われました。訪問系サービスでは、医療的ケアが必要な利用者に対応するための特別事業加算の算定要件が見直され、重症心身障害児・医療的ケア児への支援を評価する仕組みが拡充されています。

短期入所(ショートステイ)についても緊急時受け入れに関する加算が引き上げられ、福祉型のショートステイで医療的ケア児の受け入れを促進するための医療対応支援加算が新設されました。児童発達支援や放課後等デイサービスでも、医療的ケア児の送迎加算の増額や入浴支援に関する加算の新設など、医療的ケアを要する子どもたちを支える体制整備が進んでいます。

改定の背景には、医療的ケア児支援法の施行以降、在宅で生活しながら訪問看護と障害福祉サービスの両方を必要とする子どもや大人が増加している実態があります。重度訪問介護のヘルパーが日常的な身体介護や見守りを行いながら、訪問看護師が定期的に体調管理や医療処置を行うという役割分担は、医療的ケアが必要な方の地域生活を支える標準的なモデルの一つになっています。訪問看護ステーションと障害福祉サービス事業所との連携を制度面から後押しする流れは、今後も強化されていくと見込まれます。

併用時の請求実務では時間帯の重複チェックが欠かせない

障害福祉サービス事業所と訪問看護ステーションが同一利用者にそれぞれサービスを提供する場合、実務面でいくつか注意すべき点があります。

給付費の請求データの形式や使用するシステムは、障害福祉サービスと訪問看護とでまったく異なります。障害福祉サービスは国民健康保険団体連合会を通じた請求システムを用い、訪問看護は医療保険であれば診療報酬明細書、介護保険であれば介護給付費請求システムを用います。以下の表に、根拠制度ごとの違いをまとめました。

項目障害福祉サービス医療保険の訪問看護介護保険の訪問看護
根拠法障害者総合支援法健康保険法など介護保険法
実施主体市町村保険者(協会けんぽ・健康保険組合など)市町村
請求先国民健康保険団体連合会審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金など)国民健康保険団体連合会
利用の起点支給決定主治医の訪問看護指示書ケアプラン(居宅サービス計画)

実績記録帳やサービス提供記録では、時間帯が重複していないかどうかの厳密なチェックが求められます。同一時間帯に複数のサービスの提供実績が記録されていると、不正請求や二重請求とみなされるリスクがあるため、事業所間での情報共有とスケジュール管理が欠かせません。同一法人が障害福祉サービスと訪問看護の両方を運営している場合であっても、報酬の算定ルールや利用者への説明責任は別々に適用されるため、法人内であっても厳格な区分管理が必要です。

支援計画(サービス等利用計画)と看護計画(訪問看護計画書)の間で支援内容や訪問時間帯に矛盾が生じないよう、相談支援専門員と訪問看護ステーションの看護師が密に連携することも求められます。医療的ケアが必要な重症心身障害児者や、精神疾患により生活支援と医療支援の両方が欠かせない利用者の場合、多職種連携の質が生活の安定に直結します。

併用を検討する際は市町村窓口や相談支援専門員に事前相談する

障害福祉サービスと訪問看護の併用を検討する際、まず相談すべき窓口は市町村の障害福祉担当課、または委託を受けている指定特定相談支援事業所の相談支援専門員です。相談支援専門員は利用者の心身の状況や生活環境を踏まえて、サービス等利用計画を作成し、必要な障害福祉サービスの種類や量を市町村に提案します。

訪問看護を利用する際は、主治医からの訪問看護指示書が必要です。医療保険を利用する場合は医療機関の主治医が、介護保険を利用する場合はケアマネジャーが作成する居宅サービス計画に基づいて訪問看護が位置づけられます。障害福祉サービスと訪問看護を同時に利用したい場合は、相談支援専門員と主治医、訪問看護ステーションの三者が情報を共有し、支援内容や時間帯が重複しないよう事前に調整しておくことが円滑な併用のポイントです。

具体的な支給決定や報酬算定の可否は自治体ごとに判断が分かれる場合があるため、迷った際は必ず利用予定の市町村窓口に事前相談を行うことをおすすめします。地域によっては、障害福祉サービスに詳しい行政書士事務所や障害福祉専門の税理士事務所が、事業所向けに算定ルールの相談を受け付けている例もあります。

障害福祉サービスと訪問看護は、根拠となる制度も報酬体系も異なりますが、役割が異なるからこそ組み合わせて利用でき、多くの障害のある方の地域生活を支える組み合わせになっています。同一時間帯のサービス提供時間を重複させないという原則を押さえたうえで、相談支援専門員、主治医、訪問看護ステーション、障害福祉サービス事業所が連携し、利用者本人の状態や生活実態に即した支援計画を作ることが何より重要です。

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